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ASP Japan合同会社による執行停止申立事件

独禁法19条、一般指定10項
東京地方裁判所民事第8部

令和7年(行ク)第5001号

決定

令和7年3月24日

東京都港区港南2丁目15番2号
申立人         ASP Japan合同会社
同代表者代表社員    アドバンスド・プロダクト・ステリライゼーション・ホールディング・ゲーエムビーハー
同代表社員職務執行者  ≪X1≫
同代理人弁護士     舟木 健
同           久保佑介
同           平山賢太郎
同           山本陽介

東京都千代田区霞が関一丁目1番1号
相手方         公正取引委員会
同代表者委員長     古谷一之
同指定代理人      岩下生知
同           石井崇史
同           大泉玄之助
同           高取勇介
同           堤 優子
同           並木 悠
同           山本浩平
同           阿部憲明
同           安藤香織
同           昼間政行
同           飯塚健太郎
同           門木貴史
同           田邊節子
同           深澤尚人
同           千田史皓

当事者の表示 別紙1当事者目録記載のとおり
主文
1 本件申立てを却下する。
2 申立費用は申立人の負担とする。
理由
第1 申立ての趣旨
相手方が令和6年7月26日付けでした排除措置命令(令和6年(措)第9号)は、本案判決の確定に至るまでその効力を停止する。
第2 事案の概要
1 相手方は、令和6年7月26日付けで、内視鏡洗浄消毒器及び消毒剤の販売等の事業を営む合同会社である申立人が、医療機関に対し内視鏡洗浄消毒器の供給に併せてフタラール製剤を自己から購入させており、不公正な取引方法(昭和57年公正取引委員会告示第15号)10項の抱き合わせ販売等に該当し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)19条に違反する行為を行っているとして、申立人に対し、独禁法20条1項に基づき、上記行為を取りやめること等を命ずる排除措置命令(令和6年(措)第9号。以下「本件命令」という。)を発令した。
本件は、申立人が、相手方を被告として本件命令の取消しを求める訴訟を提起した上で、これを本案として、本件命令により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があると主張して、行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)25条2項本文に基づき、本案判決の確定まで本件命令の効力を停止する決定を求める申立てをした事案である。
2 前提事実(後掲各疎明資料及び審尋の全趣旨により容易に認められる事実。以下、疎明資料の番号の表記は枝番を含むものとする。)
⑴ 申立人について
申立人は、フタラール製剤の製造販売及び内視鏡洗浄消毒器の販売に係る事業を営む合同会社である。(甲3、審尋の全趣旨)
申立人は、平成31年4月1日、≪A≫株式会社(以下「≪A≫」という。)から、吸収分割により、フタラール製剤の販売及びフタラール製剤を用いる内視鏡洗浄消毒器の販売に係る事業を承継した。(審尋の全趣旨)
⑵ 内視鏡洗浄消毒器及びフタラール製剤等について
ア 内視鏡洗浄消毒器
内視鏡洗浄消毒器とは、消化器内視鏡を洗浄及び消毒するための医療機器であり、「自動内視鏡洗浄消毒器」(AER)ともいう。(甲2、3、審尋の全趣旨)
イ フタラール製剤
フタラール製剤とは、フタラール0.55w/v%を含有する医療用医薬品であって、消化器内視鏡等の高水準消毒(3段階に分かれる消毒に関する分類の中で殺菌する微生物の種類の範囲が最も広い消毒をいう。)を行うために内視鏡洗浄消毒器に投入するなどして使用される消毒剤(高水準消毒剤:HLD)である。(甲2、3、5)
ウ 申立人の販売する内視鑓洗浄消毒器及びフタラール製剤
申立人は、株式会社≪B≫(以下「≪B≫」という。)から、同社がOEM製品として製造した内視鏡洗浄消毒器(商品名は「エンドクレンズNeo」、「エンドクレンズNeo-D Advanced」及び「エンドクレンズNeo-S Advanced」。以下、併せて「本件内視鏡洗浄消毒器」という。)の供給を受けて、これを販売するとともに、フタラール製剤(商品名は「ディスオーパ」。以下「本件製剤」という。)の販売を行っている。本件製剤は、平成13年11月頃から、≪A≫が製造販売していたところ、平成31年4月の吸収分割(前記⑴参照)以降、申立人が販売するようになったものである。(甲2、9)
