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(株)エディオンによる審決取消請求事件

独禁法19条(2条9項5号)、独禁法20条の6
東京高等裁判所

令和01年(行ケ)第54号

判決

令和7年9月12日

別紙当事者目録のとおり

主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
被告が、公正取引委員会平成24年(判)第40号及び第41号審判事件について、令和元年10月2日付けで原告に対してした審決(以下「本件審決」という。)を取り消す。
第2 事案の概要(以下、略語は、新たに定義しない限り本件審決の例による。)
1 被告は、平成24年2月16日、原告に対し、原告が平成20年9月6日から平成22年11月29日までの間(本件対象期間)に原告に商品を納入する本件審決添付の別紙審決案(以下「本件審決案」という。)別表1の各事業者(127社)に従業員等を派遣させた行為が、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成25年法律第100号による改正前のもの。独占禁止法)2条9項5号(ただし、平成21年法律第51号(平成21年改正法)の施行日である平成22年1月1日より前においては、平成21年改正法による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成21年改正前の独占禁止法)2条9項に基づき被告が指定する不公正な取引方法である平成21年公正取引委員会告示第18号による改正前の不公正な取引方法(昭和57年公正取引委員会告示第15号(旧一般指定)14項))に該当し、独占禁止法19条の規定に違反するとして、排除措置命令(平成24年(措)第6号)及び課徴金納付命令(平成24年(納)第10号)をした。
2 原告が、上記1の排除措置命令及び課徴金納付命令の取消しを求める審判請求をしたところ、被告は、令和元年10月2日、原告が本件対象期間に127社のうち本件審決案別表1の「番号」欄の3、4、8、13から17まで、23、24、36、40から42まで、44、47、50、59、60、72、74、76、78、85、91、92、95、98、99、104、111、115、116、124及び125の各事業者(35社)以外の各事業者(92社又は対象納入業者)に従業員等を派遣させた行為は、独占禁止法2条9項5号(ただし、平成22年1月1日より前においては旧一般指定14項)に該当し、同法19条の規定に違反するとして、上記の排除措置命令を本件審決案別紙2のとおり変更するとともに(以下、変更後の排除措置命令を「本件排除措置命令」といい、本件排除措置命令において認定された違反行為を「本件違反行為」という。)、上記の課徴金納付命令のうち30億3228万円を超えて課徴金の納付を命じた部分を取り消し(以下、一部取消後の課徴金納付命令を「本件課徴金納付命令」という。)、原告のその余の審判請求をいずれも棄却する旨の本件審決をした。
3 本件は、原告が、被告に対し、本件審決の取消しを求める事案である。
第3 前提となる事実
以下の事実は、当事者間に争いがないか、本文中に掲記の証拠(以下、特に記す以外は、書証の枝番号は省略する。)により容易に認めることができる。
1 原告の概要
⑴ 設立と吸収合併等
ア 原告は、平成14年3月29日、主として中国・四国・九州地方において「デオデオ」のストアブランドで家電製品等の小売業を営んでいた株式会社デオデオ(平成21年10月1日商号変更後の商号は株式会社エディオンWEST。以下商号変更の前後を通じて「株式会社デオデオ」という。)及び主として中部地方において「エイデン」のストアブランドで家電製品等の小売業を営んでいた株式会社エイデン(同年10月1日商号変更後の商号は株式会社エディオンEAST。以下商号変更の前後を通じて「株式会社エイデン」という。)を完全子会社とする持株会社として設立された株式会社である。(査1~4、22~24)
イ 原告は、①平成17年4月1日、「ミドリ」のストアブランドで家電製品等の小売業を営む株式会社ミドリ電化を完全子会社とし、②平成19年3月31日、「イシマル」のストアブランドで家電製品等の小売業を営む石丸電気株式会社を連結子会社とし、③平成19年6月15日、「100満ボル卜」のストアブランドで家電製品等の小売業を営む株式会社サンキュー(以下「サンキュー」という。)を子会社とし、④同年10月19日、「エディオン」のストアブランドで家電製品等の小売業を営む株式会社東京エディオンを全額出資して設立した(株式会社東京エディオンは、本件対象期間中の平成20年10月1日、石丸電気株式会社を完全子会社とした。)。また、株式会社エイデンは、本件対象期間中の平成21年2月1日に石丸電気株式会社及び株式会社東京エディオンを吸収合併し、株式会社デオデオは、本件対象期間中の同年10月1日、株式会社ミドリ電化を吸収合併した。(査2~4、18~24)
ウ 原告は、本件対象期間中の平成22年10月1日、株式会社デオデオ及び株式会社エイデンを吸収合併し(以下「本件合併」という。)、同日以降、自ら家電製品等の小売業を営んでいる。(査1~4、24)
⑵ 原告による管理運営等
原告は、本件合併前に、株式会社デオデオ、株式会社エイデン、株式会社ミドリ電化、石丸電気株式会社及び株式会社東京エディオン(以下、上記の5社を「原告事業子会社」という。)の経営を管理することを目的として、原告事業子会社と経営指導委託契約又は業務委託契約を順次締結して原告事業子会社の商品調達に関する業務、商品政策等に関する業務、仕入・在庫管理に関する業務を行い、本件対象期間の始期には、原告事業子会社(本件合併後は原告)又はそのフランチャイズ・チェーンに加盟する事業者が運営する店舗(以下「原告運営店舗」という。)において販売する全ての商品について、上記契約に基づき、これらの商品を原告に直接販売して納入する事業者(納入業者)から自ら一括して仕入れ、仕入れた商品を原告運営店舗に供給していた。(査5~16、34、35)
⑶ 原告運営店舗の数
原告運営店舗は、西日本を中心とする関東以西に広範囲にわたって展開され、店舗数は、平成21年3月末日時点は1078店舗、平成22年3月末日時点は1101店舗、平成23年3月末日時点は1130店舗と年々増加しており、その間、家電製品等の小売業を営む者の中で全国第2位であった。
⑷ 原告の従業員数
原告の従業員数(連結子会社を含む。)は、平成20年3月期は1万0534名、平成21年3月期は1万0664名、平成22年3月期は1万0640名、平成23年3月期は1万0022名であった。(査27)
⑸ 原告の売上高
原告の連結売上高は、平成21年3月期は約8030億0400万円、平成22年3月期は約8200億3000万円、平成23年3月期は約9010億1000万円であり(上記3年間の平均年間連結売上高は約8413億4800万円)、家電製品等の小売業を営む家電量販店の中でいずれも全国第2位であった。(査27)
⑹ 原告の資本金の額
本件対象期間における原告の資本金の額は、101億7400万円である。(査27)
2 原告と納入業者との取引
⑴ 商品の仕入れ
原告による納入業者からの商品の仕入れは、そのほぼ全てが、買取り(売主が買主に商品を引き渡すのと同時に当該商品の所有権が売主から買主に移転し、その後は買主が当該商品の保管責任を負う取引形態)の方法によるものであった。また、原告は、商品の仕入れについて、定数制による自動発注制度を多く採用していた。同制度は、原告運営店舗の店頭で商品が販売され、あらかじめ原告が設定していた在庫保有台数の定数を下回ったときに、自動的に納入業者に商品を発注する仕組みであり、この仕組みの下では、店頭で商品が販売されても、定数を下回らない限り納入業者に商品を発注することはなかった。(査580)
⑵ マル特経費負担と称する割戻金
原告と納入業者との間の取引では、納入業者から原告に対し、マル特経費負担と称する割戻金が支払われていた。マル特経費負担とは、原告と納入業者との間で締結されている商品取引基本契約書の仕入価格の約定等を定める条項に規定された「機種・品番ごとにあらかじめ単価を決め難い割戻し金」であり、双方で販売促進策等について商談した上で、割戻金の金額の算定対象となる期間、機種・品番、割戻金単価、実績(仕入実績又は販売実績のいずれか)等についてあらかじめ合意し、合意した条件により納入業者が原告指定書式に基づく通知書により原告に割戻金を支払うものである。(審264、265)
⑶ 店作り等の契約書上の定め
原告と納入業者との間の取引基本契約書等の原告による納入業者からの商品の納入契約の内容を定めた契約書等において、納入業者が商品の搬出及び店作りを行うことは定められていなかった。
また、納入業者は、通常、物流センター(原告若しくは原告事業子会社又はこれらの者との間で物流業務基本契約を締結した事業者が運営し、原告運営店舗で販売する商品の保管並びに入荷及び出荷業務を行うための施設。以下同じ。)において商品を引き渡すこととされ、上記の契約書等において、納入業者が商品の搬入を行うことは定められていなかった。
⑷ 92社(対象納入業者)の概要
本件違反行為の相手方とされている92社の対象納入業者は、いずれも家電製品等の製造業者又は卸売業者であり、原告に家電製品等の商品を納入していた。(査26の1~127)
3 新規開店又は改装開店に向けた準備業務
⑴ 日程の決定等
原告及び原告事業子会社は、原告運営店舗の新規開店(新たに店舗を設置して、当該店舗の営業を開始すること。以下同じ。)又は全面改装による改装開店(既存の店舗について、一旦営業を取りやめた上で実施する売場の移動、売場面積の拡縮、設備の改修その他の改装の終了後に当該店舗の営業を再開すること。以下同じ。)を行う場合、プロジェクト会議と称する会議(プロジェクト会議)を開催し、当該店舗について閉店又は開店、処分セール、閉店セール又は開店セール、商品の搬出、商品の搬入、店作りといった、新規開店又は全面改装による改装開店を行うまでの業務の日程、内容、進捗状況等について確認又は検討し、決定していた。そして、原告の店舗支援部(店作り等に係る業務、具体的には、担当する商品(ネバーランドグループが担当する玩具、テレビゲーム等を除く。ネバーランドは、元々エイデンにおいてコンピューターゲームを取り扱う売場であり、その後、原告グループ店舗共通の玩具及びゲーム専用売場となったものである。)についての店作りスケジュールの立案・調整・決定、当該店舗の棚割りの作成・決定、当該店舗の店作りの助言・指導、店作りの実施日における店作り等の業務を専門的に行うため平成18年4月1日に設置され、平成21年4月1日に商品政策推進部に名称が変更され、平成22年4月1日に営業支援部店舗支援グループに名称が変更された部署。以下、名称変更の前後を通じて「店舗支援部」という。)は、プロジェクト会議の決定内容、営業部からの新規開店又は改装開店に係る情報連絡等を踏まえ、新規開店又は改装開店を行う店舗について、店舗ごとに、ストアブランド・店舗名、セールを行う期間、商品の搬出、商品の搬入又は店作りを行う期日又は期間、閉店日、開店日等を記載した文書(店作りスケジュール表)を作成し、原告及び原告事業子会社の関係者に送付していた。(査36~46)
⑵ 基本的な棚割りを記載した文書等の作成
原告運営店舗の新規開店又は全面改装による改装開店が行われる場合、基本的な棚割りを記載した文書に基づき、個別の店舗の新規開店又は改装開店の際に用いる棚割りを記載した表(棚割表)が作成されていたことがあった。棚割表は、新規開店又は改装開店を行う店舗の売場レイアウトや什器の配置に合わせて、当該店舗の立地条件等の特性も考慮するなどして作成され、そこには、製造業者名、型番、展示又は陳列位置、装飾内容等の商品の展示及び陳列並びに装飾に必要な情報が記載されていた(ただし、棚割表に展示、陳列又は装飾に必要な情報が全て含まれていたかについては争いがあり、また、《商品類型①》(《略》、《略》、《略》等)及び《商品類型②》については、そもそも棚割表自体が抽象的な商品類型(種類)によって商品の配置等を定めるにとどまっていたほか、《納入業者1社》の納入する超高級《商品類型③》については、棚割表は作成されていなかった。)。(査51、53~60、577の1~5、査589の1~3、査590、591)
なお、棚割表は、基本的に、原告の店舗支援部の担当者が作成し、マーチャンダイザー(MD。基本商品政策の策定、月次商品計画、店舗のアイテム別販売計画の策定、販売価格の決定といった商品計画の作成等の業務を担当する者。)や、フィールドマーチャンダイザー(FMD。遅くとも平成19年4月以降、原告の商品政策推進部(時期によっては原告事業子会社の商品政策推進部又は政策推進部)に所属し、ストアブランドごとに、また、商品ごと、かつ、地域ごとに、主として、MDが策定した店舗における商品の販売政策を店舗において実行するよう指導するとともに、店舗で実行した商品の販売政策の検討課題をMDに報告する業務を担当する者。)が確認することによって決定されていたが、MDやFMDが作成することもあった。(査17、43、51、53~60、62、63、82、91、93、100、113、115の1~4、査116、117、119、120)
⑶ 原告運営店舗の新規開店又は改装開店を行う店舗における準備作業
ア 新規開店の場合
新規開店を行う店舗では、開店日に先立ち、商品の搬入及び店作りが行われた。
新規開店を行う店舗における商品の搬入は、売場又は店舗の倉庫(バックヤードと称される場所を含む。以下同じ。)の所定の位置に什器が設置された後に行われるものであり、当該店舗の搬入口若しくは倉庫から原告が指定する売場まで、又は当該店舗の搬入口から原告が指定する当該店舗の倉庫まで商品を運搬し、設置された什器に並べるというものであった(売場に設置された什器に並べることが「商品の搬入」に含まれるのか、陳列行為として「店作り」に含まれるのかは争いがある。)。
また、新規開店を行う店舗における店作りは、売場まで運ばれた商品について、商品の搬入に続いて行われるものであり、当該店舗の売場まで搬入された商品を開梱し又は折り畳み式のコンテナから取り出し、(棚割表のある商品については)棚割表に基づき、商品の陳列、展示を行い、これらの作業を終えた後、又はこれらの作業に並行して、POP(販売促進を目的とした店内の広告物であるポップ広告。以下同じ。)等の販促物によって売場又は当該商品の装飾を行うというものであった。
イ 改装開店の場合
改装開店を行う店舗では、処分セール又は閉店セールの最終日の営業終了後に商品の搬出が行われ、改装工事の終了後に商品の搬入及び店作りが行われた。
改装開店を行う店舗における商品の搬出は、改装を行う売場にある商品を梱包材で梱包し又は折り畳み式のコンテナに収納するなどして、売場から当該店舗の倉庫等の原告が指定する場所まで当該商品を運搬するというものであった。
改装開店を行う店舗における商品の搬入は、店舗の改装工事が終了し、所定の位置に什器が設置された後に行われるものであり、店舗の倉庫に保管されていた商品又は改装の対象でない場所に保管されていた商品については当該保管場所から売場まで、それ以外の所定の場所に保管されていた商品及び新たに仕入れられた商品については店舗の搬入口から売場又は店舗の倉庫まで、当該商品を運搬し、設置された什器に並べるというものであった(新規開店の場合と同様、売場に設置された什器に並べることが「商品の搬入」に含まれるのか、陳列行為として「店作り」に含まれるのかは争いがある。)。
改装開店を行う店舗における店作りは、新規開店の場合と同様であった。
なお、改装の規模が小さい場合には、処分セール又は閉店セールの最終日の営業終了後に限らず、また、什器の設置等の作業を経ることなく上記の搬出、搬入及び店作りの作業が行われることがあった。
ウ 原告の担当者による作業
上記ア、イの各作業については、原告のMD又はFMDのほか、原告の店舗支援部の担当者が参加することもあった。
4 対象納入業者による従業員等の派遣
対象納入業者は、①原告又は原告事業子会社から商品の搬出日、商品の搬入日又は店作りの日の連絡を受け、当該搬出日等に原告運営店舗に店舗開設準備作業(新規開店又は改装開店を行う当該店舗の開店前の準備作業。以下同じ。)の一部である商品の搬出、商品の搬入又は店作りのために従業員等を派遣すること(本件従業員等派遣)が1回以上あったことに争いがないか、②被告からの報告命令(査26の128。以下「被告の報告命令」という。)における従業員等の派遣についての質問(設問3)に対し、原告、原告事業子会社又はサンキュー(以下、被告の報告命令における略語と同様に「エディオンら」という。)又はその取引先事業者から原告運営店舗の新規開店、改装、閉店、棚替え、棚卸し又はセール等に伴う店作り作業のために自社の従業員等の派遣を要請(新規開店等のスケジュールの連絡を含む。)され、これに応じたことがある旨の回答をした(《証拠略》)。ただし、被告において、原告又は(原告に吸収合併された会社である)原告事業子会社のみによる(すなわち、サンキューによる従業員等派遣の要請を含まない)従業員等派遣の要請の存在を実質的証拠により立証することができているか否かの点、原告について優越的地位が成立する否かの検討に際し、従業員等派遣の要請以外のサンキューに関する事実を、原告又は原告事業子会社に関する事実と同一視できるか否かの点、及び被告が原告又は原告事業子会社に関する事実をサンキューに関する事実と区別して立証することができているか否かの点について、いずれも原告は争っている。
5 原告による本件違反行為の終了
本件審決は、原告の役職員は、遅くとも平成22年11月30日には、納入業者に対して、今後、無償で店舗開設準備作業を依頼してはいけないことを明確に理解したといえるし、納入業者も、同日、原告が送付すると決定した通知書に基づき、遅くとも同年12月6日以降に商品の搬出、商品の搬入又は店作りが行われた際には、店舗開設準備作業の日程連絡を受けても、従業員等を派遣する必要がないこと、従業員等を派遣する場合であっても、他社商品の作業を行う必要はなく、また、費用の支払を受けることができることを理解できたものと認められるから、同年11月30日をもって本件違反行為は取りやめられたものと認められるとした(本件審決案の「理由」欄の「第6 審判官の判断」の5⑴の第4段落(149頁)。同日以降の従業員等の派遣(同年12月3日開店の《店舗名⑧》への従業員等の派遣及び同月10日開店の《店舗名⑨》への従業員等の派遣)が本件違反行為に含まれるか争いがある。)。
第4 本件訴訟に至る経緯等
1 排除措置命令及び課徴金納付命令
⑴ 被告は、平成24年2月16日、原告に対し、原告が、本件対象期間に、127社に対し、店舗開設準備作業の一部である商品の搬出、商品の搬入又は店作りのための従業員等の派遣をさせていた行為は、自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させていたものであり、この行為は、独占禁止法2条9項5号(平成21年改正法の施行日である平成22年1月1日より前においては旧一般指定14項)に該当し、独占禁止法19条に違反するものであり、かつ、特に排除措置を命ずる必要があるとして、同法20条2項、7条2項1号に基づき、排除措置命令(平成24年(措)第6号)をした。
上記排除措置命令の命令書の謄本は、平成24年2月17日、原告に送達された。
⑵ 被告は、平成24年2月16日、原告に対し、原告の上記⑴の行為は、独占禁止法2条9項5号(平成21年改正法の施行日である平成22年1月1日より前においては旧一般指定14項)に該当し、独占禁止法19条に違反するものであり、かつ、法20条の6に規定する継続してするものであるところ、①上記⑴の違反行為に係る違反行為期間(独占禁止法20条の6の「当該行為をした日から当該行為がなくなる日までの期間」をいう。以下同じ。)は遅くとも平成20年9月6日から平成22年11月29日までの間であり、②上記⑴の違反行為のうち平成21年改正法の施行日である平成22年1月1日以後に係るものの相手方は127社であり、③違反行為期間のうち平成21年改正法の施行日である平成22年1月1日以後における原告の127社それぞれとの間における購入額は合計4047億9678万3282円であるから、独占禁止法20条の6、20条の7、7条の2第23項の規定により課徴金の額は40億4796万円であるとして、独占禁止法20条の6に基づき、課徴金納付命令(平成24年(納)第10号)をした。
上記課徴金命令の命令書の謄本は、平成24年2月17日、原告に送達された。
2 本件審決
⑴ 原告は、平成24年3月15日、上記1の排除措置命令及び課徴金納付命令の取消しを求める審判請求をした。
⑵ 被告は、令和元年10月2日、上記⑴の審判請求について、①原告の35社に対する行為が優越的地位の濫用に該当すると認めることはできないが、原告の対象納入業者に対する本件違反行為は、独占禁止法2条9項5号(平成21年改正法の施行日である平成22年1月1日より前においては旧一般指定14項)に該当し、独占禁止法19条に違反するものであり、かつ、特に排除措置を命ずる必要がある、②原告の本件違反行為は、独占禁止法20条の6に規定する継続してするものであるところ、㋐違反行為期間は平成20年9月6日から平成22年11月29日までの間であり、㋑そのうち、独占禁止法20条の6が適用される同年1月1日から同年11月29日までの原告の対象納入業者からの購入額を私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令(以下「独占禁止法施行令」という。)30条2項に基づき算定した金額から、上記期間中に対象納入業者が原告に支払ったマル特経費負担を同項後段、同3号に基づき控除した課徴金算定の基礎となる購入額は本件審決案別表1の対象納入業者に係る「マル特経費負担控除後の購入額(円)」欄記載のとおり3032億2856万3097円であるから、課徴金の額は30億3228万円であるなどとして、上記1の排除措置命令を本件審決案別紙2のとおり変更する(本件排除措置命令)とともに、上記1の課徴金納付命令のうち30億3228万円を超えて課徴金の納付を命じた部分を取り消す(本件課徴金納付命令)旨の審決(本件審決)をした。
⑶ 本件審決の審決書の謄本は、令和元年10月3日、原告に送達された。
3 本件取消訴訟の提起
原告は、令和元年11月1日、東京高等裁判所に対し、本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した。
第5 争点
1 本件従業員等派遣をさせたことは、原告が対象納入業者に対して自己の取引上の地位が優越していることを利用して正常な商慣習に照らして不当に行ったものか(争点1)
⑴ 原告の取引上の地位は対象納入業者に対して優越しているか否か
⑵ 原告が対象納入業者に対して本件従業員等派遣をさせたことが不利益行為に当たるか
⑶ 対象納入業者が不利益行為を受け入れるに至った経緯や態様
⑷ 本件従業員等派遣は、原告が優越的地位を利用して行ったものか
2 本件排除措置命令をすることについて特に必要があるか(争点2)
3 本件課徴金納付命令における課徴金算定の基礎となった違反行為期間における購入額の算定方法は適法か(争点3)
4 本件審決に至る手続に憲法その他の法令違反(独占禁止法82条1項2号)があるか(争点4)
第6 争点に関する当事者の主張
1 争点1(本件従業員等派遣をさせたことは、原告が対象納入業者に対して自己の取引上の地位が優越していることを利用して正常な商慣習に照らして不当に行ったものか)について
【被告の主張】
⑴ 原告の取引上の地位は対象納入業者に対して優越しているか否か
ア 優越的地位の濫用規制の趣旨
独占禁止法19条が、自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に同法2条9項5号(平成21年改正法施行日前においては旧一般指定14項)に該当する行為をすることを不公正な取引方法の一つとして規制しているのは、自己の取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者が、相手方に対し、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることは、相手方の自由かつ自主的な判断による取引を阻害するとともに、相手方はその競争者との関係において競争上不利となる一方で、行為者はその競争者との関係において競争上有利となるおそれがあり、このような行為は公正な競争を阻害するおそれ(公正競争阻害性)があるからである。
公正競争阻害性については、①行為者が多数の相手方に対して組織的に不利益を与えているか、②特定の相手方に対してしか不利益を与えていないときであっても、その不利益の程度が強い又はその行為を放置すれば他に波及するおそれがあるかなど問題となる不利益の程度、行為の広がり等を考慮して判断することになる(優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(ガイドライン)第1の1参照)。
イ 優越的地位の判断基準
上記アの優越的地位の濫用規制の趣旨に照らせば、取引の一方の当事者(以下、一般に取引の一方の当事者である事業者を「甲」という。)が他方の当事者(以下、甲の取引の相手方を「乙」という。)に対し、取引上の地位が優越しているというためには、甲が市場支配的な地位又はそれに準ずる絶対的に優越した地位にある必要はなく、乙との関係で相対的に優越した地位にあれば足りると解される。また、甲が乙に対して優越した地位にあるとは、乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため、甲が乙にとって著しく不利益な要請等を行っても、乙がこれを受け入れざるを得ないような場合をいうと解される(ガイドライン第2の1参照)。
甲が乙に対して優越した地位にあるといえるか否かについては、①乙の甲に対する取引依存度、②甲の市場における地位、③乙にとっての取引先変更の可能性、④その他甲と取引することの必要性、重要性を示す具体的事実のほか、乙が甲による不利益行為(独占禁止法2条9項5号イないしハが規定する、継続して取引する相手方に対して自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させる行為等。以下同じ。)を受け入れている事実が認められる場合、これを受け入れるに至った経緯や態様等を総合的に考慮して、乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため、甲が乙にとって著しく不利益な要請等を行っても、乙がこれを受け入れざるを得ないような場合であるか否かをも勘案して判断するのが相当である。
ウ 優越的地位の有無の判断において取引相手とされるべき者について
㋐ 独占禁止法上、企業グループや親子会社等の複数の事業者につき、その一体性を考慮して取り扱う場面は、原告指摘のように特別の規定が存在する場合に限られ、そのような規定がない同法2条9号5号、20条の6の「相手方」は、独立した法人格を有する個々の取引主体であって、企業グループ全体と解することはできない。
そして、甲が乙に対して優越した地位にあるか否かの判断は、行為者である甲が、個々の相手方である乙との関係で相対的に優越した地位にあるか否かの判断であるから、乙が企業グループに属する場合においても、あくまで乙(相手方)が当該企業グループ内のいずれの事業者であるかを確定した上で、優越的地位の有無に係る総合的な判断の中で、乙の属する企業グループの影響力を考慮すれば足りるから、《納入業者1社》をはじめ、それぞれの企業グループの中で原告との取引を担当した個々の対象納入業者自身を基準として、原告の優越的地位の有無を判断した本件審決の判断枠組みは正当なものであり、その認定・判断に誤りはない。
㋑ 原告は、平成20年頃までには、原告及び原告事業子会社が自ら運営する店舗のほか、原告又は原告事業子会社のフランチャイズ・チェーンに加盟する事業者が運営する店舗において販売する全ての商品について、上記各社との経営指導委託契約又は業務委託契約に基づき、納入業者から自ら一括して仕入れ、仕入れた商品をこれら原告運営店舗に供給するようになっていた。また、原告事業子会社は、本件対象期間の平成22年10月1日までに、原告に吸収合併された。
このように、本件対象期間において、対象納入業者との間で取引主体であったのは形式的にも実質的にも原告であったから、この点についての本件審決の認定・判断に誤りはない。
エ 原告の取引上の地位が対象納入業者に対して優越しているか
上記イの判断基準に照らすと、別表①、同②-1、同②-2に記載の被告の主張のとおり、本件対象期間中、原告との取引の継続が困難となることが事業経営上大きな支障を来すため、原告が対象納入業者にとって著しく不利益な要請等を行っても、これを受け入れざるを得ないような場合にあったものというべきであり、原告の取引上の地位が対象納入業者に対して優越していたものと認められる。
⑵ 原告が対象納入業者に対して本件従業員等派遣をさせたことが不利益行為に当たるか
ア 原告は対象納入業者に対して本件従業員等派遣を依頼(要請)したか
㋐ 原告は対象納入業者に対して店舗開設準備作業の日程等を事前に連絡したか
原告は、本件対象期間において、別表⑦別添一覧表の「番号」欄記載1から133までの各原告運営店舗の新規開店又は改装開店に際し、同一覧表の各「ストアブランド・店舗名」欄の行に○又は◎を付した対象納入業者に対して、商品の搬出日、商品の搬入日又は店作りの日の連絡をした。
㋑ 原告による対象納入業者に対する上記日程等の連絡が従業員等派遣を依頼(要請)する趣旨のものであったか
原告は、別表⑦別添一覧表のとおり、原告運営店舗の新規開店又は改装開店に際し、対象納入業者に対して、店舗開設準備作業の日程等を連絡したが、これは従業員等の派遣を依頼する趣旨のものであった。この点に関する被告の主張は、別表③に記載の被告の主張のとおりである。
イ 対象納入業者は本件従業員等派遣をしたか
対象納入業者は、別表⑦別添一覧表のとおり、当該搬出日等に原告運営店舗へ従業員等を派遣して、「作業内容」欄の○又は◎を付した記載に対応した店舗開設準備作業(商品の搬出、商品の搬入又は店作り)を行い(本件従業員等派遣)、原告はその役務の提供を受けた(対象納入業者に本件従業員等派遣をさせた)ものと認められる。
ウ 本件従業員等派遣は不利益行為に該当するか
㋐ 本件従業員等派遣の不利益行為該当性
a 「正常な商慣習に照らして不当に」との要件は、優越的地位の濫用の有無が、公正な競争秩序の維持・促進の観点から個別の事案ごとに判断されることを示すものであるから、不利益行為に該当するか否かについては、この要件を捨象して判断すべきである。仮に不利益性について「正常な商慣習」を考慮するとしても、それは、公正な競争秩序の維持・促進の立場から是認されるものをいうから、対等な当事者間においてあるべき商慣習を意味し、その業界一般に存在する商慣習に合致しているからといって、直ちにその行為が正当化されることにはならない。また、「不利益行為」に該当するためには、相手方にとって「著しく」不利益であることを要しない。何故なら、取引の相手方に著しく不利益な要請等を甘受させ得る者(優越的な地位にある者)の行為であれば、それが「著しく」不利益とまではいえない不利益行為であっても、相手方はこれを受け入れざるを得ず、公正な競争秩序に悪影響を及ぼすおそれがあるからである。
そして、不利益行為に該当するか否かは、問題となる行為の内容や不利益行為の性質に照らして客観的に判断すべきであり、相手方が行為者から見返りとしての利益を受けることを見込んだからといって、それが実際に商品の売上げ増加等の直接の利益ではなく、将来の利益に結び付くかが漠然とした不確実な利益のような間接的な利益では、不利益行為の該当性は否定されない。
さらに、仮に、商品の納入価格について、原告と納入業者との間で価格交渉がされ、又は、納入業者の条件が受け入れられたとしても、直ちに両者が対等な関係にあるとはいえず、実際に本件でも、従業員等派遣に伴う負担を含む取引全体における負担を考慮して納入価格が決定されていたとは認められないことは、本件審決案第6の1⑷イ(エ)b(b)(126頁)のとおりである。
b 買取取引における売主にとって、新規店舗開設等作業のための従業員等派遣を行うことは、自社の従業員等による労務をその派遣期間中逸失するものである上、交通費などの派遣に必要となる費用が発生した場合には当該費用を負担することになり、従業員等派遣例外事由など特段の事情のない限り、売主にとって通常は何ら合理性がないから、原則として不利益行為に当たる。このように解しても、買主としては従業員等派遣例外事由を備えることは容易であり、また、最終的な優越的地位の濫用を認定するに当たり、別途「正常な商慣習に照らして不当」か否かが考慮されるから、不合理な判断ではない。
そして、ガイドラインは、事業者が取引の相手方に対し、従業員等の派遣を要請する場合、取引の相手方に、㋐あらかじめ計算できない不利益を与えることとなる場合や、㋑合理的と認められる範囲を超える負担を与えることとなる場合につき、不利益行為に該当するとしている(ガイドライン第4の2(2)(11頁))。
本件審決が説示する従業員等派遣例外事由は、①従業員等の業務内容、労働時間及び派遣期間等の派遣の条件について、あらかじめ相手方と合意し、かつ、派遣される従業員等の人件費、交通費及び宿泊費等の派遣のために通常必要な費用を買主が負担する場合(従業員等派遣例外事由①)、②従業員等が自社の納入商品のみの販売業務に従事するものなどであって、従業員等の派遣による相手方の負担が従業員等の派遣を通じて相手方が得ることとなる直接の利益等を勘案して合理的な範囲内のものであり、相手方の同意の上で行われる場合(従業員等派遣例外事由②)であるから、上記ガイドラインの㋐及び㋑と同旨であり、本件審決は、ガイドラインに定める事由より限定された場合に限って不利益行為該当性を否定するものではない。
c 原告が対象納入業者に本件従業員等派遣をさせた行為は、別表④に記載の被告の主張のとおり、原則として不利益行為に当たる。
㋑ 本件従業員等派遣が従業員等派遣例外事由①に該当するか
本件従業員等派遣が従業員等派遣例外事由①に当たらないことは、別表⑤に記載の被告の主張のとおりである。
㋒ 本件従業員等派遣が従業員等派遣例外事由②に該当するか
a 「直接の利益」には、消費者ニーズの動向の直接把握のように必ずしも計測可能でないものも含まれるが、従業員等派遣を行う者が、「義務なき準備作業に応じるか否かを事前に判断」できる事情がなければ、これに応じることは「あらかじめ計算できない不利益」に当たるところ、本件審決が「準備作業の負担に見合うものであるかを客観的に検証できる事情が存在しなければ」としているのは、上記「義務なき準備作業に応じるか否かを事前に判断できず、あらかじめ計算できない不利益」となる場合を例示したものであって、客観的な数値による資料がない限り常に「直接の利益」に当たらないと断ずるものではないから、ガイドラインと異なる要件を追加するものではない。
また、ガイドライン及び大規模小売業告示においても、納入業者が義務なき準備作業に応じるか否かを事前に判断することができなければ、あらかじめ計算できない不利益を負担することになる(従業員等派遣例外事由②に当たらない)のであるから、結果として納入業者に利益が生じていれば足りるとの立場を採っていないことは明らかである。そして、大規模小売業告示7項1号の「販売業務」とは、店舗の開店・改装時におけるものではない新規開店前の業務はこれに当たらないから、新規店舗又は改装開店する既存店舗の開店前の準備作業(店舗開設準備作業)に従事させた本件従業員等派遣がこれに当たるものではない上、一定の販売促進効果がある陳列・装飾であっても、その効果が小売業者の従業員等が行った場合と差異がないのであれば、納入業者が無償で従業員等を派遣して当該陳列・装飾に従事させる必要性はないから、本件審決がそのような差異が生じ得る商品を対象に、そのような差異を生じさせる陳列・装飾について、当該商品の販売促進に直接結び付くと認めたのは相当である。この点については、さらに別表⑥-1(43頁C欄のD欄⑴に対する反論)に記載の被告の主張のとおりである。
また、本件従業員等派遣は、外形的に独占禁止法2条9項5号ロ「金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること」に該当するから、従業員等派遣例外事由があるなど特段の事情がない限り、不利益行為に当たると認めるのが相当である。したがって、本件審決が、本件従業員等派遣について従業員等派遣例外事由②があるかを検討するに当たり、店作りのうち商品の展示・装飾が、納入業者の商品についての販売促進に直接結び付き、このような観点から「直接の利益」を得ることができるか否かという点について、「当該商品の特性やその展示・装飾について、より具体的な立証等が必要」と説示したことは不合理ではないし、現に3社に対する一部行為を除き、従業員等派遣例外事由がないことも認定(立証)しているから、主張立証責任を転換するものでもない。
さらに、本件従業員等派遣において納入業者の従業員等がした作業内容は、自社商品の販売増加につながるといった販売促進上の効果と直接に結び付くものとは認められず、これと関係のない利益であれば、納入業者が本件従業員等派遣を受け入れる必要はない。このことからすれば、「直接の利益」を本件従業員等派遣との直接の結び付きから判断する本件審決は、不要な要件を設定したものではない。
b 本件従業員等派遣において、直接の利益を得ることができるか否か(従業員等派遣例外事由②に該当するか否か)については、別表⑥-1、同⑥-2、同⑥-3に記載の被告の主張のとおりである。
c 対象納入業者による本件従業員等派遣を個別に検討しても、従業員等派遣例外事由②に当たるなどの特段の事情がないことは、別表⑦に記載の被告の主張のとおりである。
㋓ 本件審決は、原告が経営会議において、従業員等の派遣依頼を行わないことやその旨の文書を納入業者に送付することなどを決定した平成22年11月30日をもって、本件違反行為が取りやめられたと認定したが、原告運営店舗である《店舗名⑧》及び《店舗名⑨》につき、原告から納入業者に対する店舗開設準備作業の連絡及び要請は、いずれも同月29日以前にされているから、これら店舗の本件従業員等派遣を本件違反行為に含めたことに誤りはない。この点については、別表③(27頁C欄のD欄⑵に対する反論)、別表⑦(59・60頁B欄のD欄⑵に対する反論)に記載の被告の主張のとおりである。
⑶ 対象納入業者が不利益行為を受け入れるに至った経緯や態様
別表②-3に記載の被告の主張のとおりである。
⑷ 本件従業員等派遣は、原告が優越的地位を利用して行ったものか
ア 原告が本件従業員等派遣をさせた行為によって、対象納入業者にとって直接の利益(従業員等派遣例外事由②)があったものと認められないことは本件審決が認定・判断するとおりであり、このような本件従業員等派遣の要請に応じることは、納入業者の自主的な営業政策によるものとはいえない。
また、「利用して」とは、文意からも行為者側の事情であることに加え、優越的地位と不利益行為の因果関係は客観的に認定されるべきであるから、常に相手方ごとに不利益行為を受け入れるに至った経緯や態様等を具体的に認定しなければ認められないというものではない。むしろ本件審決では、原告が納入業者に対して、多数の原告運営店舗において、原告の利益を確保することなどを目的として、組織的かつ計画的に一連のものとして本件従業員等派遣を行わせていた経緯や態様等が認定され、さらに個々の納入業者の事情に係る認定判断を併せ見れば、「利用して」の要件を充足する。
イ 原告が引用する本件審決の説示(本件審決案49頁)は、優越的地位を利用して不利益行為を行うことは、一般的には公正な競争秩序の維持・促進の観点から是認し難いという、「通常の」場合について述べるものであり、公正競争阻害性の認定を要しないとしているものではないから、被告の従来の考えと矛盾しない。
また、対象納入業者による本件従業員等派遣が、原告の依頼(要請)に応じたものであることは本件審決が認定・判断したとおりであり、対象納入業者による自主的な営業政策によるものとはいえないことは前記のとおりである。さらに公正な競争を阻害するおそれがあるというためには、現に競争上、行為者が有利となり、相手方が不利となることを要しないから、仮に全ての競争業者(《事業者A》等)が原告と同様の行為をしていたとしても、原告による本件従業員等派遣に係る行為につき、公正な競争を阻害する「おそれ」があることが否定されるものではない。
【原告の主張】
⑴ 原告の取引上の地位は対象納入業者に対して優越しているか
ア 優越的地位の濫用規制の趣旨
私的自治の原則が妥当する私人間の法律関係には、国家は原則として干渉すべきではなく、競争法による規制の解釈も厳格にされるべきところ、優越的地位の濫用が規制対象とされるのは、相手方の自由かつ自主的な判断による取引を阻害して著しい不利益を与えるからであり(自主的判断阻害性)、「行為の相手方がその競争者との関係において競争上不利となるおそれ」(間接的競争阻害性)を規制根拠とすることは、優越的地位濫用規制を無制限・無制約に広く適用する危険を包含するもので、上記の謙抑性に反する。優越的地位の濫用を規制することが正当化されるのは、取引の一方当事者である行為者が著しく不利益な取引条件を提示した場合のうち、当該取引の相手方の取引先選択の自由が制約されているため、当該相手方の自主的判断が阻害される場合に限られる。
イ 優越的地位の判断基準
ガイドラインは優越的地位の有無の判断に当たり、①乙の甲に対する取引依存度、②甲の市場における地位、③乙にとっての取引先変更の可能性、④その他甲と取引することの必要性を示す具体的事実を総合的に考慮するとしている。
しかし、優越的地位濫用規制の趣旨が、取引の相手方が競争業者と競い合って取引条件を設定し取引を確保するという競争原理が制約された状況、すなわち取引先選択の自由が存在しない状況に乗じて行われる濫用行為を規制することにあることからすると、優越的地位という法的要件の判断において合理的・論理的に抽出される考慮要素は、第一に取引先変更可能性(上記③)であり、次いで取引依存度(上記①)であって、これらを重視せず、あるいは関連性の欠ける他の要素を偏重した本件審決の判断は誤りである。
ウ 優越的地位の有無の判断において取引相手とされるべき者について
㋐ 家電製品等の製造会社の企業グループに属する販売会社については、取引において自主的判断をすべき立場にあるのは販売会社ではなく、企業グループであるから、原告との取引継続が事業経営上大きな支障を来すか否かや事業規模の比較において、取引相手として検討されるべきは、有機的に一体となって事業活動を行う企業グループであって、納入業者のみを取引相手とみることは実態に反する。また、独占禁止法自身が、企業グループ内の複数の法人が機能的・経済的な一体性をもって活動している実態を認めている(同法7条の2第13項1号、10条2項、15条2項ただし書)。
