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独禁法3条後段
令和07年(措)第4号
兵庫県宝塚市新明和町1番1号
新明和工業株式会社
同代表者 代表取締役 《 氏 名 》
東京都千代田区神田鍛冶町三丁目6番地3
日本コンベヤ株式会社
同代表者 代表取締役 《 氏 名 》
公正取引委員会は、上記の者らに対し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第7条第2項の規定に基づき、次のとおり命令する。
なお、主文、理由、別紙1及び別紙2中の用語のうち、別紙2「用語」欄に掲げるものの定義は、別紙2「定義」欄に記載のとおりである。
主 文
1 新明和工業株式会社(以下「新明和工業」という。)及び日本コンベヤ株式会社(以下「日本コンベヤ」という。)の2社(以下「2社」という。)は、それぞれ、次の事項を、取締役会において決議しなければならない。
(1) 別紙1記載のエレベーター方式パレット型の機械式駐車装置の設置工事(以下「特定エレベーター方式PS設置工事」という。)について、2社、IHI運搬機械株式会社(以下「IHI運搬機械」という。)及びエヌエイチパーキングシステムズ株式会社(以下「エヌエイチパーキングシステムズ」という。)の4社(以下「4社」という。)が、遅くとも平成29年6月29日以降(エヌエイチパーキングシステムズにあっては平成30年6月30日までの間、日本コンベヤにあっては同年7月1日以降)共同して行っていた、供給すべき者(以下「供給予定者」という。)を決定し、供給予定者が供給できるようにする行為を既に取りやめていることを確認すること。
(2) 今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、見積り合わせの方法により発注されるエレベーター方式パレット型の機械式駐車装置の設置工事について、供給予定者を決定せず、自主的に供給すること。
2 2社は、それぞれ、前項に基づいて採った措置を、相互に通知するとともに、別表記載の事業者(以下「建設業者」という。)に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
3 2社は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、見積り合わせの方法により発注されるエレベーター方式パレット型の機械式駐車装置の設置工事について、供給予定者を決定してはならない。
4 2社は、それぞれ、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。この措置の内容については、前項で命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず、かつ、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
(1) 自社の工事の供給に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成並びに自社の役員及び従業員に対する周知徹底(新明和工業にあっては、当該行動指針の自社の役員及び従業員に対する周知徹底)
(2) 自社の工事の供給に関する独占禁止法の遵守についての、エレベーター方式パレット型の機械式駐車装置の設置工事の営業に関わる役員及び従業員に対する定期的な研修の実施並びに法務担当者等による定期的な監査
5 2社は、それぞれ、第1項、第2項及び前項に基づいて採った措置を、速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。
理 由
第1 事実
1 関連事実
(1) 名宛人等の概要
ア 2社は、それぞれ、肩書地に本店を置き、エレベーター方式パレット型の機械式駐車装置を製造し、建設業法(昭和24年法律第100号)の規定に基づき、国土交通大臣から建設業の許可を受け、自社が製造したエレベーター方式パレット型の機械式駐車装置の設置工事を請け負う者である。
イ 名宛人以外のIHI運搬機械は、東京都中央区明石町8番1号に本店を置き、エレベーター方式パレット型の機械式駐車装置を製造し、建設業法の規定に基づき、国土交通大臣から建設業の許可を受け、自社が製造したエレベーター方式パレット型の機械式駐車装置の設置工事を請け負う者である。
ウ 名宛人以外のエヌエイチパーキングシステムズは、東京都千代田区鍛冶町一丁目7番7号に本店を置き、エレベーター方式パレット型の機械式駐車装置を製造し、建設業法の規定に基づき、国土交通大臣から建設業の許可を受け、自社が製造したエレベーター方式パレット型の機械式駐車装置の設置工事を請け負っていた者であるが、平成30年7月1日、日本コンベヤに吸収合併されたことにより消滅した。