本件内視鏡洗浄消毒器で使用できる消毒剤は、フタラール製剤に限られる。(甲2、審尋の全趣旨)
⑶ 本件内視鏡洗浄消毒器における二次元コードの導入に至る経緯
ア ≪A≫は、平成15年9月頃以降には、本件内視鏡洗浄消毒器の旧型に当たる内視鏡洗浄消毒器(商品名は「エンドクレンズ-S」及び「エンドクレンズ-D」。以下、併せて「旧型内視鏡洗浄消毒器」という。)の販売及び旧型内視鏡洗浄消毒器において使用できる本件製剤の製造販売を行っていた。その当時は、≪A≫のグループ企業がフタラール製剤に関する特許権を保有していたため、旧型内視鏡洗浄消毒器に使用できるフタラール製剤は本件製剤のみであった。
その後、上記特許権が平成25年4月頃に消滅すると、これを受けて、他の製薬事業者は、平成26年10月頃以降、本件製剤の後発医療用医薬品に当たる後発フタラール製剤(以下「本件後発製剤」という。)の製造販売を開始した。(以上につき、甲2、審尋の全趣旨)
イ 申立人は、平成28年10月頃以降、本件製剤の容器に、本件内視鏡洗浄消毒器の洗浄消毒機能を作動させるために必要な情報が含まれている二次元コード(以下「本件二次元コード」という。)を貼付するとともに、平成29年3月頃以降、上記情報を読み取るバーコードリーダーを取り付けた新型の内視鏡洗浄消毒器(旧型内視鏡洗浄消毒器の後継機種)である本件内視鏡洗浄消毒器の販売を開始した。(甲2、3、9、審尋の全趣旨)
ウ 本件内視鏡洗浄消毒器は、上記のとおり、本件製剤の容器に貼付された本件二次元コードをバーコードリーダーで読み取らなければ、洗浄消毒機能が作動しない仕様(以下「本件仕様」という。)となっており、本件後発製剤には本件二次元コードが貼付されていないため、本件後発製剤を本件内視鏡洗浄消毒器に用いることはできなくなっている。
なお、本件内視鏡洗浄消毒器と旧型内視鏡洗浄消毒器とは、いずれも消毒剤としてフタラール製剤を投入して消化器内視鏡を自動的に洗浄・消毒する仕組みを有することは共通しているが、前者は本件二次元コードの読み取り機能(本件仕様)を有するが後者は有しないという違いがある。(以上につき、甲2、3、審尋の全趣旨)
⑷ 本件命令
相手方は、令和6年7月26日付けで、本件仕様によって医療機関に対し本件内視鏡洗浄消毒器の供給に併せて本件製剤を自己から購入させているという申立人の行為は、不公正な取引方法(昭和57年公正取引員会告示第15号)10項に該当し、独禁法19条に違反するとして、独禁法20条1項に基づき、申立人に対し、別紙2のとおり、①上記行為を取りやめること、②上記①に基づいて採った措置を、本件後発製剤の製造販売業者等に周知すること、③今後、医療機関に対し、フタラール製剤を用いる内視鏡洗浄消毒器の供給に併せて自社の販売するフタラール製剤を購入させる行為を行わないことなどを命ずる排除措置命令(本件命令)を発令した。本件命令に係る排除措置命令書勝本は、同月29日、申立人に送達された。(甲2、審尋の全趣旨)
⑸ 本件申立てに至る経緯
ア 申立人は、本件命令に先立つ令和6年5月13日、同内容の排除措置命令の差止めの訴えを提起する(東京地方裁判所令和6年(行ウ)第5002号事件)とともに、仮の差止めの申立てをした(同裁判所令和6年(行ク)第5008号事件)。
東京地方裁判所は、令和6年5月27日、上記仮の差止めの申立てを却下する決定をし、申立人がこれに対し即時抗告をしたところ(東京高等裁判所令和6年(行ス)第42号事件)、東京高等裁判所は、同年6月24日、同抗告を棄却する決定をし、これが確定した。
また、上記差止めの訴えについては、訴訟係属中に本件命令が発令されたことを受けて、申立人は、訴えを取り下げた。(以上につき、甲1、審尋の全趣旨、顕著な事実)
イ 申立人は、令和7年1月16日、本件命令の取消しを求める訴訟(本案事件)を提起した上で、同月21日、本件申立てをした。(顕著な事実)
3 争点及び当事者の主張
本件の争点は、本件命令「により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」(行訴法25条2項)に当たるか否かである。
申立人の主張は、別紙3(令和7年1月21日付け執行停止申立書)及び別紙4(同年2月21日付け主張書面)記載のとおりであり、相手方の主張は、別紙5(同月4日付け意見書)記載のとおりである。
第3 当裁判所の判断
1 本件命令により生ずる重大な損害を避けるため執行停止をする緊急の必要があるか否かについて