したがって、少なくとも、各企業グループの連結売上高又は連結経常利益率が原告のそれを上回っている企業グループに属する対象納入業者については、原告の優越的地位は認められない。92社の中では以下の各社がこれに該当する(とりわけ、下線を引いた各社は、原告の売上高を大幅に超える売上高等となっていることが明らかである。)から、当該対象納入業者に対する原告の優越的地位を認めた本件審決の判断は、実質的証拠を欠くものである。
《納入業者31社。一部下線あり》
㋑ 原告についても、単一の株式会社となった平成22年10月1日までは、別個の4法人が、それぞれ対象納入業者に対して優越的地位を有するか否かを評価すべきであって、本件審決が、原告を一つの原告グループとして取引当事者と取り扱ったことは、独占禁止法上、適法な認定・判断とはいえない。
エ 原告の取引上の地位が対象納入業者に対して優越しているか
別表①、同②-1、同②-2に記載の原告主張のとおり、取引先変更可能性や取引依存度を重視せず、関連性の欠ける他の要素を偏重した本件審決の判断は、独占禁止法の解釈・適用を誤ったものであると同時に、実質的証拠に基づかないものであり、「取引依存度の順位」という指標を判断基準に用いた点は不意打ちとして手続適正にも反する。特に、原告とは別法人のサンキューに対する売上高を含めて認定した取引依存度の順位に基づいて原告の優越的地位を認定した点は、合理的証拠に基づくものではなく、違法である。
また、本件審決は、《納入業者7社》との関係では、法的根拠なく恣意的に、これら各社ではなくその一部門との関係での原告の優越的地位を判断し、具体的認定に際しても、当該事業部門の重要性を実質的証拠により判断せず、実質的証拠から明らかに認められる定量的事実を無視している。
⑵ 原告が対象納入業者に対して本件従業員等派遣をさせたことが不利益行為に当たるか
ア 原告は対象納入業者に対して本件従業員等派遣を依頼(要請)したか
㋐ 原告は対象納入業者に対して店舗開設準備作業の日程等を事前に連絡したか
別表⑦別添一覧表の被告の主張に対する認否は、同一覽表に記載のとおりである。○又は◎の記載のある欄について、水色の着色箇所は、原告の事前連絡の存在は認めるが、実際の派遣行為の存在は否認する場合、黄色の着色箇所は原告の事前連絡の存在は否認するが、実際の派遣行為の存在は認める場合、緑色の着色箇所は、原告の事前連絡の存在及び実際の派遣行為の存在のいずれも否認する場合、無着色の箇所は、原告の事前連絡の存在及び実際の派遣行為の存在をいずれも認める場合である。特に、平成22年1月30日の《店舗名⑩》については、店舗開設準備作業そのものが客観的に存在しない。
㋑ 原告による対象納入業者に対する上記日程等の連絡が従業員等派遣を依頼(要請)する趣旨のものであったか
別表③に記載の原告の主張のとおり、一部の納入業者や一部の店舗が店舗開設準備作業の日程の連絡等をしたことがあったことは認めるが、その余の被告の主張は、「依頼」や「連絡」がガイドラインにおいて必要とされる「要請」に該当することを前提とする点を含め、否認する。
イ 対象納入業者は本件従業員等派遣をしたか
別表⑦別添一覧表の被告の主張に対する認否は、前記ア㋐のとおりであり、○又は◎の記載のある欄について、水色及び緑色の着色箇所は、実際の派遣行為の存在を否認する場合、黄色の着色箇所及び無着色の箇所は、実際の派遣行為の存在を認める場合である。
ウ 本件従業員等派遣は不利益行為に該当するか
㋐ 本件従業員等派遣の不利益行為該当性
a 不利益行為に該当するか否かの判断では「正常な商慣習」が考慮されるが、経済力に優劣の差がある当事者間で成立する商慣習をも包含する当該業界における取引上の社会通念を前提に、現に行われた行為との関係で判断されるべきであり、「正常な商慣習」に照らして不当な「不利益」とは、単なる当事者格差の反映にとどまらない、当該業界の取引上の社会通念に照らして通常では受け入れ難い(著しく過大な)不利益であると解すべきである。
また、相手方が行為者から不利益を受けるが、見返りとして金銭に換算し得ないものも含めて利益を得ることを見込んでいる場合は、当該不利益は合理的なものといえ、「著しく過大な」不利益には該当しない。
さらに、行為者と相手方との間で対価の交渉が対等に行われていれば、相手方は、不利益等を勘案の上で本来の取引に係る対価を設定しているものと推認され、当該不利益は合理的範囲を超えるものではなく、行為者につき独占禁止法2条9項5号に該当するとは認められない。
b 原告と納入業者との間の買取取引において、納入業者は、原告に卸した商品が一般消費者に実際に購入してもらえなければ販売実績が上がらず、結果として業績に影響するのであるから、当該商品が原告運営店舗でどのような形で販売されるのかに強い利害と関心がある。したがって、納入された商品の所有権が法的に買主に移転したからといって、納入業者において販売のための準備作業を行うことが、別段の契約上の定めのない限り一律に不合理であるというのは合理性を欠く判断である。したがって、買取取引であるという一事をもって、納入業者において販売のための準備作業として行う商品の搬出・搬入ないし店作りを、原則的に不利益行為であると推認し、かつ、ガイドラインに定める従業員等派遣例外事由(直前の書面合意又は直接的な利益がある場合)よりも更に限定された場合に限って不利益行為の該当性を否定する本件審決の認定判断は誤りである。
c 本件従業員等派遣が不利益行為に当たらないことは、別表④に記載の原告の主張のとおりである。
㋑ 本件従業員等派遣が従業員等派遣例外事由①に該当するか
本件従業員等派遣が従業員等派遣例外事由①(事前の合意の存在)に当たることは、別表⑤に記載の原告の主張のとおりである。
㋒ 本件従業員等派遣が従業員等派遣例外事由②に該当するか
a 直接の利益の意義及び本件における直接の利益の存在
ガイドラインによれば、「直接の利益」とは、納入する商品の売上増加、消費者ニーズの動向の直接把握につながる場合など実際に生じる利益であれば足りるとしているのに対し、本件審決が、さらに「客観的に検証できる事情」との要件を付加する点は、事業者の自由な経済活動を不当に阻害するものとして許されない。
また、特殊指定である大規模小売業告示7項1号は、同項柱書の規制対象から除外される「販売業務」につき、「(その従業員等が有する販売に関する技術又は能力が当該業務に有効に活用されることにより、当該納入業者の直接の利益となる場合に限る。)」との限定をするのみで、ガイドラインと同様に、直接の利益は結果として当該納入業者に生じていれば足りるとしているから、本件審決の上記基準との整合性は甚だ疑問である上、本件審決が、規制対象から除外されるべき販売業務のうち商品の展示・装飾について、原告の従業員においてこれを行う場合との比較において、「明らかに差異を生じるような特性を有する商品」について、「原告の従業員がそのような商品の展示・装飾をすることができない場合」と限定するのは、「直接の利益」について二重に新たな要件を課すもので不当である。この点については、さらに別表⑥-1(43頁D欄⑴)に記載の原告の主張のとおりである。
また、本来、直接の利益がないことの証明責任は被告にあるにもかかわらず、本件審決が「当該商品の特性やその展示、装飾について、より具体的な立証等が必要」として、これを原告に負わせたのは立証責任の所在を誤ったものであると同時に、不可能を強いるものである。
さらに、納入業者は、それぞれの販売商品や販売戦略を含めた経営戦略等に応じて「利益」の有無を評価し行動しているところ、販売商品や経営戦略等が各納入業者により異なる以上、「利益」の有無及び程度は、各納入業者の営業実態や個別的事情に即して個別的に判断すべきであり、本件審決のように、従業員等派遣行為と「直接に結び付く」との要件を設定することにより「直接の利益」の有無を一律に同一の指標で判断し、非常に例外的な場合を除き直接の利益に該当しないとするのは不当である。
b 本件従業員等派遣において、直接の利益(従業員等派遣例外事由②)が存在することは、別表⑥-1、同⑥-2、同⑥-3に記載の原告の主張のとおりである。
c 対象納入業者による本件従業員等派遣を個別に検討すると、直接の利益(従業員等派遣例外事由②)が存在することは、別表⑦に記載の原告の主張のとおりである。
㋓ 原告の本件違反行為の終期は遅くとも平成22年11月29日であるから、その後に行われた原告運営店舗の店作り(平成22年12月3日開店の《店舗名⑧》及び同月10日開店の《店舗名⑨》の2店鋪)は、不利益行為に該当しない。この点については、別表③(27頁D欄⑵①)、別表⑦(59頁D欄⑵)に記載の原告の主張のとおりである。
⑶ 対象納入業者が不利益行為を受け入れるに至った経緯や態様
別表②-3に記載の原告の主張のとおりである。
⑷ 本件従業員等派遣は、原告が優越的地位を利用して行ったものか
ア 原告は対象納入業者に対して優越的地位にあったものではなく、不利益行為も行っていない。仮に、原告が対象納入業者に対して優越的地位にあり、不利益行為を行ったとしても、対象納入業者が自社の従業員等を原告運営店舗に派遣したのは、店作りが自社にとって直接の利益をもたらす行為であること等を考慮した自主的な営業政策に基づくものであるから、原告の対象納入業者に対する行為がその優越的地位を「利用して」行われたものであると直ちにいえるものではなく、当該納入業者において原告からの従業員等の派遣要請を受け入れるに至った経緯や態様につき、対象納入業者ごとに具体的な事実の立証が必要であるが、その立証はない。
イ 本件審決は、甲が乙に対して優越的な地位にあると認められる場合には、甲が乙に不利益行為を行えば、通常は、甲は自己の取引上の地位が乙に対して優越していることを利用して行ったと認められ、このような場合、公正競争阻害性が認められる旨判断しているが(本件審決案49頁)、これは、「優越的地位及び不利益行為が存在すれば、公正競争阻害性が認められる。」というに等しい。しかし、この考えは、被告が現在も取っている「優越的地位及び不利益行為が存在しても、原則として適法であり、公正競争阻害性が別途必要である。」との考えと矛盾する。
また、①原告は店作りへの参加を要請したことはなく、納入業者は自社が得る利益のために店作りに自主的に参加していたから、不利益を被ったという事実は存在しないことや、②原告の競争者のうち少なくとも《事業者A》は納入業者の従業員等による店作りに相当する作業を平成24年まで行わせていたことからすれば、原告が競争者との関係で競争上有利となるおそれが生じたとはいえない。
そうすると、公正競争阻害性を認めた本件審決の判断には誤りがある。
2 争点2(本件排除措置命令をすることについて特に必要があるか)について
【被告の主張】
本件排除措置命令について、独占禁止法7条2項の「特に必要があると認めるとき」の要件を充足することは、別表⑧-1に記載の被告の主張のとおりである。
【原告の主張】
本件排除措置命令について、独占禁止法7条2項の「特に必要があると認めるとき」の要件を充足しないことは、別表⑧-1に記載の原告の主張のとおりである。
3 争点3(本件課徴金納付命令における課徴金算定の基礎となった違反行為期間における購入額の算定方法は適法か)について
【被告の主張】
⑴ 課徴金納付命令に係る本件審決の判断に誤りがないこと
優越的地位の濫用についての相手方の範囲は個別に認定するとしても、独占禁止法20条の6の解釈としては、当該違反行為が組織的かつ計画的に一連のものとして行われたのであれば、課徴金の計算の基礎となる売上額の認定に当たり、その算定期間を相手方ごとに個別に認定するのは背理であり、むしろ、一連一体の違反行為が行われた期間を通じて、相手方は不利益行為の要請を受け得る状態にあったのであるから、当該期間中の相手方の全取引額の多寡に応じて課徴金を定めることが、違反行為者の経済的利得の擬制として合理的である。
そして、優越的地位の濫用行為における公正競争阻害性については、行為者が多数の相手方に対して組織的に不利益を与えているか、特定の相手方に対してしか不利益を与えていないときでも、その不利益の程度が強い又はその行為を放置すれば他に波及するおそれがあるかなど、問題となる不利益の程度、行為の広がり等を考慮して判断する。このように、多数の相手方に対する組織性や行為の波及可能性などが判断要素となるように、公正競争阻害性の判断においては複数の行為を一体として評価することが織り込まれている。また、独占禁止法20条の6に規定する課徴金の算定率は、過去の事案において、組織的・計画的に複数の相手方に対して行われた濫用行為を包括して一つの違反行為ととらえていたこと、すなわち、相手方ごとに具体的な行為が行われた期間に違いがあることを前提に、一つの違反行為期間における当該複数の相手方との取引額の合計額に対する不当な利得の水準を参考に定められたものであり、その期間に相手方が不利益行為の要請を受け得る状態にある期間を含むことも、経済的利得の擬制として妥当なものとして設計されている。したがって、現に不利益行為を受けたことがある相手方について、当該相手方が常に不利益行為の要請を受け得る状態にあった期間に着目することは、違反行為抑止の実効性確保に向けた妥当な課徴金額を算定するために相当であり、課徴金制度の趣旨に反しない。
そして、上記のとおり、公正競争阻害性の判断は、優越的地位の濫用に該当する行為が複数見られることや、複数の取引先に対して行われることを考慮してされるから、公正競争阻害性の根拠の一つが相手方の自由かつ自主的な判断による取引を阻害することにあることは、複数の納入業者に対する行為を一体として評価することを否定する理由とはならない。
⑵ 当該行為がされたのは平成22年1月以降であるとはいえないこと
平成21年改正法附則5条は、「新独占禁止法(中略)第20条の6までに規定する違反行為についてこれらの規定による課徴金の納付を命ずる場合において、当該違反行為が施行日前に開始され、施行日以降になくなったものであるときは、当該違反行為のうち施行日前に係るものについては、課徴金の納付を命ずることができない。」と規定し、明らかに課徴金の賦課が問われる対象行為が平成21年改正法施行日の前後にまたがる場合につき、その経過措置を定めたものである。したがって、本件のように対象行為が平成21年改正法施行日の前後にまたがる場合について、平成21年改正法附則5条は当然に適用される。また、平成21年改正法附則8条が、独占禁止法2条9項1号ないし4号に規定する行為に「相当するもの」と規定するのは、平成21年改正法附則8条による経過措置の対象である独占禁止法20条の2ないし5が、10年以内に2度の違反行為が行われた場合における2度目の違反行為に賦課される課徴金に関する規定であるところ、1度目の違反行為が改正法施行日前の行為であるときに対処したものである。このように、平成21年改正法附則8条における「相当するもの」(1度目の違反行為)とは、独占禁止法20条の2ないし5によって課徴金の対象となる「第19条の規定に違反する行為」(2度目の違反行為)とは明らかに別個の行為であるから、あえてこれが同種行為の繰り返しであることを「相当するもの」として明示する必要がある。これに対して、平成21年改正法附則5条の「当該違反行為のうち施行日前に係るもの」とは、同条による経過措置の対象である独占禁止法20条の2ないし6にいう「第19条の規定に違反する行為」と同一性のある1個の行為の一部分(施行日前の部分)を指していることは明らかであるから、平成21年改正法施行日前の行為部分を、あえて、独占禁止法2条9項1号ないし5号に規定する行為に「相当するもの」と明示しなくても、「当該違反行為」が上記施行日前の部分を含むことは明白であり、経過措置として十分である。したがって、平成21年改正法施行規則8条との対比によって、平成21年改正法附則5条や独占禁止法20条の6を原告主張のように解することはできない。
さらに、本件審決において、平成21年改正法施行日前の行為部分につき、改正後の法条を適用するのは背理である上、改正後の独占禁止法でいえば同法2条9項5号に該当する同一性のある1個の違反行為の一部分につき、同法2条9項5号を摘示するか、旧一般指定14項を摘示するかによって、平成21年改正法附則5条による処理が可能となるか否かが異なるものではない。そして、本件課徴金納付命令が平成21年改正法附則5条に則った処分をしていることは明らかであるが、平成21年改正法の附則自体が課徴金納付命令の記載事項とは解されない(独占禁止法50条1項参照)。
⑶ 課徴金の具体的金額について
原告の主張(予備的主張を含む。)に基づく課徴金の算定額(後記【原告の主張】⑶アからウまで)については、原告の主張に即して算定すれば、その主張どおりの金額となることは認める。また、別紙・原告第2準備書面別表1から3までに記載の各取引先納入業者の月ごとの購入額、マル得経費負担及びマル得経費負担控除後の購入額並びに合計欄記載の各金額については、いずれも認める。さらに、後記【原告の主張】⑶エの原告主張に係る対象納入業者の購入額については認める。
しかし、本件における課徴金算定の基礎となった違反行為期間(以下「課徴金算定期間」という。)は、本件違反行為の相手方である対象納入業者の別を問うことなく、一律に認定されるべきである。また、本件審決が課徴金算定期間の始期とした平成22年1月1日の時点においては、確かに、原告による本件違反行為に係る具体的な不利益行為は、92社のいずれの納入業者に対しても行われていないことがうかがわれるが、本件違反行為は、同日より前の平成20年9月6日から複数の相手方に対して、組織的、計画的に一連のものとして行われてきた一個の違反行為であるから、平成22年1月1日の前後をまたいで不断に存在しており、課徴金算定期間の始期は平成21年改正法附則5条により、同日となる。また、終期が同年11月29日であるべきことは前記のとおりである。したがって、本件審決のとおり、課徴金算定の基礎となる購入額は3032億2856万3097円であるから、課徴金の額は30億3228万円である。
なお、《納入業者1社》が本件従業員等派遣の要請に応じたのが、課徴金算定期間の終期である平成22年11月29日の翌日以降の日であるとしても、同期間内に原告による上記要請がされているのであって、《上記納入業者》は、本件違反行為の相手方である対象納入業者たり得る。
⑷ 本件対象期間における購入額の算定方法に関するその余の主張については、別表⑧-2に記載の被告の主張のとおりである。
【原告の主張】
⑴ 課徴金納付命令に係る本件審決の判断の誤り
本件審決は、被告による本件違反行為は、行為者の優越的地位の濫用として一体として評価できる場合に該当し、独占禁止法上一つの優越的地位の濫用として規制されることになり、この行為は繰り返し行われたものであるから、これが「継続してするもの」(同法20条の6)に該当するとして、各納入業者の従業員等派遣行為が行われた期間の長短や回数にかかわらず、全ての納入業者につき、平成22年1月1日から同年11月29日までを課徴金算定対象期間とした。
優越的地位の濫用規制は、優越的地位にある相手方に対して優越的地位にあることを利用して現に不利益行為を行うことに公正競争阻害性が認められるため、個々の相手方に対する不利益行為を禁止するものであって、相手方において常に不利益行為の要請を受け得る状態にあること自体を規制するものではないから、複数の納入業者に対する各行為を一体のものとして評価し、当該一体の行為を独占禁止法上一つの優越的地位の濫用として規制することは、優越的地位の濫用が規制される趣旨を逸脱するものである。したがって、優越的地位の濫用に係る課徴金は、相手方ごとに独占禁止法2条9項5号の行為であって「継続してするもの」が行われたか否かを判断した上で、不利益行為を受けたそれぞれの期間を基礎に算定されるべきである。
また、優越的地位の濫用という違法行為の要件事実が納入業者ごとに認められなければならないのは、取引の相手方の自由かつ自主的な判断による取引を阻害することに公正競争阻害性が見出されることから当然であり、本来、相手方ごとに成立する優越的地位の濫用について、法律上の根拠規定が全くないのに、複数の行為を一体として処分し、その結果、各行為が個別に処分された場合よりも処分が重くなることも許容されると解釈することは、法理論的にあり得ず、独占禁止法の予定しない逸脱行為である。
さらに、独占禁止法20条の6は、複数の相手方との取引額を合算する旨を定めるのみであり、複数の相手方との取引額の算定期間を一律のものとする定めを設けていない。すなわち、同条は、優越的地位の濫用については、相手方ごとに違反行為期間を認定することを前提に、それぞれにおける取引額を合算して課徴金を算定することを特別に定めたものであって、同条における「当該行為」は、全体として1個の違反行為に限定されるものではなく、相手方ごとの複数の違反行為も包含し得るものと解釈すべきである。取引上の地位の優越性は、その時々の相手方との関係で生じる相対的なものであるし、濫用行為が行われる期間も相手方によって異なり得るものであるから、優越的地位の濫用の成否は、相手方ごとに異なり得るものである。そうであるならば、違反事業者が相手方から不当に利得を収受する期間も相手方ごとに異なり得るはずであり、課徴金算定期間を優越的地位が認められる相手方ごとに算定しないことは、独占禁止法が課徴金納付命令を行うこと及びその金額の決定につき被告に裁量を与えていないことを無効化するもので、優越的地位の濫用に対する課徴金制度の趣旨に反するのみならず、法の文言に反して課徴金額を著しく増大させるものである。
したがって、課徴金の算定は、対象納入業者ごとにその期間を認定し、「継続してするもの」に該当するか否かをそれぞれに判断すべきであり、平成22年1月1日以降、継続して違反行為の対象となったと認められない納入業者については、課徴金の算定対象から除外すべきである。
⑵ 当該行為がされたのは平成22年1月1日以降であること
独占禁止法20条の6における「当該行為」とは、「第19条の規定に違反する行為(2条9項5号に該当するものであって、継続してするものに限る。)」を指すものであるところ、同法2条9項5号は(平成22年1月1日に施行された)平成21年改正法によって新設された規定であるから、平成22年1月1日より前に行われた行為は、旧一般指定14項1号ないし4号に該当することはあっても、平成21年改正法施行前には存在しない独占禁止法2条9項5号に該当することはあり得ない。また、平成21年改正法附則5条は、「20条の6(中略)に規定する違反行為について(中略)当該違反行為のうち施行日前に係るものについては、課徴金の納付を命ずることができない。」と規定するが、これは改正後の独占禁止法2条9項5号に該当する行為に係る課徴金に関する経過措置規定であって、旧一般指定14項1号ないし4号に該当する行為を独占禁止法2条9項5号に該当するものとみなす法律上の根拠は存在しない(この点、平成21年改正法附則5条においては、平成21年改正法附則8条のように改正後の独占禁止法2条9項1号ないし4号に規定する行為に「相当するもの」についての経過措置が定められていない。また、平成21年改正法附則2条は、排除措置に関する経過措置が適用される対象行為について、「旧独占禁止法2条9項各号に該当する行為」と定めているところ、平成21年改正法によって新設された独占禁止法2条9項5号に該当する行為が平成21年改正法の施行日の前後をまたいで行われていた場合、それが旧独占禁止法2条9項各号に該当するものである限り、当該行為のうち施行日前に係るものにつき旧法の規定により排除措置命令の対象となるものと規定されているが、平成21年改正法附則5条にはかかる規定が定められていない。)。したがって、旧一般指定14項1号ないし4号に該当する行為が、独占禁止法20条の6の「当該行為」に該当すると解することはできない。
仮に、平成21年改正法附則5条が、改正法施行日前に行われた行為についても、改正後の独占禁止法2条9項5号の規定が適用され得ることを前提とした規定であると解釈するとしても、被告は、本件課徴金納付命令において、平成22年1月1日より前の行為について、旧一般指定14項を適用し(本件課徴金納付命令に係る課徴金納付命令書別添排除措置命令書理由第2(法令の適用))、あえて独占禁止法2条9項5号及び平成21年改正法附則5条を適用しなかったのであるから、同日より前の行為について、平成21年改正法附則5条を足掛かりとして独占禁止法2条9項5号の規定に該当する行為であるとみなすことは許されない。
このように、独占禁止法2条9項5号の規定が適用される「当該行為」(同法20条の6)は、本件では、平成22年1月1日以降にされた行為のみが対象となり、課徴金算定期間は、同日以降、最初に商品の搬入、搬出及び店作り作業が行われた同年2月1日から同年11月29日までとなる。
⑶ 課徴金の具体的金額について
原告の予備的主張のうち、以下の前提に基づいた場合の課徴金額は以下のとおりである。
ア 対象納入業者全てについて、課徴金算定期間を平成22年2月から同年11月29日までと考える場合
平成22年1月に従業員等派遣をした対象納入業者は存在しないから(同月30日に改装開店予定の《店舗名⑩》については、改装開店が延期されたため、同日頃の店舗開設準備作業そのものが存在しない。)、本件審決が前提とした購入額3032億2856万3097円から、92社に係る平成22年1月の購入額(総額204億1250万6369円。別紙・原告第2準備書面別表1の「マル得経費負担控除後の購入額」のうち平成22年1月に係るものの合計額。)を控除するので、各社ごとの購入額の和は2828億1605万6733円(同別表1の黄色表示部分の合計額)であるから、課徴金額は28億2816万円となる。
ただし、納入業者のうち《納入業者1社》は、上記期間中、一度も従業員等派遣をしていないから、同社の同年2月から同年11月29日までの購入額は全額控除すべきであり、その場合の購入額の和は2822億6943万9748円であり、課徴金額は28億2269万円となる。さらに、《納入業者2社》は、上記期間においては、本件審決の基準によっても原告の優越的地位が認められないから、これら2社の購入額も全額控除すべきであり、上記2828億1605万6733円から以上3社の購入額を控除した場合の購入額の和は2794億0949万0322円、課徴金額は27億9409万円となる。(別紙・原告第2準備書面別紙及び別表1)
イ 課徴金算定の基礎となる違反行為(以下「課徴金対象行為」という。)の始期は納入業者ごとに個別に考え、課徴金算定期間を、各社につき課徴金対象行為が最初に行われた平成22年2月以降の時期とし、終期は同年11月29日と考える場合
各納入業者による最初の従業員等派遣以降の時期は、別紙・原告第2準備書面別表2の青色表示部分であり、課徴金対象行為が開始されてから平成22年11月29日までの各社ごとの購入額の和は2622億5147万2072円であるから、課徴金額は26億2251万円となる。また、上記アと同様、《上記納入業者2社》の購入額を全額控除した場合の購入額の和は2598億9892万4799円、課徴金額は25億9898万円となる。(別紙・原告第2準備書面別紙及び別表2)
ウ 課徴金算定期間を納入業者ごとに個別に考え、始期は各社につき課徴金対象行為が最初に行われた平成22年2月以降の時期、終期は課徴金対象行為が最後に行われた同年11月29日以前の時期と考える場合
課徴金算定期間における各納入業者による最初の従業員等派遣から最後の従業員等派遣までの時期は、別紙・原告第2準備書面別表3の赤色表示部分であり、各社ごとの購入額の和は2589億7206万9621円であるから、課徴金額は25億8972万円となる。また、上記アと同様、《上記納入業者2社》の購入額を全額控除した場合の購入額の和は2566億1986万3157円、課徴金額は25億6619万円となる。(別紙・原告第2準備書面別紙及び別表3)
エ 独占禁止法20条の6は、全ての優越的地位の濫用ではなく、「継続してするものに限」って課徴金納付の対象とするから、被告の主張によっても本件対象期間内(平成20年9月6日から平成22年11月29日まで)に少なくとも合計3回以下の派遣回数しかない納入業者18社(1回:《納入業者8社》。2回:《納入業者6社》。3回:《納入業者4社》。)については、原告が「継続して」課徴金納付命令の対象たる行為を行ったとはいえない。したがって、その購入額(192億0841万8972円。納入者ごとの内訳は、別紙・原告第1準備書面別表B欄のとおり。)は、課徴金算定に当たり全額控除されるべきである。
同様に、平成22年1月以降、被告の主張によっても従業員等派遣を1回ないし3回しか行っていない納入業者5社(1回:《納入業者3社》。2回:《納入業者1社》。3回:《納入業者1社》)については、「継続して」の要件を充足しないから、その購入額(本件審決が認定した購入額としては23億4694万1689円。平成22年2月以降の購入額としては21億4387万3201円であり、納入者ごとの金額は、別紙・原告第2準備書面各別表の、各納入業者に係る「マル特経費負担控除後の購入額」欄の「合計(本件審決)」欄の金額から「平成22年1月」欄の金額を控除して算出される額である。)は、課徴金算定に当たり全額控除されるべきである。
⑷ 本件対象期間における購入額の算定方法に関するその余の主張については、別表⑧-2に記載の原告の主張のとおりである。
4 争点4(本件審決に至る手続に憲法その他の法令違反(独占禁止法82条1項2号)があるか)について
【被告の主張】
本件審決が認定した事実は、いずれも本件審決掲記の証拠によって合理的に認定することができ、これを立証する実質的な証拠に基づくものであり、これに基づく判断も正当なものであって、また、その認定・判断には、手続を含め憲法その他の法令違反はない。したがって、本件審決に独占禁止法82条1項各号が定める取消事由は存在しない。
【原告の主張】
本件審決に至る手続の過程において、原告は、後記のヤマダ電機事件後、法令遵守を徹底するため、被告を複数回訪れ対応方針を繰り返し確認したが、その際、被告は、原告に対して不備や問題点を指摘することはなかったのに、その後になって、排除措置命令及び莫大な課徴金納付命令をしたこと、被告が、立入検査後、事実に反したり、内容を誇張したりした原告従業員らの供述調書を作成したり、納入業者に対する回答を誤導する偏頗なアンケート形式の報告命令に対する報告書等の問題のある証拠資料を作成したりしたこと、本件審決の審理において、被告が手元にある資料から確認できる原告に有利な事実に反する主張を行うなどしたことに照らすと、本件の審判には、憲法上保障された適正手続に反する違法がある。
第7 当裁判所の判断
当裁判所は、原告の本件請求は、理由がないものと判断する。
その理由は、以下のとおりである。
1 認定事実
本文中に掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
⑴ 原告の市場における地位
原告は、本件対象期間において資本金101億7400万円の株式会社であり、その運営に係る店舗は、西日本を中心とする関東以西に広範囲にわたって展開され、店舗数は、平成21年3月末日時点は1078店舗、平成22年3月末日時点は1101店舗、平成23年3月末日時点は1130店舗と年々増加し、従業員数(連結子会社を含む。)は、平成20年3月期は1万0534名、平成21年3月期は1万0664名、平成22年3月期は1万0640名、平成23年3月期は1万0022名であり、その事業年度における連結売上高は、平成21年3月期は約8030億0400万円、平成22年3月期は約8200億3000万円、平成23年3月期は約9010億1000万円と年々増加し(上記3年間の平均年間連結売上高は約8413億4800万円)、家電製品等の小売業を営む家電量販店の中でいずれも全国第2位であった。(前記前提となる事実)
⑵ 原告と対象納入業者との市場における関係
ア 本件違反行為の相手方とされている92社の対象納入業者は、いずれも家電製品等の製造業者又は卸売業者であり、原告に家電製品等の商品を納入していた。原告による対象納入業者からの商品の仕入れは、そのほぼ全てが、買取り(売主が買主に商品を引き渡すのと同時に当該商品の所有権が売主から買主に移転し、その後は買主が当該商品の保管責任を負う取引形態)の方法によるものであった。(前記前提となる事実)
対象納入業者の資本金の額、総売上高、原告に対する売上高、原告に対する取引依存度(年間総売上高に占める原告に対する年間売上高の割合、取引先総数及び取引先総数中の原告に対する年間売上高の順位)は、別紙Aの各欄に記載のとおりである。(査26)
イ 被告の審査官は、対象納入業者に対し、平成23年1月11日付けで報告命令を発し、被告は、対象納入業者からこれに対する報告を記載した報告書(以下「本件報告書」という。)を受領した。本件報告書において、対象納入業者は、いずれも原告との取引を継続することが必要である旨を回答するとともに、仮に原告との取引を継続できずに原告に代わる取引先を見つける必要が生じた場合の状況として、原告に代わる取引先を見つけること又は他の取引先との取引を増やすことで原告との取引停止に伴う損失を補うことは困難である旨を回答した(別紙Aの「取引継続必要との回答」欄及び「取引先変更困難との回答」欄参照。)。(査26)
⑶ 本件従業員等派遣
ア 本件従業員等派遣についての原告と対象納入業者との取決めの有無
㋐ 原告と対象納入業者との間の取引基本契約書等、原告による対象納入業者からの商品の納入契約の内容を定めた契約書等においては、対象納入業者が商品の搬出及び店作りを行うことは定められていなかった。また、対象納入業者は、通常、物流センター(原告若しくは原告事業子会社又はこれらの者との間で物流業務基本契約を締結した事業者が運営し、原告運営店舗で販売する商品の保管並びに入荷及び出荷業務を行うための施設。)において商品を引き渡すこととされ、上記の契約書等において、納入業者が商品の搬入を行うことは定められていなかった。(前記前提となる事実)
㋑ 原告と対象納入業者との間で、本件従業員等派遣について、従業員等の業務内容、労働時間及び派遣期間等の派遣の条件をあらかじめ合意しておらず、また、原告は、対象納入業者による本件従業員等派遣に係る従業員等の人件費、交通費及び宿泊費等の派遣のために要した費用を負担していなかった。(査26の128の添付文書4⑷ク(キ)、査52~55、87、97、108、302、303、681)
㋒ 原告は、後記のヤマダ電機事件後、新規開店又は改装開店を行った原告運営店舗において納入業者による従業員等の派遣を受けた実態等について社内調査を行った結果、少なくともデオデオ、エイデン及びエディオンの店舗における新規開店又は改装開店に係る販売業務のほか、商品の搬出、搬入又は店作りについて、納入業者に対し従業員等の派遣を要請し、納入業者から従業員等の派遣を受けている場合があることを把握した。
そこで、原告は、そのうち販売業務に係る納入業者の従業員等の派遣については、あらかじめ商品説明員等の受入れについて納入業者の同意を得ておくこと並びに陳列業務及び補充業務は納入業者の販促業務としてのみ認めることとして、納入業者との間で覚書を締結する方針を立て、覚書のひな形として「店舗への商品説明員等の受入れに関する覚書」(書式A)及び「オープン・セールに伴う説明・販売促進のご協力に関するお願い」(書式B)を用意し、この書式に従って納入業者との間で覚書を取り交わすなどした。しかし、上記書式Aにおいては、納入業者が行う業務内容は、店舗での商品に対する一般消費者への商品説明及び販売促進並びに同業務に付随して行う商品の販売促進につながる陳列、補充とされ、上記書式Bにおいては、納入業者が行う業務内容は、店舗に来店する顧客に対する商品についての説明・実演等を通じて顧客の評価等の情報収集及び販売促進に資することを目的として、商品の説明及び販売業務を行うこととされるなど、いずれも開店している原告運営店舗での消費者への商品説明や販売促進に付随する陳列等の作業を対象とするものであり、新規開店又は改装開店前の店作り等の店舗開設準備作業を対象とするものではなかった。そのため、店舗開設準備作業に係る納入業者による従業員等派遣については、従前と同じく、覚書又は契約書等の合意書が作成されることはなかった。(査131~137、622、627、629、631、審57、《D》参考人審尋速記録、《H》参考人審尋速記録、《G》参考人審尋速記録、《I》参考人審尋速記録、《J》参考人審尋速記録。なお、《M3》の供述調書(査135)の内容とは異なる内容の同人作成の陳述書(審389)及び《I》の参考人審尋での供述内容とは異なる内容の同人作成の陳述書(審388)が、当初の審判手続終結後に作成されて再開後の審判手続で提出されているが、上記供述調書(査135)は、その作成の際、《M3》において、審査官から供述調書の読み開かせを受け、かつ、閲読をした上で誤りのない旨を申し立てて署名押印しており、また、《I》は参考人審尋において宣誓の上で供述しているのであって、店舗開設準備作業に係る納入業者による従業員等派遣についての覚書又は契約書作成の有無について、上記各陳述書において従前の供述を覆す部分は、その供述内容自体を見ても、特に合理的な理由もなくこれを変遷させているものというべく、にわかに信用することができず、これらの陳述書と同旨の審394及び418もにわかに信用することができない。)
イ 原告からの事前連絡
原告の店舗支援部は、原告のプロジェクト会議の決定内容、営業部からの新規開店又は改装開店に係る情報連絡等を踏まえ、新規開店又は改装開店を行う店舗について、店舗ごとに、ストアブランド・店舗名、セールを行う期間、商品の搬出、商品の搬入又は店作りを行う期日又は期間、閉店日、開店日等を記載した店作りスケジュール表を作成し、原告及び原告事業子会社の関係者に送付していたところ、平成20年9月6日から平成22年11月29日までの本件対象期間において、原告の店舗支援部の者、MD及び在庫コントローラー担当長は、ストアブランドに関係なく、又は、ストアブランドに応じて、原告の財務経理・管理担当部門の者はデオデオの店舗につき、株式会社エイデン営業管理部営業管理課の者はエイデンの店舗につき、株式会社東京エディオンの者はエディオン又はイシマルの店舗につき、原告又は原告事業子会社のFMDは担当ストアブランドの担当商品につき、店舗責任者等は自身の店舗につき、それぞれ、店舗支援部が作成・送付した店作りスケジュール表に基づき、原告運営店舗の新規開店又は改装開店に先立って、対象納入業者に対し、文書の送付、電子メールの送信又は口頭により、当該店舗及び店舗開設準備作業の日程を連絡したり、棚割表を送付したりするなどした。
このように、原告又は原告事業子会社の担当者は、別紙B記載の原告運営店舗の新規開店又は改装開店に先立って、当該原告運営店舗に従業員等を派遣した対象納入業者に対し、店舗開設準備作業の日程等の連絡を行った。(前記前提となる事実、査26、95、102~105、138~144、146~161、302、303)
ウ 原告からの要請
㋐ 従前、家電小売業界では、納入業者が家電量販店の新規開店又は改装開店前の店舗開設準備作業を負担する商慣習が存在していた。(査97、122、《E》参考人審尋速記録、《N》参考人審尋速記録)
そうしたところ、ヤマダ電機は、平成20年6月30日、公正取引委員会から従業員等の派遣要請・使用をしたことについて排除措置命令(平成20年(措)第16号)を受けた(ヤマダ電機事件)。
㋑ 原告も、従前は、納入業者に対し、店舗の新規開店又は改装開店の際、商品の搬出、搬入又は店作りのために従業員等の派遣を依頼し、納入業者から店舗開設準備作業において従業員等の派遣を受けていた。しかし、ヤマダ電機が公正取引委員会から排除措置命令を受けたことを契機として、原告の一部の担当者において、従業員等の派遣を要請する趣旨によるものであることを明記せず、店舗開設準備作業の日程のみを納入業者に連絡する方法を採るようになったものの、この連絡に際して、納入業者が当該納入業者の従業員等を派遣する必要がないことなどは記載しておらず、ヤマダ電機事件より前に使用していた明示的に従業員等の派遣の要請を行っていたものから変更したことの説明もしていなかった。(査102、104、105、107、121、124、135~137、162、163、166、167、182、191、205、207、209、326)
また、ヤマダ電機事件の後の本件対象期間においても、原告運営店舗の新規開店又は改装開店の際、店舗開設準備作業の日程等を連絡する文書や電子メールの一部、棚割表を送付するメールの一部、その他、これらに関連する電子メールの一部には、ヤマダ電機事件の以前と同様、納入業者に対して従業員等の派遣を依頼する趣旨の文言が記載されていた。(査138~144、146~161、171、230、234、235、237、242~244、273、317、319、335~337、342、353、357、379、385、409、492、506、507、524、526、527、554、555、557、566、569、572、573、589、657、658、661、665、666、670、672)
また、原告が作成した店作りに関するマニュアル(「2009年12月現在」)等にも、「店作りについてはメーカー様協力の元、所定の店作り日に実施をします。」、「基本的に展示は、メーカー様協力の元に行いますので商品の開梱及び展示は不要です。」、「浄水器はメーカー様が展示・取り付けまで全て行われます。」など、納入業者による従業員等派遣を前提とする記載や納入業者から派遣された従業員が店作りを行うことを前提とする記載が存在した。(査591、592、593、595)
また、原告及び原告事業子会社の内部において、「コンプライアンスに引っ掛からない程度に、店作り応援依頼もして下さい。」、「応援体制については、全く問題ないと思います。普通に考えて、デオデオの店作りを疎かにするような勇気のある窓口はいないと思います。」とのメール送信がされるなど店作り等について、納入業者に応援を求めていることを示すやり取りがされるなどしていた。(査170~172、233、297、299、300、318、380、433、517、669)
さらに、原告運営店舗の新規開店又は改装開店に際しても、「応援支援部の店作りは土日はできない(メーカーさんの応援が見込めないため)」、「メーカー様応援手配」、「店作り応援当日は、メーカー様の多大な応援を頂きます。」など納入業者の応援を求めることを前提としたプロジェクト会議議事録、売場改善報告書等の原告の内部文書が作成されていた。(査39、368、423、493、501、659、675)
