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東芝エレベータテクノス(株)に対する損害賠償請求控訴事件

独禁法2条9項、独禁法19条(一般指定10項、一般指定15項)

大阪高裁

平成2年(ネ)第1660号

独禁法関係民事訴訟判決

 

言渡平成5年7月30日交付平成5年7月30日裁判所書記官

東京都品川区西五反田7丁目9番5号
控訴人 東芝エレベータテクノス株式会社
(旧商号・東芝昇降機サービス株式会社)
右代表者代表取締役 木村 勝男
右訴訟代理人弁護士 西 迪雄
同 中村 勲
同 向井 千杉
同 富田 美栄子
松山市道後北代7番10号
被控訴人(甲事件) 株式会社続木鑑定事務所
右代表者代表取締役 続木 隆夫
高知市新本町2丁目5番8号
被控訴人(乙事件) 光誠電機有限会社
右代表者代表取締役 井出 修二
右両名訴訟代理人弁護士 大山 良平
同 大石 一二
同 今後 修
同 大搗 幸男
同 小林 廣夫
同 澤田 隆
同 薦田 伸夫

大阪高等裁判所平成2年(ネ)第1660号損害賠償請求控訴事件〔原審・大阪地方裁判所昭和60年(ワ)第2665号(甲事件)、第2666号(乙事件)〕
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
(控訴人)
一 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
二 被控訴人らの請求を棄却する。
三 訴訟費用は第1、2審とも被控訴人らの負担とする。
(被控訴人ら)
主文同旨の判決
第二 当事者の主張
次のとおり訂正等するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決4枚目裏6行目の「するか」の前に「)」を加える。
2 同6枚目表末行、同裏1行目、同8枚目裏4行目、同5行目の各「取引妨害」を削り、同末行の「階下と階下の間で」を「いわば階上と階下の間で」に改める。
3 同9枚目裏9行目の「(二)(1)記載のような」を「(二)(1)記載と同様の」に改める。
4 同10枚目裏9行目、同12行目の各「取引妨害」を削る。
5 同11枚目表4行目の次に行をかえて次のように加える。
「控訴人の甲事件行為は、甲事件部品のみの注文に対し、控訴人による取替え調整工事という役務の購入を甲事件被控訴人に強制するもので、競争手段として不公正であり、自由な競争を減殺し、昇降機保守の市場独占を図ったものである。控訴人の右行為は、一般指定第10項の抱き合わせ販売等に該当し、独禁法19条に違反する。また、控訴人は、乙事件部品の販売についても、控訴人による取替え調整工事込みでないと販売しない、注文しても3か月かかるなどの対応をしていた。そのため、乙事件被控訴人は藤との保守契約の解約を余儀なくされた。控訴人の右行為も、一般指定第10項の抱き合わせ販売等に該当し、独禁法19条に違反する。」
6 同裏3行目の「両事件取引妨害行為を行ったものであり、」を「右の各行為に及んだものであり、これは」に改め、同7行目、同12枚目裏3行目から4行目へかけて、同14枚目表6行目の各「取引妨害」を削る。
7 同16枚目表末行の「7月2日」を「9月11日に」に改め、同裏末行冒頭の「(一)」を削り、同17枚目表1行目の「取引妨害行為」の次に「や抱き合わせ販売行為」を加え、同3行目の「(二)仮に、独占禁止法に違反したとしても、」を削る。
8 同19枚目表6行目の「行うことはできず、」の次に「エレベーターの安全性に直結する部品については」を加え、同8行目の次に行をかえて次のように加える。
「(四)被控訴人らの主張に従えば、メーカー系保守業者は結果的に部品の供給を強制されることになるところ、これら部品はメーカー及びその系列の保守業者が経費を負担して製造・管理しているもので、メーカー系保守業者において、契約上供給義務を負担する契約先と同じ条件で右部品を他へ供給すべき義務はなく、独立系保守業者の育成を強制されるいわれもない。」
9 同19枚目裏5行目の「また、」から同8行目末尾までを削り、同末行の「調査したところ、」の次に「エレベーターの安全性に直結する」を加える。
10 同21枚目裏12行目の次に行をかえて次のように加える。
「(四)エレベーター本体は長期の使用を前提としており、右期間内には部品交換等を内容とする保守が必要となる。しかも、エレベーターの購入者が、これを他の機種に交換することは極めて困難である。したがって、メーカーは、エレベーターの所有者に対して部品供給をすべき義務を負うものであり、独立系保守業者は実質上所有者の代理人として部品の供給を求めているのであるから、東芝製のエレベーター部品を一手に独占販売している控訴人も、所有者や独立系保守業者に部品供給義務を負うものである。