(2) 特定エレベーター方式PS設置工事の発注方法
建設業者は、それぞれ、次の方法等により、機械式駐車装置メーカー(エレベーター方式パレット型の機械式駐車装置を製造する者をいう。以下同じ。)又はそれらの代理店に対し、特定エレベーター方式PS設置工事を発注していた。
ア エレベーター方式パレット型の機械式駐車装置を設置する建築物の計画に当たり、1社若しくは複数の機械式駐車装置メーカー又はそれらの代理店に対し、機械式駐車装置部分の簡易な図面の作成、特定エレベーター方式PS設置工事の概算による見積価格の提示等を依頼する。
イ 前記アで依頼した図面の作成に係る協力状況、提示された見積価格等を勘案し、特定の機械式駐車装置メーカーを選定し、当該機械式駐車装置メーカーに対し、直接又はその代理店を通じて確認申請図の作成を依頼する。
ウ 前記イの依頼により作成された確認申請図を見積依頼に添付し(見積依頼に採用された確認申請図を作成した者を、以下「確認申請図採用メーカー」という。)、当該確認申請図採用メーカーを含む複数の機械式駐車装置メーカー又はそれらの代理店に対し、当該確認申請図に基づき特定エレベーター方式PS設置工事の見積価格の提示を依頼する。
エ 原則として、前記ウの依頼により見積価格を提示した者のうち最も低い見積価格を提示した者との間で更に価格交渉を行った上で、その者に特定エレベーター方式PS設置工事を発注する。
2 合意及び実施方法
新明和工業、IHI運搬機械及びエヌエイチパーキングシステムズの3社は、かねてから、エレベーター方式パレット型の機械式駐車装置の設置工事について情報交換を行い、当該工事の供給に関する調整を行ってきたところ、4社は、遅くとも平成29年6月29日以降(エヌエイチパーキングシステムズにあっては平成30年6月30日までの間、日本コンベヤにあっては同年7月1日以降)、特定エレベーター方式PS設置工事について、供給価格の低落防止等を図るため
(1)ア 供給予定者を決定する
イ 供給予定者以外の者は、供給予定者が供給できるように協力する
旨の合意の下に
(2)ア 建設業者から前記1(2)ウの確認申請図に基づく特定エレベーター方式PS設置工事の見積依頼があった場合には、それぞれ、当該確認申請図の記載内容から、確認申請図採用メーカーが4社のうちいずれの者であるかを確認した上で互いに連絡を取り合い、確認申請図採用メーカー以外の者から供給意欲が示されない限り、同確認申請図採用メーカーを供給予定者とする
イ 供給予定者が提示する見積価格は、供給予定者が定め、供給予定者以外の者は、供給予定者から連絡のあった価格以上の見積価格を提示する
などにより、供給予定者を決定し、供給予定者が供給できるようにしていた。
3 実施状況
4社は、前記2により、特定エレベーター方式PS設置工事のうち過半を供給していた。
4 前記2の行為の取りやめ
(1) エヌエイチパーキングシステムズは、前記1(1)ウのとおり、平成30年7月1日、日本コンベヤに吸収合併されたことにより消滅したため、同日以降、前記2(1)の合意に基づき供給予定者を決定し、供給予定者が供給できるようにする行為を行っていない。
(2) IHI運搬機械は、令和4年6月14日、2社に対して、今後、前記2(1)の合意に基づく行為を行わない旨表明し、同日以降、前記2(1)の合意に基づき供給予定者を決定し、供給予定者が供給できるようにする行為を取りやめている。
(3) 前記(2)を契機として、2社は、令和4年6月14日以降、前記2(1)の合意に基づき供給予定者を決定し、供給予定者が供給できるようにする行為を取りやめている。
第2 法令の適用
前記事実によれば、4社は、共同して、特定エレベーター方式PS設置工事について、供給予定者を決定し、供給予定者が供給できるようにすることにより、公共の利益に反して、特定エレベーター方式PS設置工事の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって、この行為は、独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し、独占禁止法第3条の規定に違反するものである。
また、前記の違反行為は既になくなっているが、2社については、いずれも、独占禁止法第7条第2項第1号に該当する者であり、違反行為が自主的に取りやめられたものではないこと等の諸事情を総合的に勘案すれば、特に排除措置を命ずる必要があると認められる。
よって、2社に対し、独占禁止法第7条第2項の規定に基づき、主文のとおり命令する。
令和7年3月24日
委員長 古 谷 一 之
委 員 三 村 晶 子
委 員 青 木 玲 子
委 員 𠮷 田 安 志
委 員 泉 水 文 雄