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独禁法8条1項1号
昭和54年(勧)第2号
熊本市水前寺6丁目37番21号西原ビル内
社団法人熊本県道路舗装協会
右代表者 理事 杉野 圭治
公正取引委員会は、昭和54年10月9日、右の者に対し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第48条第2項の規定に基づき勧告を行ったところ、右の者がこれを応諾したので、同条第4項の規定に基づき、次のとおり当該勧告と同趣旨の審決をする。
主文
一 社団法人熊本県道路舗装協会は、熊本県所在の普通地方公共団体及び国の機関としての熊本県知事の発注するアスファルト舗装工事について、
(一) 研究会と称する会議を開催し、この会議において入札参加の指名を受けた会員に受注予定者を決定させてきた行為を取りやめたこと及び今後、会員に受注予定者の決定をさせないこと
(二) 昭和53年9月5日に行った非会員対策の決定を破棄したこと
を同工事の発注者及び会員以外の者で右研究会に出席するよう勧誘したことのあるものに周知徹底させなければならない。この周知徹底の方法については、あらかじめ、当委員会の承認を受けなければならない。
二 同協会は、前項に基づいて採った措置を速やかに当委員会に報告しなければならない。
事実
当委員会が設定した事実は、次のとおりである。
一(一) 社団法人熊本県道路舗装協会(以下「舗装協会」という。)は、肩書地に事務所を置き、熊本県内において、営業所を有し、アスファルト舗装工事業を営む者を会員とし、会員の経営の合理化及び技術の研さんを図り、もって公共の福祉を増進することを目的として、熊本県道路協会(以下「道路協会」という。)の事業及び財産を継承して、昭和48年2月13日に設立されたものである。
舗装協会の会員数は、昭和54年3月20日現在、62名であって、これら会員は、熊本県所在の普通地方公共団体及び国の機関としての熊本県知事の発注するアスファルト舗装工事(以下「公共団体舗装工事」という。)の大部分を受注している。
(二) 公共団体舗装工事のほとんどすべては、指名競争入札により発注されている。
二(一) 道路協会は、昭和32年に設立された熊本友舗会が昭和46年8月に名称変更したものであって、その設立当初から、公共団体舗装工事について、受注競争による工事価額の低落を防止するため、入札参加の指名を受けた会員にその旨を同協会に報告させ、この報告に基づき研究会と称する会議を開催し、右会員に、最低価格で入札することにより当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定させ、右会員は、この決定に基づき、当該工事の入札に際し受注予定者の入札価格が最低価格となるよう入札価格を相互に調整して、受注予定者が受注できるようにしていた。
(二) 舗装協会は、その設立以降、道路協会の前記受注予定者の決定に関する事項を引き継ぎ、公共団体舗装工事について、道路協会当時と同様の方法により、会員に受注予定者の決定をさせ、これを実施させていた。
(三) 舗装協会は、昭和50年5月31日、熊本市健軍町所在の同協会旧事務所で開催した理事会において、研究会の運営を円滑に行うため、
イ 研究会は、原則として、入札日前日に舗装協会事務所で開催すること
ロ 研究会開催の都度、舗装協会の会長又は副会長が出席して会の進行に当たること
を決定し、以後、これに基づき研究会を開催していた。
(四) 舗装協会は、前記(二)の行為の実効を確保するため、公共団体舗装工事について会以外の者(以下「非会員」という。)が入札参加の指名を受けた場合は、これらに対して、研究会に出席するよう勧誘し、また、昭和53年9月5日、肩書地所在の同協会事務所で開催した理事会において、前記(二)の行為に協力しない非会員がある場合は、これに対してアスファルト合材の供給をしないこと等の措置を採ること(以下「非会員対策」)という。)を決定し、これを会員に実施させていた。
三 本件について当委員会が審査を開始したところ、舗装協会は、
(一) 前記研究会の開催を昭和54年3月20日以降、取りやめるとともに、同年4月27日、同協会事務所で開催した理事会において、研究会を廃止し、会員に受注予定者の決定をさせる行為を行わない旨を決定し、
(二) 昭和54年4月17日、同協会事務所で開催した理事会において、前記非会員対策の決定を破棄し、
これらをそれぞれ会員に通知した。
しかし、舗装協会は、右の措置を採った旨を公共団体舗装工事の発注者及び研究会に出席するよう勧誘したことのある非会員に周知徹底させていない。
法令の適用
右の事実に法令を適用した結果は、次のとおりである。
舗装協会は、独占禁止法第2条第2項に規定する事業者団体に該当するところ、同協会は、公共団体舗装工事について、会員に受注予定者の決定をさせ、これを実施させることにより、公共団体舗装工事の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって、これは、同法第8条第1項第1号の規定に違反するものである。
よって、主文のとおり審決する。
昭和54年12月3日
委員長 橋口 收
委員 熊田 淳一郎
委員 野口 一郎
委員 後藤 英輔
委員 早川 晴雄