公正取引委員会審決等データベース

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機械式駐車装置メーカーらに対する件

独禁法3条後段

令和07年(措)第3号

排除措置命令

東京都港区西新橋一丁目18番17号
日精株式会社
同代表者 代表取締役 《 氏  名 》

東京都品川区西品川一丁目1番1号
住友重機械搬送システム株式会社
同代表者 代表取締役 《 氏  名 》

東京都世田谷区上馬四丁目2番5号
フジパスク株式会社
同代表者 代表取締役 《 氏  名 》

公正取引委員会は、上記の者らに対し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第7条第2項の規定に基づき、次のとおり命令する。
なお、主文、理由、別紙1及び別紙2中の用語のうち、別紙2「用語」欄に掲げるものの定義は、別紙2「定義」欄に記載のとおりである。

主    文
1 日精株式会社(以下「日精」という。)、住友重機械搬送システム株式会社(以下「住友重機械搬送システム」という。)及びフジパスク株式会社(以下「フジパスク」という。)の3社(以下「3社」という。)は、それぞれ、次の事項を、取締役会において決議(フジパスクにあっては、取締役による決定)をしなければならない。
(1) 別紙1記載の水平循環方式分離式の機械式駐車装置の設置工事(以下「特定地下式PS設置工事」という。)について、3社及びIHI運搬機械株式会社(以下「IHI運搬機械」という。)の4社(以下「4社」という。)が、遅くとも平成29年7月13日以降共同して行っていた、供給すべき者(以下「供給予定者」という。)を決定し、供給予定者が供給できるようにする行為を既に取りやめていることを確認すること。
(2) 今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、見積り合わせの方法により発注される水平循環方式分離式の機械式駐車装置の設置工事について、供給予定者を決定せず、自主的に供給すること。
2 3社は、それぞれ、前項に基づいて採った措置を、自社を除く2社及び別表記載の事業者(以下「建設業者」という。)に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
3 3社は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、見積り合わせの方法により発注される水平循環方式分離式の機械式駐車装置の設置工事について、供給予定者を決定してはならない。
4 3社のうち日精及び住友重機械搬送システムは次の(1)及び(2)の事項を行うために必要な措置を、フジパスクは次の(1)の事項を行うために必要な措置を、それぞれ、講じなければならない。この措置の内容については、前項で命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず、かつ、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
(1) 自社の工事の供給に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成並びに自社の役員及び従業員に対する周知徹底(日精及び住友重機械搬送システムにあっては、当該行動指針の自社の役員及び従業員に対する周知徹底)
(2) 自社の工事の供給に関する独占禁止法の遵守についての、水平循環方式分離式の機械式駐車装置の設置工事の営業に関わる役員及び従業員に対する定期的な研修の実施並びに法務担当者等による定期的な監査
5 3社は、それぞれ、第1項、第2項及び前項に基づいて採った措置を、速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。