(五)たとえ、本件において、安全性確保の必要を考慮する余地があるとしても、そのための手段がすべて正当化されるものではなく、より競争制限的でない代替的な手段がとられるべきである。」
第三 証拠関係
全記録中の証拠目録に記載のとおりであるから、これを引用する。
理由
一 本件の中心的争点は、当裁判所が証拠等によって認定・説示した控訴人の行為(原判決23枚目表から28枚目裏までのそれらについて、本判決において訂正等した後のもの)が、まず、いわゆる独占禁止法に違反しており、そのため控訴人が、被控訴人らに対し、それぞれ主張の損害賠償責任を負うかどうか、負うとすればその額は何程か(原判決10枚目裏から14枚目裏までを参照)という点にある。
二 そして、当裁判所も、原判決認容の限度で被控訴人らの請求を認容すべきものと判断する。
その理由は、次のとおり訂正等するほか、原判決理由説示と同じであるからこれを引用する。
1 原判決理由中の「笹沢」をすべて「笹原」に、同23枚目表8行目の「本人」を「代表者」に、「よれば」を「よって」に各改め、同24枚目裏1行目の「厳重」を削り、同25枚目表3行目の「本人」を「代表者」に、同27枚目表12行目の「階下と階下の間で」を「いわば階上と階下の間で」に、同裏1行目の「の接触不良による」を「に不良箇所がある」に各改める。
2 同28枚目裏8行目冒頭から同34枚目表2行目までを次のように改める。
「五 独占禁止法違反の成否について
控訴人の行為は、以下に説示するとおり、独占禁止法に違反するものである。
1 前記の一ないし四の事実によれば、愛媛メンテナンス及び乙事件被控訴人が、控訴人と競争関係にあること及び控訴人が東芝のいわゆる垂直系列下にあって、本件各部品につき、安全性を確保するため必要であるとして、その単体での供給はせず、取替え調整工事込みでなければ右の供給に応じないとしたことが明らかである。
2 そこで、このような控訴人の取引の方法が、不当な取引制限ないしは不公正な取引方法を禁示する独占禁止法(1条参照)に違反しているかどうか、について検討する。
独占禁止法2条9項の規定に基づき、昭和57年公正取引委員会告示第15号で指定された不公正な取引方法(以下「一般指定」という。)に関する10項は、「相手方に対し、不当に、商品又は役務の供給に併せて他の商品又は役務を自己又は自己の指定する事業者から購入させ、その他自己又は自己の指定する事業者と取引するように強制すること」を、また、同15項は、「自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引について、契約の成立の阻止、契約の不履行の誘引その他いかなる方法をもってするかを問わず、その取引を不当に妨害すること」を禁止している。ここにいう「不当に」とは、公正な競争を阻害するか否かの有無により判断されるべきである。
ところで、商品の安全性の確保は、直接の競争の要因とはその性格を異にするけれども、これが一般消費者の利益に資するものであることはいうまでもなく、広い意味での公益に係わるものというべきである。したがって、当該取引方法が安全性の確保のため必要であるか否かは、右の取引方法が「不当に」なされたかどうかを判断するに当たり、考慮すべき要因の一つである。(甲121、乙23の1、2、当審証人松下満雄、同根岸哲の各供述、弁論の全趣旨)。
3 そこで、次に右の点をエレベーターについて検討する。
エレベーターについては、建築基準法34条、36条、同法施行令129条の3ないし13の3でその構造の概略・基準について定める一方、同法12条2項により定期的な検査を受けてその結果を報告すべき旨を義務付けている(以下この両者を併せて「検査・報告」という。)が、右の検査を行う資格を有する者は、一級建築士若しくは二級建築士又は建築主事の資格を有する者のほか、一定の実務経験のある者で、建設大臣の指定する講習の過程を終了した者である(昭和45年建設省告示第1825号参照)。建築基準法、同法施行令に合わせて日本工業規格も決められている(甲126、乙25)。
いうまでもなく、エレベーターは、通常、建物の中で人や物を上下に運ぶための交通(輸送)機関であって、人を運ぶという点からみると、不特定多数の乗客がこれを利用するものである。また、それは、一定の昇降路内を定格の速度で運動するので、かごの落下あるいは乗り場からの人の転落を防止するのはそれほど困難なことではない。したがって、建築基準法、同法施行令に基づく措置により、かごの落下事故や人の転落事故は極めて稀であり、統計的には、人身事故に準じるものとして、かごが上下階の途中で停止するいわゆる缶詰事故が他の態様の事故に比べて多い。次に、自動車などと同様、エレベーターもそれが高性能化すればそれに伴い精密複合機械と化することにもなる。したがって、その部品等も、いわゆるブラック・ボックス化しているものが多い。更に、エレベーターは、その耐用年数が比較的長期であるため、部品の交換を含めた保守が当然に予定されている(甲133、136、乙25、原審証人斎藤忠義、同遠藤和男、当審証人窪田克美の各供述、弁論の全趣旨)。