⑴ 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(行訴法3条3項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下「処分」という。)については、その取消訴訟が提起されても、処分の効力、処分の執行又は手続の続行(以下「処分の執行等」という。)は妨げられないものとされており(行訴法25条1項。いわゆる執行不停止の原則)、裁判所は、処分の執行等により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるとして当該取消訴訟の原告から申立てがあった場合に限り、その処分の執行等の全部又は一部の停止(以下「執行停止」という。)をすることができる(同条2項本文)。そして、重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たっては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとされ(同条3項)、他方、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、執行停止をすることができない(同条4項)。
これらの執行停止の要件に関する規定の趣旨に照らすと、行訴法25条2項本文にいう「重大な損害を避けるため緊急の必要がある」か否かについては、処分の執行等により維持される行政目的の達成の必要性を踏まえた処分の内容及び性質と、これによって申立人が被ることとなる損害の性質及び程度とを、損害の回復の困難の程度を考慮した上で比較衡量し、処分の執行等による行政目的の達成の必要性を一時的に犠牲にしてもなおこれを停止して申立人を救済しなければならない緊急の必要性があるか否かという観点から検討すべきである。
そして、処分の執行等によって申立人が被ることとなる損害が経済的損失である場合には、経済的損失は、基本的には事後の金銭賠償による塡補が可能であることに鑑みれば、経済的損失が発生するおそれを理由として、上記緊急の必要性があるといえるためには、当該経済的損失の発生につき事後の金銭賠償によってはその回復が困難又は不相当であると認められるような事情が存することが必要であるというべきである。
このような観点から、以下、申立人の主張について検討する。
⑵ 申立人は、本件命令の本来的効果(本件命令が本件仕様に係る行為の取りやめを求めていること)との関係では、仮に申立人が本件命令に従って本件仕様に係る行為を取りやめると、■■■から、本件命令により重大な損害が生ずる旨を主張し、申立人の代表社員の職務執行者(以下、単に「職務執行者」という。)の令和7年1月15日付け陳述書(甲3〔13~15頁〕)には同旨の供述記載部分がある。また、申立代理人の令和6年5月7日付け報告書(甲17)には、■■■。さらに、申立人が提出する経済学者の令和7年1月15日付け意見書(甲4〔38~40頁〕)には、■■■
しかしながら、本件命令に基づく措置を申立人が講じたとしても、■■■になる旨の職務執行者の陳述書(甲3)の供述記載部分を裏付ける的確な疎明資料はない。■■■。本件製剤は平成13年11月頃に販売が開始されたものであり(前提事実⑵ウ)、長年の販売実績・使用実績があることや、内視鏡洗浄消毒器と消毒剤とを同じ供給者から購入することを重視する医療機関も一定数存在すると予想されることからすれば、本件製剤を引き続き選択する医療機関もそれなりに存在するものと考えられる。また、■■■であるところ、過大な想定である疑いが否定できない。■■■結局のところ定かではないといわざるを得ない。
加えて、前提事実⑶及び審尋の全趣旨によれば、本件製剤については、≪A≫のグループ企業が保有していたフタラール製剤に関する特許権が平成25年4月頃に消滅し、平成26年10月頃からは既に本件後発製剤の製造販売が開始されていたこと、旧型内視鏡洗浄消毒器を購入した医療機関の中には、実際に、当該内視鏡洗浄消毒器の消毒剤として、本件後発製剤を使用するものが存在していたこと、その後、≪A≫は、本件仕様を採った新型(旧型内視鏡洗浄消毒器の後継機種)である本件内視鏡洗浄消毒器の販売を平成29年3月頃から開始したこと、本件後発製剤の販売が開始された平成26年10月頃から本件内視鏡洗浄消毒器の販売が開始された平成29年3月頃までの間において、本件後発製剤が流通する中でも、本件製剤及びこれを用いる旧型内視鏡洗浄消毒器の販売は継続して行われていたことが一応認められる。本件後発製剤の販売が開始された平成26年10月頃から本件内視鏡洗浄消毒器の販売が開始された平成29年3月頃までの間に、■■■この点に関し、申立人は、❶平成26~29年頃は、本件後発製剤は、開発されたばかりであり、その普及率は低く、医療機関においてもよく知られていなかった、❷申立人の市場における地位とその状況は、10年も前と現在とでは大きく異なっていると主張する。しかし、❶については、本件後発製剤の販売業者は、自社のフタラール製剤について医療機関に対し相応の営業活動を行ったものと考えられるし、❷については、平成26~29年頃と現在とで市場の状況が変化している可能性は否定できないとしても、何がどう変わっているかが明らかではない。