そして、店舗開設準備作業の日程連絡をした原告又は原告事業子会社の担当者の一部は、店舗開設準備作業の日程等の連絡については、納入業者に対して従業員等の派遣を依頼する趣旨で行っていた旨供述している。(査52~58、61~63、82、85~87、90~93、98、101、106、107、111、120、126、165、214、280、281、286~289、301、328、343、502。なお、《M1》の供述調書(査53)の内容とは異なる内容の同人作成の陳述書(審415)や《M2》の供述調書(査63)の内容とは異なる内容の同人作成の陳述書(審405)が、当初の審判手続終結後に作成されて再開後の審判手続で提出されているが、上記各供述調書作成の際、同人らは、審査官から供述調書の読み聞かせを受け、かつ、閲読をした上で誤りのない旨を申し立てて署名押印しているのであって、店舗開設準備作業の日程等の連絡とともに従業員等派遣の依頼をしていたことについて、上記各陳述書において従前の供述を覆す部分は、その供述内容自体を見ても、特に合理的な理由もなくこれを変遷させているものというべく、にわかに信用することができない。)
㋒ これに対して、原告運営店舗の新規開店又は改装開店の際、原告又は原告事業子会社の担当者から店舗開設準備作業の日程等の連絡を受けた納入業者の担当者は、原告の従業員に対し、特に従業員等を派遣しない場合に、その旨の返答をすることがあったほか、従業員等を派遣する場合も、その旨や参加する従業員等の人数について返答することが少なくなく、当該担当者自身が店舗開設準備作業に参加できない場合には、謝罪の連絡を入れたり、代わりの者を派遣したりするなどの対応をすることもあった。(査55~58、82、124、142~144、154、157、159、161、162、167~169、174、175、286、289、313、317、325、336、337、342、348、357、367、381、409、431、473、486、495、545、606、611、612、615、619、662、671、審80~82)
また、一部の納入業者は、同種の商品を納入する他の納入業者と調整をした上で、原告の担当者に対し、店作りに係る日程及び店作りに派遣する従業員等の分担を連絡するなどしていた。(査215~220、308、312、322、329、338、350、362、363、374、378、389、394、402、417、424、437、446、457、463、490、497、508、533、537、564)
さらに、原告又は原告事業子会社の担当者から店作りの日程の連絡を受けた納入業者の担当者の中には、店作りの日程の連絡は、従業員等の派遣要請の趣旨であると受け止めていたと供述する者がある。(査52~55、61、106、107、126、165、168、169、174、175、214、280、286、289、431、604、605、606、608~613、615、616~619、《D》参考人審尋速記録、《H》参考人審尋速記録、《L》参考人審尋速記録、《G》参考人審尋速記録、《I》参考人審尋速記録、《J》参考人審尋速記録)
エ 本件従業員等派遣
㋐ 平成20年9月6日から平成22年11月29日までの本件対象期間において、原告から、対象納入業者に対して、原告運営店舗の新規開店又は改装開店に合わせて、店舗開設準備作業の日程等の連絡がされ、ひいては、本件従業員等派遣の依頼(要請)がされた(後記説示のとおり、店舗開設準備作業の日程等の連絡は、本件従業員等派遣の依頼(要請)をも含むものと認められる。)原告運営店舗は、別紙Bのとおりであり、その店舗数は合計133店舗であった。(査26、302、303)
ただし、別紙Bのうち《店舗名⑩》については、平成22年1月30日を改装開店日として、対象納入業者に対して本件従業員等派遣の事前連絡ないし要請がされたものの、当該改装開店は延期されたため、同日頃に対象納入業者による本件従業員等派遣は行われず、同店舗の改装開店は、別紙Bの《店舗名⑩》の同年10月22日の改装開店まで延期された。(査186、323、399、450)
㋑ 原告が平成20年9月6日から平成22年11月29日までの本件対象期間において、新規開店又は改装開店した店舗数は、別紙Bのとおり、平成20年9月から同年12月までの間に15店舗、平成21年1月から同年6月までの間に23店舗、同年7月から同年12月までの間に28店舗、平成22年1月から同年6月までの間に26店舗(《店舗名⑩》の改装開店は延期されたことは前記のとおりである。)、同年7月から同年12月10日までの間に40店舗であり、合計132店舗であった。
そして、対象納入業者は、本件対象期間において、別紙B記載の原告運営店舗(ただし、《店舗名⑩》を除く。)の新規開店又は改装開店に際し、店舗開設準備作業のため、別紙Cのとおり、従業員等の派遣(本件従業員等派遣)を行い、「作業内容」欄記載の作業に従事した(ただし、《納入業者1社》は、《年月日略》に設立された会社であるから、証拠(《証拠略》)上の記載にもかかわらず、別紙C記載の従業員等派遣のうち、番号51、14、15、53、54、89、55、56、16、17の店舗への従業員等派遣を行ったものとは認められない(《証拠略》)。以下同じ。)。(査26の128、査302~304、306)
対象納入業者が本件従業員等派遣によって派遣した従業員等の中には、店作りの現場において、自社の納入商品のみならず、他社の納入商品に係る作業に従事することもあった。(査52~54、63、79、80、82、87~90、93、96、99、119、123、137、220、302、343、509、516、556、604、609、610、612~619、《D》参考人審尋速記録、《H》参考人審尋速記録、《G》参考人審尋速記録、《I》参考人審尋速記録)
なお、原告は、本件審決が、《納入業者1社》は、平成22年5月22日の《店舗名⑤》の店作りを1回行ったと認定したことについて、この訪問の実態は、《経緯略》同社代表者が現地視察と挨拶を目的として来店したにすぎず、店作りを行ったものではない旨主張し、同主張に沿う原告従業員の陳述書(審244)を提出する。しかし、仮に、《上記納入業者》の代表者において、現地視察又は挨拶の目的があったとしても、同社は、本件報告書において、同社代表者が原告からの店作りの要請に応じて従業員等1名を派遣し、自社商品のみならず他社商品についても陳列作業を行った旨回答していることからすれば(《証拠略》)、別紙Cのとおり、同社が、平成22年5月22日、《店舗名⑤》の店作りに従業員等派遣をしたとの本件審決の認定は実質的証拠に基づくものであって、原告の上記主張は採用することができない。
㋒ 他方、原告は、特定の納入業者が従業員等派遣を行ったこと自体をもって、商談や、原告運営店舗における棚割り、商品の販売等において、当該納入業者を有利に扱うということはしなかった。(査52、60、《D》参考人審尋速記録、《H》参考人審尋速記録、《L》参考人審尋速記録、《G》参考人審尋速記録、《I》参考人審尋速記録、《J》参考人審尋速記録)
㋓ 対象納入業者において、本件従業員等派遣によって派遣した従業員等が行った作業のうち、「店作り」は、原告運営店舗の売場まで搬入された商品を開梱し又は折り畳み式のコンテナから取り出し、棚割表に基づき、商品を店頭に配置、陳列し、商品の演出のために実機等を展示し、これらの作業を終えた後、又はこれらの作業と並行して、POP等の販促物によって売場又は当該商品の装飾を行うというものであり、商品の「搬出」は、改装を行う売場にある商品を梱包材で梱包し、又は、折り畳み式のコンテナに収納するなどして、売場から当該店舗の倉庫等の原告が指定する場所まで当該商品を運搬するというものであり、商品の「搬入」は、売場又は店舗の倉庫の所定の位置に什器の設置が行われた後に行われるものであって、具体的には、当該店舗の搬入口若しくは倉庫から原告が指定する売場まで、又は当該店舗の搬入口から原告が指定する当該店舗の倉庫まで商品を運搬し、設置された什器に沿って並べるというものであった。(前記前提となる事実、査51、64、82、91、112、416)
なお、原告は、原告運営店舗の売場に設置された什器に沿って並べる行為は、陳列行為として店作りに含まれるものである旨主張するが、証拠(査82、91)によれば、「店作り」に含まれる「陳列」とは、梱包された商品を開梱し、又はコンテナから取り出した後に、棚割表に沿って並べていく行為であって、それ以前の原告運営店舗の売場に設置された什器に沿って並べる行為は、商品の搬入に当たるものと認められるから、原告の上記主張は採用することができない。
オ 店作りのうち商品の配置、陳列について
㋐ 原告運営店舗における店作りでは、本社の商品政策に基づいて、統一的な売場作り、店作りを行うものとされており、原告の店舗支援部の者により、店舗開設準備作業の際に店作りのためのマニュアル(査592~595)が周知されていた。このマニュアルには、店作りにおける商品の配置や展示は、棚割表どおりに行う旨が記載されていた。(査43、51、56、77、80、81、112、596、597、《H》参考人審尋速記録、《I》参考人審尋速記録)
原告運営店舗について、新規開店又は全面改装による改装開店を行う場合、店舗の売場のレイアウト等に左右されない基本的な棚割りを記載した文書に基づき、個別の店舗の新規開店又は改装開店の際に用いる具体的な棚割りを記載した棚割表が作成されていたが、この棚割表は、新規開店又は改装開店を行う店舗の売場レイアウトや什器の配置に合わせて、当該店舗の立地条件等の特性も考慮するなどして作成され、そこには、配置される各商品は、原則として、「メーカー」及び「品番」で特定され、表示につき「通常価格」及び「展示優先順位」が指定され、各商品の展示場所も、図面、「棚割番号」及び「什器高」で特定され、「上段」、「中段」、「下段」及び「平置き」の別まで指定されていたほか、POPや実機の使用等の展示、装飾についても、写真や図面などによって指定されていたなど、商品の展示、装飾をするために必要な情報が記載されていた。(査51、53~60、577、589、590、591、682~684)
そして、原告運営店舗における店作りは、棚割表に基づいて行うことが徹底されており、特に在庫商品の配置、陳列の場所や範囲については、基本的に、店作りの現場において、特定の納入業者に有利に拡張するような形で変更されることはなく、在庫商品の配置、陳列は、棚割表の記載に従って行われる単純な作業であり、原告の従業員において実施することが可能なものであった。(査51~53、55、56、59、60、61、63、78、80、82、88~91、96、97、100、106、108、111、113、114、123、301、343、415、516、604、605、607、609、610、613、615、617~619、審2、5、6、34、388、389、394、405、《D》参考人審尋速記録、《H》参考人審尋速記録、《L》参考人審尋速記録、《G》参考人審尋速記録、《I》参考人審尋速記録、《J》参考人審尋速記録)
㋑ なお、店作りの際には、棚割表と実際の売場とのそごが存在することに伴う不都合等の調整のため、棚割表とは異なる在庫商品の配置、陳列がされることがあったほか、店作りの現場において、納入業者が派遣した従業員等がFMD等の原告の従業員の許可を得た場合に、棚割表とは異なる在庫商品の配置、陳列がされるようなこともあった。(査89、666、審3、6、34、49~56、61、68、70、388、389、406、415、《D》参考人審尋速記録、《H》参考人審尋速記録、《L》参考人審尋速記録、《G》参考人審尋速記録、《I》参考人審尋速記録、《J》参考人審尋速記録)
しかし、上記の調整の作業については、その作業内容からして、原告の従業員において実施できないものではなく、また、上記のような原告運営店舗における新規開店又は改装開店の際の店作りの方針等から、店作りの現場において、納入業者が派遣した従業員等がFMD等の原告の従業員の許可を得て棚割表とは異なる在庫商品の配置、陳列をすることができる可能性は低く、上記の棚割表と実際の売場とのそごが存在することに伴う不都合等の調整の場合も含めて、棚割表と異なる在庫商品の配置、陳列が許容される範囲は限られていた。(査89、《L》参考人審尋速記録、《H》参考人審尋速記録)
㋒ 他方、《商品類型①》(《略》、《略》、《略》等)及び《商品類型②》については、そもそも棚割表自体が抽象的な商品類型(種類)によって商品の配置等を定めるにとどまっており、その種類の中での具体的な配置等が決定されていない場合があったなど、現場で具体的な棚割りをすることが予定されたものであった。そのため、棚割表で商品類型ごとの商品の配置等が決まっていたほか、特定の商品の展示、陳列の場所が決まっていたり、商品の陳列、展示、装飾のモデルが示されていたり、売場作りについての一定のルールが決まっていたりすることとの関係で一定の制約はあったものの、納入業者が一定の裁量をもって店作りを行っているという実情があった。(査118、666、682、審51、252、257、407~411)
しかし、《商品類型①》及び《商品類型②》の在庫商品の配置、陳列の作業自体については、その作業内容からして、原告の従業員が実施できないものではなかった。また、原告は、納入業者との商談を通じて、どの《商品類型①》や《商品類型②》をどれだけ仕入れるかを決定しており、原告運営店舗における棚割りについては、原告の担当者と納入業者の担当者との商談の際、商品の演出のためのPOPや実機の使用等の展示、装飾を含めて打合せが行われ、棚割表の内容は、これを作成する店舗支援部の担当者等の承諾の下、一定程度、納入業者の意見が反映されたものとなっていた。そのため、《商品類型①》や《商品類型②》についても、原告において、納入業者の知識・経験に基づく意見を反映した各商品の流行等を踏まえた棚割表を作成した上で、これに基づいて原告の従業員に納入業者の派遣する従業員等が実施するのと同様の在庫商品の配置、陳列を行わせることは可能であった。(査56、58、101、113、117、590、審3、6、49~56、75、76、89・別紙3、120、388、389、394、405、415、《D》参考人審尋速記録、《H》参考人審尋速記録、《G》参考人審尋速記録、《L》参考人審尋速記録、《I》参考人審尋速記録、《J》参考人審尋速記録)
さらに、《商品類型①》や《商品類型②》については、棚割表の作成の時点では実際に納入される商品が具体的に決まっておらず、実際に納入される商品に応じて、店作りの現場における棚割りの調整が必要になることもあったが、この調整についても、上記の方法により作成した棚割表を準備すれば、納入業者の従業員等が店作りの現場において在庫商品の配置、陳列を実施しなければできないものとまでは認め難い。(審252、257、407~409)
カ 店作りのうち商品の展示、装飾について
㋐ 原告運営店舗における店作りのうち商品の展示、装飾は、棚割表に基づき、各売場の特徴が分かるパネルを陳列什器に付け、見本となる実機を定められた場所に設置するほか、展示台、商品の機能・特徴などを記載したPOP、商品を実感できるようにするためのプレゼンテーション用の実機、モニター類、モック(エアコンやデジタルカメラ等の商品の実物ではなく実物大の模型)やサンプル品といった販促物を備え付けて、商品を演出するというものであり、POP等の販促物は、原告が統一的に用意するものもあるが、多くは原告と納入業者との商談の際、各商品をどのように演出するかという観点からその内容を決め、原告が他の業者に発注したり、納入業者自身が用意して送付、持参等したりするものであった。(査64、112、577、590~595、審2~6、34、49~56、60~74、109、389、415、《D》参考人審尋速記録、《H》参考人審尋速記録、《L》参考人審尋速記録、《G》参考人審尋速記録、《I》参考人審尋速記録、《J》参考人審尋速記録、《E》参考人審尋速記録)
㋑ 前記のとおり、原告運営店舗の新規開店又は改装開店の際の店作りについては、原告と納入業者との商談において打合せをした結果を踏まえて作成された棚割表に基づいて行うことが徹底されており、棚割表では、POPや実機の使用等を含む商品の展示、装飾についても、写真や図面などによって指定されていた。
また、原告において周知され、臨店の際に持参するものとされていた原告の商品本部マーケティング部作成の平成22年8月17日付け「エディオンの店作りの原点」(査112)や、これに先立って作成された各マニュアル(査592~595)、その他、原告が作成した店作りに関する文書(査591・別表2、査598)には、原告運営店舗の新規開店又は改装開店の際の店作りにおける商品の展示やPOP等の販促物による装飾の仕方について、画像等を示しながら具体的にそのルールが示されていたほか、MDの事前の承諾がない限り、店作りの現場における納入業者の販促物の使用を禁止することなどが記載されていた。実際に、販促物の使用については、納入業者のPOPの方が分かりやすいとか、納入業者のキャラクターを使用した演出があった方が良いなどとFMD等が判断したような例外的な場合を除き、MD等が事前の商談時等に許可して棚割表に反映されたもの以外は使わないという方針が採られており、店作りにおける商品の展示、装飾の内容は、基本的に、納入業者の従業員等が店作りに参加するか否かに関係なく、原告運営店舗の店作りにおいて許容される限度内であらかじめ棚割表で決められていた。(査51、52、56、59、60、63、89、100、113、114、123、600~602、604、609、610、613、615、617~619、審2、5、6、34、388、389、394、405、《D》参考人審尋速記録、《H》参考人審尋速記録、《L》参考人審尋速記録、《G》参考人審尋速記録、《I》参考人審尋速記録、《J》参考人審尋速記録)
㋒ このように、店作りにおける商品の展示、装飾は棚割表に基づいて行うことが徹底されており、棚割表では、POPや実機の使用等の展示、装飾についても、写真や図面などによって指定されていたことから、原告と納入業者との商談の際に使用が認められたPOP等の販促物や什器類は、納入業者が用意するものを含め、基本的に、あらかじめ準備することが可能なものであった。そして、納入業者は、実際には、原告運営店舗の全ての新規開店又は改装開店の際に店作りのための従業員等派遣を行っていたわけではなかったにもかかわらず、原告運営店舗の新規開店又は改装開店に際して商品の展示、装飾に係る店作りがされていたことや、実際に行われた商品の展示、装飾の作業内容からすれば、原告運営店舗において棚割表に基づいて実施される店作りにおける商品の展示、装飾についても、納入業者が派遣する従業員等でなければ実施できないものではなく、基本的には、原告の従業員において実施することが可能なものであった。(査52、53、55、56、61~63、82、88、90、92、96、97、108、113、114、301、516、576、604、605、607、615、審6、34、《D》参考人審尋速記録、《H》参考人審尋速記録、《G》参考人審尋速記録、《I》参考人審尋速記録、《E》参考人審尋速記録、《N》参考人審尋速記録)
㋓ また、店作りの際には、商品の展示、装飾についても、前記の在庫商品の配置、陳列と同様に、棚割表と実際の売場とのそごが存在することに伴う不都合等の調整のため、棚割表とは異なる在庫商品の展示、装飾がされることがあったほか、店作りの現場において、納入業者が派遣した従業員等がFMD等の原告の従業員の許可を得た場合に、棚割表とは異なる在庫商品の展示、装飾がされるようなこともあった。(査89、666、審3、6、34、49~56、61、68、70、388、389、406、415、《D》参考人審尋速記録、《H》参考人審尋速記録、《L》参考人審尋速記録、《G》参考人審尋速記録、《I》参考人審尋速記録、《J》参考人審尋速記録)
しかし、上記の調整の作業についても、その作業内容からして、基本的には、原告の従業員において実施できないものではなく、また、上記のような原告運営店舗における新規開店又は改装開店の際は棚割表に基づいて行うことを徹底するとの店作りの方針のほか、原告運営店舗における棚割りについては、原告の担当者と納入業者の担当者との商談の際、商品の演出のためのPOPや実機の使用等の展示、装飾を含めて打合せが行われ、棚割表は、これを作成する店舗支援部の担当者等の承諾の下、一定程度、納入業者の意見が反映されたものとなっていたことから、店作りの現場において、納入業者が派遣した従業員等がFMD等の原告の従業員の許可を得て棚割表とは異なる在庫商品の展示、装飾をすることができる可能性は低く、上記の棚割表と実際の売場とのそごが存在することに伴う不都合等の調整の場合も含めて、棚割表と異なる在庫商品の展示、装飾が許容される範囲は限られていた。(査63、89、《L》参考人審尋速記録、《H》参考人審尋速記録、《I》参考人審尋速記録)
⑷ 原告に対する公正取引委員会による立入検査とその後の原告の対応
原告は、平成22年11月16日、公正取引委員会による立入検査(本件立入検査)を受けた。
原告は、それまでは、納入業者に無償で従業員等を派遣させていたが、本件立入検査がされたことを受け、同月30日、経営会議を開き、会社として、今後は納入業者に対して店舗開設準備作業のために従業員等の派遣依頼を行わず、従業員等の派遣を受けた場合には費用を支払うこと及びその旨を記載した文書を納入業者に早急に送付することを決定した。
そして、原告は、同年12月6日頃、納入業者に対し、原告においては原告運営店舗の新装・改装開店前の納入業者による店作りにつき納入業者からの応援・協力を要請しないこととしていること、今後、納入業者が自主的に店舗開設準備作業に従業員等を派遣して自社製品について店作りをした場合は、日当及び交通費(実費)を支払うので請求書を送付されたい旨記載した通知を請求書のひな形と併せて送付した。
さらに、原告は、今後は、店舗開設準備作業をできるだけ自社従業員で行うようにし、納入業者から従業員等の派遣を受けて店舗開設準備作業を行う場合には、作業の対象を当該納入業者が納入した商品のみに限定し、納入業者に対して「よろしくお願いします。」という依頼の表現も使用しないこととした。また、原告は、本件立入検査後間もない時期に、納入業者に対して、店舗開設準備作業の日程等を連絡する運用を一旦中断し、その約2か月後に、納入業者に対する店舗開設準備作業の日程等を送付する運用を再開したが、以降は、メールの本文には「お願いします」、「ご協力ください」といった依頼の趣旨を示す表現を用いないようにした。(査135~137、575、576)
⑸ 平成22年1月1日から同年11月29日までの期間における原告の対象納入業者からの各購入額、各マル特経費負担、マル特経費負担控除後の各購入額は、別紙Dのとおりである。(弁論の全趣旨)
2 争点1(本件従業員等派遣をさせたことは、原告が対象納入業者に対して自己の取引上の地位が優越していることを利用して正常な商慣習に照らして不当に行ったものか)について
⑴ 優越的地位の濫用規制の趣旨及び判断基準
ア 優越的地位の濫用規制の趣旨
独占禁止法は、不公正な取引方法等を禁止し、事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正かつ自由な競争を促進するなどし、もって、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とし(同法1条)、同法19条は、「事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。」と定め、同法2条9項5号ロ(平成21年改正法施行日前においては旧一般指定14項)は、不公正な取引方法のうち「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること」について、当該行為の一として、「継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。)に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること」を定める。これは、自己の取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者が、取引の相手方に対し、その地位を利用して正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることは、当該取引の相手方の自由かつ自主的な判断による取引を阻害するとともに、当該取引の相手方はその競争者との関係において競争上不利となる一方で、行為者はその競争者との関係において競争上有利となるおそれがあり、このような行為は公正な競争を阻害するおそれがあるということができるからであると解される(ガイドライン第1の1参照)。
イ 優越的地位の判断基準
㋐ 前記アに記載した独占禁止法の趣旨に照らせば、独占禁止法2条9項5号所定の「自己の取引上の地位が相手方に優越していること」(優越的地位)に関し、行為者につき取引の相手方に対してその取引上の地位が優越しているというためには、行為者が市場支配的な地位又はそれに準ずる絶対的に優越した地位にある必要はなく、取引の相手方との関係で相対的に優越した地位にあれば足りるものと解され、また、優越した地位にあるとは、取引の相手方にとって行為者との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため、行為者が取引の相手方にとって著しく不利益な要請等を行っても、取引の相手方がこれを受け入れざるを得ないような場合をいうものと解される(ガイドライン第2の1参照)。
㋑ そして、これらの観点から優越的地位の該当性についての判断をするに当たっては、①行為者の市場における地位、②当該取引の相手方の行為者に対する取引依存度、③当該取引の相手方にとっての取引先変更の可能性、④その他行為者と取引することの必要性、重要性を示す具体的な事実(行為者との取引額、行為者の今後の成長可能性、取引の対象となる商品・役務を取り扱うことの重要性、事業規模の相違等)を総合的に考慮するのが相当である。
また、取引関係にある当事者間の取引を巡る具体的な経緯や態様には、当事者間の相対的な力関係が如実に反映されることが少なくないから、実際に取引の相手方が行為者による客観的に不利益な行為を受け入れている場合には、これを受け入れるに至った経緯や態様等を総合的に勘案して、行為者の優越的地位該当性を判断することが合理的である。
原告は、この点について、優越的地位の判断において考慮されるべき要素は、第一に取引先変更可能性であり、次いで取引依存度であって、他の要素は関連性が欠ける旨主張するが、上記に説示したとおりであるから、原告の上記主張は採用することができない。
⑵ 原告の取引上の地位は対象納入業者に対して優越しているか否か
ア 27社について
原告の市場における地位は、前記認定事実⑴のとおりであった。
そして、《納入業者(6)》、《納入業者(7)》、《納入業者(12)》、《納入業者(26)》、《納入業者(28)》、《納入業者(30)》、《納入業者(32)》、《納入業者(33)》、《納入業者(37)》、《納入業者(39)》、《納入業者(46)》、《納入業者(49)》、《納入業者(55)》、《納入業者(56)》、《納入業者(61)》、《納入業者(62)》、《納入業者(63)》、《納入業者(64)》、《納入業者(70)》、《納入業者(73)》、《納入業者(80)》、《納入業者(88)》、《納入業者(93)》、《納入業者(105)》、《納入業者(114)》、《納入業者(118)》、《納入業者(120)》の27社については、別紙A記載の各事実、とりわけ、27社の原告に対する取引依存度がいずれも大きい(大きいものでは本件対象期間内のいずれか1期において49.0%であり、小さいものでも本件対象期間内のいずれか1期において10.0%を超えている。)ことが認められる。
また、27社においては、別紙Aの「取引継続必要との回答」欄及び「取引先変更困難との回答」欄記載のとおり、本件報告書において、いずれも原告との取引を継続することが必要である旨を回答するとともに、仮に原告との取引を継続できずに原告に代わる取引先を見つける必要が生じた場合の状況として、原告に代わる取引先を見つけること又は他の取引先との取引を増やすことで原告との取引停止に伴う損失を補うことは困難である旨を回答している。
加えて、27社については、別紙Cのとおり、本件従業員等派遣を行い、「作業内容」欄記載の作業に従事することによって、後記認定のとおり、不利益行為を受け入れていた事実が認められるところ、原告運営店舗に対する本件従業員等派遣の頻度・回数・規模に照らすと、27社の本件従業員等派遣に伴う負担は決して僅少なものとはいえない。
また、前記認定のとおり、27社のみならず59社及び6社を含む対象納入業者について、原告は、店舗支援部が作成した店作りスケジュール表を踏まえて対象納入業者に店舗開設準備作業の日程等の連絡を行い、対象納入業者に対する商品の搬出、搬入又は店作りを知らせる文書や電子メールの一部には、従業員等の派遣を依頼する趣旨が明記されたものがあり、原告の店作りに関するマニュアルには、納入業者による従業員等派遣を前提とする記載がされ、しかも、従前から、家電小売業界では、納入業者が家電量販店の新規開店又は改装開店前の準備作業を負担する商慣習が存在しており、原告の従業員の一部は、本件対象期間中も、対象納入業者が従業員等の派遣依頼に応じるのが当然であるように考えていたことがうかがわれ(査97、172、審82)、これに対して、従業員等の派遣依頼を受けた対象納入業者においても、原告に対して従業員等の派遣の可否や人数を返答することが少なくなく、従業員等を派遣できない場合には、原告に謝罪の連絡を入れたり、代わりの者を派遣したりするなどの対応をすることがあり、また、同種の商品を納入する他の納入業者と調整した上で、原告に対し、店作りに係る日程及び店作りに派遣する従業員等の分担を連絡するなどしていたものであって、対象納入業者による本件従業員等派遣は、このような経緯で行われたものであることが認められる。
原告は、消費者に販売するために商品を納入業者から購入する大規模な小売業者であり、他方で対象納入業者は、自ら製造し又は自ら仕入れた商品を、原告に販売する納入業者であって、対象納入業者に本件従業員等派遣をさせたという不利益行為は、原告によるいわゆるバイイングパワーが発揮されやすい取引上の関係を背景として、92社という多数の対象納入業者に対して、本件対象期間(平成20年9月6日から平成22年11月29日まで)の約2年3か月という長期間にわたり、別紙B(ただし、《店舗名⑩》を除く。)記載の132回に上る原告運営店舗の新規開店又は改装開店に際し、原告の利益を確保することなどを目的として、原告運営店舗の店舗開設準備作業に関係する原告の従業員の連携の下、組織的かつ計画的に一連のものとして行われたものであることが認められる。
これらの事情を総合考慮すれば、27社においては、原告との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため、原告が著しく不利益な要請等を行っても、これを受け入れざるを得ないような場合にあったということができ、原告の取引上の地位は、27社に対して優越していたものと認めることができる。
イ 59社について
原告の市場における地位は、前記認定事実⑴のとおりであった。
そして、《納入業者(1)》、《納入業者(5)》、《納入業者(9)》、《納入業者(10)》、《納入業者(11)》、《納入業者(18)》、《納入業者(19)》、《納入業者(20)》、《納入業者(21)》、《納入業者(22)》、《納入業者(27)》、《納入業者(29)》、《納入業者(31)》、《納入業者(34)》、《納入業者(35)》、《納入業者(38)》、《納入業者(43)》、《納入業者(48)》、《納入業者(51)》、《納入業者(52)》、《納入業者(53)》、《納入業者(54)》、《納入業者(57)》、《納入業者(58)》、《納入業者(65)》、《納入業者(66)》、《納入業者(67)》、《納入業者(68)》、《納入業者(69)》、《納入業者(71)》、《納入業者(75)》、《納入業者(77)》、《納入業者(79)》、《納入業者(81)》、《納入業者(82)》、《納入業者(83)》、《納入業者(84)》、《納入業者(86)》、《納入業者(87)》、《納入業者(89)》、《納入業者(90)》、《納入業者(96)》、《納入業者(97)》、《納入業者(100)》、《納入業者(101)》、《納入業者(102)》、《納入業者(103)》、《納入業者(106)》、《納入業者(107)》、《納入業者(109)》、《納入業者(110)》、《納入業者(112)》、《納入業者(113)》、《納入業者(117)》、《納入業者(119)》、《納入業者(121)》、《納入業者(123)》、《納入業者(126)》、《納入業者(127)》の59社については、別紙A記載の各事実、とりわけ、59社の取引先別の売上高の順位における原告の順位がいずれも高いことが認められる。
すなわち、本件対象期間における期の中で、対象納入業者の各取引先総数中、原告に対する売上高が最も高い順位は、それぞれ、《59社のうち1社》が《取引先数》社中の3位、《前同旨=59社のうち1社》が《取引先数》社中の4位、《前同旨》が《取引先数》社中の3位、《前同旨》が《取引先数》社中の4位、《前同旨》が《取引先数》社中の4位、《前同旨》が《取引先数》社中の3位、《前同旨》が《取引先数》社中の3位、《前同旨》が《取引先数》社中の8位、《前同旨》が《取引先数》社中の2位、《前同旨》が《取引先数》社中の4位、《前同旨》が《取引先数》社中の3位、《前同旨》が《取引先数》社中の3位、《前同旨》が《取引先数》社中の5位、《前同旨》が《取引先数》社中の5位、《前同旨》が《取引先数》社中の4位、《前同旨》が《取引先数》社中の4位、《前同旨》が《取引先数》社中の8位、《前同旨》が《取引先数》社中の7位、《前同旨》が《取引先数》社中の4位、《前同旨》が《取引先数》社中の2位、《前同旨》が《取引先数》社中の2位、《前同旨》が《取引先数》社中の9位、《前同旨》が《取引先数》社中の6位、《前同旨》が《取引先数》社中の3位、《前同旨》が《取引先数》社中の2位、《前同旨》が《取引先数》社中の2位、《前同旨》が《取引先数》社中の4位、《前同旨》が《取引先数》社中の4位、《前同旨》が《取引先数》社中の2位、《前同旨》が《取引先数》社中の6位、《前同旨》が《取引先数》社中の1位、《前同旨》が《取引先数》社中の2位、《前同旨》が《取引先数》社中の4位、《前同旨》が《取引先数》社中の3位、《前同旨》が《取引先数》社中の7位、《前同旨》が《取引先数》社中の4位、《前同旨》が《取引先数》社中の5位、《前同旨》が《取引先数》社中の5位、《前同旨》が《取引先数》社中の3位、《前同旨》が《取引先数》社中の2位、《前同旨》が《取引先数》社中の2位、《前同旨》が《取引先数》社中の5位、《前同旨》が《取引先数》社中の3位、《前同旨》が《取引先数》社中の7位、《前同旨》が《取引先数》社中の6位、《前同旨》が《取引先数》社中の4位、《前同旨》が《取引先数》社中の6位、《前同旨》が《取引先数》社中の1位、《前同旨》が《取引先数》社中の3位、《前同旨》が《取引先数》社中の3位、《前同旨》が《取引先数》社中の8位、《前同旨》が《取引先数》社中の3位、《前同旨》が《取引先数》社中の3位、《前同旨》が《取引先数》社中の5位、《前同旨》が《取引先数》社中の1位、《前同旨》が《取引先数》社中の5位、《前同旨》が《取引先数》社中の3位、《前同旨》が《取引先数》社中の3位及び《前同旨》が《取引先数》社中の6位であったことが認められる。
また、59社においては、別紙Aの「取引継続必要との回答」欄及び「取引先変更困難との回答」欄記載のとおり、本件報告書において、いずれも原告との取引を継続することが必要である旨を回答するとともに、仮に原告との取引を継続できずに原告に代わる取引先を見つける必要が生じた場合の状況として、原告に代わる取引先を見つけること又は他の取引先との取引を増やすことで原告との取引停止に伴う損失を補うことは困難である旨を回答している。
そうすると、59社については、前記アに説示した27社のように原告に対する取引依存度が相対的に大きいとまではいえないものの、59社にとっては、取引先別の原告に対する売上高の順位からして、原告は、比較的安定した売上げを確実に期待することができる取引先であり、かつ、前記認定のとおり、その事業が拡大基調にあって今後の取引の拡大を期待できる取引先であり、今後の成長可能性も見据えて取引を継続することが重要な取引先であったということができる。
加えて、59社については、別紙Cのとおり、本件従業員等派遣を行い、「作業内容」欄記載の作業に従事することによって、後記認定のとおり、不利益行為を受け入れていた事実が認められるところ、原告運営店舗に対する本件従業員等派遣の頻度・回数・規模に照らすと、59社の本件従業員等派遣に伴う負担は決して僅少なものとはいえない上、対象納入業者において本件従業員等派遣という不利益行為を受け入れるに至った経緯及び態様が前記アにおいて説示したとおりであったことからすると、59社を含む対象納入業者に本件従業員等派遣をさせたという不利益行為は、原告によるいわゆるバイイングパワーが発揮されやすい取引上の関係を背景として、多数の対象納入業者に対して、本件対象期間の約2年3か月という長期間にわたり、別紙B(ただし、《店舗名⑩》を除く。)記載の132回に上る原告運営店舗の新規開店又は改装開店に際し、原告の利益を確保することなどを目的として、原告運営店舗の店舗開設準備作業に関係する原告の従業員の連携の下、組織的かつ計画的に一連のものとして行われたものであることが認められる。
これらの事情を総合考慮すれば、59社においては、原告との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため、原告が著しく不利益な要請等を行っても、これを受け入れざるを得ないような場合にあったということができ、原告の取引上の地位は、59社に対して優越していたものと認めることができる。
ウ 6社について
原告の市場における地位は、前記認定事実⑴のとおりであった。
そして、《納入業者(2)》、《納入業者(25)》、《納入業者(45)》、《納入業者(94)》、《納入業者(108)》、《納入業者(122)》の6社については、27社及び59社にみられたような事情(取引依存度の大きさや取引先別売上高における原告の順位の高さ)は見当たらない。しかし、6社については、別紙A記載の各資本金額(《略》)及び年間総売上高(本件対象期間中における期の中で最も高い売上高は、《略》)、さらには、従業員数についても、《略》であること(《証拠略》)に照らせば、その事業規模が原告(資本金額が101億7400万円、平均年間連結売上高が約8413億4800万円、従業員数が1万名以上。)に比して著しく小さいということができる。
そして、これら小規模な納入業者にとってみれば、一般的に新たな取引の開始や取引の拡大につながるような情報や機会も限定されると考えられるから、原告との取引に代えて、新たな取引先と取引を開始し、あるいは既存の取引先との取引を拡大することは、必ずしも容易なことではないことが推認される。他方、原告は、前記認定のとおり、その事業が拡大基調にあって、上記のような小規模の納入業者にとっては、今後の取引の拡大を期待することができる取引先であり、自らの事業活動の拡大や安定的な継続のためには、そのような既存の取引先である原告との取引が必要かつ重要であるものといえる。現に、6社においては、別紙Aの「取引継続必要との回答」欄及び「取引先変更困難との回答」欄記載のとおり、本件報告書において、いずれも原告との取引を継続することが必要である旨を回答するとともに、仮に原告との取引を継続できずに原告に代わる取引先を見つける必要が生じた場合の状況として、原告に代わる取引先を見つけること又は他の取引先との取引を増やすことで原告との取引停止に伴う損失を補うことは困難である旨を回答している。
加えて、6社については、別紙Cのとおり、本件従業員等派遣を行い、「作業内容」欄記載の作業に従事することによって、後記認定のとおり、不利益行為を受け入れていた事実が認められるところ、原告運営店舗に対する本件従業員等派遣の頻度・回数・規模に照らすと、6社の事業規模からすれば、本件従業員等派遣に伴う負担は決して僅少なものとはいえない上、対象納入業者において本件従業員等派遣という不利益行為を受け入れるに至った経緯及び態様が前記アにおいて説示したとおりであったことからすると、6社を含む対象納入業者に本件従業員等派遣をさせたという不利益行為は、原告によるいわゆるバイイングパワーが発揮されやすい取引上の関係を背景として、多数の対象納入業者に対して、本件対象期間の約2年3か月という長期間にわたり、別紙B(ただし、《店舗名⑩》を除く。)記載の132回に上る原告運営店舗の新規開店又は改装開店に際し、原告の利益を確保することなどを目的として、原告運営店舗の店舗開設準備作業に関係する原告の従業員の連携の下、組織的かつ計画的に一連のものとして行われたものであることが認められる。
これらの事情を総合考慮すれば、6社においては、原告との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため、原告が著しく不利益な要請等を行っても、これを受け入れざるを得ないような場合にあったということができ、原告の取引上の地位は、6社に対して優越していたものと認めることができる。
エ 小括
以上によれば、対象納入業者(92社)については、いずれも、本件対象期間中、原告との取引の継続が困難となることがその事業経営上大きな支障を来すため、原告が当該納入業者にとって著しく不利益な要請等を行っても、これを受け入れざるを得ないような場合にあったものと認めるのが相当であり、したがって、原告の取引上の地位が対象納入業者に対して優越していたものということができる。
オ 原告の主張について
㋐ 優越的地位の有無の判断において取引相手とされるべき者について
a 原告は、家電製品等の製造会社の企業グループに属する販売会社については、取引において自主的判断をすべき立場にあるのは販売会社ではなく、企業グループであるから、原告との取引継続が事業経営上大きな支障を来すか否かや事業規模の比較において、取引相手として検討されるべきは、有機的に一体となって事業活動を行う企業グループであって、納入業者のみを取引相手とみることは実態に反するとして、少なくとも、各企業グループの連結売上高又は連結経常利益率が原告のそれを上回っている企業グループに属する下記の対象納入業者については、原告の優越的地位は認められないから、これを肯定した本件審決の判断は実質的証拠を欠くものである旨主張する。