4 本件において、控訴人は、東芝製エレベーターの保守は、控訴人のみが完全に行い得るもので、特に本件各部品のように安全性に影響を及ぼす部品については、控訴人においてその取替え調整工事をする必要がある、と主張する。
エレベーターの保守の技術を分けると、故障の修理のほか検査、調整等もあることが窺える(原審証人斎藤忠義の供述、弁論の全趣旨)が、本件では、特定のエレベーターにつき、現実的な故障が発生し、それに対応した修理部品の供給が問題となったのである。
そこで、右の故障を修理するに際し、本件各部品について、控訴人による取替え調整工事込みでなくては、右のエレベーターの安全性の確保ができないものかどうかの点を検討する。
そもそも、交通(輸送)機関において、安全性は必須のものであり、技術的に可能な限り、当該交通(輸送)機関が人の生命・身体に危険を及ぼすことがないようにすべきものである。しかし、既に述べたように、エレベーターにおいては、建築基準法・同法施行令に基づく措置により、かごの落下事故や乗客の転落事故は極めて稀となり、統計的にはいわゆる缶詰事故が多くなっている。したがって、本件各部品はエレベーターの安全性に直結する重要なものである、との主張についてみても、安全性の水準からすれば、まずもって缶詰事故の発生が特に問題となるにすぎない。もっとも、缶詰事故それ自体が直接人身事故を惹起するはずのものではないにもせよ、恐怖感や焦燥感により、閉じ込められた者が脱出を図る際に転落したり、かごの中でそれらの者がいわゆるトラブルを起こしたりする可能性もないではなく、これらも広い意味での安全性に係わるものであるから、エレベーターのいわゆるハード面からの手当てもされるようになってきている(甲133、136、乙25、弁論の全趣旨)。
そして、弁論の全趣旨と後掲括弧内の各証拠によれば、次の事実が認められる。
(一) 甲事件部品は、エレベーターの速度制御機能を有し、マイクロ技術を用いた部品で構成されており、速度等に関する情報を帰還させるものであり、乙事件部品は、エレベーターが逆転して走行した場合にエレベーターを停止させる保護装置の一部である(甲127、乙25、32、当審証人窪田克美の供述)。
(二) 保守契約における定期点検項目と、建築基準法に定める定期検査の定期検査項目とはほぼ同一であり、通常は定期検査資格を有する保守業者が保守契約の一環として検査・報告を行っており、愛媛メンテナンス及び乙事件被控訴人には昇降機検査資格者がいた(もっとも、右の点検、検査と本件各エレベーターに発生した現実の故障箇所の確認とその修理の能力の有無とは必ずしも一致するものではない。)(甲21ないし25、68、原審証人笹原博保、原審での甲事件被控訴人、乙事件被控訴人各代表者の各供述)。
(三) 独立系保守業者も、エレベーター保守事業協同組合、日本エレベーターメンテナンス協会等の組織を通じて技術交流や情報交換を図っているほか、各エレベーターの実機に当たり一応のデータを取ったりしている。愛媛メンテナンス及び乙事件被控訴人も右の組織の一員である(原審証人笹原博保、同谷口浩、当審証人内田文男の各供述)。
(四) 東芝は、韓国等の海外へもその製造に係わるエレベーターを輸出しているが、その保守は、現地の保守業者に任されている(当審証人窪田克美の供述)。
(五) エレベーターのプリント基板については、三菱電機、日立製作所、日本オーチス等は単体で販売し、控訴人のように取替え調整工事込みでないと、これを供給しないとの取扱はしていない(甲73、75、76の2、132、原審証人斎藤忠義、同笹原博保、当審証人内田文男の各供述)。
(六) 本件各エレベーターに発生した現実の故障の原因の確認について、被控訴人らの側に安全性の確保に係わるような過ちがあったとの証拠や、本件各部品の取替え工事そのものによって、安全面に係わる別途特段の危険を生ずる可能性があることあるいは工事それ自体のうちに安全性に係わる別途特段の危険を内包しているといったことを裏付けるべき証拠はない。しかも、一般に、独立系保守業者によって保守されているエレベーターの方が事故率が高いとの証拠もなく、甲事件部品を独立系保守業者である阪神輸送機が修理した後のエレベーターについて、格別の事故が現在までに生じたことを認めるべき証拠もない。