以上を総合すると、申立人が本件命令に従った場合に、事後の金銭賠償によってはその回復が困難又は不相当といえるほどの経済的損失が生ずるとの疎明があるとはいえない。
⑶ 申立人は、本件命令による事実上の影響に関して、本件命令が発令され、これが公表されたことにより、申立人は現に、■■■旨主張し、これらの損害及び将来生ずる同種の損害について、本件命令により生ずる重大な損害であり、これを避けるため執行停止をする緊急の必要がある旨を主張する。
しかしながら、申立人の上記主張は、申立人が独禁法違反行為をした旨の相手方の認定判断を含む本件命令が発せられ、それが報道等により広く知られたことにより生ずる損害をいうものを解されるところ、本件命令の取消判決がされて、相手方の上記認定判断が誤りである旨の裁判所の判断が示された場合は格別、「本案について理由がないとみえるとき」(行訴法25条4項)に当たらないとの要件判断を含む執行停止決定がされたからといって、上記損害がどの程度解消、防止されるかは定かではない。
また、上記①~④について、本件命令により生ずる重大な損害といえるかについては、それぞれ、次のとおりの問題がある。
ア 上記①について
申立人は、本件命令により、申立人の■■■旨の供述記載部分がある。
しかしながら、比較対象とされている成長見込みについて、■■■や、本件命令が原因で販売台数が減少する損害が生じたことを裏付けるに足りる疎明資料はない。むしろ、疎明資料(乙1)及び審尋の全趣旨によれば、■■■。この点について、申立人は、■■■は相手方の調査に関する報道に起因するものであると主張するが、これを認めるに足りる疎明資料はないし、■■■について令和6年7月の本件命令によるものということはできない。
イ 上記②について
申立人は、■■■を主張し、職務執行者の陳述書(甲3〔8~10頁〕)にも同旨の供述記載部分がある。
しかしながら、申立人の主張によっても、本件命令を令和6年7月26日に受けて以降■■■、申立人の■■■
また、申立人は、その他の損害が発生した例として、本件命令の発令予定を知った■■■を主張し、職務執行者の陳述書(甲3〔10~11頁〕)にも同旨の供述記載部分があるが、前者の例については、本件命令の発令予定を知ったことと■■■との因果関係が不明である。そして、いずれの例も本件命令の発令前の出来事であるところ、本件命令の発令後に、申立人が、独禁法違反に係る相手方の判断を争っている旨を意を尽くして説明しても、相手方による当該判断がされたことを理由に■■■がどの程度あるかに関しては明らかではない。
ウ 上記③について
申立人は、本件命令は、本件命令に関連しない他の製品(滅菌製品)の取引にも損害を与えていると主張する。
しかしながら、申立人が■■■事実のみをもって、滅菌事業についても損害が生じているとは認められない。
エ 上記④について
申立人は、■■■と主張する。
しかしながら、職務執行者の陳述書(甲3〔12頁〕)に、■■■本件命令の取消訴訟の結論が出る前に■■■可能性が高いとまでは認められない。
また、申立人が挙げる、■■■事後の金銭賠償によってはその回復が困難又は不相当であると認められる経済的損失であるとは認められない。
オ 小括
以上を総合すると、本件命令による事実上の影響に関して申立人が主張するところをもって、事後の金銭賠償によってはその回復が困難又は不相当といえるほどの経済的損失が生ずるとの疎明がされたとはいえないし、これを避けるために執行停止決定をする緊急の必要があるとはいい難い。
⑷ なお、申立人は、令和6年7月に本件命令を受けた後、その約半年後の令和7年1月に至って、ようやく本件命令の取消しの訴えの提起及び本件申立てをしたものである。本件については、仮の差止めの申立て及び差止訴訟の提起が先行していたことをも考慮すると、申立人のこのような対応は、本件命令により生ずる重大な損害を避けるため「緊急の必要」があるのかについて疑問を抱かせるものといわざるを得ない(申立人は、行訴法14条1項が、本件命令があったことを知った日から6か月間取消訴訟を提起する権利を保障していることを指摘するが、それは、執行停止の申立てをしない場合も含めて、訴えを適法に提起し得る期間が6か月あるということにすぎず、本件のような場合に、迅速に執行停止の申立てを法的措置として採らなかったことが、緊急性に疑問を抱かせる一事情となることは否定し難い。)。
⑸ 以上説示したところを総合すると、前記⑵、⑶の申立人の主張その他申立人が本件において主張するところを併せても、処分の執行等による行政目的の達成の必要性を一時的に犠牲にしてもなおこれを停止して申立人を救済しなければならない緊急の必要性があるとはいえず、本件命令により生ずる重大な損害を避けるため執行停止をする緊急の必要がある(行訴法25条2項本文)とは認められない。
2 結論
よって、本件申立ては、その余の点について判断するまでもなく理由がないから、これを却下することとし、主文のとおり決定する。