《納入業者31社》
しかし、独占禁止法において、企業グループや親子会社等の複数の事業者につき、その一体性を考慮して取り扱う場合は、同法7条の2第13項1号、10条2項、15条2項ただし書のように特別の規定が存在する場合に限られるのであって、そのような規定がない同法2条9項5号及び20条の6の「相手方」は、独立した法人格を有する個々の取引主体であって、企業グループ全体と解することはできない。
そして、甲が乙に対して優越した地位にあるか否かの判断は、行為者である甲が、個々の相手方である乙との関係で相対的に優越した地位にあるか否かの判断であるから、乙が企業グループに属する場合であっても、あくまで乙(相手方)が当該企業グループ内のいずれの事業者であるかを確定した上、優越的地位の有無に係る総合的な判断の中で、乙の属する企業グループの影響力を考慮すれば足りる。したがって、対象納入業者について、原告との取引を担当した個々の対象納入業者自身を基準として、原告の優越的地位の有無を判断した本件審決の判断枠組みは正当なものであり、その認定・判断に誤りがあるとはいえない。
b 原告は、原告が単一の株式会社となった平成22年10月1日までは、別個の4法人が、それぞれ対象納入業者に対して優越的地位にあったか否かを評価すべきであって、本件審決が、原告を一つの原告グループとして取引当事者として取り扱い、優越的地位を判断したことは、独占禁止法上、適法な認定・判断とはいえない旨主張する。
しかし、前記前提となる事実のとおり、原告は、本件対象期間の始期には、原告及び原告事業子会社が自ら運営する店舗のほか、原告又は原告事業子会社のフランチャイズ・チェーンに加盟する事業者が運営する店舗において販売する全ての商品について、上記各社との経営指導委託契約又は業務委託契約に基づき、納入業者から自ら一括して仕入れ、仕入れた商品をこれら原告運営店舗に供給するようになっていた。また、原告事業子会社は、本件対象期間の平成22年10月1日までに、原告に吸収合併された。このように、本件対象期間において、対象納入業者との間で取引主体であったのは形式的にも実質的にも原告であったから、この点についての本件審決の認定・判断に誤りはないというべきである。
c 原告は、本件審決が、原告の市場における地位の評価要素として連結売上高を基準とし、対象納入業者については、企業グループではなく、対象納入業者単体の売上高のみを基準とし、原告に不利なダブルスタンダードによって両社の関係を判断しており合理性がない旨主張する。
しかし、前記前提となる事実のとおり、原告は、運営主体の違いにかかわらず、原告運営店舗において販売する全ての商品について、これら商品を原告に直接販売して納入する事業者(納入業者)から、一括して仕入れ、仕入れた商品を原告運営店舗に供給していたのであるから、原告の市場における地位を評価するに当たり、原告の連結売上高を考慮することには合理性があるというべきであり、これに対して、前記aで説示したとおり、原告との取引を担当した個々の対象納入業者を基準としてその売上高をみることには合理性があるというべきである。
㋑ 27社について
a 原告は、対象納入業者が原告と納入価格について対等に交渉することができているという事実は、取引先選択の自由が当事者双方にあり、自由競争が行われていることを示すものであるから、原告との間で、納入価格に関する交渉を自由かつ自主的な判断により行っていた対象納入業者については、原告が優越的地位にあるとはいえない旨主張する。
しかし、対象納入業者において、納入価格等の取引条件の交涉の場面において原告と対等に交渉でき、あるいは、提示する条件が受け入れられていたという事情があったとしても、このような継続的取引の中の一場面における事実のみをもって、原告の取引上の地位が、対象納入業者に対して優越していなかったとはいえない。本件においては、対象納入業者の全てが、原告との取引継続必要との回答及び取引先変更困難との回答をしている上、後記認定のとおり、現に原告による不利益行為を受け入れていたことからすれば、原告と真に対等に交渉できていたとは直ちには言い難いし、原告との取引上の交渉は、対象納入業者が不利益行為を受け入れながら行われていたのであるから、対象納入業者の提示した取引条件が受け入れられていたとしても、対象納入業者の自由かつ自主的な判断によって対価的な均衡が図られていたとも言い難い。
したがって、納入価格等の取引条件に関する交渉において自由かつ自主的な判断に基づき対等な交渉が行われていれば、原告の対象納入業者に対する優越的地位が否定される旨の原告の主張は理由がない。
b 《27社のうち1社》について
本件審決は、《上記納入業者》について、別紙A記載の同社の原告に対する取引依存度を、同社全社の年間総売上高ではなく、国内の取引を全て担当する《略》部による国内の取引先に対する年間総売上高に基づいて算定した上、同社の《略》部は、同社の経営全体の中で相対的に重要なものであったから、同社にとっては、原告との取引の継続が困難となれば、《略》部における収益の大幅な落ち込みが予想され、《略》部における事業方針の修正を余儀なくされるなど、全社的にみてもその後の事業経営に大きな支障を来すことが看取できるから、全社的にみれば原告に対する取引依存度が小さかったとしても、《上記納入業者》にとって、原告との取引の継続が困難になることは事業経営上大きな支障を来すものと認められると判断した。
原告は、この点について、同社の《略》部の原告に対する取引依存度と、同社全体のそれとを比較すれば、同《略》部の事業は同社全体にとって《数値》ないし《数値》程度の比重しかなく(《証拠略》)、同社は、国内事業よりも海外事業の方が圧倒的に重要であったから、同社の《略》部が同社の経営全体の中で相対的に重要なものであったとの事実はなく、現に、同社は原告のアンケート(審1の15)に対して、原告との取引が停止しても、既存の取引先との取引を増やすことによって、半年程度の間に4割以上6割未満の取引額を補うことができると思う、仮に失った原告との取引額を補いきれなかったとしても事業経営上大きな支障が生じたとは思われない旨回答しているから、本件審決の上記判断は実質的証拠を欠く不合理なものである旨主張する。
しかし、《上記納入業者》は、《製品名》等の製造業者であるところ、同社の《略》部は、かかる事業について国内の取引全てを担当する部署である(《証拠略》)。我が国を本拠とする同社の《製品名》等の事業活動において、いかに《略》部が担当する売上高が大きいとしても、国内市場向けの《略》部を置く同社にとって、我が国の市場から撤退するか否かは重大な経営判断であると考えられる。そして、同社の《略》部における原告に対する取引依存度は、別紙Aのとおり、《略》と高い上、取引依存度の順位も総取引先《取引先数》ないし《取引先数》社中いずれも《略》と高いことから、原告が国内において安定的な売上高を継続的に確保できる取引先であることを意味し、同社の原告との取引継続必要との回答や取引先変更困難との回答は、客観的な事実に裏付けられたものといえる。これらの事情を総合考慮すれば、《上記納入業者》は、原告との取引の継続が困難となれば、《略》部における収益の大幅な落ち込みが予想され、《略》部における事業方針の修正を余儀なくされるなど、全社的にみてもその後の事業経営に大きな支障を来すことが看取でき、全社的にみれば原告に対する取引依存度が小さかったとしても、同社にとって、原告との取引の継続が困難になることは事業経営上大きな支障を来すものと認めるのが相当である。
そして、《上記納入業者》について、原告との取引が終了して売上げの減少を招くことについて、仮にその回復可能性があったとしても、そのためには相当の労力を要するものと推察され、事業経営の影響がないとはいえないこと、同社の原告に対する年間売上高は、別紙Aのとおり、《金額》円、《金額》円、《金額》円と相当程度の額にのぼる上、取引依存度が上記のとおり《略》と高いこと、原告の市場における地位、《上記納入業者》が原告との取引継続必要との回答及び取引先変更困難との回答をしていること、本件従業員等派遣の頻度・回数・規模、同社が本件従業員等派遣に至る経緯等の事情を総合考慮すれば、原告の同社に対する優越的地位を認定した本件審決の判断に誤りがあるとはいえない。
c 《27社のうち1社》について
本件審決は、《上記納入業者》について、別紙A記載の取引依存度を、《上記納入業者》全社の年間総売上高ではなく、国内の《略》や家電量販店などの法人向けに《製品名》を販売する部署である同社の《略》本部の《略》部の年間総売上高に基づいて算定した上、《上記納入業者》では、《略》の販売が総売上高のうちの約2分の1超を占め、その中で、家電量販店等における販売も重要であり、同社の《略》本部の《略》部は、同社の経営全体の中で相対的に重要なものであったから、同社にとっては、原告との取引の継続が困難となれば、《略》部における収益の大幅な落ち込みが予想され、同部における事業方針の修正を余儀なくされるなど、全社的にみてもその後の事業経営に大きな支障を来すことが看取できるから、全社的にみれば原告に対する取引依存度が小さかったとしても、なお《上記納入業者》にとって、原告との取引の継続が困難になることは事業経営上大きな支障を来すものと認められると判断した。
原告は、この点について、同社の《略》販売が総売上高の約2分の1超を占めていたとの事実については、客観的・数値的裏付けがない上、同社従業員の供述によっても、同社の総売上高の約2分の1弱は《略》販売以外(《略》)であり、残りの《略》販売の取引先も国内法人だけではない上、国内法人の取引先としても家電量販店だけでなく《略》もあったから、《略》部による家電量販店への販売は、同社の売上高のごく一部にすぎず、これが重要であったと認定できないはずであるし、《略》部の売上高は同社全体の売上高のわずか数パーセントに留まるから、原告の同社に対する優越的地位を認定したことは実質的証拠を欠く不合理なものである旨主張する。
しかし、《上記納入業者》における《略》販売が総売上高の約2分の1超を占めていることや、《略》以外の家電量販店等における販売も重要であったことは、証拠(《証拠略》)により認定できる上、同社は、我が国を本拠として《略》販売等の事業活動を行っており、《略》本部の《略》部を置く同社にとって、《略》と並ぶ家電量販店を主要な取引先とする国内法人向けの市場から撤退することが容易な経営判断であるとは考え難く、同社において《略》部が相対的に重要であったといえる。
そして、同社の家電量販店への売上高が、全体の売上高の一部にすぎないとしても、同社の《略》本部の《略》部における原告に対する取引依存度は、別紙Aのとおり、《略》と高く、取引依存度の順位も総取引先《取引先数》社中《略》と高いことから、原告が国内において安定的な売上高を継続的に確保できる取引先であることを意味しており、原告に対する年間売上高も、別紙Aのとおり、《金額》円、《金額》円、《金額》円と相当程度の額にのぼる上、売上高が年々増加していることや、原告の市場における地位、《上記納入業者》が原告との取引継続必要との回答及び取引先変更困難との回答をしていること、本件従業員等派遣の頻度・回数・規模、同社が本件従業員等派遣に至る経緯等の事情を総合考慮すれば、原告の同社に対する優越的地位を認定した本件審決の判断に誤りがあるとはいえない。
㋒ 59社について
a 原告は、59社について、本件審決が審判過程で争点化されていなかった「取引依存度の順位」を事実上の基準として原告の優越的地位を認めたのは、不意打ち的で適正手続に反する不当なものである上、実体的判断としても、取引依存度と切り離された「取引依存度の順位」という指標は優越的地位と関連性を有しないから、同指標を根拠に優越的地位を判断することは合理性に欠ける旨主張する。
しかし、取引先別の取引依存度の順位が高いということは、取引先別の取引額の順位が高く、それだけ取引額が大きいことを意味するものであるが、ガイドラインにおいても、「甲と取引することの必要性を示す具体的事実」として、「甲との取引の額」が例示されていることからすれば(ガイドライン第2の2⑷)、本件審決が、「取引依存度における原告の順位」を優越的地位の判断の際の考慮要素として挙げたことが、原告に対する不意打ちに当たるとはいえず、適正手続に反するものとはいえない。
そして、原告との取引関係において取引依存度における原告の順位が継続的に高い場合には、原告が比較的高水準の売上高を安定的に確保できる取引先であることを意味するものと解され、その事業経営上、原告と取引を継続する必要があるものといえるから、原告との取引の継続が困難となれば、取引先の変更や事業方針の転換を迫られるなど事業経営上大きな支障を来すこととなることが推認される。
したがって、本件審決が、59社の取引先別の売上高の順位における原告の順位がいずれも高いことを、原告の59社に対する優越的地位の判断の際の考慮要素として挙げたことが不合理であるとはいえない。
b 原告は、59社の中には、原告に対する取引依存度の順位が高いとは評価できない対象納入業者が含まれており、少なくとも、原告に対する取引依存度が4%以上(これが「高い水準」か否かはともかく)にも達せず、取引依存度の順位が安定して高いとはいえず、複数の事業年度にわたって安定的に上位を占めているともいえない対象納入業者である《59社のうち4社》については、原告の優越的地位が否定されるべきである旨主張する。
確かに、別紙Aのとおり、原告に対する取引依存度の順位が高い59社については、その過半数が原告に対する取引依存度が4%以上という水準にあるものの(10%に近い納入業者も散見される。)、中には4%に達しない納入業者も存在する。しかし、上記59社の原告に対する取引依存度における順位は、前記認定のとおり、対象納入業者のそれぞれの多数の取引先の中で、1割以内に位置していて極めて高いだけでなく、複数の事業年度にわたって安定的に上位を占めている。このように、59社にとって、原告は、多数ある取引先の中でも比較的高水準の売上高を継続して安定的に確保できる取引先であって、その事業経営上、原告と取引を継続する必要があるものといえるから、原告との取引の継続が困難となれば、取引先の変更や事業方針の転換を迫られるなど事業経営上大きな支障を来すこととなることが推認され、他の取引先に容易に代替できるとは考え難い。このことは、原告に対する取引依存度が4%に達しない対象納入業者である《上記納入業者4社》についても同様であるから、原告の上記主張は理由がない。
c 原告は、本件審決が、59社のうち、サンキューに対する売上高を含んだ上での取引依存度の順位を認定した各社(別紙Aにおいて「取引依存度の順位はサンキューに対する売上高を含んだ上でのものである。」等と記載されているもの)については、原告とは別の法人であるサンキューに対する納入業者の売上高を原告に対する売上高に加算して、取引依存度の順位を認定しているが、このような順位を根拠として原告の優越的地位を判断できるはずがなく、とりわけ、取引依存度における原告の順位が高いとされる59社のうち下記の9社については、サンキューに対する売上高を除いた場合の取引依存度の順位が別紙A記載の順位と異なる年度があることが認定できるし、59社のうち下記の21社についても取引依存度の順位が異なる可能性のある年度がある上、《59社のうち2社》は本件対象期間中、取引依存度の順位が終始10位以下であった可能性もあるのであって、少なくとも下記の9社及び21社については、取引依存度の順位が具体的に認定できないから、原告の優越的地位を肯定した本件審決の判断は実質的証拠を欠くものである旨、加えて、《59社のうち1社》については別紙Aのうち、③の期間についての取引依存度の順位のみが認定され、①及び②の期間についての取引依存度の順位は認定されていないから、本件対象期間について取引依存度における原告の順位が高いと認定できるはずがなく、同社について原告の優越的地位を肯定した本件審決の判断には誤りがある旨主張する。

