公正取引委員会審決等データベース

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トレーラの製造販売業者に対する件

独禁法3条後段

令和07年(措)第12号

排除措置命令

愛知県豊川市伊奈町南山新田350番地
日本トレクス株式会社
 同代表者 代表取締役 《 氏 名 》

公正取引委員会は、上記の者に対し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第7条第2項の規定に基づき、次のとおり命令する。
なお、主文、理由、別紙1及び別紙2中の用語のうち、別紙2「用語」欄に掲げるものの定義は、別紙2「定義」欄に記載のとおりである。

主    文
1 日本トレクス株式会社(以下「日本トレクス」という。)は、次の事項を、取締役会において決議しなければならない。
(1) 別紙1記載のトレーラ(以下「特定トレーラ」という。)について、遅くとも令和3年12月22日までに、遅くとも令和4年7月12日までに及び遅くとも同年12月22日までに日本トレクス及び東邦車輛株式会社(以下「東邦車輛」という。)の2社(以下「2社」という。)が共同して行った、販売価格を引き上げる旨の合意が消滅していることを確認すること。
(2) 今後、他の事業者と共同して、特定トレーラの販売価格を決定せず、自主的に決めること。
(3) 今後、他の事業者と、特定トレーラの販売価格に関する情報交換を行わないこと。
2 日本トレクスは、前項に基づいて採った措置を、自社の特定トレーラの取引先である需要者及び販売業者に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
3 日本トレクスは、今後、他の事業者と共同して、特定トレーラの販売価格を決定してはならない。
4 日本トレクスは、今後、他の事業者と、特定トレーラの販売価格に関する情報交換を行ってはならない。
5 日本トレクスは、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。この措置の内容については、前2項で命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず、かつ、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
(1) 特定トレーラの販売活動に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成並びに自社の役員及び従業員に対する周知徹底
(2) 特定トレーラの販売活動に関する独占禁止法の遵守についての、当該販売活動に従事する自社の役員及び従業員に対する定期的な研修並びに法務担当者による定期的な監査
6 日本トレクスは、第1項、第2項及び前項に基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。

理    由
第1 事実
1 関連事実
(1) 名宛人等の概要
ア 日本トレクスは、肩書地に本店を置き、トレーラの製造販売に係る事業を営む者である。
イ 名宛人以外の東邦車輛は、群馬県邑楽郡邑楽町大字赤堀4120番地に本店を置き、トレーラの製造販売に係る事業を営む者である。
(2) 特定トレーラの取引形態等
ア 日本トレクス及び東邦車輛(以下「2社」という。)は、それぞれ、需要者に対し、直接又は販売業者を通じて、特定トレーラを販売していた。
イ 2社の特定トレーラの販売数量の合計は、我が国における特定トレーラの総販売数量の大部分を占めていた。
2 合意の成立
(1) 2社は、かねてから、自社の営業戦略を検討する材料の一つとするため特定トレーラの車種ごとの納期の目安に関して情報交換を行っていたところ、特定トレーラの原材料の一つである鋼材の価格が高騰していたことから、令和3年9月16日頃以降、特定トレーラの販売価格についても情報交換を行うようになった。
(2)ア 2社は、鋼材の価格が高騰していたことから、特定トレーラの販売価格 を引き上げる旨や引き上げる金額の目安等について情報交換を行い、遅く とも令和3年12月22日までに、令和4年2月1日頃以降に販売する特 定トレーラの販売価格を引き上げることを合意した。
  イ 2社は、令和4年2月以降も、引き続き鋼材の価格が高騰していたことから、特定トレーラの販売価格を引き上げる旨や引き上げる金額の目安等について情報交換を行い、遅くとも同年7月12日までに、同年8月1日頃以降に販売する特定トレーラの販売価格を引き上げることを合意した。
  ウ 2社は、令和4年8月以降も、引き続き鋼材の価格が高騰していたことに加え、アルミ等の他の特定トレーラの原材料の価格等が高騰していたことから、特定トレーラの販売価格を引き上げる旨や引き上げる金額の目安等について情報交換を行い、遅くとも同年12月22日までに、令和5年2月1日頃以降に販売する特定トレーラの販売価格を引き上げることを合意した。
3 実施状況
(1) 2社は、前記2⑵の合意に基づき、それぞれ、特定トレーラの販売価格を引き上げることを決定し、その旨の社内通達を発出するとともに、特定トレーラの販売価格を引き上げる旨を公表するなどして、特定トレーラの販売価格をおおむね引き上げていた。
(2) 2社は、前記2⑵の合意の実効を確保するため、特定トレーラの販売価格の引上げの状況に関する情報交換を行うなどしていた。
4 合意の消滅
 令和5年9月12日、他の事件について、公正取引委員会が東邦車輛の完全親会社である新明和工業株式会社等の本店等に独占禁止法第47条第1項第4号の規定に基づく立入検査を行ったところ、これを契機として、東邦車輛は、日本トレクスに対し、同年10月31日、今後は2社間の情報交換はできなくなる旨を通知し、同日以降、前記2⑵の合意に基づく行為は取りやめられている。このため、同日以降、同合意は事実上消滅しているものと認められる。
第2 法令の適用
前記事実によれば、2社は、共同して、特定トレーラの販売価格を引き上げる旨を合意することにより、公共の利益に反して、我が国における特定トレーラの販売分野における競争を実質的に制限していたものであって、この行為は、独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し、独占禁止法第3条の規定に違反するものである。
また、前記の違反行為は既になくなっているが、日本トレクスについては、独占禁止法第7条第2項第1号に該当する者であり、違反行為が自主的に取りやめられたものではないこと等の諸事情を総合的に勘案すれば、特に排除措置を命ずる必要があると認められる。
よって、日本トレクスに対し、独占禁止法第7条第2項の規定に基づき、主文のとおり命令する。

令和7年9月24日

委員長 茶  谷  栄  治
委 員 三  村  晶  子
委 員 青  木  玲  子
委 員 𠮷  田  安  志
委 員 泉  水  文  雄

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