令和7年3月24日

裁判長裁判官  笹本哲朗     
裁判官     泉地賢治     
裁判官     伊藤圭子

(別紙2)
本件命令の主文の内容

1 申立人は、本件内視鏡洗浄消毒器にバーコードリーダーを取り付けるとともにディスオーパの容器に本件二次元コードを貼付し、当該バーコードリーダーによって本件二次元コードを読み取らなければ本件内視鏡洗浄消毒器の洗浄消毒機能が作動しないようにすることにより、本件内視鏡洗浄消毒器を使用している医療機関に対し、本件内視鏡洗浄消毒器の供給に併せてディスオーパを購入させている行為を取りやめなければならない。
2 申立人は、次の事項を業務執行の決定機関において確認しなければならない。
⑴ 前項の行為を取りやめる旨
⑵ 今後、医療機関に対し、フタラール製剤を用いる内視鏡洗浄消毒器の供給に併せて自社の販売するフタラール製剤を購入させる行為を行わない旨
3 申立人は、前2項に基づいて採った措置を、≪B≫、≪F≫株式会社、≪G≫株式会社、≪H≫株式会社及び≪I≫株式会社及び自社の販売代理店に通知するともに、本件内視鏡洗浄消毒器を購入した医療機関に周知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知、周知及び周知徹底の方法については、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
4 申立人は、今後、医療機関に対し、フタラール製剤を用いる内視鏡洗浄消毒器の供給に併せて自社の販売するフタラール製剤を購入させる行為を行ってはならない。
5 申立人は、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。この措置の内容については、前項で命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず、かつ、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
⑴ フタラ--ル製剤を用いる内視鏡洗浄消毒器及びフタラール製剤の販売事業に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成及び従業員に対する周知徹底
⑵ フタラール製剤を用いる内視鏡洗浄消毒器及びフタラール製剤の販売事業に関する独占禁止法の遵守についての、自社の社員である法人の職務執行者(自社の社員が自然人である場合は当該社員)及び従業員に対する定期的な研修並びに第三者による定期的な監査
6 申立人は、第1項ないし第3項及び前項に基づいて探った措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。

(別紙3以降は省略)

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