9社:《59社のうち9社》
21社:《59社のうち21社》
確かに、別紙Aにおいて「取引依存度の順位はサンキューに対する売上高を含んだ上でのものである。」等と記載されている対象納入業者に係る原告に対する取引依存度の順位は、サンキュー(査24及び弁論の全趣旨によれば、サンキューは、北海道、北陸を中心に「100満ボルト」を展開する原告の完全子会社である。)に対する売上高を含んだ上でのものである。
しかし、上記各対象納入業者についてみると、証拠(《証拠略》)によれば、《59社のうち1社》は原告に対する売上高(サンキューに対する売上高は除く。本項において以下同じ。)の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が0.8ないし1.0%であり、《59社のうち1社》は原告に対する売上高の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が0.8ないし1.0%であり、《59社のうち1社》は原告に対する売上高の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が0.1ないし0.4%であり、《59社のうち1社》は原告に対する売上高の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が0.2ないし0.5%であり、《59社のうち1社》は原告に対する売上高の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が0.1ないし0.2%であり、《59社のうち1社》は原告に対する売上高の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が0.16ないし0.19%であり、《59社のうち1社》は原告に対する売上高の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が0.1ないし0.2%であり、《59社のうち1社》は原告に対する売上高の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が0.6%であり、《59社のうち1社》は原告に対する売上高の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が0.01%であり、《59社のうち1社》は原告に対する売上高の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が0.6ないし1.0%であり、《59社のうち1社》は原告に対する売上高の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が0.2%であり、《59社のうち1社》は原告に対する売上高の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が0.01ないし0.04%であり、《59社のうち1社》は原告に対する売上高の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が0.3ないし0.5%であり、《59社のうち1社》は原告に対する売上高の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が0.1ないし0.6%であり、《59社のうち1社》は原告に対する売上高の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が0.7%であり、《59社のうち1社》は原告に対する売上高の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が0.8ないし1.6%であり、《59社のうち1社》は原告に対する売上高の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が0.4ないし0.7%であり、《59社のうち1社》は原告に対する売上高の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が0.4ないし1.5%であり、《59社のうち1社》は原告に対する売上高の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が0.08ないし0.09%であり、《59社のうち1社》は原告に対する売上高の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が0.5ないし0.6%であり、《59社のうち1社》は原告に対する売上高の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が0.2ないし0.7%であり、《59社のうち1社》は原告に対する売上高の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が0.9ないし1.1%であり、《59社のうち1社》は原告に対する売上高の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が0.10ないし0.17%であり、《59社のうち1社》は原告に対する売上高の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が0.002ないし0.1%であり、《59社のうち1社》は原告に対する売上高の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が0.03ないし0.14%であり、《59社のうち1社》は原告に対する売上高の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が1.4ないし1.8%であり、《59社のうち1社》は原告に対する売上高の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が0.06ないし0.28%であり、《59社のうち1社》は原告に対する売上高の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が0.007ないし0.03%であり、《59社のうち1社》は原告に対する売上高の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が0.2ないし0.9%であり、《59社のうち1社》は原告に対する売上高の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が0.1%であり、《59社のうち1社》は原告に対する売上高の割合が別紙Aのとおり《略》であるのに対してサンキューに対する売上高の割合が0.1%であることが認められ、いずれも原告に対する売上高の割合に比してサンキューに対する売上高の割合が極めて小さいことに照らせば、仮にサンキューに対する売上高を除いたとしても、各対象納入業者の原告に対する取引依存度の順位にそれほど大きな違いは生じないことが推認できる。
この点を措いても、「乙の甲に対する取引依存度」(ガイドライン第2の2)とは、「乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来す」という関係の有無を基礎付ける事実の一つであるが、納入業者(乙)が原告(甲)との取引を失うことは、原告の完全子会社であり原告と同様に家電小売量販店を展開するサンキューとの取引をも失うことに直結する蓋然性があるといえる。そうすると、本件審決が、対象納入業者にとって事業経営上大きな支障を来すか否かを総合的に判断する際に、原告及びサンキューに対する各売上高を合わせて算定した取引依存度の順位を考慮したことが不合理とはいえない。
また、《59社のうち1社》について、証拠(《証拠略》)から認定できる原告に対する取引依存度の順位は、本件対象期間のうち平成21年4月1日から平成22年3月31日までの事業年度の売上高のみに係るものではあるけれども、当該期間における同社の取引先総数(《取引先数》社)、原告に対する取引依存度の順位の高さ(《略》)、さらに原告に対する取引依存度そのものも相応に高いこと(《略》)からすれば、本件対象期間を通じて、《上記納入業者》の原告に対する取引依存度の順位の高いことが推認できるというべきである。
以上のとおりであるから、原告の上記主張に係る本件審決の認定判断が実質的証拠を欠く不合理なものとはいえない。
d 《59社のうち1社》について
原告は、《上記納入業者》については、仮に原告との取引が停止してしまった場合に、原告への売上げを補うためにどのような対策を講じると思うか、半年程度の間に、原告との取引停止に伴い失った取引額をどのくらい補えたと思うかとの原告のアンケートに対して、既存の取引先との取引を増やしたり、実店舗やインターネットによる販売を行う新規取引先を開拓したりすることによって、8割以上10割未満は補うことができる旨回答しており(審1の16)、《上記納入業者》の原告に対する取引依存度が極めて低いとの事実をも勘案すると、優越的地位が否定されるべきである旨主張する。
しかし、《上記納入業者》について、原告との取引が終了して売上げの減少を招くことについて、仮にその回復可能性があったとしても、そのためには相当の労力を要するものと推察され、事業経営の影響がないとはいえないこと、同社の原告に対する年間売上高は別紙Aのとおり、《金額》円、《金額》円、《金額》円と相当程度の額にのぼる上、売上高が年々増加していることや、原告の市場における地位や成長可能性、取引先別の原告に対する売上高の順位からみた売上げの確実性、《上記納入業者》が原告との取引継続必要との回答及び取引先変更困難との回答をしていること、本件従業員等派遣の頻度・回数・規模、同社の本件従業員等派遣に至る経緯等の事情を総合考慮すれば、原告の同社に対する優越的地位を認定した本件審決の判断に誤りがあるとはいえない。
e 原告は、対象納入業者の中には、《59社のうち3社》等、高いブランド力を有しており、市場内で高いシェアを占める商品を納入し、あるいは、原告にオリジナル商品を納入していた者が数多く含まれており、これら対象納入業者との取引を打ち切られた場合、むしろ原告の方が事業経営上大きな支障を来すのであって、そのような場合に原告がこれら対象納入業者に対して優越的地位にあるというのは背理である旨主張する。
しかし、仮に、対象納入業者の原告に納入する商品が原告の売場の商品構成に重要なものであり、原告がこのような対象納入業者との取引を安易に打ち切ることは想定し難い面があるとしても、このことのみをもって、直ちにこれら対象納入業者に対する原告の優越的地位が否定されるものではない。すなわち、全国的に消費者に対する知名度が高いなど、いわゆるブランド力がある又は市場内で高いシェアを占める商品を販売する対象納入業者にとっては、その市場での地位を維持するため、様々な販路を設けることが必要であり、殊に、原告は、家電小売量販店として市場において全国第2位の年間売上高を有する極めて重要な取引相手といえるのであって、対象納入業者において原告との取引を打ち切ることは想定し難い。したがって、原告においてこれら対象納入業者と取引をする必要があるとの事実があるからといって、それだけで直ちにこれら対象納入業者に対する原告の優越的地位が否定されるものではない。
f 《59社のうち1社》について
本件審決は、《上記納入業者》が《時期略》に設立された会社であるとして、《略(当期)》(《期間略》)の売上高を、《期間略》の《事業者C》の《略》事業部門の数値と《期間略》の《上記納入業者》の《略》事業部門の数値を合算した上、同期における《上記納入業者》全社の原告に対する売上高は明らかではないが、《上記納入業者》が《事業者C》の《略》事業部門の事業を引き継いで設立された会社であることから、同期における《上記納入業者》の《略》事業部門の原告に対する取引依存度は、《事業者C》の《略》事業部門とおおむね変わらないはずであるとして、これを《略》程度であり、取引依存度の順位も同様に《略》であると推認し、《翌期》(《期間略》)の売上高を《上記納入業者》の《略》事業部門のものを挙げ、これにより同社の取引依存度の順位を算定した上、全社的にみれば原告に対する取引依存度が小さかったとしても、同社にとって、原告との取引の継続が困難になることは事業経営上大きな支障を来すと判断した。
原告は、この点について、《前期》及び《当期》において、《事業者C》には《略》事業部門以外にも《略》の各事業並びに海外事業が存在したにもかかわらず、《事業者C》の《略》事業部門のみを切り取って取引依存度の順位を検討しているが、《事業者C》のこれら他の事業による売上高が不明である以上、そのような取引依存度からは、設立後の《上記納入業者》の原告に対する取引依存度を合理的に推測することは不可能であり、実質的証拠に基づく合理的認定ではない旨、証拠(《証拠略》)によれば、《上記納入業者》の売上高には、国内の取引先に対する売上げ(これが同社の《略》事業部門の売上高である。)のほか、《製品名》の販売に係る手数料及び海外子会社への売上げもあり、これら他部門での売上高や、同社の経営全体の中での《略》事業部門の占める地位等に関する客観的証拠もない以上、同部門が同社において相対的に重要なものであるとはいえない旨主張する。
しかし、《上記納入業者》は、《事業者C》が有していた《略》事業のうち、《略》部門、《略》部門及び《略》部門を分割して設立された会社であって、他の部門を引き継いだものではないから(《証拠略》)、その設立直後において、《上記納入業者》の《略》事業部門の原告に対する取引依存度が、《事業者C》の《略》事業部門とおおむね変わらないはずであるとした本件審決の認定は合理的である。また、《上記納入業者》又は《事業者C》が有していた《略》事業部門の原告に対する取引依存度をみるに当たり、《事業者C》の《略》事業部門以外の《略》及び《略》の各事業並びに海外事業を考慮する必要はないから、この点についての原告の主張は理由がない。
さらに、《上記納入業者》では、《略》事業部門以外の部門において《製品名》の販売を行っていたが、その売上げは《事業者C》に計上され、《上記納入業者》には手数料の売上げがあるだけであったから、《上記納入業者》の売上げの多くが《略》事業部門の売上げであったとの認定も、証拠(《証拠略》)に基づく合理的なものである上、《上記納入業者》が、《事業者C》が有する《略》事業を分割して設立され、《事業者C》ブランドの《略》商品の企画・販売に特化したファブレス会社であり、《略》事業部門を置く同社にとって、《略》の販売市場から撤退するか否かは重大な経宮判断であると考えられるから、同社において同部門は相対的に重要であったといえる。
そして、《事業者C》の《略》事業部門又は《上記納入業者》の《略》事業部門の原告に対する取引依存度の順位は、総取引先《取引先数》ないし《取引先数》社中の《略》であり、取引依存度も《略》と高く、年間売上高は別紙Aのとおり、《金額》円、《金額》円、《金額》円と相当程度の額にのぼり、原告の市場における地位や成長可能性、取引先別の原告に対する売上高の順位からみた売上げの確実性、《上記納入業者》が原告との取引継続必要との回答及び取引先変更困難との回答をしていること、本件従業員等派遣の頻度・回数・規模、同社の本件従業員等派遣に至る経緯等の事情を総合考慮すれば、原告の同社に対する優越的地位を認定した本件審決の判断に誤りがあるとはいえない。
g 《59社のうち1社》について
本件審決は、《上記納入業者》について、別紙A記載の同社の原告に対する取引依存度及びその順位は、同社全社の年間総売上高に基づくものではなく、原告に対して販売している商品(《略》)を取り扱っている《略》部門の国内の年間総売上高に基づくものであること、《上記納入業者》には、《略》部門の取引のほか、海外販社向けの取引や《略》といった《略》の取引も存在したものの、《略》部門の商品である《製品名》においては平成20年ないし平成22年まで我が国において常に《数値》ないし《数値》%のシェアを有し、シェア上位《略》に含まれていたこと及びその他の事情を踏まえて、《製品名》を扱う《略》部門は、同社の経営全体の中で相対的に重要なものであったから、原告との取引の継続が困難となれば、同部門における収益の大幅な落ち込みが予想され、同部門における事業方針の修正を余儀なくされるなど、全社的にみてもその後の事業経営に大きな支障を来すことが看取できるため、全社的にみれば原告に対する取引依存度が小さかったとしても、同社にとって、原告との取引の継続が困難になることは事業経営上大きな支障を来すと判断した。
原告は、この点について、同社の《製品名》の月別シェアは平成20年《略》月や《略》月は《略》位であって、常にシェア上位《略》に含まれていたものではないこと、同社の国内向け《略》部門の取引依存度と、同社全体のそれとを比較すれば、同部門の事業は同社において15ないし24%程度の比重しかなく、同社は、国内向け《略》に関する事業よりも、《略》向けの事業や海外向け事業の方がはるかに重要であり、同社の国内向け《略》部門が同社の経営全体の中で相対的に重要なものであったとはいえず、同社全体の取引依存度が0.5ないし1.6%と極めて低いこと、同社は、原告のアンケートに対して、原告との取引を失った場合において、原告との取引額を補いきれなかったとしても事業経営上大きな支障とはならなかったと回答していることに照らせば、同社に対する原告の優越的地位を認定した本件審決の判断は誤りである旨主張する。
しかし、《上記納入業者》の我が国における《製品名》のシェアは、平成20年ないし平成22年まで、概ね、年間ベースで常に上位《略》に含まれていたものであることが認められるから(審159)、この点についての本件審決の認定は実質的証拠に基づくものである。そして、同社は、我が国を本拠として事業活動を行い、特に《製品名》においては平成20年ないし平成22年まで我が国において常に《数値》ないし《数値》%のシェアを有し、これを取り扱う《略》部門を置く同社にとって、いかに海外販社向けの取引や国内向け《略》取引に係る売上高が大きいとしても、国内向けの《略》の市場から撤退するか否かは重大な経営判断であると考えられ、同社において同部門が相対的に重要であったとする本件審決の判断に誤りがあるとはいえない。
そして、《上記納入業者》において、原告との取引が終了して売上げの減少を招くことについて、仮にその回復可能性があったとしても、そのためには相当の労力を要するものと推察され、事業経営の影響がないとはいえないこと、別紙Aのとおり、同社の《略》部門の原告に対する取引依存度の順位は、総取引先《取引先数》ないし《取引先数》社中の《略》であり、年間売上高は《金額》円、《金額》円、《金額》円と相当程度の額にのぼり、原告の市場における地位や成長可能性、取引先別の原告に対する売上高の順位からみた売上げの確実性、《上記納入業者》が原告との取引継続必要との回答及び取引先変更困難との回答をしていること、本件従業員等派遣の頻度・回数・規模、同社が本件従業員等派遣に至る経緯等の事情を総合考慮すれば、原告の同社に対する優越的地位を認定した本件審決の判断に誤りがあるとはいえない。
h 《59社のうち1社》について
本件審決は、《上記納入業者》について、別紙A記載の取引依存度及びその順位は、同社全社の年間総売上高ではなく、《略》や《略》等を担当する《略》事業部の《略》部の年間総売上高に基づくものであること、同社には、同《略》部以外にも《製品名》、《製品名》等を取り扱う事業部が存在したが、同《略》部は、同社の経営全体の中で相対的に重要なものであったから、同社にとっては、原告との取引の継続が困難となれば、同《略》部における収益の大幅な落ち込みが予想され、同《略》部における事業方針の修正を余儀なくされるなど、全社的にみてもその後の事業経営に大きな支障を来すことが看取できるから、全社的にみれば原告に対する取引依存度が小さかったとしても、同社にとって、原告との取引の継続が困難になることは事業経営上大きな支障を来すと判断した。
原告は、この点について、《上記納入業者》は、本件対象期間の同《略》部の売上高が、同期間の同社全体の売上高の5%前後にすぎないことや、同社は、国内の《略》の事業よりも、国内の《略》事業や海外事業の方が圧倒的に重要であったから、同《略》部が同社の経営全体の中で相対的に重要なものであったとの事実はないし、同社が原告との取引を全て失ったとしても、同社の売上高の0.2ないし0.3%が失われるにすぎないから、原告との取引継続が困難になることで同社の事業経営上大きな支障が生じることはあり得ず、このことは、同社の《略》事業が、《年月日略》に第三者(《事業者名略》)に事業譲渡されたものの、《上記納入業者》はその後も存続していることからも裏付けられる旨主張する。
しかし、《上記納入業者》は、《製品名》などのほか、《略》ブランドの《略》を取り扱っており、同社の《略》事業部の売上高が全社の売上高の一部にすぎなかったとしても、同事業部の《略》部を置く同社にとって、《略》の国内市場から撤退するか否かは重大な経営判断であると考えられ、同社において同《略》部が相対的に重要であったとの本件審決の判断は不合理とはいえない。また、同社が同《略》部の事業を本件対象期間経過後に譲渡したことについても、それ自体が同部門の事業方針の修正であって、全社的にみてもその後の事業経営に大きな影響を及ぼしたものといえ、その売却益等によって同社の事業活動が継続していることは、同《略》部が同社の経営全体の中で相対的に重要なものであったとの事実と矛盾するものではない。
そして、別紙Aのとおり、《上記納入業者》の同《略》部の原告に対する取引依存度の順位は、総取引先《取引先数》ないし《取引先数》社中の《略》であり、年間売上高は《金額》円、《金額》円、《金額》円と相当程度の額にのぼり、原告の市場における地位や成長可能性、取引先別の原告に対する売上高の順位からみた売上げの確実性、《上記納入業者》が原告との取引継続必要との回答及び取引先変更困難との回答をしていること、本件従業員等派遣の頻度・回数・規模、同社が本件従業員等派遣に至る経緯等の事情を総合考慮すれば、原告の同社に対する優越的地位を認定した本件審決の判断に誤りがあるとはいえない。
i 《59社のうち1社》について
本件審決は、《上記納入業者》について、別紙A記載の取引依存度及びその順位は、同社全社の年間総売上高ではなく、《製品名》や《製品名》等の日本国内の営業を担当する《略》部という特定の部門の年間総売上高に基づくものであること、《上記納入業者》には、《製品名》や《製品名》等以外の商品を取り扱う事業部が存在したが、同社の平成22年の台数ベースのシェアは、《製品名》は《数値》%、《製品名》は《数値》%であり、このうち3割程度が、家電量販店を通じて販売されたと推測されることなどの事情から、《略》部は、同社の経営全体の中で相対的に重要なものであったといえ、同社にとっては、原告との取引の継続が困難となれば、同部における収益の大幅な落ち込みが予想され、同部における事業方針の修正を余儀なくされるなど、全社的にみてもその後の事業経営に大きな支障を来すことが看取できるから、全社的にみれば原告に対する取引依存度が小さかったとしても、《上記納入業者》にとって、原告との取引の継続が困難になることは事業経営上大きな支障を来すと判断した。
原告は、この点について、証拠(審256)によれば、家電量販店を通じて販売された3割程度というのは、国内の《製品名》の総販売数に占める家電量販店における販売数であって、《上記納入業者》の商品の3割程度の台数が家電量販店で販売されたことを意味するものではない上、家電量販店では《事業者名略》が主力であって、《上記納入業者》の下位機種も取り扱っていた状況であったから、《上記納入業者》の製品については家電量販店での販売は台数ベースで3割程度より少なかったことが推測され、まして売上高ベースでは家電量販店の比重はより小さかったと認められること、同社について、別紙A記載の本件対象期間の同部の売上高は、同社の同期間の連結売上高のわずか《数値》%前後にすぎず、同社は、家電量販店に対する事業よりも、《略》等に対する事業等その他の事業の方が圧倒的に重要であったから、同部が同社の経営全体の中で相対的に重要なものであったとはいえない旨主張する。
しかし、国内の《製品名》及び《製品名》の総販売数の3割程度が家電量販店を通じて販売されていることからすれば(審256)、《上記納入業者》が家電量販店を通じて販売した《製品名》等も同程度と推測されるとの本件審決の認定が不合理とはいえないし、家電量販店においては《略》等より安価な価格帯の商品を多く取り扱うとしても、家電量販店で取り扱われる3割程度の《製品名》等の中には、もともと《製品名》等の高価な商品は含まれていないことが推認され、また、家電量販店において《事業者名略》等他のメーカーの商品の取扱いが多かったとしても、そのことは《略》の統計に基づいて算出された国内全体の《製品名》等の台数ベースにおける上記《上記納入業者》のシェアにも反映されていることが認められるから(審256)、本件審決の上記認定が不合理とはいえない。《上記納入業者》は、我が国を本拠として事業活動を行っており、特に我が国における台数ベースで、《製品名》について《数値》%、《製品名》について《数値》%のシェアを有し、これを取り扱う《略》部を置く同社にとって、いかに海外市場向けの取引や国内における《製品名》等以外の取引に係る売上高が大きいとしても、《製品名》等の国内市場、殊に家電量販店との取引から撤退するか否かは重大な経営判断であると考えられ、同社において同部が相対的に重要であったとする本件審決の判断が不合理とはいえない。
そして、別紙Aのとおり、《上記納入業者》の《略》部の原告に対する取引依存度の順位は、総取引先《取引先数》ないし《取引先数》社中の《略》であり、年間売上高は《金額》円、《金額》円、《金額》円と相当程度の額にのぼり、原告の市場における地位や成長可能性、取引先別の原告に対する売上高の順位からみた売上げの確実性、《上記納入業者》が原告との取引継続必要との回答及び取引先変更困難との回答をしていること、本件従業員等派遣の頻度・回数・規模、同社が本件従業員等派遣に至る経緯等の事情を総合考慮すれば、原告の同社に対する優越的地位を認定した本件審決の判断に誤りがあるとはいえない。
j 《59社のうち1社》について
本件審決は、《上記納入業者》について、別紙A記載の取引依存度及びその順位は、同社全社の年間総売上高ではなく、国内の《製品名》を含む家電量販店と取引をしている商品を取り扱っている同社の家電量販店部門の年間総売上高に基づくものであること、同社には、家電量販店部門以外にも、他の商品を取り扱う事業部が存在するが、同社の商品は平成20年ないし平成22年において《製品名》部門のシェアで《数値》ないし《数値》%と独占的であったことなどの事情から、家電量販店部門は同社の経営全体の中で相対的に重要なものであったといえ、《上記納入業者》にとっては、原告との取引の継続が困難となれば、同部門における収益の大幅な落ち込みが予想され、同部門における事業方針の修正を余儀なくされるなど、全社的にみてもその後の事業経営に大きな支障を来すことが看取できるから、全社的にみれば原告に対する取引依存度が小さかったとしても、《上記納入業者》にとって、原告との取引の継続が困難になることは事業経営上大きな支障を来すと判断した。
原告は、この点について、《上記納入業者》は、平成20年ないし平成22年に《略》を受賞し、その際に本件審決認定に係る《製品名》部門のシェアの数値が示されたが、《略》は、《略》のみに基づく実販売数量に基づくものであり(審161)、売上高によるものではないため市場全体のシェアを示すものではないこと、同社の家電量販店部門の原告に対する取引依存度と、同社全体のそれとを比較すれば、同部門の事業は同社全体の《数値》ないし《数値》%程度の比重しかないから、同部門の事業が同社にとって相対的に重要とはいえない上、同社が原告との取引を全て失ったとしても同社全体の売上高の0.6%程度にすぎないから、原告との取引継続が困難になることで同社の事業経営上大きな支障が生じることはあり得ない旨主張する。
しかし、《略》が、《略》のみに基づく実販売数量に基づくものであるとしても(審161)、本件審決の認定する同社の《製品名》部門でのシェアが、《略》実販売数量を基にするものであることからすれば、《上記納入業者》が《製品名》部門のシェアにおいて独占的であったとの認定は不合理なものではない。また、同社は、《製品名》等の《略》等の製造業者であるところ、同社の家電量販店部門は、国内の《製品名》を含む家電量販店と取引する商品を取り扱う部署であり(《証拠略》)、同社の《製品名》における我が国における市場シェアは、《略》に基づいても《数値》ないし《数値》%と独占的であり(審161)、同社にとって、かかる主力商品である国内の《製品名》市場から撤退するか否かは重大な経営判断であると考えられる。
そして、別紙Aのとおり、《上記納入業者》の家電量販店部門の原告に対する取引依存度の順位が、総取引先《取引先数》ないし《取引先数》社中《略》であり、年間売上高は《金額》円、《金額》円、《金額》円と相当程度の額にのぼり、原告との取引の継続が困難となれば、家電量販店部門における収益の大幅な落ち込みが予想され、同部門における事業方針の修正を余儀なくされるなど、全社的にみてもその後の事業経営に大きな支障を来すことが看取できるから、全社的にみれば原告に対する取引依存度が小さかったとしても、《上記納入業者》にとって、原告との取引の継続が困難になることは事業経営上大きな支障を来すことがうかがわれ、加えて、原告の市場における地位や成長可能性、取引先別の原告に対する売上高の順位からみた売上げの確実性、《上記納入業者》が原告との取引継続必要との回答及び取引先変更困難との回答をしていること、本件従業員等派遣の頻度・回数・規模、同社が本件従業員等派遣に至る経緯等の事情を総合考慮すれば、原告の同社に対する優越的地位を認定した本件審決の判断に誤りがあるとはいえない。
㋓ したがって、原告の上記各主張はいずれも採用することができない。
⑶ 原告は、対象納入業者に対して本件従業員等派遣を依頼(要請)したか。
ア 事前の連絡の有無について
前記認定事実⑶イのとおり、原告の店舗支援部は、新規開店又は改装開店を行う店舗について、店舗ごとに、ストアブランド・店舗名、セールを行う期間、商品の搬出、搬入又は店作りを行う期日又は期間、閉店日、開店日等を記載した店作りスケジュール表を作成し、原告及び原告事業子会社の関係者に送付し、本件対象期間において、原告の店舗支援部の者、MD及び在庫コントローラー担当長、原告の財務経理・管理担当部門の者、株式会社エイデン営業管理部営業管理課の者、株式会社東京エディオンの者、原告又は原告事業子会社のFMD、店舗責任者等は、それぞれ、上記店作りスケジュール表に基づき、別紙B記載の原告運営店舗の新規開店又は改装開店に先立って、当該原告運営店舗に従業員等を派遣した対象納入業者に対し、文書の送付、電子メールの送信又は口頭により、当該店舗及び店舗開設準備作業の日程を連絡したり、棚割表を送付したりするなどして、店舗開設準備作業の日程等の連絡を行ったものである。
イ 依頼(要請)の有無について
前記認定事実⑶ウのとおり、従前、家電小売業界では、納入業者が家電量販店の新規開店又は改装開店前の店舗開設準備作業を負担する商慣習が存在し、原告も、納入業者に対し、店舗の新規開店又は改装開店の際、商品の搬出、搬入又は店作りのために従業員等の派遣を依頼し、納入業者から店舗開設準備作業において従業員等の派遣を受けていたこと、ヤマダ電機事件を契機として、原告の一部の担当者において、従業員等の派遣を要請する趣旨によるものであることを明記せず、店舗開設準備作業の日程のみを納入業者に連絡する方法を採るようになったものの、この連絡に際して、納入業者が当該納入業者の従業員等を派遣する必要がないことなどは記載しておらず、ヤマダ電機事件より前に使用していた明示的に従業員等の派遣の要請を行っていたものから変更したことの説明もしなかったこと、本件対象期間においても、原告運営店舗の新規開店又は改装開店の際、店舗開設準備作業の日程等を連絡する文書や電子メールの一部、棚割表を送付するメールの一部、その他、これらに関連する電子メールの一部には、ヤマダ電機事件の以前と同様、納入業者に対して従業員等の派遣を依頼する趣旨の文言が記載されていたこと、原告作成に係る店作りに関するマニュアル等にも、納入業者による従業員等派遣を前提とする記載や納入業者から派遣された従業員が店作りを行うことを前提とする記載が存在したこと、原告及び原告事業子会社の内部においても、店作り等について、納入業者に応援を求めることを示すやり取りがされるなどしていたことや、原告運営店舗の新規開店又は改装開店に際して、納入業者の応援を求めることを前提としたプロジェクト会議議事録、売場改善報告書等の原告の内部文書が作成されていたこと、店舗開設準備作業の日程連絡をした原告又は原告事業子会社の担当者の一部は、店舗開設準備作業の日程等の連絡については、納入業者に対して従業員等の派遣を依頼する趣旨で行っていた旨供述していること、これに対して、店舗開設準備作業の日程等の連絡を受けた納入業者の担当者は、原告の従業員に対し、特に従業員等を派遣しない場合に、その旨の返答をすることがあったほか、従業員等を派遣する場合も、その旨や参加する従業員等の人数について返答することが少なくなく、当該担当者自身が店舗開設準備作業に参加できない場合には、謝罪の連絡を入れたり、代わりの者を派遣したりするなどの対応をすることもあり、また、一部の納入業者は、同種の商品を納入する他の納入業者と調整をした上で、原告の担当者に対し、店作りに係る日程及び店作りに派遣する従業員等の分担を連絡するなどしていたこと、現に、店作りの日程の連絡を受けた納入業者の担当者の中には、店作りの日程の連絡は、従業員等の派遣要請の趣旨であると受け止めていたと供述する者があること、さらに、本件報告書において、対象納入業者の多くが、本件従業員等派遣について、要請方法として、原告からの口頭、文書又は電子メールによる要請があった旨を回答していること(査26の128、査302、303)をも併せ考慮すれば、別紙B記載の原告運営店舗の新規開店又は改装開店の際、原告の担当者が本件従業員等派遣をした対象納入業者に対して行った店舗開設準備作業の日程等の連絡は、店舗開設準備作業のために従業員等の派遣を依頼(要請)する趣旨を含むものであったと認めることができる。
ウ 原告の主張について
原告は、原告又は原告事業子会社は、対象納入業者が、その有する専門的知識、経験及びノウハウ等を活用して、自社製品の陳列・装飾を工夫し消費者への訴求力の高い売場を作り、売上高の増加につなげるなど販売促進活動の一環として店作りの参加を自主的に希望していたことから、これに応えるために、日程等スケジュールを情報提供として連絡していただけで、従業員等の派遣を依頼(要請)していたものではなく、このことは、対象納入業者が、原告のアンケートに対する回答の中で、商品の陳列・装飾を行っていた理由として、自社製品の陳列・装飾を工夫し消費者への訴求力の高い売場を作る機会になり得たことや自社商品の売上拡大を期待できたことを挙げていることからも裏付けられる旨主張する。
しかし、前記認定事実⑶ウのとおり、原告又は原告事業子会社の担当者から店作りの日程の連絡を受けた納入業者の担当者の少なからぬ者が、同連絡は、従業員等の派遣要請の趣旨であったと受け止めていたと供述していることからすれば、一部の納入業者に対する店舗開設準備作業の日程等の連絡が従業員等の派遣の要請として行われ、それ以外の納入業者に対するものが従業員等の派遣の要請として行われたものではなかったということは考え難い。そして、前記イにおいて説示した各事実に照らせば、原告運営店舗の新規開店又は改装開店の際、対象納入業者に対してされた店舗開設準備作業の日程等の連絡は、文書や電子メールに従業員等の派遣を依頼することを示す文言がない場合も含めて、単に対象納入業者の便宜のためにしたものではなく、対象納入業者に対して従業員等の派遣を依頼する趣旨を含むものであったというべきである。仮に、原告の主張するように、対象納入業者において、原告運営店舗の新規開店又は改装開店の際における店作りの日程等の情報の連絡を受けることが有益であると考えていたとしても、そのこと自体は、原告の対象納入業者に対する連絡が、従業員等派遣を依頼する趣旨のものであったことと相容れないものではない。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。
⑷ 原告が対象納入業者に対して本件従業員等派遣をさせたことが不利益行為に当たるか
ア 不利益行為該当性について
前記説示のとおり、独占禁止法2条9項5号ロは、同法19条により禁止される「不公正な取引方法」の一つとして、「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に」「継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること」を定めるところ、こうした行為が不公正な取引方法とされたのは、このような行為は、当該取引の相手方の自由かつ自主的な判断による取引を阻害することになる上、当該取引の相手方又は行為者においては、それぞれの競争者との関係で競争上不利又は有利となるおそれがあり、公正な競争秩序に悪影響を及ぼすおそれがあるからであると解される。
このような趣旨を踏まえれば、同号ロ所定の行為(不利益行為)とは、例えば、従業員等の派遣要請に関して、従業員等を派遣する条件等が不明確で、相手方にあらかじめ計算することができない不利益を与える場合はもとより、従業員等を派遣する条件等があらかじめ明確であっても、その派遣等を通じて相手方が得る直接の利益等を勘案して合理的と認められる範囲を超えた負担となり、相手方に不利益を与えることとなる場合等を指すものと解するのが相当である。
イ 本件従業員等派遣について
㋐ 原告と対象納入業者との間の取引は、そのほぼ全てが買取取引であったが(前提となる事実)、一般的な買取取引においては、売主は、当該買取商品を契約の内容に沿って買主に引き渡すことで義務の履行は完了するはずのものであるから、契約上の権利義務や一般的な商慣習等がない限り、小売業者である買主の新規店舗の開設、既存店舗の改装開店の際に、買取取引で仕入れて既に納品された商品について、納入業者が、店舗の搬入口若しくは倉庫から買主が指定する売場まで、又は当該店舗の搬入口から買主が指定する当該店舗の倉庫まで商品を運搬し、設置された什器に沿って並べたり(商品の搬入)、改装を行う売場にある商品を梱包材で梱包し、又は、折り畳み式のコンテナに収納するなどして、売場から当該店舗の倉庫等の買主が指定する場所まで当該商品を運搬したり(商品の搬出)、買主の運営する店舗の売場まで搬入された商品を開梱し又は折り畳み式のコンテナから取り出し、棚割表に基づき、商品を店頭に配置、陳列し、商品の演出のために実機等を展示し、これらの作業を終えた後、又はこれらの作業と並行して、POP等の販促物によって売場又は当該商品の装飾を行ったり(店作り)するなどの店舗開設準備作業は、本来買主において行うべきものということができる。
そうであれば、買主の要請によって売主が自社の従業員等を派遣して上記のような作業に当たらせることは、売主としては当該従業員等による労務をその派遣の期間逸失することになるほか、交通費等派遣に必要となる費用が発生した場合には当該費用を負担することになるから、売主にとって通常は何ら合理性のないことであり、そのような合理性のない行為は、原則として不利益行為に当たるというべきである。
したがって、店舗開設等作業のための従業員等派遣については、①従業員等の業務内容、労働時間及び派遣期間等の派遣の条件について、あらかじめ相手方と合意し、かつ、派遣される従業員等の人件費、交通費、宿泊費等の派遣のために通常必要な費用を買主が負担する場合(従業員等派遣例外事由①)、②従業員等が自社の納入商品のみの販売業務に従事するものなどであって、従業員等の派遣による相手方の負担が従業員等の派遣を通じて相手方が得ることとなる直接の利益等を勘案して合理的な範囲内のものであり、相手方の同意の上で行われる場合(従業員等派遣例外事由②。従業員等派遣例外事由①と合わせて従業員等派遣例外事由。)など、上記の不合理性を払拭するような特段の事情がない限り、相手方において自由かつ自主的な判断に基づいてこれを受け入れたということはできず、不利益行為に当たるものと認めるのが相当である。
㋑ これを本件についてみると、別紙Cのとおり、本件対象期間中に対象納入業者が本件従業員等派遣を行い、作業内容欄記載の作業をしたことは前記認定のとおりであるところ、原告運営店舗の新規開店又は改装開店の際に行われたこれら店舗開設準備作業は、本来、原告が対象納入業者から買い取った商品を当該店舗で販売するためにその費用で行うべきものであって、それにもかかわらず、原告が対象納入業者に対してこのような作業を行わせるために、その従業員等を派遣させた本件従業員等派遣に係る行為は、上記従業員等派遣例外事由がない限り、対象納入業者に対する不利益行為に当たるものというべきである。
㋒ 原告の主張について
a 原告は、不利益行為に該当するか否かの判断では「正常な商慣習」が考慮されるが、経済力に優劣の差がある当事者間で成立する商慣習をも包含する当該業界における取引上の社会通念を前提に、現に行われた行為との関係で判断されるべきであり、「正常な商慣習」に照らして不当な「不利益」とは、単なる当事者格差の反映にとどまらない、当該業界の取引上の社会通念に照らして通常では受け入れ難い(著しく過大な)不利益であると解すべきである旨主張する。
しかし、「正常な商慣習に照らして不当に」という要件は、優越的地位の濫用の有無が、公正な競争秩序の維持・促進の観点から個別の事案ごとに判断されることを示すものであり、ここでいう「正常な商慣習」とは、公正な競争秩序の維持・促進の立場から是認されるものをいうから、対等な当事者間においてあるべき商慣習を意味し、現に存在する当該業界一般に存在する商慣習に合致しているからといって、直ちにその行為が正当化されることにはならない(ガイドライン第3参照)。
そして、行為者が取引の相手方にとって著しく不利益な要請等を行っても、取引の相手方がこれを受け入れざるを得ないような地位(優越的な地位)にある者の行為であれば、それが「著しく」不利益とまではいえない不利益行為であっても、相手方はこれを受け入れざるを得ず、公正な競争秩序に悪影響を及ぼすおそれがあるといえる。したがって、「不利益行為」に該当するためには、相手方にとって「著しく」不利益であることを要しないと解すべきである。
b 原告は、相手方が行為者から不利益を受けるが、見返りとして金銭に換算し得ないものも含めて利益を得ることを見込んでいる場合は、当該不利益は合理的なものといえ、「著しく過大な」不利益には該当しない旨主張する。
しかし、前記のとおり、不利益行為に該当するためには「著しく過大な」不利益であることを要しない。この点を措いても、不利益行為に該当するか否かは、直接の利益の有無を含めて、問題となる行為の内容や不利益行為の性質に照らして客観的に判断すべきであり、相手方が行為者から見返りとしての利益を受けることを見込んだからといって、それが実際に商品の売上げ増加等の直接の利益ではなく、将来の利益に結び付くかが漠然とした不確実な利益のような間接的な利益では、不利益行為の該当性は否定されないというべきである。
c 原告は、行為者と相手方との間で対価の交渉が対等に行われていれば、相手方は、不利益等を勘案の上で本来の取引に係る対価を設定しているものと推認され、当該不利益は合理的範囲を超えるものではなく、行為者につき独占禁止法2条9項5号に該当するとは認められない旨主張する。
しかし、前記説示のとおり、対象納入業者の全てが、原告との取引継続必要との回答及び取引先変更困難との回答をしており、現に原告による不利益行為を受け入れていたことからすれば、原告と真に対等に交渉できていたとは直ちには言い難い上、原告と対象納入業者との間で、本件従業員等派遣に係る費用等の条件についてはあらかじめ決まっておらず、実際にも、納入する商品の対価交渉の段階で、対象納入業者において、将来にわたり原告運営店舗の新規開店又は改装開店の度に要請される従業員等派遣に係る費用を予測することは不可能というべきである。また、対象納入業者が店舗開設準備作業の費用を含む営業費用を具体的に織り込んで対価交渉をしていたことを裏付ける客観的な証拠も見当たらない。
したがって、原告と対象納入業者との間で納入価格についての交渉が対等に行われていたとしても、それだけでは不利益行為性は否定されないというべきである。
d 原告は、原告と対象納入業者との間の買取取引において、対象納入業者は、原告に卸した商品を一般消費者が実際に購入しなければ販売実績が上がらず業績に影響するため、当該商品が原告運営店舗でどのような形で販売されるのかに強い利害と関心があることから、納入された商品の所有権が法的に買主に移転したからといって、対象納入業者において販売のための準備作業を行うことが、別段の契約上の定めのない限り一律に不合理であるとするのは相当でなく、買取取引であるという一事をもって、対象納入業者が店舗開設準備作業として行う商品の搬出・搬入・店作りを、原則的に不利益行為であると推認し、かつ、ガイドラインに定めるものよりも更に限定された従業員等派遣例外事由のある場合に限って不利益行為の該当性を否定する本件審決の認定判断は誤りである旨主張する。
しかし、前記説示のとおり、独占禁止法2条9項5号ロによって、優越的地位の濫用行為が不公正な取引方法とされたのは、このような行為は、当該取引の相手方の自由かつ自主的な判断による取引を阻害することになる上、当該取引の相手方又は行為者においては、それぞれの競争者との関係で競争上不利又は有利となるおそれがあり、公正な競争秩序に悪影響を及ぼすおそれがあるからであり、こうした趣旨を踏まえれば、不利益行為の意義については、従業員等の派遣要請に関して、従業員等を派遣する条件等が不明確で、相手方にあらかじめ計算できない不利益を与える場合はもとより、従業員等を派遣する条件等があらかじめ明確であっても、その派遣等を通じて相手方が得る直接の利益等を勘案して合理的と認められる範囲を超えた負担となり、相手方に不利益を与えることとなる場合等を指すものと解するのが相当である。そして、一般的な買取取引においての売主は、当該買取商品を契約の内容に沿って買主に引き渡すことで義務の履行は完了するはずのものであるから、契約上の権利義務や一般的な商慣習等がない限り、小売業者である買主の新規店舗の開設、既存店舗の改装及びこれらの店舗での開店セール等の際に、買取取引で仕入れた商品を他の陳列棚から移動させ、又は新たに若しくは補充として店舗の陳列棚へ並べる作業等を行うことは、本来買主が行うべき役務というべきである。売主が自社の従業員等を派遣して上記のような作業に当たらせることは、売主としては当該従業員等による労務をその派遣の期間逸失することになるほか、交通費等派遣に必要となる費用が発生した場合には、当該費用を負担することになるから、売主にとって通常は何ら合理性のないことであり、そのような合理性のない行為は原則として不利益行為に当たると解するのが相当である。したがって、①従業員等の業務内容、労働時間及び派遣期間等の派遣の条件について、あらかじめ相手方と合意し、かつ、派遣される従業員等の人件費、交通費及び宿泊費等の派遣のために通常必要な費用を買主が負担する場合(従業員等派遣例外事由①)、②従業員等が自社の納入商品のみの販売業務に従事するものなどであって、従業員等の派遣による相手方の負担が従業員等の派遣を通じて相手方が得ることとなる直接の利益等を勘案して合理的な範囲内のものであり、相手方の同意の上で行われる場合(従業員等派遣例外事由②)との従業員等派遣例外事由に当たるなどの特段の事情がない限り、相手方は自由かつ自主的な判断に基づいてこれを受け入れていたということはできず、不利益行為に当たると認めるのが相当である。
また、ガイドラインは、事業者が取引の相手方に対し、従業員等の派遣を要請する場合、取引の相手方に、㋐あらかじめ計算できない不利益を与えることとなる場合や、㋑合理的と認められる範囲を超える負担を与えることとなる場合につき、不利益行為に該当するとしているところ(ガイドライン第4の2⑵)、上記従業員等派遣例外事由は、ガイドラインの上記㋐及び㋑と同旨であって、これをふえんしたものということができるから、ガイドラインに定める事由より限定された場合に限って不利益行為該当性を否定するものとはいえない。
したがって、原告の上記主張は理由がない。
e 原告は、被告と《納入業者1社》との間の取引は、所有権の移転時期等の取引条件について合意ができていないため取引基本契約書が取り交わされていないが、両社間の取引の運用として商品を引き渡した後に、原告が代金を支払い、その後在庫品について《上記納入業者》が引取義務を負わないとの運用がされていたものの、これは法的には買取取引ではなく、取引基本契約書がない以上、上記運用と異なる扱いをすることも可能であったにもかかわらず、本件審決が、両社間の取引を買取取引と同様であるとした判断は不合理である旨主張する。
しかし、証拠(《証拠略》)によれば、《上記納入業者》は、原告との取引において、物流センターに商品を納品して引き渡した後は、原告がその商品を顧客に販売できたか否かを問わず代金の支払を受けることができ、また、引き渡した商品の保管・管理は原告の負担において行い、商品が在庫となってもその引取義務を負わないとされていたことが認められるから、従業員等を派遣して店舗開設準備作業(商品の搬出、商品の搬入及び店作り)を行う契約上の義務がなく、これを行わなくても引渡し済みの商品の売上げには影響しないという点においては、買取取引と同様であるといえる。
したがって、本件審決の判断が不合理とはいえず、原告の上記主張は理由がない。
f 原告は、本件審決の認定によっても、平成22年11月30日時点で、原告の違反行為は取りやめられたのであるから、別紙Cのうち平成22年12月3日の《店舗名⑧》の新規開店及び同月10日の《店舗名⑨》の新規開店に係る従業員等派遣は、対象納入業者によって任意かつ自由な意思により行われたものであり(ガイドライン第4の2⑵イ参照)、本件従業員等派遣をさせたとの不利益行為には当たらず、その結果、《納入業者1社》は、同月10日の《店舗名⑨》の新規開店に係る従業員等派遣しか行っていないから、同社については、不利益行為が存在しない旨主張する。
前記認定(認定事実⑷)のとおり、原告は、平成22年11月30日、経営会議を開き、会社として、今後は納入業者に対して店舗開設準備作業のために従業員等の派遣依頼を行わず、従業員等の派遣を受けた場合には費用を支払うこと及びその旨を記載した文書を納入業者に早急に送付することを決定し、同年12月6日頃、納入業者に対し、原告においては原告運営店舗の新装・改装開店前の納入業者による店作りにつき納入業者からの応援・協力を要請しないこととしており、今後、納入業者が自主的に店舗開設準備作業に従業員等を派遣して自社製品について店作りをした場合は、日当及び交通費(実費)を支払うので請求書を送付されたい旨記載した通知を請求書のひな形と併せて送付した。そうすると、同年12月6日以降に従業員等派遣がされた場合には、納入業者において、店舗開設準備作業の日程連絡を受けても、従業員等を派遣する必要がなく、従業員等を派遣しても、他社商品の作業を行う必要はなく、かつ、費用の支払を受けることができることを認識した上でのものであるから、不利益行為に該当しない可能性があるものといえる。
そこで検討するに、証拠(査26の128、査104の44、査302、303)によれば、《店舗名⑧》は、平成22年12月3日に新規開店し、これに先立つ同年10月8日頃から同年11月中旬頃までに原告から対象納入業者に対して従業員等派遣の日程連絡及び要請がされ、同年11月19日頃から同年12月1日頃までの間、対象納入業者による本件従業員等派遣が行われたことが認められる(なお、《納入業者1社》は、査302及び303において、同年12月3日頃に派遣した旨回答しているが、店舗開設準備作業は開店日より前にされる必要があること(査43、61)、他の対象納入業者が同年11月中か遅くとも同年12月1日頃には従業員等を派遣しているのに、《上記納入業者》だけが開店日に従業員等を派遣したというのは不自然であること、同社が派遣の時期を同年12月3日「頃」と回答したのは、派遣日を確定できないために開店日である「同年12月3日頃」と回答したにすぎないものと解され得ることから、他の対象納入業者の回答した同年11月19日頃から同年12月1日頃とほぼ同時期に派遣したものと認定するのが相当である。)。
また、証拠(査26の128、査104の14、査302、303、471、472)によれば、《店舗名⑨》は、同年12月10日に新規開店し、これに先立つ同年10月19日頃から同年11月中旬頃までに原告から対象納入業者に対して従業員等派遣の日程連絡及び要請がされ、同年11月29日頃から同年12月3日頃までの間、対象納入業者による本件従業員等派遣が行われたことが認められる(なお、《上記納入業者》は、査302及び303において、同年12月10日頃に派遣した旨回答しているが、店舗開設準備作業は開店日より前にされる必要があること(査43、61)、原告の納入業者宛ての連絡文書(査471、472)によれば、同店舗の店作りの日程が12月3日までとされていること、他の対象納入業者が同年11月29日頃から同年12月3日頃までには従業員等を派遣しているのに、《上記納入業者》だけが開店日に従業員等を派遣したというのは不自然であること、同社が派遣の時期を同年12月10日「頃」と回答したのは、派遣日を確定できないために開店日である「同年12月10日頃」と回答したにすぎないものと解され得ること、同社は上記店舗への派遣に係る「費用負担」について「③」(費用の支払を全く受けていない)と回答しており(査302、303)、原告から対象納入業者に対して派遣に要する費用を支払う旨記載された同年12月6日送付の通知を受領した以降に従業員等派遣をしたとは認め難いことを踏まえると、他の対象納入業者の回答した同年11月29日頃から同年12月3日頃とほぼ同時期に派遣したものと認定するのが相当である。)。
そうすると、《店舗名⑧》及び《店舗名⑨》のいずれについても、同店に従業員等派遣をした対象納入業者は、平成22年11月30日よりも前にされた原告からの派遣要請に基づき、かつ、この要請行為を解消する手当(同年12月6日送付の原告の納入業者宛ての通知)がされる前に本件従業員等派遣をしたものと認められるから、不利益行為性が否定されるものではない。
g したがって、原告の上記各主張はいずれも採用することができない。
ウ 従業員等派遣例外事由①について
㋐ 前記前提となる事実の2⑶及び証拠(査26の128、査52、53、55、87、302、303、681)によれば、原告と対象納入業者との間で、本件従業員等派遣について、従業員等の業務内容、労働時間及び派遣期間等の派遣の条件があらかじめ合意されていたものではなく、また、原告は、対象納入業者による本件従業員等派遣に係る従業員等の人件費、交通費及び宿泊費等の派遣のために要した費用を負担していなかったことが認められる。
したがって、原告が対象納入業者に本件従業員等派遣をさせたことは、従業員等の業務内容、労働時間及び派遣期間等の派遣の条件について、あらかじめ相手方と合意し、かつ、派遣される従業員等の人件費、交通費及び宿泊費等の派遣のために通常必要な費用を買主が負担する場合という従業員等派遣例外事由①には当たらないことになる。
㋑ 原告の主張について
a 原告は、ヤマダ電機事件の後、原告において、納入業者との間で、従業員等派遣について事前合意の徹底を図るため、納入業者向けの説明会を実施した上、覚書のひな形として「店舗への商品説明員等の受入れに関する覚書」(書式A)及び「オープン・セールに伴う説明・販売促進のご協力に関するお願い」(書式B)を配布したから、対象納入業者との間で本件従業員等派遣について事前の合意が存在し、また、《納入業者2社》等の《商品類型①》メーカーについては、20年以上前から従業員等派遣について、上記書式A及びBとは別途、事前の合意をしているから、対象納入業者による本件従業員等派遣について、従業員等派遣例外事由①が存在する旨主張する。
しかし、前記認定(認定事実⑶ア㋒)のとおり、原告は、ヤマダ電機事件後、販売業務に係る納入業者の従業員等の派遣については、あらかじめ商品説明員等の受入れについて納入業者の同意を得ておくこと並びに陳列業務及び補充業務は納入業者の販促業務としてのみ認めることとして、納入業者との間で覚書を締結する方針を立て、覚書のひな形として「店舗への商品説明員等の受入れに関する覚書」(書式A)及び「オープン・セールに伴う説明・販売促進のご協力に関するお願い」(書式B)を用意し、この書式に従って納入業者との間で覚書を取り交わすなどしたこと、上記書式Aにおいては、納入業者が行う業務内容は、店舗での商品に対する一般消費者への商品説明及び販売促進並びに同業務に付随して行う商品の販売促進につながる陳列、補充とされ、上記書式Bにおいては、納入業者が行う業務内容は、店舗に来店する顧客に対する商品についての説明・実演等を通じて顧客の評価等の情報収集及び販売促進に資することを目的として、商品の説明及び販売業務を行うこととされるなど、いずれも開店している原告運営店舗での消費者への商品説明や販売促進に付随する陳列等の作業を対象とするものであり、新規開店又は改装開店前の店作り等の店舗開設準備作業を対象とするものではなく、店舗開設準備作業に係る納入業者による従業員等派遣については、従前と同じく、覚書又は契約書等の合意書が作成されることはなかったものであるから、原告と対象納入業者との間で、従業員等の業務内容、労働時間及び派遣期間等の派遣の条件について、あらかじめ合意がされていたとは認められない。
また、確かに、原告が、《上記納入業者2社を含む3社》から《略》関連商品の店作りのための従業員等派遣を受けるに際し、原告の《略》商品部担当者から上記対象納入業者に宛てて送信した平成20年7月2日付け及び同月7日付け電子メールには、ヤマダ電機に対する排除措置命令が出たことを踏まえて、「急な応援要請は禁止(事前にお願いはOK)。《略》の場合、《上記納入業者3社》については当初より約束してあることです。」、「出店が決まり次第案内を出し、応援者の連絡をもらいます。いちいちこちらから応援依頼は出していません。もともと取引条件に入っていますから(メールで残しているだけですが)」と記載されていることが認められる(審78別紙1・3)。しかし、上記各対象納入業者の従業員は、いずれもその合意の具体的内容は不明である旨供述していることからすると(審79の各「第3 電話聴取の内容」)、原告と上記各対象納入業者との間で、本件従業員等派遣について、従業員等の業務内容、労働時間及び派遣期間等の派遣の具体的条件があらかじめ決められていたとまでは認められない。
b 原告は、①対象納入業者は、自社の販売促進活動の一環として自主的に店作りに参加していたものであるから、原告が費用を支払うべき関係にはなかったこと、②対象納入業者は、販売促進活動の一環である本件従業員等派遣に要する費用を含めた販売経費を社内検討の上、原告に対する納品価格を決定していることから、原告が本件従業員等派遣の費用を個別に負担していなかったとしても、間接的・実質的に本件従業員等派遣に要する費用を負担したといえること、③売場全体の集客力の最大化の観点からすれば、対象納入業者が店作りのために一定の負担をすること自体は、原告による負担と比較して甚だ均衡を失するものでない限り、不当と評価されるべきものではないところ、本件では、原告が優越的地位にないとされた35社を含む納入業者127社が1年間の従業員等派遣により実質負担した人件費相当額は、原告が同期間に新規開店及び改装開店した店舗に関する設備投資費用として負担した費用の約0.6%にすぎない以上、不当と評価されるべきではない旨主張する。
しかし、上記①については、前記説示のとおり、原告は、原告運営店舗の新規開店又は改装開店の際、対象納入業者に対して店舗開設準備作業の日程等の連絡を行い、もって従業員等の派遣を依頼し、この依頼に応じて対象納入業者は本件従業員等派遣をしたものである。そして、前記認定のとおり、本件従業員等派遣における在庫商品の配置、陳列、展示及び装飾は、棚割表の記載に従って行われる単純な作業であり、対象納入業者が派遣する従業員等でなければ実施できないものではなく、基本的には、原告の従業員において実施することが可能なものであったから、対象納入業者によるこれらの作業が自社商品の販売増加につながるといった販売促進上の効果と直接に結び付くものとは認め難く、そのため、自社の販売促進活動の一環とはいえない。仮に対象納入業者において本件従業員等派遣をすることが有益であると考えていたとしても、原告と対象納入業者との間の取引が買取取引である以上、店舗開設準備作業は、本来、原告の費用負担において行うべきものであったというべきである。
上記②については、前記説示のとおり、原告と対象納入業者との間で、本件従業員等派遣に係る費用等の条件についてはあらかじめ決まっておらず、実際にも、商品の納品価格の交渉の段階で、対象納入業者において、将来にわたり原告運営店舗の新規開店又は改装開店の度に要請される従業員等派遣に係る費用を予測することは不可能というべきである上、対象納入業者が店舗開設準備作業の費用を含む営業費用を具体的に織り込んで納品価格の交渉をしていたことを裏付ける客観的な証拠も見当たらない。
上記③については、前記説示のとおり、原告と対象納入業者との間の取引は、そのほぼ全てが買取取引であったから、対象納入業者は、原告に商品を引き渡すことで義務の履行は完了し、その後の原告運営店舗の新規開店又は改装開店に伴う店舗開設準備作業は、本来買主である原告の費用負担において行うべきものであるから、対象納入業者の本件従業員等派遣に係る費用が、原告の店舗開設費用に比して小さいからといって、対象納入業者に本件従業員等派遣をさせることを正当化する理由とはならない。
c したがって、原告の上記各主張はいずれも採用することができない。
エ 従業員等派遣例外事由②について
㋐ 従業員等派遣例外事由②における「直接の利益」に関する原告の主張について
a 原告は、①ガイドラインによれば、「直接の利益」とは、納入する商品の売上増加、消費者ニーズの動向の直接把握につながる場合など実際に生じる利益であれば足りるとしており、また、特殊指定である大規模小売業告示7項1号は、同項柱書の規制対象から除外される「販売業務」につき、「(その従業員等が有する販売に関する技術又は能力が当該業務に有効に活用されることにより、当該納入業者との直接の利益となる場合に限る。)」との限定をするのみで、ガイドラインと同様に、直接の利益は、結果として当該納入業者に生じていれば足りるとしていること、②同告示7項1号においては、例えば、衣料品の納入業者が自社の納入する複数の商品をコーディネートしてマネキンに着せる等、ディスプレイの仕方により納入業者の販売促進につながる場合は、従業員のノウハウが必要な場合であって、納入業者の従業員等が有する販売に関する技術又は能力が当該業務に有効に活用されることにより、当該納入業者の直接の利益となる場合に当たると解され、このように、「直接の利益」について、本件審決が述べる「原告の従業員において実施できない」作業内容であることを要求していないこと、③本件審決が、規制対象から除外されるべき販売業務のうち商品の展示、装飾について、原告の従業員においてこれを行う場合との比較において、「明らかに差異を生じるような特性を有する商品」について、「原告の従業員がそのような商品の展示・装飾をすることができない場合」と限定するのは、「直接の利益」について二重に新たな要件を課すもので不当である旨主張する。