以上の各事実関係からみると、愛媛メンテナンス及び乙事件被控訴人においては、エレベーターの安全性に関して一定の資格ないしは能力を有しているものということができる。そして、たとえその技術自体が控訴人の技術自体に対比して相対的には劣るとみられるものであったとしてみても、愛媛メンテナンス及び乙事件被控訴人は、その技術水準において、本件各部品の単体での供給を受けて、前記の現実的故障を修理するに足りる程度には達していたものであったとみてよい。なお、愛媛メンテナンスは、甲事件部品の修理を阪神輸送機に依頼しているが、控訴人が、メーカーであり親会社である東芝から技術指導を受け、あるいは同社と情報の交換をするのが自由であるのと同様、愛媛メンテナンスも同業他社と協力、あるいは相互の情報交換をし、切磋して技術水準の向上を図り、もって、エレベーター一般の安全性確保のための技術を高めることももとより自由であるべき道理である。少なくともそれらが不可能であるとすべき証拠はない。もっとも控訴人提出の証拠によれば、独立系保守業者の中には極めて危険な措置を取るものもあったことが認められるけれども、愛媛メンテナンス及び乙事件被控訴人がそのような措置を取り、控訴人がこれを理由に部品単体での供給を拒否したのであれば格別、危険な措置を取った他の業者があったからといって、控訴人の前記の取引方法が正当化されるいわれはない。したがって、本件においては、控訴人が本件各部品を単体で供給することなく、取替え調整工事込みでなければこれを供給しないとし、このような両者一体のもとでの部品供給でなければエレベーターの安全性を確保できないと認めるべき証拠は存しないことに帰するから、控訴人が、その独自の判断で、控訴人以外の保守業者に対する本件各部品の単体での供給を拒否する控訴人の取引方法には、独占禁止法上の正当性や合理性はないものというべきである。
5 次に、控訴人は、控訴人には東芝から提供を受けたノウハウがあり、また、本件において控訴人に本件各部品の単体での注文に応じさせることは、契約上供給義務のある契約先と区別されるべき独立系保守業者の育成を強制される結果となって不合理であると主張する。
しかし、控訴人主張のノウハウの実体については本件全証拠によるも、具体的にこれを理解し、かつ、把握するに足りない。このことを別として、仮に右のノウハウの中に控訴人主張の安全性に係わるものがあるとしても、前述のとおり、使用に供されたエレベーターは、その比較的長期の使用期間中における部品の交換等が当然に予想されているとみるべきなのであるから、本来、メーカーとしては、部品を供給するに当たり危険が予想される場合には(本件において、危険が予想されるとは未だ認められない。)、その旨の警告や危険を避けるための指示等所要の処置を可能な限り行うべきものであって、ノウハウの保護の名の下に右の警告・指示をすることなく、自己系列下の保守業者のみに部品供給をし、結果的に市場支配力を高めようとすることは許されないものというべきである。また、本件で問題とされているのは、独立系保守業者が自らのストックとして部品の注文をした場合ではなく、東芝製エレベーターの所有者がその現実に発生した故障について修理に必要な部品を供給することを求めている場合であって、メーカーである東芝及びその子会社で東芝製エレベーターの部品を一手に販売している控訴人が、東芝製エレベーター及びその部品の数・耐用年数・故障の頻度を容易に把握し得ること及びエレベーターの所有者が容易にはそのエレベーターを他社製のそれに交換し難いのはいわば当然であることを考慮すれば、このような部品を一定期間常備し、必要の都度、求めに応じて迅速にこれを供給することは、右の販売者である東芝ないし控訴人が負うべき、東芝製エレベーターを購入してこれを所有する者に対する、右販売に附随した当然の義務であると解するのが相当である。したがって、控訴人の右の主張が容れられなかったからといって、控訴人が独立系保守業者の育成を強制されるものとはいえない。
6 本件各部品とその取替え調整工事とは、それぞれ独自性を有し、独立して取引の対象とされている(原審証人笹原博保、同谷口浩、当審証人内田文男の各供述、弁論の全趣旨)。そして、安全性確保のための必要性が明確に認められない以上、このような商品と役務を抱き合わせての取引をすることは、買い手にその商品選択の自由を失わせ、事業者間の公正な能率競争を阻害するものであって、不当というべきである(なお、いわゆるブランド・イメージは、企業の経済的活動の合理性という見地から問題とされることはあり得ても、独占禁止法上の問題ではない。)。