理    由
第1 事実
1 関連事実
(1) 名宛人等の概要
ア 日精及び住友重機械搬送システムは、それぞれ、肩書地に本店を置き、水平循環方式分離式の機械式駐車装置を製造し、建設業法(昭和24年法律第100号)の規定に基づき、国土交通大臣から建設業の許可を受け、自社が製造した水平循環方式分離式の機械式駐車装置の設置工事を請け負う者である。
イ フジパスクは、肩書地に本店を置き、住友重機械搬送システムの代理店として、住友重機械搬送システムが製造した水平循環方式分離式の機械式駐車装置に係る営業活動を行うとともに、建設業法の規定に基づき、国土交通大臣から建設業の許可を受け、当該機械式駐車装置の設置工事を請け負う者である。
ウ 名宛人以外のIHI運搬機械は、東京都中央区明石町8番1号に本店を置き、水平循環方式分離式の機械式駐車装置を製造し、建設業法の規定に基づき、国土交通大臣から建設業の許可を受け、自社が製造した水平循環方式分離式の機械式駐車装置の設置工事を請け負う者である。
(2) 特定地下式PS設置工事の発注方法等
ア 建設業者は、それぞれ、次の方法等により、機械式駐車装置メーカー(水平循環方式分離式の機械式駐車装置を製造する者をいう。以下同じ。)又はそれらの代理店に対し、特定地下式PS設置工事を発注していた。
(ア) 水平循環方式分離式の機械式駐車装置を設置する建築物の計画に当たり、1社若しくは複数の機械式駐車装置メーカー又はそれらの代理店に対し、機械式駐車装置部分の簡易な図面の作成、特定地下式PS設置工事の概算による見積価格の提示等を依頼する。
(イ) 前記(ア)で依頼した図面の作成に係る協力状況、提示された見積価格等を勘案し、特定の機械式駐車装置メーカーを選定し、当該機械式駐車装置メーカーに対し、直接又はその代理店を通じて確認申請図の作成を依頼する。
(ウ) 前記(イ)の依頼により作成された確認申請図を見積依頼に添付し(見積依頼に採用された確認申請図を作成した者を、以下「確認申請図採用メーカー」という。)、当該確認申請図採用メーカーを含む複数の機械式駐車装置メーカー又はそれらの代理店に対し、当該確認申請図に基づき特定地下式PS設置工事の見積価格の提示を依頼する。
(エ) 原則として、前記(ウ)の依頼により見積価格を提示した者のうち最も低い見積価格を提示した者との間で更に価格交渉を行った上で、その者に特定地下式PS設置工事を発注する。
イ フジパスクは、建設業者が発注する特定地下式PS設置工事を自ら請け負った場合には、住友重機械搬送システムに対し当該工事を下請に出していた。
2 合意及び実施方法
4社は、かねてから、水平循環方式分離式の機械式駐車装置の設置工事について情報交換を行い、当該工事の供給に関する調整を行ってきたところ、遅くとも平成29年7月13日以降、特定地下式PS設置工事について、供給価格の低落防止等を図るため
(1)ア 日精、住友重機械搬送システム及びIHI運搬機械(以下「メーカー3社」という。)の中から供給予定者を決定する
イ 供給予定者以外の者は、供給予定者が供給できるように協力する
旨の合意の下に
(2)ア 建設業者から、前記1(2)ア(ウ)の確認申請図に基づく特定地下式PS設置工事の見積依頼があった場合には、それぞれ、当該確認申請図の記載内容から、確認申請図採用メーカーがメーカー3社のうちいずれの者であるかを確認した上で互いに連絡を取り合い、確認申請図採用メーカー以外の者から供給意欲が示されない限り、同確認申請図採用メーカーを供給予定者とする
イ(ア) 供給予定者が提示する見積価格は、供給予定者が定め、供給予定者以外の者は、供給予定者から連絡のあった価格以上の見積価格を提示する
(イ) 住友重機械搬送システムが供給予定者となりフジパスクの下請として特定地下式PS設置工事を請け負う予定の場合にあっては、フジパスクが提示する見積価格は、住友重機械搬送システムがフジパスクに提示する価格を踏まえてフジパスクが定め、メーカー3社のうち供給予定者以外の者は、フジパスクから連絡のあった価格以上の見積価格を提示する
ウ 前記ア及びイについて、住友重機械搬送システムは、フジパスクを通じて日精及びIHI運搬機械と連絡を行う
などにより、供給予定者を決定し、供給予定者が供給できるようにしていた。
3 実施状況
4社は、前記2により、特定地下式PS設置工事のうち大部分を供給していた。
 4 前記2の行為の取りやめ
(1) IHI運搬機械は、令和4年6月14日、日精及びフジパスクに対して、今後、前記2(1)の合意に基づく行為を行わない旨表明し、同日以降、前記2(1)の合意に基づき供給予定者を決定し、供給予定者が供給できるようにする行為を取りやめている。
(2) 令和5年9月12日、本件について、公正取引委員会が独占禁止法第47条第1項第4号の規定に基づく立入検査を行ったところ、同日以降、前記2(1)の合意に基づき供給予定者を決定し、供給予定者が供給できるようにする行為は取りやめられている。
第2 法令の適用
前記事実によれば、4社は、共同して、特定地下式PS設置工事について、供給予定者を決定し、供給予定者が供給できるようにすることにより、公共の利益に反して、特定地下式PS設置工事の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって、この行為は、独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し、独占禁止法第3条の規定に違反するものである。
また、前記の違反行為は既になくなっているが、3社については、いずれも、独占禁止法第7条第2項第1号に該当する者であり、違反行為が自主的に取りやめられたものではないこと等の諸事情を総合的に勘案すれば、特に排除措置を命ずる必要があると認められる。
よって、3社に対し、独占禁止法第7条第2項の規定に基づき、主文のとおり命令する。

令和7年3月24日

委員長 古  谷  一  之

委 員 三  村  晶  子

委 員 青  木  玲  子

委 員 𠮷  田  安  志

委 員 泉  水  文  雄

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