しかし、上記①については、確かに、「直接の利益」には、消費者ニーズの動向の直接把握のように必ずしも計測可能でないものも含まれるが、ガイドライン及び大規模小売業告示においても、納入業者が義務なき準備作業に応じるか否かを事前に判断することができなければ、あらかじめ計算できない不利益を負担することになる(従業員等派遣例外事由②に当たらない)のであるから、結果として納入業者に利益が生じていれば足りるとの立場を採っているものとは解されない。
上記②については、「納入業者の従業員等の不当使用等」(大規模小売業告示7項)に当たらないためには、当該従業員等がその納入に係る商品の販売業務のみに従事させ(同告示7項1号)、その一環として陳列業務等をすることが必要であるが、本件従業員等派遣は、対象納入業者に新規店舗又は改装開店する既存店舗の開店前の店舗開設準備作業に従事させるものであって、その従業員等を販売業務のために派遣させるものではないから、同告示7項1号に該当するものではない。この点を措いても、本件従業員等派遣によって行われる店作り作業が、原告の従業員においても実施できるものであるならば、原告の主張する「(納入業者の)従業員のノウハウが必要な場合であって、納入業者の従業員等が有する販売に関する技術又は能力が当該業務に有効に活用される」ものとはいえない上、本来、原告の費用負担において行うべき店舗開設準備作業を、納入業者が無償で従業員等を派遣して行わなければならない必要性もないことになるから、本件審決が、商品について熟知している納入業者の派遣する従業員等が、その技術や知識等を活用して当該商品の展示、装飾を行うことを通じて、当該商品の特有の魅力が発揮され、原告の従業員においてこれを行う場合との比較において、明らかに差異を生じるような特性を有する商品について、納入業者の派遣する従業員等による当該商品の展示、装飾が、その商品特有の魅力を演出するために行われるものであり、かつ、原告の従業員において、そのような商品の展示、装飾をすることができないという場合(商品の特性上格別の販売促進の効果を生じさせる場合)には、当該商品についての格別の販売促進の効果を生じさせるものとして、当該商品の販売促進に直接結び付くものと認めるのが相当であると判断したことは妥当である。
上記③については、一定の販売促進効果がある陳列、装飾であっても、その効果が原告の従業員等が行った場合と差異がないのであれば、納入業者が無償で従業員等を派遣して当該陳列、装飾に従事する必要性はないから、本件審決がそのような差異が生じ得る商品を対象に、そのような差異を生じさせる陳列、装飾について、当該商品の販売促進に直接結び付くと認めたのは相当である。
なお、原告は、ガイドラインによれば、「直接の利益」とは、納入する商品の売上増加、消費者ニーズの動向の直接把握につながる場合など実際に生じる利益であれば足りるとしているのに対し、本件審決が、「客観的に検証できる事情」との要件を付加する点や、本来、直接の利益がないことの証明責任は被告にあるのに、本件審決が、「当該商品の特性やその展示、装飾について、より具体的な立証等が必要」として、これを原告に負わせたのは、不当である旨主張するが、当裁判所は、直接の利益を判断するに当たり、上記の事情等を要件として付加するものではないから、原告の上記主張は前提を欠くものである。
b 原告は、納入業者は、それぞれの販売商品や販売戦略を含めた経営戦略等に応じて「利益」の有無を評価し行動しているところ、販売商品や経営戦略等が各納入業者により異なる以上、「利益」の有無及び程度は、各納入業者の営業実態や個別的事情に即して個別的に判断すべきであり、本件審決のように、従業員等派遣行為と「直接に結び付く」との要件を設定することにより「直接の利益」の有無を一律に同一の指標で判断し、非常に例外的な場合を除き直接の利益に該当しないとするのは不当である旨主張する。
しかし、本件従業員等派遣において対象納入業者の従業員等がした作業内容は、自社商品の販売増加につながるといった販売促進上の効果と直接結び付くものとは認められず、これと関係のない利益であれば、対象納入業者が本件従業員等派遣を行う必要はないから、本件審決が、「直接の利益」を本件従業員等派遣との直接の結び付きから判断したことは相当である。
c したがって、原告の上記各主張はいずれも採用することができない。
㋑ 本件従業員等派遣における各作業が従業員等派遣例外事由②に当たるか否かについての原告の主張について
a 商品の搬出について
本件審決は、対象納入業者の派遣した従業員等が行った作業のうち、商品の搬出については、その作業内容からして、自社商品の適切な展示と関係を有するものではなく、自社商品の適切な展示による販売促進に直接結び付くものではないから、対象納入業者は、本件従業員等派遣によって派遣した従業員等が商品の搬出を行うことを通じて、自社商品の適切な展示による販売促進により、直接の利益を得ることができるとは認められないと判断した。
原告は、この点について、①商品の搬出行為を行った納入業者は、優越的地位にないとされた35社を含む納入業者127社中15社にすぎず、搬出を行っていたのは基本的には原告従業員であったこと、②一部の納入業者による搬出も、販促物等としての商品を回収する行為として、又は、営業活動として原告運営店舗従業員とコミュニケーションを図り、情報を収集・提供し、人間関係を構築・深化する目的で、店作りに密接に関連して商品の搬出を行っているのであるから、商品の搬出のみを切り出してこれにより直接の利益を得られるか否かを評価することは相当ではないこと、③商品の搬出は、対象納入業者が自発的かつ例外的に行っており、原告の要請に基づく行為ではないから、この点でも不利益行為としての要件を満たすものではなく、本件審決の上記判断は誤りである旨主張する。
しかし、上記①については、実際に搬出作業に従事した納入業者の多寡により、商品の搬出が自社商品の適切な展示による販売促進に直接結び付くか否かが左右されるものではない。
上記②については、納入業者は、改装開店における旧店舗からの商品の搬出の際、自社商品の展示、装飾に使用するPOP等の販促物の回収も行うことがあったことが認められるものの(審4、《H》参考人審尋速記録、《D》参考人審尋速記録、《G》参考人審尋速記録)、販促物の回収は、納入業者が従業員等を派遣して商品の搬出に従事させなければできないものではないから、対象納入業者において、商品の搬出のための本件従業員等派遣を通じて、自社商品の適切な展示による販売促進により、直接の利益を得ることができるものとはいえない。情報収集の機会という点についていえば、本件従業員等派遣によって派遣される従業員等が行っていたのは店舗開設準備作業という原告運営店舗が開店する前の作業であり、当該店舗には消費者が現在しないから、消費者ニーズの動向を直接把握することはできない。原告運営店舗の従業員が保有する消費者や保有在庫についての情報の収集や、原告運営店舗の従業員に対する商品等に関する情報の提供も、通常の営業活動や商談の際にできるものであり、本件従業員等派遣をして従業員等を商品の搬出、搬入又は店作りに従事させなければできないものではない。競合他社商品の陳列・配列方法などの情報も、納入業者が営業訪問等の通常の業務において原告運営店舗に赴いた際に売場を見学するなどして容易に把握することが可能であり、本件従業員等派遣をして従業員等を商品の搬出、搬入又は店作りに従事させなければ得られない情報ではない。したがって、仮に、上記のような情報を収集等することが対象納入業者の商品の販売促進に資するとしても、これらは、本件従業員等派遣によって得られる直接の利益に当たるとはいえない。店舗従業員等との良好な人間関係の構築による自社商品の販売促進についていえば、前記認定(認定事実⑶エ㋒)のとおり、原告は、特定の納入業者が従業員等派遣を行ったこと自体をもって、商談や、原告運営店舗における棚割り、商品の販売等において、当該納入業者を有利に扱うことはしていなかったから、本件従業員等派遣により、原告運営店舗の従業員等との良好な人間関係を築くことができたとしても、これが対象納入業者の商品の販売促進に直接結び付くものではないため、本件従業員等派遣を通じて直接の利益を得ることができたものとはいえない。仮に、対象納入業者が、原告運営店舗の従業員等との良好な人間関係を築くことができ、それが自社商品の販売促進に資すると考えていたとしても、それは対象納入業者の一方的かつ漠然とした期待にすぎない。
上記③については、前記説示のとおり、原告は、原告運営店舗の新規開店又は改装開店の際、対象納入業者に対して店舗開設準備作業の日程等の連絡を行い、もって従業員等の派遣を依頼し、この依頼に応じて対象納入業者は本件従業員等派遣をしたものである。
したがって、本件審決の上記判断に誤りがあるとはいえない。
b 商品の搬入について
本件審決は、対象納入業者の派遣した従業員等が商品の搬入のみを行い、店作りを行わないという場合には、上記の商品の搬出と同様、当該商品の搬入は自社商品の適切な展示と関係するものとは認められないから、自社商品の適切な展示による販売促進に直接結び付くものではなく、また、従業員等が商品の搬入とともに店作りを行い、かつ、仮に当該店作りが対象納入業者の商品の販売促進に直接結び付くものであったとしても、上記の販売促進は、あくまで店作りによって生じるものであって、商品の搬入自体によって直接生じるものではないから自社商品の適切な展示による販売促進に直接結び付くものとはいえず、しかも、商品の搬入自体は、その作業内容からして、原告の従業員においても行うことが可能なものであるから、結局、対象納入業者は、商品の搬入と共に店作りが行われる場合であっても、本件従業員等派遣によって派遣した従業員等が商品の搬入を行うことを通じて、自社商品の適切な展示による販売促進により、直接の利益を得ることができるとは認められないと判断した。
原告は、この点について、①商品の搬入行為を行った納入業者は、優越的地位にないとされた35社を含む納入業者127社中26社にすぎず、搬入を行っていたのは基本的に原告従業員又は原告が委託した業者であったこと、②一部の納入業者による搬入も、店作りに付随したものにすぎず、納入業者は、早く自社商品の陳列・装飾に取り掛かるため、原告従業員らによる搬入完了を待たずに自社・他社問わず搬入を行うことがあったこと、③対象納入業者は、営業活動として原告運営店舗従業員とコミュニケーションを取り、情報を収集・提供し、人間関係を構築・深化する目的で商品の搬入を行っており、店作りに密接に関連して商品の搬入を行っているのであるから、商品の搬入のみを切り出してこれにより直接の利益を得られるか否かを評価することは相当ではないこと、④商品の搬入は、対象納入業者が自発的かつ例外的に行っており、原告の要請に基づく行為ではないから、この点でも不利益行為としての要件を満たさないことから、本件審決の上記判断は誤りである旨主張する。
しかし、上記①については、実際に搬入作業に従事した納入業者の多寡により、商品の搬入が自社商品の適切な展示による販売促進に直接結び付くか否かが左右されるものではない。
上記②については、仮に、商品の搬入をすることによって店作りを迅速に行えることがあったとしても、自社商品の販売促進という効果は当該店作りから生じるのであって、商品の搬入から直接生じるものではないから、本件従業員等派遣による商品の搬入という負担の合理性を基礎付けるに足りるほどの直接の利益とは認められない。したがって、対象納入業者において、商品の搬入のための本件従業員等派遣を通じて、当該従業員等が商品の搬入と共に店作りを行ったか否かにかかわらず、自社商品の適切な展示による販売促進により、直接の利益を得ることができるものとはいえない。
上記③及び④について、原告の主張に理由がないことは、前記aにおいて説示したとおりである。
したがって、本件審決の上記判断に誤りがあるとはいえない。
c 他社商品に係る作業について
本件審決は、一部の納入業者が本件従業員等派遣によって派遣した従業員等は、店作りの現場において、自社の納入商品のみならず、他社の納入商品に係る作業に従事することもあったが、この他社商品についての店舗開設準備作業は、自社商品の適切な展示に関係するものとは認められないから、対象納入業者は、本件従業員等派遣によって派遣した従業員等が他社商品についての作業を行うことを通じて、自社商品の適切な展示による販売促進により、直接の利益を得ることができるとは認められないと判断した。
原告は、この点について、①納入業者は、自社商品の陳列・展示及び装飾の作業効率を上げるという自社の利益のため、また、他社従業員とコミュニケーションを取るために、原告の依頼・要請等もなく、自発的に他社商品に係る作業を行ったのであって、納入業者による他社商品に関する作業は、店作りに密接に関連して、自発的かつ付随的・例外的に行われていたものであるから、その部分のみを切り出して、自社商品の適切な展示に関係するものではなく、直接の利益を得ることができるとは認められないと評価するのは不当であること、②家電量販店を訪れる顧客は特定の納入業者ないし商品のみを見るわけではなく、売場全体の展示の中で購買するか否かを決定するから、納入業者が他社商品について作業をすることは、これによって売場全体を魅力のある「プラットフォーム」とし、自社商品を含む売場の集客力が向上し、結果的に自身の商品の売上げ向上という直接の利益を得ることとなることから、本件審決の上記判断は誤りである旨主張する。
しかし、①については、仮に、納入業者が自社商品の陳列、展示及び装飾の作業効率を上げるという自社の利益のため、または、他社従業員とコミュニケーションを取るために、自発的に、他社商品に係る作業を行ったとしても、それ自体は、自社商品の販売促進に直接結び付くものではないから、対象納入業者において、本件従業員等派遣中に他社商品に係る作業に従事することによる負担の合理性を基礎付けるに足りる直接の利益を認めることはできない。
上記②については、前記認定(認定事実⑶オ、カ)のとおり、原告運営店舗における店作りは、棚割表等に基づいて行うことが徹底されており、棚割表に基づいて実施される店作りにおける商品の配置、陳列、展示、装飾については、基本的には、納入業者でなくとも原告の従業員において実施することが可能なものであったことからすれば、本件従業員等派遣に係る作業には、基本的には、自社商品の適切な展示による販売促進効果は認められず、まして他社商品に係る作業に従事することが、自社商品の適切な展示による販売促進に結び付くものとは認められず、これによって対象納入業者が直接の利益を得ることができるとはいえない。
したがって、本件審決の上記判断に誤りがあるとはいえない。
d 店作りのうち商品の配置、陳列について
本件審決は、原告運営店舗における店作りは、棚割表に基づいて行うことが徹底されており、特に在庫商品の配置、陳列の場所や範囲については、基本的に、店作りの現場において、特定の納入業者に有利に拡張するような形で変更されることはなく、在庫商品の配置、陳列は、棚割表の記載に従って行われる単純な作業であり、原告運営店舗において棚割表に基づいて実施される店作りにおける在庫商品の配置、陳列については、原告の従業員において実施することが可能なものと認められると認定の上、対象納入業者において本件従業員等派遣によって派遣した従業員等が在庫商品の配置、陳列を実施することは、原告の従業員がこれを実施する場合と比べて、特段の差異を生じさせるものではないから、これを原告の従業員が実施した場合との比較において、当該商品についての格別の販売促進の効果を生じさせるものといえず、自社商品の適切な展示による販売促進により、直接の利益を得ることができるものとは認められないと判断した。
原告は、この点について、①棚割表は、どの商品及び販促物を配置するかという大まかな位置関係が記載されているにすぎず、当該商品及び納入業者の持ち込む販促物をどのように展示・装飾するのかなどの詳細な記載(商品の向き、並べ方及び付属物とのセット展示並びにメーカー独自の販促物を使ってどのように商品を演出するのか、販促物の設置場所、位置及び方法等)はなく、このことは、《商品類型②》・《商品類型①》等の棚割表において顕著であるし、とりわけ、超高級《商品類型③》等の納入業者である《納入業者1社》については棚割表自体が存在せず、売場ないし展示スペースが確保されていただけであったから、同社による店作りは単純な作業ではなく、超高級《商品類型③》という商品の特性や設定の特殊性に基づく、非常に慎重な取扱いや専門知識を要する微妙なセッティングが必要であって、同社従業員でなければ実施し得ないものであったこと、②棚割表で一定の配置を定めたとしても、それは、新規又は改装開店に関してはいわば机上の設計図面であり、現場の店舗では必ずしも想定どおりの配置ができないことも少なからずあり、そのため、棚割表では予定されていなかった空きスペースが生じた場合には、対象納入業者は、原告運営店舗の担当者に対して、自社商品や販促物を追加で展示できるように交渉を行うこともあり、また、店作りの現場において、FMDの許可を得て、棚割表を変更することがしばしばあったほか、在庫商品の配置、陳列の場所や範囲を自社に有利に拡張してもらえることもあったから、本件審決の上記認定判断は誤りである旨主張する。
しかし、上記①については、棚割表は、大まかな位置関係が記載されているにすぎないというものではなく、前記認定(認定事実⑶オ)のとおり、全ての商品についてではないにしても、棚割表が極めて詳細に作成され、棚割表に基づき在庫商品の陳列、展示が行われていたものである。すなわち、原告運営店舗について、新規開店又は改装開店を行う場合、個別の店舗の新規開店又は改装開店の際に用いる具体的な棚割りを記載した棚割表が作成されていたが、この棚割表は、新規開店又は改装開店を行う店舗の売場のレイアウトや什器の配置に合わせて、当該店舗の立地条件等の特性も考慮するなどして作成され、そこには、配置される各商品は、原則として、「メーカー」及び「品番」で特定され、表示につき「通常価格」及び「展示優先順位」が指定され、各商品の展示場所も、図面、「棚割番号」及び「什器高」で特定され、「上段」、「中段」、「下段」及び「平置き」の別まで指定されていたほか、POPや実機の使用等の展示、装飾についても、写真や図面などによって指定されていたなど、商品の展示、装飾をするために必要な情報が記載されており、在庫商品の配置、陳列は、棚割表の記載に従って行われる単純な作業であり、原告の従業員において実施することが可能なものであった。また、《商品類型①》及び《商品類型②》については、そもそも棚割表自体が抽象的な商品類型(種類)によって商品の配置等を定めるにとどまっており、その種類の中での具体的な配置等が決定されていない場合があったなど、現場で具体的な棚割りをすることが予定されたものであったが、原告は、納入業者との商談を通じて、《商品類型①》及び《商品類型②》の仕入れの内容、商品の演出のためのPOPや実機の使用等の展示、装飾を含めて、棚割表の内容を、これを作成する店舗支援部の担当者等の承諾の下、各商品の流行等を踏まえ、一定程度納入業者の意見を反映した上で決定し作成していたから、これに基づいて原告の従業員に対象納入業者の派遣する従業員等が実施するのと同様の在庫商品の配置、陳列を行わせることは可能であった。そうすると、本件従業員等派遣における店作りのうち在庫商品の配置、陳列は、本来は原告の従業員において実施すべき作業を納入業者の派遣する従業員等が代わって実施させられているにすぎず、原告の従業員がこれを行う場合との比較において、特段の差異を生じさせるものではなく、仮に原告の従業員が、棚割表に基づいて在庫商品の配置、陳列を実施した場合、これを対象納入業者の派遣する従業員等が実施した場合と比較して、その内容に差異が生じるとしても、それが大きなものであったとは認められないし、在庫商品の配置、陳列は、その作業内容に照らし、商品の展示、装飾と比較して、消費者の商品選択への影響の度合いが大きいとはいえないから、対象納入業者の派遣する従業員等が店作りの現場において在庫商品の配置、陳列を行うことについて、原告の従業員がこれを行った場合と比較して、当該商品についての格別の販売促進の効果を生じさせるものであるとは認め難い。なお、《上記納入業者》の行った従業員等派遣が従業員等派遣例外事由②に当たらないことは、後記別紙Eの第48のとおりである。
上記②については、前記認定(認定事実⑶オ㋑)のとおり、店作りの際には、棚割表と実際の売場とのそごが存在することに伴う不都合等の調整のために、棚割表とは異なる在庫商品の配置、陳列がされることもあったが、この調整作業については、その作業内容からして、原告の従業員において実施できないものではなく、また、原告運営店舗における新規開店又は改装開店の際の店作りの方針等から、納入業者が派遣した従業員等がFMD等の原告の従業員の許可を得て棚割表とは異なる在庫商品の配置、陳列をすることができる可能性は低く、これが許容される範囲も限られていたものである。
したがって、本件審決の上記認定判断に誤りがあるとはいえない。
e 店作りのうち商品の展示、装飾について
(a) 本件審決は、店作りにおける商品の展示、装飾は、棚割表に基づいて行うことが徹底されており、原告と対象納入業者との商談の際に使用が認められたPOP等の販促物や什器類も、納入業者が用意するものを含めて、基本的に、あらかじめ準備することが可能であったことに加え、原告運営店舗において棚割表に基づいて実施される店作りにおける商品の展示、装飾についても対象納入業者が派遣する従業員等でなければ実施できないものなどではなく、原告の従業員において実施することが可能なものと認められるから、対象納入業者が本件従業員等派遣によって派遣した従業員等が商品の展示、装飾を実施することは、基本的に、原告の従業員がこれを実施する場合と比べて、特段の差異を生じさせるものではないと認定した。
原告は、この点について、①棚割表は、どの商品及び販促物を配置するかという大まかな位置関係が記載されているにすぎず、当該商品及び納入業者の持ち込む販促物をどのように展示、装飾するのかなどの詳細な記載がないことから、対象納入業者でなければ実施し得ないものであったこと、②棚割表で一定の配置を定めたとしても、それは、新規又は改装開店に関してはいわば机上の設計図面であり、現場の店舗では必ずしも想定どおりの配置ができないことも少なからずあり、そのため、棚割表では予定されていなかった展示スペースが生じることがままあり、対象納入業者は、原告運営店舗の担当者と直接交渉することによって自社商品や販売促進物を追加で展示することができ、また、商談時に全てのPOP等が最終的に確定されたわけではなく、店作りの当日に、対象納入業者が自社の判断で事前の取決めにないものを持参し、現場で交渉の上その使用が容認されたケースも少なからずあったこと、③対象納入業者は、店作りに従業員等を派遣することによって、自社商品の展示スペースをできる限り確保したり、商品の展示方法につきPOP等の装飾物の内容・貼付場所を工夫したりすることによって、自社商品をより魅力的に演出する機会を確保し、その結果完成した売場は、単純に棚割表に従って機械的に商品を配置した場合と比較して、その得られる視覚効果は大きく異なっており、対象納入業者は、上記を通じて自社商品の販売を促進していること、④商品の展示、装飾が対象納入業者の従業員等によってのみ実現できるものであった顕著な例は、極めて高価な《商品類型③》を扱う《納入業者1社》であり、商品の展示、装飾には、繊細な技術及び設置経験を豊富に持つ納入業者の従業員が行うことが必要不可欠であったことから、本件審決の上記認定は誤りである旨主張する。
しかし、上記①については、棚割表は、大まかな位置関係が記載されているにすぎないというものではなく、前記認定(認定事実⑶オ、カ)のとおり、極めて詳細に作成され、POPや実機の使用等の展示、装飾についても、写真や図面などによって指定されていて、原告と納入業者との商談の際に使用が認められたPOP等の販促物や什器類も、納入業者が用意するものを含めて、基本的に、原告の指示に従ってあらかじめ準備することが可能であったことに加え、納入業者は、実際には、原告運営店舗の全ての新規開店又は改装開店の際に店作りのための従業員等派遣を行っていたわけではなかったにもかかわらず、原告運営店舗の新規開店又は改装開店に際して商品の展示、装飾に係る店作りがされていたことや、実際に行われた商品の展示、装飾の作業内容からすれば、原告運営店舗において棚割表に基づいて実施される店作りにおける商品の展示、装飾についても、納入業者が派遣する従業員等でなければ実施できないものではなく、基本的には、原告の従業員において実施することが可能なものであった。
上記②については、前記認定(認定事実⑶カ㋓)のとおり、店作りの際には、棚割表と実際の売場とのそごが存在することに伴う不都合等の調整のために、棚割表とは異なる在庫商品の展示、装飾がされることもあったが、この調整作業については、その作業内容からして、基本的には、原告の従業員において実施できないものではなく、また、原告運営店舗における新規開店又は改装開店の際の店作りの方針等から、納入業者が派遣した従業員等がFMD等の原告の従業員の許可を得て棚割表とは異なる在庫商品の展示、装飾をすることができる可能性は低く、これが許容される範囲も限られていたものである。
上記③については、原告の従業員の一部が、納入業者の従業員等が店作りを行っても、当該納入業者の商品の売上増加につながるものではないとか、売上増加につながるか否かは分からないと供述していること、納入業者の従業員等も、本件従業員等派遣に応じたことが、実際に自社商品の販売促進に直接結び付くものではない、これに直接結び付いていたか否かは検証等をしていないので明らかではないなどと供述していること、原告の競争業者である《事業者A》の従業員や《事業者B》の従業員が、納入業者の従業員等が店作りを行う場合と家電量販店の従業員等が店作りを行う場合とで売上げは変わらず、消費者の反応も、変わらなかった、あるいは、むしろ家電量販店の従業員等が店作りをする場合の方が良くなったなどと供述していることからすると(査63、89、618、《D》参考人審尋速記録、《H》参考人審尋速記録、《L》参考人審尋速記録、《G》参考人審尋速記録、《I》参考人審尋速記録、《J》参考人審尋速記録、《E》参考人審尋速記録、《N》参考人審尋速記録)、対象納入業者が本件従業員等派遣によって派遣する従業員等が商品の展示、装飾を実施することは、基本的に、原告の従業員がこれを実施する場合と比較して、対象納入業者の商品についての格別の販売促進の効果を生じさせるものであるとまでは認められない。
上記④については、《上記納入業者》の行った従業員等派遣が従業員等派遣例外事由②に当たらないことは、後記別紙Eの第48のとおりである。
したがって、原告の上記主張は理由がない。
(b) 本件審決は、対象納入業者が本件従業員等派遣によって派遣する従業員等による商品の展示、装飾が、商品の特性上格別の販売促進の効果を生じさせる場合に当たるのであれば、対象納入業者の派遣する従業員等による当該商品の展示、装飾は、当該商品についての販売促進に直接結び付くものと認められ、対象納入業者は、本件従業員等派遣を通じて、自社商品の適切な展示による販売促進により、直接の利益を得ることができるものといえると判断した。
原告は、この点について、ガイドラインにおける「直接の利益」とは、将来の取引等により生じる間接的な利益を除いた利益全般を指すものと捉えるべきであって、取引の相手方である対象納入業者が利益と感じるもの全般が含まれるから、これを著しく限定して解釈する本件審決の上記判断は、ガイドラインを超える要件を設定することでガイドラインを死文化させると同時に、企業の予測可能性やガイドラインへの信頼を考慮しないという点で不当である旨主張する。
しかし、従業員等派遣例外事由②において、「直接の利益」が勘案されるのは、将来の利益に結び付くか否かが漠然として不確実な利益や、偶発的な利益といった「間接的な利益」では、それが、当該取引の相手方において、従業員等派遣という義務なき準備作業を行う負担に見合ったものなのかを事前に判断できず、あらかじめ計算できない不利益を負うことになるからである。そうすると、「直接の利益」には、計測可能でないものも含まれるとしても、従業員等派遣に応じたことと直接結び付いたものとはいえない「従業員等派遣を行うことにより将来の取引が有利になる」といった、取引の相手方における一方的な漠然とした期待や主観的な利益は含まれないというべきであり、商品の展示、装飾についていえば、商品の特性上格別の販売促進の効果を生じさせる場合に当たらないのであれば、これを否定するのが相当である。これを、原告の主張する対象納入業者において主観的に利益と感じるもの全般を含むと広く解することはできない。
したがって、原告の上記主張は理由がない。
f 以上のとおり、対象納入業者の本件従業員等派遣により行われた商品の搬出、商品の搬入、他社商品に係る作業については、自社商品の適切な展示による販売促進により、直接の利益を得ることができるとは認められない。また、店作りにおける商品の配置、陳列に係る作業は、原告の従業員がこれを実施する場合と比べて、特段の差異を生じさせるものではないから、これを原告の従業員が実施した場合との比較において、当該商品についての格別の販売促進の効果を生じさせるものではなく、直接の利益を得ることができるものとは認められない。さらに、店作りにおける商品の展示、装飾に係る作業も、基本的には、原告の従業員がこれを実施する場合と比べて、特段の差異を生じさせるものではないから、これを原告の従業員が実施した場合との比較において、当該商品についての格別の販売促進の効果を生じさせるものではなく、直接の利益を得ることができるものとは認められないというべきである。
ただし、店作りにおける商品の展示、装飾については、対象納入業者の取り扱う商品の特性上格別の販売促進の効果を生じさせる事情がある場合に当たるのであれば、その場合には、商品の展示、装飾に係る作業が当該商品についての販売促進に直接結び付くものとして、直接の利益を得ることができるものとされることがあるというべきである。
㋒ 対象納入業者ごとの従業員等派遣例外事由②の有無について
対象納入業者ごとに従業員等派遣例外事由②の有無について検討した結果は、別紙Eのとおりであって、対象納入業者ごとに個別にみても、いずれも従業員等派遣例外事由②に当たるとの特段の事情を認めることはできない。
オ 小括
以上によれば、原告が対象納入業者に本件従業員等派遣をさせたことは、いずれも不利益行為に該当するものと認められる。
⑸ 本件従業員等派遣は、原告が優越的地位を利用して行ったものか
ア 行為者について、取引の相手方に対してその取引上の地位が優越しているものと認められる場合には、行為者が当該相手方に不利益行為を行えば、通常は、行為者は自己の取引上の地位が相手方に対して優越していることを「利用して」(独占禁止法2条9項5号柱書)これを行ったものと認めるのが相当である(ガイドライン第2の3参照)。
そして、原告については、前記説示のとおり、その取引上の地位が対象納入業者(92社)に対して優越するものと認められるところ、原告は、前記説示のとおり、対象納入業者に対して本件従業員等派遣をさせるという不利益行為を行っていたことが認められる。そして、本件において、原告が上記不利益行為を行ったことについて、自己の取引上の地位が対象納入業者に対して優越していることを「利用して」行われたとはいい難いものとみるべき事情は見当たらない。
そうすると、原告が対象納入業者に対して本件従業員等派遣をさせるという不利益行為を行ったことについては、原告において、自己の取引上の地位が対象納入業者に対して優越していることを「利用して」これを行ったものと認めるのが相当である。
イ 原告の主張について
㋐ 原告は、仮に、原告が対象納入業者に対して優越的地位にあり、不利益行為を行ったとしても、対象納入業者が自社の従業員等を原告運営店舗に派遣したのは、店作りが自社にとって直接の利益をもたらす行為であること等を考慮した自主的な営業政策に基づくものであるから、原告の対象納入業者に対する行為がその優越的地位を「利用して」行われたものであると直ちにいえるものではなく、当該納入業者において原告からの従業員等の派遣要請を受け入れるに至った経緯や態様につき、対象納入業者ごとに具体的な事実の立証が必要であるが、その立証はない旨主張する。
しかし、対象納入業者が本件従業員等派遣をしたことについて、対象納入業者に直接の利益(従業員等派遣例外事由②)があったとは認められないことは、別紙Eのとおりであるから、本件従業員等派遣が対象納入業者において直接の利益を得ること等を考慮した自主的な営業政策に基づくものとはいえない。
また、「利用して」とは、その文言からして行為者側の事情であることに加え、優越的地位と不利益行為の因果関係は客観的に認定されるべきであるし、前記説示のとおり、優越的地位にある行為者が、相手方に対して不当に不利益を課して取引を行えば、通常は、自己の取引上の地位が相手方に対して優越していることを「利用して」行われた行為であると認めるのが相当であるから、常に相手方ごとに不利益行為を受け入れるに至った経緯や態様等につき、具体的な事実が認定されなければ、これが認められないというものではない。むしろ前記認定・説示(前記⑵及び別紙E)のとおり、本件においては、対象納入業者に対して優越的地位にある原告が、各対象納入業者に対して、事前の連絡及び派遣依頼をした上、多数の原告運営店舗において、原告の利益を確保することなどを目的として、継続して、組織的かつ計画的に本件従業員等派遣を行わせていた経緯や態様等が認められるのであって、このような事実に鑑みれば、「利用して」の要件を充足するというべきである。
㋑ 原告は、本件審決が、甲が乙に対して優越的な地位にあると認められる場合には、甲が乙に不利益行為を行えば、通常は、甲は自己の取引上の地位が乙に対して優越していることを利用して行ったと認められ、このような場合、乙は自由かつ自主的な判断に基づいて不利益行為を受け入れたとはいえず、甲は正常な商慣習に照らして不当に独占禁止法2条9項5号所定の行為を行っていたものと認められる旨判断したことについて(本件審決案49頁)、これは、「優越的地位及び不利益行為が存在すれば、公正競争阻害性が認められる。」というに等しく、この考えは、被告が現在も取っている「優越的地位及び不利益行為が存在しても、原則として適法であり、公正競争阻害性が別途必要である。」との考えと矛盾する旨主張する。
しかし、本件審決の上記説示は、優越的地位を利用して不利益行為を行うことは、一般的には公正な競争秩序の維持・促進の観点から是認し難いという、「通常の」場合について述べるものであり、公正競争阻害性の要件を不要とするものではないし、本件審決は、別途、原告がその優越的地位を利用して、対象納入業者に本件従業員等派遣をさせたことは、正常な商慣習に照らして不当に行われたものであって、公正な競争を阻害するおそれ(公正競争阻害性)があるものと認められる旨判断している(本件審決案第6の1⑹イ・140頁~143頁)。
したがって、原告の上記主張は理由がない。
㋒ 原告は、①原告は店作りへの参加を要請したことはなく、納入業者は自社が得る利益のために店作りに自主的に参加していたから、不利益を被ったという事実は存在しないこと、②原告の競争者のうち少なくとも《事業者A》は納入業者の従業員等による店作りに相当する作業を平成24年まで行わせていたことからすれば、原告が競争者との関係で競争上有利となるおそれが生じたとはいえない旨主張する。
上記①については、原告の主張に理由がないことは、前記認定(前記⑶イ及び⑷、別紙E)のとおりである。
上記②については、公正な競争を阻害するおそれがあるというためには、現に競争上、行為者が有利となり、競争者が不利となることを要しないから、仮に全ての競争業者(《事業者A》等)が原告と同様の行為をしていたとしても、原告による本件従業員等派遣に係る行為につき、公正な競争を阻害する「おそれ」があることが否定されるものではない。
㋓ したがって、原告の上記各主張はいずれも採用することができない。
⑹ 優越的地位の濫用についてのまとめ
以上に認定・説示したところによれば、原告は、その取引上の地位が、対象納入業者である92社に対して優越していたところ、本件対象期間中、対象納入業者に対して不利益行為の要請等を行えば、対象納入業者においてこれに応じざるを得ないような関係の下で、不利益行為に当たる本件従業員等派遣を行わせることを、多数の対象納入業者に対して、継続して、組織的かつ計画的に一連の行為として行っていたものであり、本件従業員等派遣をさせる行為は、公正な競争秩序の維持、促進の観点から是認されるものに照らして相当でないことが明らかである。
したがって、原告が対象納入業者に本件対象期間中に行わせた本件従業員等派遣の各行為については、いずれも、原告において、自己の取引上の地位が対象納入業者に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に独占禁止法2条9項5号ロ(平成21年改正法の施行日前については、旧一般指定14項)に該当する行為(優越的地位の濫用行為)をしたものと認められる。
3 争点2(本件排除措置命令をすることについて特に必要があるか)について
⑴ 原告は、本件対象期間中、自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、継続して取引する相手方に対し、自己のために役務を提供させていたものであり、これらの行為が独占禁止法2条9項5号ロに該当するものであることは前記説示のとおりであって、これらは、同法19条の規定に違反するものと認められる。
そして、同法20条の排除措置命令は、違反行為を排除し、当該違反行為によってもたらされた違法状態を除去し、競争秩序の回復を図るとともに、当該行為の再発を防止することを目的として、作為又は不作為を命じる行政処分であり、そのため、被告においては、違反行為そのものについて排除措置を命じ得るだけではなく、これと同種又は類似の違反行為の行われるおそれがあって、上記目的を達するために特にその必要性のある限り、これらの事実についても相当の措置を命じることができる(同法7条2項参照)。
原告は、後記認定のとおり、平成22年11月30日をもって本件違反行為を取りやめ、以降、不利益行為を行っていないが、平成20年9月6日以降、本件違反行為がされた期間(本件対象期間)が2年3か月と長期間に及ぶこと、前記認定事実及び別紙Eにおいて認定した原告と対象納入業者との市場における関係、本件従業員等派遣の頻度・回数・規模及び内容、対象納入業者が本件従業員等派遣に至った経緯及びこれに向けた原告の対応等(とりわけ132回に上る原告運営店舗の新規開店又は改装開店に際し、原告運営店舗の店舗開設準備作業に関係する原告の従業員の連携の下、継続して、組織的かつ計画的に一連のものとして本件従業員等派遣を行わせたものと認められること)の諸事情を考慮すれば、原告については、排除措置命令をするについて「特に必要がある」というべきである。そうすると、本件排除措置命令は、独占禁止法20条2項、7条2項1号に反するとはいえず、その他、本件記録上、本件排除措置命令の適法性を疑わせるような事情は見当たらない。
したがって、本件排除措置命令については、本件審決に独占禁止法82条1項各号所定の取消事由があるとはいえない。
⑵ 原告の主張について
原告は、①原告が、ヤマダ電機事件の後、新規開店又は改装開店を行った原告運営店舗における納入業者による従業員等派遣の実態等について社内確認を経た後、平成20年夏頃、納入業者向けの説明会を実施した上、店舗開設準備作業についての事前合意の徹底を図るべく、合意書面として書式A及び書式Bを配布し、納入業者との間で店舗開設準備作業について上記各書式に基づき事前の合意をしたこと、②原告が、公正取引委員会(被告)による立入検査後には同委員会から問題として指摘された行為を速やかに中止していることから、本件違反行為と同様の違反行為が繰り返されるおそれがあったとは認められないこと、③原告が、顧問弁護士と相談をしながら上記①の納入業者と取り交わすべき書式を策定して法令遵守に努めていた上、平成20年7月頃に被告の担当官と面談をした際に格別のコメント等がされることはなく、むしろ現場で運用が徹底できるのであれば問題はない旨の指導まで受けていたことからすれば、被告が排除措置命令を発することは、信義誠実の原則に反する不当なものである旨主張する。
しかし、前記認定・説示のとおり、原告主張に係る書式A及び書式Bは、いずれも開店している原告運営店舗での消費者への商品説明や販売促進に付随する陳列等の作業を対象とするものであり、新規開店又は改装開店前の店作り等の店舗開設準備作業を対象とするものではなく、店舗開設準備作業に係る納入業者による従業員等派遣については、従前と同じく、覚書又は契約書等の合意書が作成されることはなかったものであるから、原告と対象納入業者との間で、従業員等の業務内容、労働時間及び派遣期間等の派遣の条件について、あらかじめ合意がされていたとは認められない。
また、仮に被告の担当官が原告に対して、現場で運用が徹底できるのであれば問題はない旨指導していたとしても、前記認定のとおり、原告は、ヤマダ電機事件後も、対象納入業者に対し、本件従業員等派遣の事前の連絡及び派遣の依頼を行い、従業員等派遣例外事由①との関係でみれば、対象納入業者との間で、本件従業員等派遣について、従業員等の業務内容、労働時間及び派遣期間等の派遣の条件をあらかじめ合意することなく、かつ、対象納入業者が本件従業員等派遣に要した費用も負担せず、従業員等派遣例外事由②との関係でみても、対象納入業者が直接の利益を得られるとは認められない本件従業員等派遣に従事させており、しかも、このようなことがヤマダ電機事件後も平成22年11月29日までの間、継続して、組織的かつ計画的に行われたのであって、被告の担当官による指導に従った処理が徹底されていたとはいえない。
そして、原告が、被告による平成22年11月16日の立入検査後まもなく違反行為を取りやめたとしても、原告は、平成20年9月6日以降、約2年3か月間にわたって本件違反行為を組織的かつ計画的に継続し、別紙Cのとおり、多数の原告運営店舗に対して、多数回にわたり、多数の対象納入業者に本件従業員等派遣をさせていたのであって、排除措置命令をするについて「特に必要がある」といえることは明らかである。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。
4 争点3(本件課徴金納付命令における課徴金算定の基礎となった違反行為期間における購入額の算定方法は適法か)について
⑴ア 独占禁止法20条の6は、事業者が、同法19条の規定に違反する行為(同法2条9項5号に該当するものであって、継続してするものに限る。)をしたときは、被告は、当該事業者に対し、「当該行為をした日から当該行為がなくなる日までの期間」における「当該行為の相手方との間における政令で定める方法により算定した売上額(当該行為の相手方が複数ある場合は当該行為のそれぞれの相手方との間における政令で定める方法により算定した売上額又は購入額の合計額とする。)に百分の一を乗じて得た額に相当する額」の課徴金の納付を命じなければならないと規定する。そこで、本件のように相手方が複数ある場合、違反行為期間である「当該行為をした日から当該行為がなくなる日までの期間」の意義が問題となる。
ところで、独占禁止法の定めるいわゆるカルテル行為をした事業者に対する課徴金制度(同法7条の2)は、昭和52年法律第63号による改正において、カルテルの摘発に伴う不利益を増大させてその経済的誘因を小さくし、カルテルの予防効果を強化することを目的として、既存の刑事罰の定めやカルテルによる損害を回復するための損害賠償制度に加えて設けられたものであり、カルテル禁止の実効性確保のための行政上の措置として機動的に発動できるようにしたものである。また、課徴金の額の算定方式は、実行期間のカルテル対象商品又は役務の売上額に一定率を乗ずる方式を採っているが、これは、課徴金制度が行政上の措置であるため、算定基準も明確なものであることが望ましく、また、制度の積極的かつ効率的な運営により抑止効果を確保するためには算定が容易であることが必要であるからであって、個々の事案ごとに経済的利益を算定することは適切ではないとして、そのような算定方式が採用され、維持されているものと解され、そうすると、課徴金の額はカルテルによって実際に得られた不当な利得の額と一致しなければならないものではないと解される(最高裁平成14年(行ヒ)第72号同17年9月13日第三小法廷判決・民集59巻7号1950頁参照)。この趣旨は、独占禁止法20条の6に基づく優越的地位の濫用に係る課徴金制度についても、同様に妥当するものと解される。すなわち、優越的地位の濫用に係る課徴金についても、その摘発に伴う不利益を増大させてその経済的誘因を小さくし、その予防効果を強化することを目的として設けられたものであり、優越的地位の濫用禁止の実効性確保のための行政上の措置として機動的に発動できるようにしたものであって、課徴金の額の算定方式についても、算定基準が明確なものであることが望ましく、また、制度の積極的かつ効率的な運営により抑止効果を確保するためには算定が容易であることが必要であって、個々の事案ごとに経済的利益を算定することは適切ではないということができる。
このような制度趣旨に鑑みれば、事業者の1個の違反行為(優越的地位の濫用行為)につき相手方が複数ある場合における違反行為期間については、始期である「当該行為をした日」とは、複数の相手方のうちいずれかの相手方に対して最初の当該行為をした日をいい、違反行為期間の終期である「当該行為がなくなる日」とは、複数の相手方の全ての相手方に対して当該行為が行われなくなった日をいうものと一律に解するのが相当である。そして、優越的地位の濫用行為が複数の相手方に対して行われた場合において、それが、組織的かつ計画的に一連のものとして実行されたものと認められるなど、事業者の優越的地位の濫用行為として一体のものであると評価することができる場合には、全体として1個の違反行為がされたものとして、独占禁止法の規定を適用し、一律に違反行為期間を認めるのが相当である。
イ これを本件についてみると、本件従業員等派遣がされた本件対象期間の期間の長さ、前記認定の原告と対象納入業者との市場における関係、本件従業員等派遣の頻度・回数・規模及び内容、対象納入業者が本件各従業員等派遣に至る経緯及びそれに向けた原告の対応等の諸事情に照らせば、原告は、132回に上る原告運営店舗の新規開店又は改装開店に際し、原告の利益を確保することなどを目的として、継続して、原告運営店舗の店舗開設準備作業に関係する原告の従業員の連携の下、組織的かつ計画的に一連のものとして本件従業員等派遣をさせるとの不利益行為を行ったものと認めることができる。そうすると、これら一連の原告のした不利益行為は、「継続してするもの」に当たるというべきであるとともに、事業者の優越的地位の濫用行為として一体のものであると評価することができる場合に該当し、全体として1個の違反行為がされたものとして、独占禁止法の規定の適用を受けるものというべきである。
ウ 以上によれば、原告については、対象納入業者のうちいずれかに対して最初に不利益行為をした日を違反行為期間の始期である「当該行為をした日」と認め、全ての対象納入業者に対して不利益行為が行われなくなった日を違反行為期間の終期である「当該行為がなくなる日」と認めるべきこととなる。
前記イ認定のとおり、原告は、継続して、従業員の連携の下、組織的かつ計画的に一連のものとして本件従業員等派遣をさせるという不利益行為を行ったものと認められるから、これらは「継続してするもの」(独占禁止法20条の6)に当たるというべきであるとともに、「当該行為をした日」については、平成20年9月6日(《店舗名略》)における同日の店舗開設準備作業のための本件従業員等派遣がされた日(査302のうち《略》の該当頁参照))と認めるのが相当である。また、前記認定⑷のとおり、原告は、平成22年11月16日の被告による本件立入検査を受けて、同月30日に経営会議を開き、今後は納入業者に店舗開設準備作業のための従業員等の派遣依頼を行わず、その派遣を受けた場合には費用を支払うことを決定した上、同年12月6日頃、納入業者に対してその旨通知し、その後は、店舗開設準備作業をできるだけ自社従業員で行い、納入業者から従業員等の派遣を受けた場合も、作業対象を当該納入業者の納品した商品のみに限定し、納入業者に対して依頼の趣旨を示す表現を用いないようにしたのであって、このような事実に照らせば、原告の役職員は、遅くとも平成22年11月30日には、納入業者に対して、今後、無償で店舗開設準備作業を依頼してはならないことを明確に理解したといえるし、対象納入業者も、同日、原告が送付することと決定した通知書に基づき、遅くとも同年12月6日以降に商品の搬出、搬入又は店作りが行われた際には、店舗開設準備作業の日程連絡を受けても、従業員等を派遣する必要がないこと、従業員等を派遣する場合であっても、他社商品の作業を行う必要はなく、また、費用の支払を受けることができることを理解できたものと認められるから、同年11月30日に、本件違反行為は取りやめられたものというべきである。そうすると、本件における違反行為期間の終期は同月29日であって、同日をもって「当該行為がなくなる日」と認めるのが相当である。
エ そうであれば、本件違反行為があった期間は、平成20年9月6日から平成22年11月29日まで(本件対象期間)であるが、独占禁止法20条の6の規定が適用されるのは、平成21年改正法の施行日である平成22年1月1日以降であるから(同法附則5条)、その始期は同日となり、課徴金の算定の基礎となる原告の対象納入業者からの購入額の算定の期間は、同日から平成22年11月29日までであって、独占禁止法施行令30条2項に基づき算出された同期間における対象納入業者92社のマル特経費負担控除後の購入額は、別紙Dの「マル特経費負担控除後の購入額(円)」欄記載の金額の合計額である3032億2856万3097円となる。
したがって、原告が国庫に納付しなければならない課徴金の額は、独占禁止法20条の6の規定により、上記3032億2856万3097円に100分の1を乗じて得た額から同法20条の7において準用する同法7条の2第23項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた額である30億3228万円と算出される。
オ そうすると、これと同額の課徴金の支払を命じた本件課徴金納付命令は、独占禁止法20条の6に反するものとはいえず、その他、本件記録上、本件課徴金納付命令の適法性を疑わせるような事情は見当たらない。
⑵ 原告の主張について
ア 原告は、優越的地位の濫用規制は、優越的地位にある相手方に対して優越的地位にあることを利用して、個々の相手方に対する不利益行為を禁止するものであって、相手方において常に不利益行為の要請を受け得る状態にあること自体を規制するものではないから、優越的地位の濫用に係る課徴金は、相手方ごとに独占禁止法2条9項5号の行為であって「継続してするもの」が行われたか否かを判断した上で、不利益行為を受けたそれぞれの期間を基礎に算定されるべきであること、本来、相手方ごとに成立する優越的地位の濫用について、法律上の根拠規定が全くないのに、複数の行為を一体として処分し、その結果、各行為が個別に処分された場合よりも処分が重くなることも許容されると解釈することは、法理論的にあり得ず、独占禁止法の予定しない逸脱行為であること、独占禁止法20条の6は、複数の相手方との取引額を合算する旨を定めるのみであり、複数の相手方との取引額の算定期間を一律のものとする定めを設けていないから、優越的地位の濫用について、相手方ごとに違反行為期間を認定することを前提に、それぞれにおける取引額を合算して課徴金を算定することを特別に定めたものであること、優越的地位の濫用の成否は、相手方ごとに異なり得るものであり、違反事業者が相手方から不当に利得を収受する期間も相手方ごとに異なり得るはずであり、課徴金算定期間を優越的地位が認められる相手方ごとに算定しないことは、独占禁止法が課徴金納付命令を行うこと及びその金額の決定につき被告に裁量を与えていないことを無効化するもので、優越的地位の濫用に対する課徴金制度の趣旨に反するのみならず、法の文言に反して課徴金額を著しく増大させるものであることから、課徴金の算定は、対象納入業者ごとにその期間を認定し、「継続してするもの」に該当するか否かをそれぞれに判断すべきであり、平成22年1月1日以降、継続して違反行為の対象となったと認められない納入業者については、課徴金の算定対象から除外すべきである旨主張する。
しかし、独占禁止法20条の6が定める「当該行為」は、条文上、「第19条の規定に違反する行為(第2条第9項第5号に該当するものであって、継続してするものに限る。)」を意味することは明らかである。本件においては、前記説示のとおり、原告が、対象納入業者92社に対し、原告の優越的地位を利用して、多数の原告運営店舗に、継続して、組織的かつ計画的に本件従業員等派遣をさせた行為が、正常な商慣習に照らして不当に独占禁止法2条9項5号ロ(平成21年改正法の施行日前については、旧一般指定14項)に該当する行為を行っていたものであり、優越的地位の濫用行為として一体のものであると評価され、全体として1個の独占禁止法19条の規制する行為に該当するものと認められるから、本件においては、相手方ごとに異なる「当該行為」があるものとはいえない。
また、同法20条の6が「当該行為の相手方が複数ある場合は当該行為のそれぞれの相手方との間における」と定めていることからすると、同条項は、1個の「当該行為」について、相手方が複数ある場合をも想定しているものと解される。
さらに、原告の主張するように個々の相手方ごとに「行為」及び違反行為期間としての始期及び終期を認定する算定方法は、「相手方」ごとに違反行為期間の認定が区々となり、売上額又は購入額の計上が複雑となって、課徴金の算定が困難となるものであり、優越的地位の濫用禁止の実効性確保のために機動的に発動されるべき行政上の措置であって、算定基準の明確性や算定方法の簡明性が求められる課徴金制度の趣旨(前記最高裁平成17年判決参照)に必ずしも沿うものとは言い難い。
そして、優越的地位の濫用行為が、複数の相手方に対して継続的、組織的、計画的に一連の行為として行われ、当該行為が一体として1個の違反行為であるものと認められる場合、事業者による濫用行為の態様や程度、収受される利得額等に関連するのは、相手方にかかわらず一律に認定される違反行為期間における事業者の取引額全体の多寡であるものと考えられる。また、同違反行為期間中であれば、事業者は不利益行為を要請し得る状態にあり、相手方も不利益行為の要請を受け得る状態にあったものと解されるから、同違反行為期間中に、相手方によっては現実に濫用行為を受けていない期間があるとしても、当該期間の取引額も課徴金の算定基礎とするのが合理的というべきである。
したがって、原告の上記主張は理由がない。
イ 原告は、独占禁止法20条の6における「当該行為」とは、同法2条9項5号に該当する行為であるが、同法2条9項5号は、平成22年1月1日に施行された平成21年改正法によって新設された規定であって、平成22年1月1日より前に行われた行為は、旧一般指定14項に該当することはあっても、平成21年改正法施行前には存在しない独占禁止法2条9項5号に該当することはあり得ないから、平成21年改正法附則5条は、改正後の独占禁止法2条9項5号に該当する行為に係る課徴金に関する経過措置規定にすぎず、そのため、本件では、平成22年1月1日以降にされた行為のみが対象となるところ、課徴金算定期間は、同日以降、最初に商品の搬入、搬出及び店作り作業が行われた同年2月1日から同年11月29日までとなること、上記の解釈は、平成21年改正法附則5条には、平成21年改正法附則8条のように改正後の独占禁止法2条9項1号ないし4号に規定する行為に「相当するもの」との文言が定められていないことや、平成21年改正法附則2条に規定する「旧独占禁止法2条9項各号に該当する行為」との文言が定められていないことによっても裏付けられる旨主張する。
しかし、平成21年改正法附則5条は、その文言上、独占禁止法20条の6等に規定する違反行為に係る課徴金の納付に関し、当該違反行為が施行日前後にわたる場合について定めるものと解され、当該違反行為である同法2条9項5号に定める優越的地位の濫用行為は、平成21年改正法施行前においても、旧一般指定第14項により不公正な取引方法として規制されていたから、平成21年改正法附則5条は、かかる優越的地位の濫用行為が前記施行日の前後にわたる場合における経過措置を定めたものと解するのが相当である。原告は、平成21年改正法附則8条との対比から、平成21年改正法附則5条は、改正後の2条9項5号に該当する行為に係る課徴金に関する経過措置規定にすぎない旨主張するが、前記施行日の前後に同一の行為が継続する場合について定める平成21年改正法附則5条と、施行日を挟んで別個の行為について定める平成21年改正法附則8条の規定を対比することは相当ではない。また、平成21年改正法附則2条は、施行日前にされた行為についての排除措置に関する経過規定であるから、当該施行日前にされた行為を「旧独占禁止法2条9項各号」と規定したものであって、これと平成21年改正法附則5条とを対比することは相当ではない。
ウ 原告は、仮に、平成21年改正法附則5条が、改正法施行日前に行われた行為についても、改正後の独占禁止法2条9項5号の規定が適用され得ることを前提とした規定であると解釈するとしても、被告は、本件課徴金納付命令において、平成22年1月1日より前の行為について、旧一般指定14項を適用し(本件課徴金納付命令に係る課徴金納付命令書の別添排除措置命令書の理由の第2(法令の適用))、あえて独占禁止法2条9項5号及び平成21年改正法附則5条を適用しなかったのであるから、同日より前の行為について、平成21年改正法附則5条を足掛かりとして独占禁止法2条9項5号の規定に該当する行為であるとみなすことは許されない旨主張する。
しかし、本件審決は、本件違反行為は、独占禁止法2条9項5号(平成21年改正法の施行日前においては旧一般指定14項)に該当し、同法19条に違反するものである旨判断したが、平成21年改正法施行日前の行為について改正後の法条を適用しないのは当然である上、平成21年改正法附則5条を適用法条として挙示しなったからといって、同改正法附則の経過措置規定が適用されなくなるものではない。
エ 原告は、①平成22年1月に従業員等派遣をした対象納入業者は存在しないから(同月30日に改装開店予定の《店舗名⑩》については、改装開店が延期されたため、同日頃の店舗開設準備作業そのものが存在しない。)、課徴金の算定期間は、平成22年2月から同年11月29日までとすべきであり、そうでなくとも、課徴金算定の基礎となる違反行為(課徴金対象行為)の始期は対象納入業者ごとに個別に考え、課徴金算定期間を、各対象納入業者につき課徴金対象行為が最初に行われた平成22年2月以降の時期とし、終期は同年11月29日とすべきであり、そうでなくとも、課徴金算定期間を対象納入業者ごとに個別に考え、始期は各対象納入業者につき課徴金対象行為が最初に行われた平成22年2月以降の時期、終期は課徴金対象行為が最後に行われた同年11月29日以前の時期とすべきであること、②対象納入業者のうち《納入業者1社》は、上記課徴金算定期間中、一度も従業員等派遣をしていないから、同社の同年2月から同年11月29日までの購入額は全額控除すべきであること、③《納入業者2社》は、上記課徴金算定期間においては、本件審決の基準によっても原告の優越的地位が認められないから、これら2社の購入額も全額控除すべきである旨主張する。
上記①については、前記⑴において認定・説示したとおり、本件違反行為があった期間は、平成20年9月6日から平成22年11月29日まで(本件対象期間)であるところ、独占禁止法20条の6の規定が適用されるのは、平成21年改正法の施行日である平成22年1月1日以降であるから(同法附則5条)、その始期は同日となり、課徴金の算定の基礎となる原告の対象納入業者からの購入額の算定の期間は、同日から平成22年11月29日までとなる。これを本件違反行為の相手方である対象納入業者ごとに考えるのではなく、一律に認定されるべきであることは、前記アにおいて説示したとおりである。また、課徴金算定期間の始期である平成22年1月1日の時点においては、確かに、原告による本件違反行為に係る具体的な不利益行為は、92社のいずれの対象納入業者に対しても行われていないことがうかがわれるが、本件違反行為は、同日より前の平成20年9月6日から複数の対象納入業者に対して、継続して、組織的かつ計画的に一連のものとして行われてきた一個の違反行為であるから、平成22年1月1日の前後をまたいで不断に存在しており、課徴金算定期間の始期は改正法附則5条により、同日となり、終期は同年11月29日であるべきものである。
上記②については、《上記納入業者1社》の《店舗名⑨》への本件従業員等派遣が不利益行為に該当することは、前記2⑷イ㋒fにおいて説示したとおりである。
上記③については、前記認定・説示(前記2⑵イ)のとおり、《上記納入業者2社》は、課徴金算定期間を含む本件対象期間を通じて、原告の取引上の地位が優越していたことが認められるものである。
したがって、上記各主張はいずれも理由がない。
オ 原告は、独占禁止法20条の6は、全ての優越的地位の濫用ではなく、「継続してするものに限」って課徴金納付の対象とするものであって、本件対象期間内(平成20年9月6日から平成22年11月29日まで)に少なくとも合計3回以下の派遣回数しかない対象納入業者18社、及び、平成22年1月以降、従業員等派遣を1回ないし3回しか行っていない納入業者5社については、「継続して」の要件を充足しないから、その購入額(マル特経費負担控除後の購入額)は、課徴金算定に当たり全額控除されるべきである旨主張する。
しかし、前記説示(前記⑴イ)のとおり、本件従業員等派遣がされた本件対象期間の期間の長さ、原告と対象納入業者との市場における関係、本件従業員等派遣の頻度・回数・規模及び内容、対象納入業者が本件各従業員等派遣に至る経緯及びそれに向けた原告の対応等の諸事情に照らせば、原告は、132回に上る原告運営店舗の新規開店又は改装開店に際し、原告の利益を確保することなどを目的として、継続して、原告運営店舗の店舗開設準備作業に関係する原告の従業員の連携の下、組織的かつ計画的に一連のものとして本件従業員等派遣をさせるとの不利益行為を行ったものと認めることができるから、これら一連の原告のした不利益行為は、「継続してするもの」に当たるというべきであるとともに、事業者の優越的地位の濫用行為として一体のものであると評価することができる場合に該当し、全体として1個の違反行為がされたものとして、独占禁止法の規定の適用を受けるものというべきである。
このように、本件の不利益行為は一体として1個の違反行為として繰り返し行われたものであるから、「継続してするもの」に該当するのであって、「継続してするもの」に該当するか否かの認定を対象納入業者ごとに行うべきものではない。
カ したがって、原告の上記各主張は、いずれも採用することができない。
5 争点4(本件審決に至る手続に憲法その他の法令違反(独占禁止法82条1項2号)があるか)について
これまでに説示したとおり、本件排除措置命令及び本件課徴金納付命令を発した本件審決に誤りはない。
そして、本件排除措置命令及び本件課徴金納付命令を発した経緯や、被告が、納入業者に対して報告命令を発して本件報告書等を徴求したこと及び報告命令の内容、原告従業員らから事情を聴取しその供述調書を作成した経緯・態様等について、特に違法・不当な点があることを認めるに足りる証拠はなく、本件審決に至る手続に憲法その他の法令違反(独占禁止法82条1項2号)があるとは認められない。
したがって、この点に関する原告の主張は採用することができない。
第8 結論
以上によれば、原告の本件請求は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。

