公正取引委員会審決等データベース

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特装車製品の製造販売業者に対する件

独禁法3条後段

令和7年(措)第11号

排除措置命令

大阪市中央区淡路町二丁目5番11号
極東開発工業株式会社
 同代表者 代表取締役 《 氏 名 》

公正取引委員会は、上記の者に対し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第7条第2項の規定に基づき、次のとおり命令する。
なお、主文、理由、別紙1及び別紙2中の用語のうち、別紙2「用語」欄に掲げるものの定義は、別紙2「定義」欄に記載のとおりである。

主    文
1 極東開発工業株式会社(以下「極東開発工業」という。)は、次の事項を、取締役会において決議しなければならない。
(1) 別紙1記載の特装車製品(以下「特定特装車製品」という。)について、遅くとも令和4年2月4日までに及び遅くとも令和5年2月7日までに極東開発工業及び新明和工業株式会社(以下「新明和工業」という。)の2社(以下「2社」という。)が共同して行った、販売価格を引き上げる旨の合意が消滅していることを確認すること。
(2) 今後、他の事業者と共同して、特定特装車製品の販売価格を決定せず、自主的に決めること。
(3) 今後、他の事業者と、特定特装車製品の販売価格に関する情報交換を行わないこと。
2 極東開発工業は、前項に基づいて採った措置を、自社の取引先である特定特装車製品の最終需要者、特装車の販売業者及びバンの製造販売業者(以下「最終需要者等」という。)に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
3 極東開発工業は、今後、他の事業者と共同して、特定特装車製品の販売価格を決定してはならない。
4 極東開発工業は、今後、他の事業者と、特定特装車製品の販売価格に関する情報交換を行ってはならない。
5 極東開発工業は、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。この措置の内容については、前2項で命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず、かつ、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
(1) 特定特装車製品の販売活動に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成並びに自社の役員及び従業員に対する周知徹底
(2) 特定特装車製品の販売活動に関する独占禁止法の遵守についての、当該販売活動に従事する自社の役員及び従業員に対する定期的な研修並びに法務担当者による定期的な監査
6 極東開発工業は、第1項、第2項及び前項に基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。

理    由
第1 事実
1 関連事実
(1) 名宛人等の概要
ア 極東開発工業は、肩書地に本店を置き、特装車製品の製造販売に係る事業を営む者である。
イ 名宛人以外の新明和工業は、兵庫県宝塚市新明和町1番1号に本店を置き、特装車製品の製造販売に係る事業を営む者である。
(2) 特定特装車製品の取引形態等
ア 2社は、それぞれ、以下の(ア)又は(イ)の方法等により、最終需要者等に対して特定特装車製品を販売していた。
(ア) 最終需要者等から提供を受けたシャーシに取り付けて特装車として引き渡す方法
(イ) テールゲートリフタを最終需要者等に引き渡す方法
イ 2社は、それぞれ、「定価」と称する特定特装車製品の販売価格の基準となる金額(以下「定価」という。)を社内で定めていた。2社の営業担当者は、それぞれ、最終需要者等との間で、定価を基に価格交渉を行い、特定特装車製品の販売価格を決定していた。
ウ 2社の特定特装車製品の販売数量の合計は、我が国における特定特装車製品の総販売数量の大部分を占めていた。
2 合意の成立
(1) 2社は、かねてから、月1回の頻度で開催する2社の部長級の者の会合(以下「情報交換会」という。)において、特定特装車製品の販売価格等に関して情報交換を行っていたところ、鋼材等の特定特装車製品の原材料の価格が高騰していたことから、令和3年9月以降に開催された情報交換会等において、定価の引上げ等を含めて特定特装車製品の販売価格について情報交換を繰り返し行い、遅くとも令和4年2月4日までに、同年4月1日以降に販売する特定特装車製品の販売価格を引き上げることを合意した。
(2) 2社は、令和4年4月以降も、鋼材等の価格が引き続き高騰していたことから、同年11月以降に開催された情報交換会において、定価の引上げ等を含めて特定特装車製品の販売価格について情報交換を繰り返し行い、遅くとも令和5年2月7日までに、同年4月1日以降に販売する特定特装車製品のうち特に販売価格の引上げが必要であった塵芥車に取り付けられる架装物及びテールゲートリフタの販売価格を更に引き上げることを合意した。
3 実施状況
(1) 2社は、前記2の合意に基づき、それぞれ、特定特装車製品の定価の引上げを決定するとともに、特定特装車製品の販売価格を引き上げることを公表するなどして、特定特装車製品の販売価格をおおむね引き上げていた。
(2) 2社は、前記2の合意の実効を確保するため、情報交換会において特定特装車製品の販売価格の引上げの状況に関する情報交換を繰り返し行っていた。
4 合意の消滅
令和5年9月12日、他の事件について、公正取引委員会が新明和工業等の本店等に独占禁止法第47条第1項第4号の規定に基づく立入検査を行ったところ、これを契機として、新明和工業において社内調査が実施され、新明和工業は、極東開発工業に対し、同年10月30日、今後は2社の接触を断つ旨を通知し、同日以降、前記2の合意に基づく行為は取りやめられている。このため、同日以降、同合意は事実上消滅しているものと認められる。
第2 法令の適用
前記事実によれば、2社は、共同して、特定特装車製品の販売価格を引き上げる旨を合意することにより、公共の利益に反して、我が国における特定特装車製品の販売分野における競争を実質的に制限していたものであって、この行為は、独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し、独占禁止法第3条の規定に違反するものである。
また、前記の違反行為は既になくなっているが、極東開発工業については、独占禁止法第7条第2項第1号に該当する者であり、違反行為が自主的に取りやめられたものではないこと等の諸事情を総合的に勘案すれば、特に排除措置を命ずる必要があると認められる。
よって、極東開発工業に対し、独占禁止法第7条第2項の規定に基づき、主文のとおり命令する。

令和7年9月24日

委員長 茶  谷  栄  治
委 員 三  村  晶  子
委 員 青  木  玲  子
委 員 𠮷  田  安  志
委 員 泉  水  文  雄

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