7 被控訴人らは、控訴人の甲事件行為及び乙事件行為は不当な取引妨害にも該当すると主張する。控訴人の甲事件行為については、まさに前記のような控訴人の抱き合わせ販売の方針に基づくものであって、これが不当な取引妨害行為に該当するものとみる余地がまったくないではないとしても、前記一般指定によれば、右の行為は、その15項にではなく、10項に該当するというべきである。他方、控訴人の乙事件行為については、抱き合わせ販売の方針に従ってたされたものではあるが、もともと乙事件被控訴人において乙事件部品のみの注文をしたわけではなく、右方針に従い、取替え調整工事込みで注文をしたのであるから、これが不当な抱き合わせ販売に当たるとしてその損害賠償を求めるのは筋違いである(同時にまた、乙事件被控訴人主張の損害との因果関係もない。)。そこで、前認定の控訴人の乙事件行為を見ると、控訴人は、乙事件の部品を取替え調整工事込みで受注した後、迅速にその供給をすることなく、当該東芝エレベーターにつき乙事件被控訴人が控訴人と保守契約を結んでいないとの理由で3か月もの先の納期を指定したので、乙事件控訴人は、止むなく右エレベーターが設置されている建物を建築した大手建設会社に催促方を依頼したところ、同社は控訴人にクレームを申し入れ、これによって初めて、クレームの翌日、控訴人は乙事件の部品供給をするに至ったものである(原審証人長松幸治の供述、弁論の全趣旨)。
ところで、前に述べたとおり、メーカーである東芝及びその子会社で東芝製エレベーターの部品を一手に販売している控訴人は、東芝製エレベーター及びその部品の数・耐用年数・故障の頻度を容易に把握し得ること及びエレベーターの所有者が容易にはそのエレベーターを他社製のそれに交換し難いことからして、部品の常備及び供給が東芝及びその子会社で東芝製エレベーターの部品を一手に販売している控訴人の同エレベーター所有者に対する義務であると解される一方で、エレベーターが交通(輸送)機関の一種であって、これに不備が生じた場合迅速な回復が望まれるのは極めて当然であることからすると、控訴人の保守契約先でないからといって、手持ちしていた部品の納期を3か月も先に指定することに合理性があるとは到底みられず、不当とされても止むを得ないところである。
したがって、控訴人の乙事件行為は、一般指定15項の不当な取引妨害行為に当たるというべきである。
六 不法行為の成否について
控訴人の行為は、以下に説示するとおり、被控訴人らに対し、それぞれ不法行為となるものである。
控訴人が昭和59年3月に公正取引委員会から部品の供給につき警告を受けていることは前認定のとおりであるところ、控訴人が東芝製エレベーターの保守に関しては90パーセント位の市場占拠率を有している[原審証人遠藤和男の供述、弁論の全趣旨。なお、平成3年になって、公正取引委員会が独占的状態に係わる事業分野の考え方の別表を改定して昇降機保守業をこれに加えた(甲142の1ないし3)]ことに照らすと、控訴人は、東芝製エレベーターの保守を一手に独占し、独立系保守業者等他の競争者を排除しようとの意図の下に本件各行為を行ったものと容易に推認することができる。
以上までに認定、判示したところからすれば、控訴人は、前記の被控訴人らに対する各対応が公正取引委員会の一般指定に該当し、独占禁止法に違反するものであることを認識していたか、少なくとも認識することが可能であったものとみられ(同委員会が警告以外の措置に出なかったことは、控訴人の右の認識の内容を左右するものではない。)、以上認定の控訴人の本件各行為は、それにより、故意に(少なくとも過失によって)被控訴人らに後記認定の損害を与えたものというべく、民法709条の不法行為に当たるものというほかはない。」
3 同34枚目裏5行目の「主張」を「主張事実」に、同6行目の「慰謝料」を「名誉・信用等に対する損害」に、同35枚目表4行目の「慰謝料」を「同損害」に、同裏9行目の「調査年報」を「調査年報及び弁論の全趣旨」に、同10行目の「33.3パーセント」を「33パーセント」に、同末行の「2000円」を「2000円を」に、同36枚目表1行目の「33.3パーセント」を「33パーセント」に各改める。
3 よって、原判決は結論において正当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用は控訴人の負担として、主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第7民事部

平成05年07月30日

裁判長裁判官 仙田 富士夫
裁判官 渡邊 壯

裁判官前川鉄郎は転補につき署名押印することができない。
裁判長裁判官 仙田 富士夫


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