令和7年9月12日

東京高等裁判所第3特別部
裁判官    田 中 芳 樹
裁判官    知 野   明
裁判官    大 野 晃 宏
裁判官    内 海 雄 介
裁判長裁判官三角比呂は、退官のため、署名押印することができない。
裁判官    田 中 芳 樹

別紙
当事者目録
広島市中区紙屋町二丁目1番18号
原       告 株式会社エディオン
同代表者代表取締役 《氏名略》
同訴訟代理人弁護士 細 野   敦
          長 澤 哲 也
          澤 田 忠 之
          多 田 敏 明
          谷 本 誠 司
          佐 川 聡 洋
          酒 匂 景 範
          熊 代 なつみ
          小 田 勇 一
          吉 村 幸 祐
東京都千代田区霞が関一丁目1 番1号
被    告 公正取引委員会
代表者委員長 茶 谷 栄 治
同指定代理人 堀 内   悟
       榎 本 勤 也
       岩 丸 華 子
       池 田 卓 郎

別紙A 《添付省略》(PDF版参照)
別紙B 《添付省略》(PDF版参照)
別紙C 《添付省略》
別紙D 《添付省略》(PDF版参照)

別紙E【※92社のうち8社について抜粋】
以下、各対象納入業者の「1 判断の前提となる事実関係等について」の「⑴ 納入業者の概要」については、いずれも当事者間に争いがない。

第1 《納入業者略》
1 判断の前提となる事実関係等について
《略》
2 従業員等派遣例外事由②に当たるなどの特段の事情の有無について
⑴  自社商品の適切な展示による販売促進について
原告は、①《本項の納入業者》は、原告のアンケートに対して、店作りに参加した理由として、「自社商品の陳列・装飾を工夫し、消費者への訴求力の高い売り場を作る機会になり得たため」である旨回答したこと、②同社が納入していた《商品類型④》は、サイズが小さく、フックに掛ける形で展示されることが多い商品であったから、自社商品がより整然と並んで見え、かつ消費者が手に取りやすいように、店作りの際には同社の従業員等が自社商品に応じてフックの位置を微調整するといった展示作業を行っていたのであって、同作業は自社商品の特性をよく知る納入業者であるからこそなし得る作業であり、展示作業を行うことで自社の売上げにつながるものであること、③原告が平成24年に今後の店作りを原則として原告従業員により行う旨通知したのに対し、同社は、自社商品に関する知識・経験・ノウハウを活かすとの理由で、自社商品の演出作業を自社従業員にて行いたい旨の書面を提出したほか、当該作業が自社の利益につながるものであるとの認識を記した書面を提出していることからすれば、同社の従業員等による商品の展示、装飾により、当該商品について格別の販売促進の効果が生じている旨主張する。
しかし、上記①については、原告運営店舗における店作りは、納入業者との商談における打合せの結果を踏まえて作成された棚割表に基づいて行うことが徹底されており、在庫商品の配置、陳列の場所や範囲については、基本的に特定の納入業者に有利に拡張されることはなく、棚割表の記載に従って行われる単純な作業であったこと、商品の展示、装飾についても、棚割表とは異なる展示、装飾がされることもあったが、原告運営店舗における店作りの方針等からすると、棚割表とは異なる展示、装飾をすることができる可能性は低く、これが許容される範囲も限られていたものであって、その作業内容からして原告の従業員において実施できないものではないから、これらの作業が対象納入業者の自社商品の販売促進に直接結び付くものとは認められないことは、前記説示(前記「第7 当裁判所の判断」の2⑷エ㋑d、e(a))のとおりである。
上記②については、証拠(審55、62)によれば、《本項の納入業者》を含め、《納入業者5社》などの《商品類型④》の納入業者が、展示作業に際して自社商品に応じてフックの位置を微調整していたことが認められるが、同証拠によって認められる作業内容(什器やフックの位置を微調整して、商品を整然と綺麗に並べ、顧客に手に取ってもらいやすい環境を整えることなど)からして原告の従業員において実施できないものとはいえない。したがって、上記作業が同社の自社商品の販売促進に直接結び付くものとは認められない。
上記③については、前記説示(前記「第7 当裁判所の判断」の2⑷イ㋒b)のとおり、不利益行為に該当するか否かは、「直接の利益」の有無を含めて、問題となる行為の内容や不利益行為の性質に照らして客観的に判断すべきであるから、納入業者において従業員等派遣の要請に応じることに何らかの利益やメリットがあると見込んでいたからといって、それが実際に商品の売上げ増加等の直接の利益ではなく、将来の利益に結び付くかが漠然とした不確実な利益のような間接的な利益では、不利益行為の該当性は否定されないというべきである。そして、《本項の納入業者》が、店作りは営業活動又は販売促進活動の場であるとして従業員等の派遣を希望していたとしても、それは本件従業員等派遣に同社にとっての一定の利益があると考えていたことをうかがわせるものにすぎず、上記判断を左右するものではない。
また、同社の従業員等は、店作りの際、自社商品のみならず、他社商品についての作業も行っていたが、他社商品に係る作業に従事することが、自社商品の適切な展示等による販売促進に結び付くものではなく、これによって納入業者が直接の利益を得ることができるものではないことは、前記説示(前記「第7 当裁判所の判断」の2⑷エ㋑c)のとおりである。
⑵ 自社商品の展示スペースの確保による販売促進について
原告は、《本項の納入業者》は、店作りに参加した理由として、本件報告書において、「貴社が納入する商品を置くスペースを確保するため」、原告のアンケートに対して「棚割を自社に有利に変更できる場合があったため」である旨回答しており、実際に、《商品類型④》の棚割表は、原告運営店舗の現場においてよく修正されていたことからすれば、同社が、店作りに参加することにより自社商品の展示スペースの確保による販売促進という直接の利益を得ていた旨主張する。
しかし、前記認定(前記「第7 当裁判所の判断」の1⑶オ、カ)のとおり、原告運営店舗においては、原告本社の商品政策に基づく統一的な店作りを行うものとされており、店舗開設準備作業における店作りのためのマニュアルが周知され、店作りは同マニュアルに基づき、極めて詳細な棚割表に基づき行うことが徹底されていた。特に在庫商品の配置、陳列の場所や範囲については、基本的に、店作りの現場において、特定の納入業者に有利に拡張するような形で変更されることはなく、棚割表とは異なる商品の配置、陳列、展示、装飾が行われることがあったとしても、それらは、原告のMDやFMDの承諾を要し、その余地や範囲は非常に狭かったものであって、基本的には、棚割表で指定された特定の納入業者の展示スペース内で行われる在庫商品の配置、陳列の場所の変更や、商品の展示、装飾等の方法を変更するといったものであって、それを超えて、特定の納入業者の展示スペースや商品カテゴリの展示スペースを変更するほどの修正が頻繁に行われたことは、本件全証拠によっても認められない。
そうすると、このような自社商品の展示スペースの確保(拡張)ができたというだけでは、同社の商品の販売促進に直接結び付くようなものとまでは認められない。
⑶ 情報収集の機会及び店舗従業員等との良好な人間関係の構築による販売促進について
原告は、《本項の納入業者》は、原告のアンケートに対して、店作りに参加した理由として、「当該店舗の従業員とのコミュニケーションを図り、情報収集および情報提供を行えたため」、「競合他社の販売戦略を観測できたため」と回答しており、このことは、同社が、店作りに参加することにより、情報収集や店舗従業員等との良好な人間関係の構築による販売促進という直接の利益を得ていたことを示すものである旨主張する。
しかし、前記説示のとおり(前記「第7 当裁判所の判断」の2⑷エ㋑a)、本件従業員等派遣によって派遣される従業員等が行っていたのは店舗開設準備作業という原告運営店舗が開店する前の作業であり、当該店舗には消費者が現在しないから、消費者ニーズの動向を直接把握することはできない。原告運営店舗の従業員が保有する消費者や保有在庫についての情報の収集や、原告運営店舗の従業員に対する商品等に関する情報の提供も、通常の営業活動や商談の際にできるものであり、本件従業員等派遣により従業員等を商品の搬出、搬入又は店作りに従事させなければできないものではない。また、原告は、特定の納入業者が従業員等派遣を行ったこと自体をもって、商談や、原告運営店舗における棚割り、商品の販売等において、当該納入業者を有利に扱うことはしていなかったから、本件従業員等派遣により、原告運営店舗の従業員等との良好な人間関係を築くことができたとしても、これが対象納入業者の商品の販売促進に直接結び付くものではない。
そうすると、情報収集の機会及び店舗従業員等との良好な人間関係の構築をしたということが、同社の商品の販売促進に直接結び付くようなものとは認められず、直接の利益に当たるということはできない。
⑷ 新規開店又は改装開店の際の自社商品の販売促進について
原告は、《本項の納入業者》は、原告のアンケートに対して、店作りに参加した理由として、「新店・改装オープンに伴い、自社商品の売上げの拡大が期待できたため」、「従業員等を派遣すれば、競合他社に比べて、店舗での売上げが増加し得ると考えたため」である旨回答しており、このことは、同社が、店作りに参加することにより、新規開店・改装開店の際の自社商品の販売促進という直接の利益を得ていたことを示すものである旨主張する。
しかし、原告運営店舗の新規開店又は改装開店の際に対象納入業者の商品の売上げが拡大する可能性があるとしても、それは、原告運営店舗の新規開店又は改装開店自体やそれらに伴うセールの集客効果によるものであって(家電量販店等の新規開店又は改装開店自体やそれらに伴うセールに、一定の集客効果や販売促進効果があることは経験則上明らかである。)、店舗開設前の対象納入業者による本件従業員等派遣が、上記セールに伴う集客効果と比較した場合に、格別の自社商品の販売促進に直接結び付いていることを認めるに足りる的確な証拠はない。
したがって、対象納入業者に直接の利益があるとする原告の上記主張は理由がない。
⑸ 直接の利益及び合理的範囲内の負担に関するその余の事実等について
原告は、《本項の納入業者》は、①本件報告書において、原告との間における納入価格に関する交渉について、「貴社の条件提示が受け入れられることもあるし、受け入れられないこともある」旨、②原告のアンケートに対して、本件従業員等派遣のために同社が要した費用が原告との取引額に占める割合は「0.1%以上1%未満」にすぎず、その費用は、同社の営業活動上許容できる範囲内の負担であった旨、③本件報告書において、原告から不利益となる要請があったとき「短期的には不利益であっても、将来的にはその被った不利益を補う以上の利益が見込める場合」には当該要請を受け入れる旨、④原告のアンケートに対して、本件従業員等派遣について、仮に「エディオンから日時・場所の連絡がなければ、自発的に日時・場所の確認を行い、従業員等を派遣していた」旨、同社は、原告に限らず、取引先の店舗に、取引先から人件費の支払を受けずに、新規開店又は改装開店の前に従業員等を派遣しており、その派遣先には、原告よりも事業規模の小さな家電・カメラ・PC量販店も含まれていた旨、それぞれ回答しており、このことは、同社が店作りによって自社商品の販売促進など直接の利益を得ていたこと及び同社にとって店作りの負担が合理的範囲内にあったことを示すものである旨主張する。
しかし、上記①については、納入価格に関する自由かつ自主的な判断に基づき対等な交渉が行われ、納入業者の条件が受け入れられたなどの事実があったとしても、それだけで不利益行為性が否定されるものではないことは、前記説示(前記「第7 当裁判所の判断」の2⑷イ㋒c)のとおりである。
上記②については、不利益行為に該当するためには、相手方にとって「著しく」不利益であることを要しないことは前記説示(前記「第7 当裁判所の判断」の2⑷イ㋒a)のとおりであり、従業員等派遣に係る費用の負担が少額であるからといって、原告が納入業者に本件従業員等派遣をさせたことが不利益行為に該当しないとはいえず、殊に、本件従業員等派遣に係る店舗開設準備作業には、対象納入業者にとって格別の販売促進効果(直接の利益)が認められないことからすれば、対象納入業者において、本件従業員等派遣に伴う負担が許容範囲内である旨回答したからといって、その負担が合理的な範囲内のものであるとはいえない。
上記③については、前記説示(前記「第7 当裁判所の判断」の2⑷イ㋒b)のとおり、不利益行為に該当するか否かは、「直接の利益」の有無を含めて、問題となる行為の内容や不利益行為の性質に照らして客観的に判断すべきであるから、納入業者において従業員等派遣の要請に応じることに何らかの利益やメリットがあると見込んでいたからといって、それが実際に商品の売上げ増加等の直接の利益ではなく、将来の利益に結び付くかが漠然とした不確実な利益のような間接的な利益では、不利益行為の該当性は否定されないというべきであるところ、上記回答によっては、納入業者が見込んでいた利益がどの程度具体的なものであるか明らかでなく、直ちには商品の販売促進効果に結び付く直接の利益があると認めることはできない。
上記④については、前記認定(前記「第7 当裁判所の判断」の1⑶ウ㋐㋑)のとおり、従前、家電小売業界では、納入業者が家電量販店の新規開店又は改装開店前の店舗開設準備作業を負担する商慣習が存在し、対象納入業者も、長らく原告からの要請に応じてきた実情があった。このような中で、原告から従業員等派遣の依頼の連絡がない場合に、納入業者において自主的に問合せをして従業員等派遣をすることがあり、あるいは、原告よりも事業規模の小さな家電量販店に従業員等派遣をしていたとしても、それ自体、正常なものとは認められない商慣習の現れというべきであって、上記回答がされたからといって、不利益行為性が否定されるものではない。
したがって、上記各理由を根拠に、《本項の納入業者》が店作りによって自社商品の販売促進など直接の利益を得ていたこと及び同社にとって店作りの負担が合理的範囲内にあった旨の原告の主張は理由がない。
⑹ 《本項の納入業者》による従業員等派遣が同社の意に反するものでなかったとの原告の主張について
原告は、《本項の納入業者》は、《略》市場シェアの調査結果で《略》部門、《略》部門でいずれも《略》位を獲得するなど非常に高いブランド力を有し、同社の連結経常利益率は原告のそれを上回っていたから、同社は、その意に反して原告の要請を受け入れざるを得ない力関係になく、同社による従業員等派遣が同社の意に反するものでなかった旨主張する。
しかし、対象納入業者において、原告の不利益な要請を受け入れざるを得ないような関係にあったか否かは、原告が対象納入業者に対して優越的地位にあるか否かの問題であって、従業員等派遣例外事由②に関するものではないから、原告の上記主張は失当である。そして、原告が、《本項の納入業者》に対して優越的地位にあると認められることは、前記説示(前記「第7 当裁判所の判断」の2⑵イ)のとおりであり、また、納入業者が高いブランド力を有し、市場内で高いシェアを占める商品を納入するなどしていたからといって、それだけでは優越的地位が否定されるものではないことも、前記説示(前記「第7 当裁判所の判断」の2⑵オ㋒e)のとおりである。
⑺ 《本項の納入業者》が積極的に店作りに参加していたとの原告の主張について
原告は、《本項の納入業者》は、原告のアンケートに対して、店作りに参加した理由として、「主に自社の利益の維持・増進のため」と回答し、店作りが自社の利益になるとの認識の下、引き続き店作りに参加したい旨を原告に伝え、実際に同社は、原告に対し、参加可能日程を自ら伝えていたのであって、このように対象納入業者が積極的に店作りに参加していたという事実は、直接の利益等を勘案して合理的であると認められる負担を超える負担がないこと及び納入業者の同意の各事実の存在を推認させるものである旨主張する。
しかし、①《本項の納入業者》は、他方において、原告のアンケートに対し、店作りに参加した理由として、「具体的な制裁や示唆を受けたことはないが、従業員等を派遣しなければ、エディオンとの取引量・額を減らされる可能性があると判断したため」とも回答しており(審1の1)、真に自由な意思に基づくものとするには疑問がある。
②仮に、納入業者が積極的に店作りに参加していたとしても、従業員等の派遣によって納入業者が見込んでいた利益がどの程度具体的なものであるか明らかでないこと、前記認定(前記「第7 当裁判所の判断」の1⑶ウ㋐㋑)のとおり、従前、家電小売業界では、納入業者が家電量販店の新規開店又は改装開店前の店舗開設準備作業を負担する商慣習が存在し、対象納入業者も、長らく原告からの要請に応じてきた実情があり、このような正常なものとは認められない既存の商慣習を背景として、積極的に店作りに参加して従業員等を派遣していたとしても、それは、納入業者が経済的に合理的な判断の下に、真に自由な意思に基づいて参加していたものとはいい難く、ひいては、従業員等の派遣を通じて相手方が得ることとなる直接の利益等を勘案して合理的な範囲内のものというべき「直接の利益」の存在をうかがわせるものともいえない。
したがって、仮に納入業者が積極的に店作りに参加していたとしても、そのことによっては、従業員等派遣例外事由②が存在したことを推認させるものではないというべきである。
⑻ 原告のその余の主張について
原告は、①《本項の納入業者》は、自社の販売促進活動の一環として自主的に店作りに参加していたものであり、そもそも原告が従業員等派遣の費用を支払うべき関係になかったこと、②納入業者における販売促進活動に要する販売経費は、原告に対する販売代価を決定する際に考慮されており、従業員等派遣に要する費用を間接的・実質的に原告が負担していたものである旨主張する。
しかし、原告の上記各主張はいずれも従業員等派遣例外事由①に関するものであって、従業員等派遣例外事由②に関するものではないから、失当である。この点を措いても、上記各主張によっては、従業員等派遣例外事由①に該当しないことは、前記説示(前記「第7 当裁判所の判断」の2⑷ウ㋑b)のとおりである。
⑼ 結論
以上によれば、原告の上記各主張はいずれも採用することができず、その他本件全証拠によっても、原告が《本項の納入業者》に本件従業員等派遣をさせたことについて、従業員等派遣例外事由②に当たるなどの特段の事情を認めることはできない。

第2及び第3 《略》

第4 《納入業者略》
1 判断の前提となる事実関係等について
《略》
2 従業員等派遣例外事由②に当たるなどの特段の事情の有無について
⑴ 自社商品の適切な展示による販売促進について
ア 原告は、①《本項の納入業者》は、店作りに参加した理由として、本件報告書において、「商品の展示方法、POPの貼付等について貴社独自の方針があり、貴社の従業員でなければできないため」である旨、原告のアンケートに対して、「自社商品の陳列・装飾を工夫し、消費者への訴求力の高い売り場を作る機会になり得たため」である旨回答したこと、②原告従業員は、陳述書において、《本項の納入業者》が納入していた《商品類型⑤》につき、顧客の購買意欲を高める目的で展示するサンプル品は、組立てにおいて相当の完成度を要するものであり、原告従業員において組立てを実施するのは不可能であって、仮に原告従業員において組み立てることができたとしても購買意欲を高める程度の完成度のものを作ることは無理であることや、サンプル品は《本項の納入業者》所有の資産であるから原告従業員が組み立てることは考え難い旨述べていること(審241、413)、③原告が平成24年に今後の店作りを原則として原告従業員により行う旨通知したのに対し、同社は、自社商品の販促物を強化するとの理由で、引き続き従業員等を派遣して店作りに参加することを希望するとともに、原告による費用負担を求めない旨の書面を提出しており、このことは、同社の従業員等による商品の展示、装飾により当該商品についての格別の販売促進の効果が生じていることを示すものである旨主張する。
イ㋐ しかし、上記①の主張については、《本項の納入業者》においても、前記第1の2⑴において原告の主張①に対して説示したのと同様に、同社の自社商品の販売促進に直接結び付くものとは認められず、直接の利益を得ていたことを基礎付けるものではない。
㋑ 上記②については、証拠(査26の6・45・87・108、査683、審167、241、413)によれば、《本項の納入業者》、《納入業者3社》の4社の供給する《商品類型⑤》の多くは、使用する現場での組立てを必要とする商品であったこと、上記4社は、原告運営店舗に展示するため、原告に納入する商品とは別のサンプル品を用意していたが、このサンプル品は上記4社がそれぞれ所有するものであったこと、この商品の展示におけるサンプル品の使用についても、商談の際に打合せがされ、棚割表に展示する商品やその位置等が記載されていたこと、原告運営店舗では、《略》は、《商品類型⑧》と一体となる形でサンプル品が展示されていたこと、上記4社は、店作りの現場において、上記のサンプル品の組立て及び展示を行っていたこと、《本項の納入業者》及び《上記3社のうち1社》は、現在も、原告との間で合意書を取り交わした上で、従前のとおり、サンプル品の組立て及び展示を行っていることが認められる。
しかし、組立済みの完成品をサンプル品として原告運営店舗の売場に展示すること自体は、商談等の打合せの際に基づいて作成された棚割表においてあらかじめ決められているのであるから、本来、原告従業員において行うべきものである。そして、《商品類型⑤》のサンプル品の組立て及びその展示について、《本項の納入業者》を含め、《上記納入業者3社》の4社の従業員等が実施した場合と原告の従業員が実施した場合とで、サンプル品の出来栄え(見栄え)に一定の差異が生じ得るとしても、それが、商品の特性上格別の販売促進の効果の違いを生じさせることを認めるに足りる的確かつ客観的な証拠はない。かえって、《本項の納入業者》を含め上記4社が原告に納入している商品は、購入した商品について顧客自身が組立作業を行うことを予定する《略》など《商品類型⑤》であって、そのサンプル品の組立て及びその展示作業について、特殊な技術や専門的知識等が必要とされるとは認め難く(審241は、仮に稚拙な組立てがされると商品の見栄えに影響することから、上記4社の従業員が組立作業に従事することが望ましいことを供述するものにすぎない。また、審413によっても、上記4社の従業員が組み立てた場合と同様の完成度を求めるには、時間的な問題等から原告の従業員によって作業を行うことが困難であることがうかがわれるにすぎない。)、原告の従業員においても実施することができるものと認められる。また、サンプル品がそれぞれ上記各4社の資産であることは、店作りの現場において、組立作業に習熟した原告の従業員がサンプル品の組立て及び展示作業を行うことの妨げになる事情とはいえない。
そうすると、原告が《商品類型⑤》を販売する小売業者として、必要な人員等を手当てして上記作業を実施するのであれば、《本項の納入業者》を含め上記4社の派遣する従業員等が実施する場合に比べて、サンプル品の出来栄え(見栄え)に一定の差異が生じる可能性がないとはいえないものの、少なくとも販売促進の効果において格別の差異が生じるものとまでは認め難い。
㋒ 上記③の主張については、《本項の納入業者》においても、前記第1の2⑴において原告の主張③に対して説示したのと同様に、同社の自社商品の販売促進に直接結び付くものとは認められず、直接の利益を得ていたことを基礎付けるものではない。
⑵~⑺ 《略》
⑻ 結論
以上によれば、原告の上記各主張はいずれも採用することができず、その他本件全証拠によっても、原告が《本項の納入業者》に本件従業員等派遣をさせたことについて、従業員等派遣例外事由②に当たるなどの特段の事情を認めることはできない。

第5 《納入業者略》
1 判断の前提となる事実関係等について
《略》
2 従業員等派遣例外事由②に当たるなどの特段の事情の有無について
⑴ 自社商品の適切な展示による販売促進について
ア 原告は、《本項の納入業者》は、①原告のアンケートに対して、店作りに参加した理由として、「自社商品の陳列・装飾を工夫し、消費者への訴求力の高い売り場を作る機会になり得たため」、家電量販店の新規開店又は改装開店の前に従業員等を派遣するか否かを判断する際の考慮要素として、「派遣した従業員等が行う作業内容が自社商品の販売促進につながり得るものか否か」である旨回答しており、殊に、同社が納入していた《略》ブランドをはじめとする《略》は、流行り廃りのペースが非常に激しい商品であり、多種多様な新作《略》が次々に発売されるという特徴があったため、こうした専門的な商品知識を有する同社従業員において、店作り時点での流行に即した商品展示を行う必要があったこと、②原告が、平成24年に今後の店作りを原則として原告従業員により行う旨通知したのに対し、同社は、「消費者に対して提案できるもっとも重要な要素が売場」、「売り場の展示や装飾等の店作り如何によっては、消費者のお買上げ、販売数量が違ってきます」との認識の下、今後も開店前の店作り作業を自社従業員にて行いたい旨の書面を提出したほか、当該作業は自社の正当な営業活動のひとつとして自主的に実施する旨を記した書面を提出していることからすれば、同社の従業員等による商品の展示、装飾により当該商品についての格別の販売促進の効果が生じている旨主張する。
イ㋐ 上記①については、前記認定(前記「第7 当裁判所の判断」の1⑶オ㋒)のとおり、《商品類型①》(《略》、《略》、《略》等)及び《商品類型②》については、棚割表自体が抽象的な商品類型(種類)によって商品の配置等を定めるにとどまっており、その種類の中での具体的な配置等が決定されていない場合があったものの、原告は、納入業者との商談を通じて、どの《商品類型①》や《商品類型②》をどれだけ仕入れるかを決定し、原告運営店舗における棚割りについては、原告の担当者と納入業者の担当者との商談の際、商品の演出のためのPOPや実機の使用等の展示、装飾を含めて打合せが行われ、棚割表の内容は、これを作成する店舗支援部の担当者等の承諾の下、一定程度、納入業者の意見が反映されたものとなっていたことから、《商品類型①》や《商品類型②》についても、原告において、納入業者の知識・経験に基づく意見を反映し各商品の流行等を踏まえた棚割表を作成した上で、これに基づいて原告の従業員に納入業者の派遣する従業員等が実施するのと同様の在庫商品の配置、陳列を行わせることは可能であった。また、棚割表の作成の時点では実際に納入される商品が具体的に決まっておらず、実際に納入される商品に応じて、店作りの現場における棚割りの調整が必要になることもあったが、この調整についても、上記の方法により作成した棚割表を準備すれば、納入業者の従業員等が店作りの現場において在庫商品の配置、陳列を実施しなければできないものとまではいえなかった。
これを《略》についてみると、証拠(査118、682、審257、407)によれば、《納入業者2社》は《会社名略》の卸売業者として原告に対して主に《略》及び《略》を納入していたこと、原告運営店舗の店頭には、基本的に、《略》自体ではなく、その空箱が並べられたが、原告運営店舗の新規開店又は改装開店に際しての《略》売場の棚割表においては、最新の《略》をどこに並べるか、《略》に対応する《略》をどこに並べるか、中古《略》をどこに並べるかについては定められていたものの、これらの記載は概括的なものにとどまり、それぞれの場所において、どの《略》をどのように並べるのかまでは決まっていなかったこと、上記2社が《略》をどのように並べるのかについては店作りの現場で決定することがあったこと、《略》は流行り廃りのペースが非常に早いことが認められる。
しかし、《略》を店頭に展示する作業自体は、原告の従業員において実施できるものであって、原告と納入業者との商談の際には、商品の棚割りについても打合せがされているのであるから、《略》についても、原告において、納入業者の知識や経験に基づく意見を反映した棚割表を作成した上、これに基づいて店頭に展示することは可能であったものと認められる。また、《略》について、棚割表の作成の時点では実際に納入される商品が具体的に決まっておらず、実際に納入される商品に応じて、店作りの現場において棚割りの調整が必要になることがあるとしても、納入業者の従業員等が店作りの現場において《略》を店頭に展示しなければ、上記のような調整ができないものとは認められない。原告の従業員が、上記のような方法により納入業者の意見を反映させた上で《略》を店頭に展示した場合、納入業者の従業員等がこれを実施した場合と比較して、その内容に差異が生じるとしても、納入業者の従業員等が店作りの現場において《略》を店頭に展示することが、これを原告の従業員が上記のような方法で実施した場合との比較において、商品の特性上格別の販売促進の効果を生じさせることを認めるに足りる的確かつ客観的な証拠もない。
そうすると、原告が《略》を販売する小売業者として、《上記納入業者2社》との間で打合せをするなどして同社の知識や経験に基づく意見を反映した棚割表を作成した上、これに基づいて店頭への展示作業を実施するのであれば、上記2社の派遣する従業員等が実施する場合に比べて、少なくとも販売促進の効果において格別の差異が生じるものとまでは認められない。したがって、上記①の主張は理由がない。
㋑ 上記②の主張については、《本項の納入業者》においても、前記第1の2⑴において原告の主張③に対して説示したのと同様に、同社の自社商品の販売促進に直接結び付くものとは認められず、直接の利益を得ていたことを基礎付けるものではない。
⑵ 自社商品の展示スペースの確保による販売促進について
原告は、《本項の納入業者》が納入していた《略》は、多種多様な新作《略》が次々に発売されるという特徴があったため、実際の店作りよりも前の時点で具体的な商品名を特定した形での棚割表を作成することは不可能であり、かつ仮に商談時点での流行及び納入可能商品を基に棚割表を作成したとしても、店作り時点では流行に即したものとなっていない可能性が高く無意味であったため、概括的な棚割表しか作成されず、店作りの現場において、同社従業員がその時点における流行に従った商品展示を行う必要があり、このことは、同社が、店作りへの参加により自社商品の展示スペースの確保による販売促進という直接の利益を得ていたことを示すものである旨主張する。
しかし、《略》について、いかに流行り廃りのペースが非常に早く、多種多様な新作《略》が販売されているとしても、前記第1の2⑵において説示したとおり、原告運営店舗における店作りは棚割表に基づき行うことが徹底されており、在庫商品の配置、陳列の場所や範囲については、基本的に、店作りの現場において、特定の納入業者に有利に拡張するような形で変更されることはなく、棚割表とは異なる商品の配置、陳列、展示、装飾が行われることがあったとしても、それらは、原告のMDやFMDの承諾を要し、その余地や範囲は非常に狭かったものであって、基本的には、棚割表で指定された特定の納入業者の展示スペース内で行われる在庫商品の配置、陳列の場所の変更や、商品の展示、装飾等の方法を変更するといったものであって、それを超えて、特定の納入業者の展示スペースや商品カテゴリの展示スペースを変更するほどの修正が頻繁に行われたことは認められない。したがって、このような自社商品の展示スペースの確保ができたというだけでは、同社の商品の販売促進に直接結び付くようなものとまでは認められない。
⑶~⑻ 《略》
⑼ 結論
以上によれば、原告の上記各主張はいずれも採用することができず、その他本件全証拠によっても、原告が《本項の納入業者》に本件従業員等派遣をさせたことについて、従業員等派遣例外事由②に当たるなどの特段の事情を認めることはできない。

第6ないし第15 《略》

第16 《納入業者略》
1 判断の前提となる事実関係等について
《略》
2 従業員等派遣例外事由②に当たるなどの特段の事情の有無について
⑴ 自社商品の適切な展示による販売促進について
ア 原告は、①《本項の納入業者》は、店作りに参加した理由として、本件報告書において、「商品の展示方法、POPの貼付等について貴社独自の方針があり、貴社の従業員等でなければできないため」である旨、原告のアンケートに対して、「自社商品の陳列・装飾を工夫し、消費者への訴求力の高い売り場を作る機会になり得たため」である旨、それぞれ回答したこと、②同社が納入していた《商品類型⑥》は、当時新製品が次々発売されており、原告運営店舗において、展示用《商品類型⑥》を消費者が試用できるように《略》を設置し初期設定を行う必要があったが、《略》は商品展示の際にのみ用いられ、また、商品ごとに型式が異なるため原告従業員がこれを把握することは困難であり、《本項の納入業者》の従業員等による専門的知識・経験・ノウハウが必須であったこと、③原告が平成24年に今後の店作りを原則として原告従業員により行う旨通知したのに対し、同社は、自社商品に関する知識・経験・ノウハウを活かしたいとの理由により、自社商品の演出作業を自社従業員にて行いたい旨の書面を提出したほか、当該作業が自社の利益につながるものであるとの認識を記した書面を提出しており、このことは、同社の従業員等による商品の展示、装飾により当該商品についての格別の販売促進の効果が生じていることを示すものである旨主張する。
イ㋐ しかし、上記①及び③の各主張については、《本項の納入業者》においても、前記第1の2⑴において原告の主張①及び③に対して説示したのと同様に、同社の自社商品の販売促進に直接結び付くものとは認められず、直接の利益を得ていたことを基礎付けるものではない。
㋑ 上記②については、証拠(査63、79、審49、405、415)によれば、《商品類型⑥》の実機の展示に当たっては、《略》できるようにするための「《略》」という装置や盗難防止コード等が付けられ、初期設定が行われるものであること、《略》は商品ごとに型式が異なり、商品展示の際にのみ用いられるものであったことが認められる。
しかし、上記認定事実を前提としても、これらの作業は、原告の従業員において実施することができないものであったとまではいえない。そうすると、《本項の納入業者》が派遣する従業員等が実施する上記作業を含む《商品類型⑥》等の商品の展示、装飾は、原告の従業員がこれを行う場合との比較において、商品の特性上格別の販売促進の効果を生じさせるものであるとまでは認められないから、同社は本件従業員等派遣によって直接の利益を得ていたとはいえない。
したがって、上記②の主張は理由がない。
ウ また、同社の従業員等は、店作りの際、自社商品のみならず、他社商品についての作業も行っていたが、他社商品に係る作業に従事することが、自社商品の適切な展示等による販売促進に結び付くものではなく、これによって納入業者が直接の利益を得ることができるものではないことは、前記説示(前記「第7 当裁判所の判断」の2⑷エ㋑c)のとおりである。
また、同社の従業員等は、本件従業員等派遣において、商品の搬入を行っていたが、同作業に従事することが、自社商品の適切な展示等による販売促進に結び付くものではなく、これによって納入業者が直接の利益を得ることができるものではないことは、前記説示(前記「第7 当裁判所の判断」の2⑷エ㋑b)のとおりである。
⑵~⑻ 《略》
⑼ 結論
以上によれば、原告の上記各主張はいずれも採用することができず、その他本件全証拠によっても、原告が《本項の納入業者》に本件従業員等派遣をさせたことについて、従業員等派遣例外事由②に当たるなどの特段の事情を認めることはできない。

第17ないし第35 《略》

第36 《納入業者略》
1 判断の前提となる事実関係等について
《略》
2 従業員等派遣例外事由②に当たるなどの特段の事情の有無について
⑴ 自社商品の適切な展示による販売促進について
ア 原告は、①《本項の納入業者》は、本件報告書において、店作りに参加した理由として、「お客様に弊社商品の特徴や機能を訴求するには、弊社による商品展示や売場演出が効果的であると考えているため」である旨回答し、殊に、同社は、店作りに参加した際に《商品類型⑦》に《略》する作業を行ったが、《略》を入力する必要があるところ、《略》を社外にはオープンにしたくないため、できる限り同社の社員が設定するという対応をしていたこと、《商品類型⑧》の実機の展示について、店作りに参加することにより、《略》部分を確保することができ、それにより、自社商品の《略》を表現することができること、同社商品の特性・機能を短いキャッチコピーで表した独自のPOPを持参して付けるといった工夫をしていたこと、同社の定点観測調査によると、同社商品の持つ付加価値に関する店頭での説明が購入に結び付いているとの結果が出ており、テレビコマーシャルよりも売場での説明が重要と考えられること、②同社従業員は、同社は、消費者に《会社名略》商品が持っている特徴や付加価値を伝え、これを選んでもらえるような展示の活動、提案の活動を行っており、店作りにおいても、《会社名略》商品の付加価値の訴求の仕方についてかなり練り込んで考えた上で、個々の店舗の顧客層・地域特性・競合状況に合わせて店頭での効果的な《会社名略》商品の展示・演出等を徹底しており、このような陳列、展示上の工夫は、商談時から原告に対して提案し、これを店頭で具現化するよう積極的に商品の陳列、展示に関与する意味があったものであり、その効果については、営業所ごとに原告に対する売上実績データを把握し、店作りに参加することによって自社商品の販促につながることを経験的に認識し、店作りに従業員等を派遣するか否かの基準として、同社の売上げが見込めるか、集客によってロイヤルティーにつながるかという観点を重視し、同社の企業価値の向上につながるかという基準から、経済合理性を判断した上で活動していた旨供述していること、③原告が平成24年に今後の店作りを原則として原告従業員により行う旨通知したのに対し、同社は、自社製品の販売促進及び同社の企業価値向上に資すると認められる限度で、自社商品の演出作業を自社従業員にて行いたい旨の書面を提出しており、このことは、同社の従業員等による商品の展示、装飾により当該商品についての格別の販売促進の効果が生じていることを示すものである旨主張する。
イ㋐ 上記①については、証拠(審2、53、73、109、405、415、《H》参考人審尋速記録、《L》参考人審尋速記録、《G》参考人審尋速記録、《E》参考人審尋速記録)によれば、原告運営店舗の店作りにおける《商品類型⑦》の展示については、《略》する作業がされることがあり、この《略》には一定の販売促進の効果があり、納入業者の派遣した従業員等は店作りに参加する際に上記作業を行っていたこと、上記《略》作業については、原告の従業員において、あらかじめ、納入業者から、原告運営店舗用の《略》したものの交付を受けた上で、《略》方法の教示を受ければ、これを実施することが可能であったことが認められる。また、《略》を入力する必要があり、《本項の納入業者》において、《略》を社外にオープンにしないよう、できる限り同社社員が設定するようにしていたとしても、原告運営店舗の店作りにおける《商品類型⑦》の展示について《略》を設定し、これを起動することについては、商談等の際の打合せに基づいて作成する棚割表においてあらかじめ決められるものであり、このことは、《本項の納入業者》が店作りのために本件従業員等派遣をするか否かによって左右されるものではない。また、《略》されることを前提として、《略》する作業自体について、原告の従業員等が実施できないものとはいえないし、《本項の納入業者》の派遣する従業員が上記作業(《略》)を実施することが、原告の従業員がこれを実施した場合との比較において、商品の特性上格別の販売促進の効果を生じさせるものとはいえない。
また、《商品類型⑧》の実機の展示について、《略》する配線の位置による《略》が、当該商品の販売促進効果に影響を与えることを認めるに足りる的確かつ客観的な証拠はないから、上記の配線の確保の点から、《本項の納入業者》が本件従業員等派遣によって派遣する従業員等による店作りが、自社商品の販売促進に直接結び付くとまでは認められない。
また、原告運営店舗における商品の展示、装飾については、納入業者と原告との商談等の際の打合せに基づいて作成された詳細な棚割表においてあらかじめ決められており、納入業者である《本項の納入業者》の派遣する従業員等でなければ実施できないものとはいえない上、同棚割表によることが徹底されており、店作りの際に同社の展示、装飾に関する修正の申入れが原告によって受け入れられることが基本的には困難であったことは、同社従業員がその参考人審尋において自ら供述するところである(《H》参考人審尋速記録)。
さらに、本件従業員等派遣は、原告運営店舗が開店する前の店舗開設準備作業に従事するものであって、顧客が現在するものではないから、同社商品の持つ付加価値に関する店頭での説明が購入に結び付いている旨の原告の主張は失当である。
したがって、上記①の主張は理由がない。
㋑ 上記②については、原告運営店舗における店作りは、《本項の納入業者》を含む納入業者との商談における打合せの結果を踏まえて作成された詳細な棚割表に基づいて行うことが徹底されており、在庫商品の配置、陳列の場所や範囲については、基本的に特定の納入業者に有利に拡張されることはなく、棚割表の記載に従って行われる単純な作業であったこと、商品の展示、装飾についても、棚割表とは異なる展示、装飾がされることもあったが、原告運営店舗における店作りの方針等からすると、棚割表とは異なる展示、装飾をすることができる可能性は低く、これが許容される範囲も限られていたものであって、その作業内容からして原告の従業員において実施できないものではないから、これらの作業が対象納入業者の自社商品の販売促進に直接結び付くものとは認められないことは、前記説示(前記「第7 当裁判所の判断」の2⑷エ㋑d、e)のとおりである。そして、《本項の納入業者》の従業員は、審尋において、本件従業員等派遣をしたことによって、同社の売上げが伸びたかどうかまでは分からない旨供述していること(《H》参考人審尋速記録)をも勘案すると、原告主張に係る《本項の納入業者》の従業員の前記供述を踏まえても、同社が本件従業員等派遣によって派遣する従業員等が実施する商品の展示、装飾が、これを原告の従業員が実施する場合との比較において、商品の特性上格別の販売促進の効果を生じさせるものとは認め難い。
㋒ 上記③の主張については、《本項の納入業者》においても、前記第1の2⑴において原告の主張③に対して説示したのと同様に、同社の自社商品の販売促進に直接結び付くものとは認められず、直接の利益を得ていたことを基礎付けるものではない。
ウ また、同社の従業員等は、店作りの際、自社商品のみならず、他社商品についての作業も行っていたが、他社商品に係る作業に従事することが、自社商品の適切な展示等による販売促進に結び付くものではなく、これによって納入業者が直接の利益を得ることができるものではないことは、前記説示(前記「第7 当裁判所の判断」の2⑷エ㋑c)のとおりである。
また、同社の従業員等は、本件従業員等派遣において、商品の搬出及び商品の搬入を行っていたが、同各作業に従事することが、自社商品の適切な展示等による販売促進に結び付くものではなく、これによって納入業者が直接の利益を得ることができるものではないことは、前記説示(前記「第7 当裁判所の判断」の2⑷エ㋑a、b)のとおりである。
⑵~⑹ 《略》
⑺ 結論
以上によれば、原告の上記各主張はいすれも採用することができず、その他本件全証拠によっても、原告が《本項の納入業者》に本件従業員等派遣をさせたことについて、従業員等派遣例外事由②に当たるなどの特段の事情を認めることはできない。

第37ないし第39 《略》

第40 《納入業者略》
1 判断の前提となる事実関係等について
《略》
2 従業員等派遣例外事由②に当たるなどの特段の事情の有無について
⑴ 自社商品の展示スペースの確保による販売促進について
ア 原告は、①《本項の納入業者》は、原告のアンケートに対して、店作りに参加した理由として、「自社商品の陳列・装飾を工夫し、消費者への訴求力の高い売り場を作る機会になり得たため」である旨回答したこと、②同社が原告に納入していた商品である《商品類型⑨》等のうち、《略》及び《略》については《略》で展示するなど、実際の使用状況をイメージできるような展示をすることが販売促進効果を得る上で非常に重要であったが、そうした展示作業には、《略》の資格を要するものがあったほか、安全性に関する知識・経験及びノウハウ、売場の実際の状況に応じた適切な展示についての知識・経験及びノウハウを要するものが含まれていたことから、同社は、同社製品の適切な展示のために店作りに是非参加したいとの考えを有しており、現に、同社従業員が店作りを行わなくなった後の原告の《商品類型⑨》売場は従前と比較すると圧倒的に魅力に欠ける売場になるなどした結果、《本項の納入業者》の売上げも相当に減少してしまったことからすると、同社従業員が店作りを行うことは同社の販売促進の上でも必要不可欠であったといえること、③原告が平成24年に今後の店作りを原則として原告従業員により行う旨通知したのに対し、同社は、自社営業活動の一環として店作りを自社従業員にて行いたい旨の書面を提出したほか、自社商品の適切な展示のために店作りに是非参加したい、当該作業が自社の利益につながるものであるとの認識を記載した陳述書を作成しており、このことは、同社の従業員等による商品の展示、装飾により当該商品についての格別の販売促進の効果が生じていることを示すものである旨主張する。
イ㋐ しかし、上記①及び③の主張については、《本項の納入業者》においても、前記第1の2⑴において原告の主張①及び③に対して説示したのと同様に、同社の自社商品の販売促進に直接結び付くものとは認められず、直接の利益を得ていたことを基礎付けるものではない。
㋑ 上記②については、証拠(査80、82、303の16・23・57・62、査577の5、査678の6、査684、審49、53、258、394、419)によれば、《本項の納入業者》、《納入業者3社》の4社は、原告に対して《商品類型⑨》を納入していたところ、本件対象期間の頃には、《商品類型⑨》のうちの《略》が主要商品の一つであったこと、上記4社が本件従業員等派遣によって派遣する従業員等は、店作りの際、《略》以外については棚割表どおりに展示していたが、《略》の展示においては、《略》、現場において調節しながら具体的な展示の内容(配置等)を決めることがあったこと、ただし、店作りの際に《略》を展示するという作業自体については、原告の従業員においても実施することができるものであったこと、平成22年以降は、原告運営店舗の《商品類型⑨》売場における店作りには、基本的に、納入業者は参加しなくなり、原告の従業員において、《略》の展示を行っていることが認められる。
また、証拠(査678の5、審49、審258、審394、審420)によれば、《本項の納入業者》及び《納入業者1社》の2社は、原告に対して《略》及び《略》を納入していたところ、それらの商品の中には「《略》」(《略》)に当たるものがあったこと、原告運営店舗の《略》及び《略》の売場では、《本項の納入業者》及び《納入業者1社》の派遣した従業員等により、一つの展示ボードの上に複数の会社の商品を設置し、《略》展示が行われていたこと、《略》及び《略》の展示に当たっては、《略》の設置のために《略》の資格を持つ者の従事を必要とすることがあったこと(《略》)、原告運営店舗の《商品類型⑨》の従業員のうちで、《略》の資格を有する者は1割程度存在したことが認められる。
そして、《本項の納入業者》、《上記納入業者3社》の4社の納入する《略》は、実際に設置された状態が消費者に対して一定の訴求力を有するため、その販売にあたっては実際に設置された状態の展示をする意味があるとはいえるものの、《略》を原告運営店舗の売場に展示すること自体は、商談等の際の打合せに基づいて作成される棚割表においてあらかじめ決められるものであり、しかも、店作りの際に《略》を展示するという作業自体については、原告の従業員においても実施することができるものであって、原告において、《略》を販売する小売業者として、商談の際に上記4社の担当者と《略》の具体的な展示についての打合せを行った上、必要な人員等を手当てして上記作業を実施するのであれば、上記4社の派遣する従業員等が実施する場合に比べて、その見栄えにある程度の差異が生じ得るとしても、上記4社の派遣する従業員等が上記作業を実施することが、原告の従業員がこれを行う場合との比較において、商品の特性上格別の販売促進の効果を生じさせるものであるとまでは認め難い。
また、《本項の納入業者》及び《上記納入業者1社》の2社の納入する《略》や《略》等についても、《略》、消費者に対して一定の訴求力を有することから意味があるといえ、また、その展示のために《略》の資格を要するものがあったとしても、それは本来原告が費用を負担して実施すべきものであって、納入業者が無償で行うべきものではないし、原告の従業員の中にも《略》の資格を有する者が1割程度いたことからすれば、原告において、上記資格を有する従業員の予定を調整した上、当該従業員を、店作りのある店舗に派遣して上記作業に従事させることができたはずであるから、このような展示作業を《本項の納入業者》が派遣する従業員等において実施することが、原告が上記の手当をした上で実施する場合との比較において、商品の特性上格別の販売促進の効果を生ぜしめるものとは認め難い。
また、原告運営店舗では、本件排除措置命令等の後、《商品類型⑨》売場自体が縮小されたことが認められるが(審394、419、《D》参考人審尋速記録)、これが、《本項の納入業者》を含む《商品類型⑨》の納入業者による《略》や《略》・《略》等の展示のための本件従業員等派遣の実施状況の変化等に起因するものであるか否かは必ずしも明らかではない。
したがって、上記②の主張も理由がない。
ウ また、同社の従業員等は、店作りの際、自社商品のみならず、他社商品についての作業も行っていたが、他社商品に係る作業に従事することが、自社商品の適切な展示等による販売促進に結び付くものではなく、これによって納入業者が直接の利益を得ることができるものではないことは、前記説示(前記「第7 当裁判所の判断」の2⑷エ㋑c)のとおりである。
⑵~⑻ 《略》
⑼ 結論
以上によれば、原告の上記各主張はいずれも採用することができず、その他本件全証拠によっても、原告が《本項の納入業者》に本件従業員等派遣をさせたことについて、従業員等派遣例外事由②に当たるなどの特段の事情を認めることはできない。

第41ないし第47 《略》

第48 《納入業者略》
1 判断の前提となる事実関係等について
《略》
2 従業員等派遣例外事由②に当たるなどの特段の事情の有無について
⑴ 自社商品の適切な展示による販売促進について
原告は、《本項の納入業者》は、本件報告書において、店作りに参加した理由として、「商品の展示方法、POPの貼付等について貴社独自の方針があり、貴社の従業員でなければできないため」である旨回答し、しかも、同社が原告に納入していた商品は、《金額略》円を超える極めて高価な輸入《商品類型③》機器等であり、同社は、本件従業員等派遣において、原告運営店舗である《店舗名①》から移転後の《店舗名②》において、《略》できる状態で商品の展示を行い、かつ、自主的に費用をかけて展示コーナーを造作した上、自社ホームページで同店を自社商品取扱店として紹介していたのであって、このことは、同社の従業員等による商品の展示、装飾により当該商品についての格別の販売促進の効果が生じていることを示すものである旨主張する。
確かに、同社の取り扱う超高級《商品類型③》は、《略》で高級なものは《金額略》円を超えるなど高額であることもあって、商品を熟知する同社の従業員等が、専門的技術・知識等を活用して展示(設定、調整)を行うことにより、《略》の違いを演出するなど特有の魅力が発揮されるものといえ、その展示(設定、調整)については、原告の従業員において実施したのでは、同社の従業員等が実施する場合と同様の水準で実施することは困難であったことがうかがわれる。しかし、前記1⑵イにおいて認定したとおり、同社が本件従業員等派遣において行った作業は、商品の搬出のみであって、同作業に従事することが、自社商品の適切な展示等による販売促進に結び付くものではなく、これによって納入業者が直接の利益を得ることができるものではないことは、前記説示(前記「第7 当裁判所の判断」の2⑷エ㋑a)のとおりである。
⑵及び⑶ 《略》
⑷ 結論
以上によれば、原告の上記各主張はいずれも採用することができず、その他本件全証拠によっても、原告が《本項の納入業者》に本件従業員等派遣をさせたことについて、従業員等派遣例外事由②に当たるなどの特段の事情を認めることはできない。

第49及び第50 《略》

第51 《納入業者略》
1 判断の前提となる事実関係等について
《略》
2 従業員等派遣例外事由②に当たるなどの特段の事情の有無について
⑴ 自社商品の適切な展示による販売促進について
ア 原告は、①《本項の納入業者》が原告に納入していた商品は《略》高級《商品類型③》商品であり、主力商品である高級《商品類型③》や《商品類型⑩》は、《略》を重視する顧客を対象とした高価で嗜好性の強い商品であって、そうした顧客に効果的に訴求するため、《商品類型③》については、《略》微妙なセッティングを施し、《略》を実現した上で顧客が《略》比べて商品を選択できるように展示、販売し、《商品類型⑩》についても、《略》など、店舗の実際の状況等に対応して最善の展示を行っていたのであって、こうした展示は、いずれも同社商品の特徴(商品特性)を引き出すための高度なノウハウを必要とするものであり、原告従業員では到底なし得ないものであったこと、②原告が平成24年に今後の店作りを原則として原告従業員により行う旨通知したのに対し、同社は、自社商品の初期設定やセットアップにより商品の良さを顧客に理解してもらうことが販売に結びつく大変重要な活動であるとして、自社商品の演出作業を自社従業員にて行いたいと述べ、店作りが自社の利益につながるものであるとの認識を記した書面を提出したのであって、このことは、同社の従業員等による商品の展示、装飾により当該商品についての格別の販売促進の効果が生じていることを示すものである旨主張する。
イ㋐ 上記①について検討するに、《略》の超高級《商品類型③》商品を納入していた《本項の納入業者》について、前記第48の1⑵イにおいて認定したとおり、《納入業者4社》の4社は、《略》、機器一台当たり《金額略》円であるとか、機器の組合せによっては《金額略》円もするような《略》の超高級《商品類型③》を取り扱い、これを原告に納入していたが、上記4社の商品は、その設置方法いかんによって《略》違いが生じ得るため、店頭での商品の展示に当たっては、《略》、微妙なセッティングが求められ、本件対象期間中、《店舗名③》の《商品類型③》売場と《店舗名①》のみが、上記のような性質を有する《略》の超高級《商品類型③》を取り扱っていた。
これに対して、証拠(審202~204、220、221、228、229、255、256、423、424)によれば、上記4社が納入する《略》の超高級《商品類型③》商品を除く高級《商品類型③》商品については、取扱店舗は限られるものの、おおむね各地の中核店舗の高級《商品類型③》売場において扱われていたこと、この高級《商品類型③》売場では、《略》設定し、《略》展示し、販売していたこと、《本項の納入業者》、《納入業者2社》の3社は、《金額略》円までの価格を中心とする上記の高級《商品類型③》を原告に納入していたこと、上記3社は、《商品類型⑩》も原告に納入していたこと、原告運営店舗では、《商品類型⑩》を展示するに当たっては、《略》などの設定・調整作業が必要であったことが認められる。
確かに、《上記納入業者4社のうち1社》を含む上記4社の取り扱う《略》の超高級《商品類型③》商品は、機器一台当たり《金額略》円であるとか、機器の組合せによっては《金額略》円もするような極めて高額なものであることもあって、そのような商品を購入する顧客層の嗜好を十分に考慮した上、商品を熟知する上記4社の従業員等が、専門的技術・知識等を活用して展示(設定、調整)を行うことにより、《略》違いを演出するなど特有の魅力が発揮されるものといえ、その展示(設定、調整)については、原告の従業員において実施したのでは、同社の従業員等が実施する場合と同様の水準で実施することは困難であったことがうかがわれる。
しかしながら、《本項の納入業者》、《上記納入業者2社》の3社が納入する高級《商品類型③》については、店作りの際に当該商品の設定や調整が必要になるとしても、その設定・調整について、上記の《略》の超高級《商品類型③》商品のように、原告の従業員において納入業者が実施する場合と同様の水準で実施することができないとか、その展示(設定、調整)を納入業者である《本項の納入業者》、《上記納入業者2社》が実施した場合に、原告の従業員がこれを行う場合との比較において、商品の特性上格別の販売促進の効果を生じさせるものであることを認めるに足りる的確な証拠はない(かえって、原告担当者の陳述書(審390、423)には、上記4社の納入する超高級《商品類型③》商品については、原告の従業員では上記4社の設定・調整と同様の水準で実施することが不可能であることをうかがわせる記載があるのに対し、同じく原告担当者の陳述書(審424)には、《本項の納入業者》、《上記納入業者2社》の3社が納入した高級《商品類型③》については、そのような記載がされていない。)。
また、《本項の納入業者》、《上記納入業者2社》の3社の納入する《商品類型⑩》についても、その展示の際に上記認定のような設定や調整が必要になるものではあったが、その作業内容からして原告の従業員において実施することができないものではない上、原告の従業員において納入業者である上記3社の従業員等が実施する場合と同様の水準で実施することができないとか、上記3社の従業員等が実施した場合に、原告の従業員がこれを実施した場合との比較において、商品の特性上格別の販売促進の効果を生じさせるものであることを認めるに足りる的確な証拠はない。
したがって、上記①の主張は理由がない。
㋑ 上記②の主張については、《本項の納入業者》においても、前記第1の2⑴において原告の主張③に対して説示したのと同様に、同社の自社商品の販売促進に直接結び付くものとは認められず、直接の利益を得ていたことを基礎付けるものではない。
ウ また、《本項の納入業者》の従業員等は、店作りの際、自社商品のみならず、他社商品についての作業も行っていたが、他社商品に係る作業に従事することが、自社商品の適切な展示等による販売促進に結び付くものではなく、これによって納入業者が直接の利益を得ることができるものではないことは、前記説示(前記「第7 当裁判所の判断」の2⑷エ㋑c)のとおりである。
また、同社の従業員等は、本件従業員等派遣において、商品の搬出を行っていたが、同作業に従事することが、自社商品の適切な展示等による販売促進に結び付くものではなく、これによって納入業者が直接の利益を得ることができるものではないことは、前記説示(前記「第7 当裁判所の判断」の2⑷エ㋑a)のとおりである。
⑵~⑸ 《略》
⑹ 結論
以上によれば、原告の上記各主張はいずれも採用することができず、その他本件全証拠によっても、原告が《本項の納入業者》に本件従業員等派遣をさせたことについて、従業員等派遣例外事由②に当たるなどの特段の事情を認めることはできない。

第52ないし第92 《略》

別表①ないし⑧ 《添付省略》
別紙・原告第2準備書面別紙 《添付省略》
別紙・原告第2準備書面別表1ないし3 《添付省略》
別紙・原告第1準備書面別表 《添付省略》


注釈 《 》部分は、公正取引委員会事務総局において原文に匿名化等の処理をしたものである。

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