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日之出水道機器(株)ほか6名に対する件

独禁法3条後段

 

平成3年(判)第2号

審判審決

 

 

福岡市博多区堅粕5丁目8番18号
被審人 日之出水道機器株式会社
右代表者 代表取締役 浦上 紀之
大阪府東大阪市金物町2番21号
被審人 北勢工業株式会社
右代表者 代表取締役 北山 武
福岡市博多区上川端町14番26号
被審人 栄寿産業株式会社
右代表者 代表取締役 新原 栄寿郎
東京都渋谷区代々木2丁目15番5号
被審人 株式会社トミス
右代表者 代表取締役 戸簾 俊久
神戸市長田区1番町5丁目8番地
被審人 株式会社神戸鋳鉄所
右代表者 代表取締役 堀田 俊之
福岡市博多区博多駅前3丁目27番25号
被審人 永鋼産業株式会社
右代表者 代表取締役 村上 正博
東京都墨田区江東橋2丁目12番2号
被審人 日豊金属興業株式会社
右代表者 代表取締役 中箸 弘
右7社代理人 弁護士 早川 晴雄

 公正取引委員会は、右被審人らに対する私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)違反事件について、公正取引委員会の審査及び審判に関する規則(以下「規則」という。)第66条の規定により、審判官滿田忠彦、同大録英一及び同鈴木恭蔵から提出された事件記録に基づいて、同審判官らから提出された別紙審決案を調査し、次のとおり審決する。
主文
一 被審人らは、それぞれ福岡市公共下水道用鉄蓋に関する次の(一)ないし(三)の各決定を破棄しなければならない。
(一) 昭和55年10月末ころに行った販売数量比率及び受注方法に関する各決定
(二) 昭和55年11月4日に行った販売価格、工事業者渡し価格及び販売の相手方に関する各決定
(三) 昭和63年3月18日に行った販売価格、工事業者渡し価格、販売の相手方、販売数量比率及び受注方法に関する各決定
二 被審人らは、それぞれ次の事項を福岡市公共下水道用鉄蓋の販売業者及び需要者に周知徹底させなければならない。この周知徹底の方法については、あらかじめ、当委員会の承認を受けなければならない。
(一) 前項に基づいて採った措置
(二) 被審人らは、今後、共同して、福岡市公共下水道用鉄蓋の販売価格、工事業者渡し価格、販売の相手方、販売数量比率及び受注方法を決定せず、各社がそれぞれ自主的に決める旨
三 被審人らは、前二項に基づいて採った措置を速やかに当委員会に報告しなければならない。
理由
一 当委員会の認定した事実、証拠、判断及び法令の適用は、いずれも別紙審決案と同一であるから、これを引用する。
二 よって、被審人らに対し、独占禁止法第54条第1項及び規則第69条第1項の規定により、主文のとおり審決する。

平成05年09月10日

委員長 小粥 正巳
委員 股野 景親
委員 植木 邦之
委員 佐藤 勲平
委員 植松 敏

別紙
平成3年(判)第2号
審決案
福岡市博多区堅粕5丁目8番18号
被審人 日之出水道機器株式会社
右代表者 代表取締役 浦上 紀之
大阪府東大阪市金物町2番21号
被審人 北勢工業株式会社
右代表者 代表取締役 北山 武
福岡市博多区上川端町14番26号
被審人 栄寿産業株式会社
右代表者 代表取締役 新原 栄寿郎
東京都渋谷区代々木2丁目15番5号
被審人 株式会社トミス
右代表者 代表取締役 戸簾 俊久
神戸市長田区1番町5丁目8番地
被審人 株式会社神戸鋳鉄所
右代表者 代表取締役 堀田 俊之
福岡市博多区博多駅前3丁目27番25号
被審人 永鋼産業株式会社
右代表者 代表取締役 村上 正博
東京都墨田区江東橋2丁目12番2号
被審人 日豊金属興業株式会社
右代表者 代表取締役 中箸 弘
右7社代理人 弁護士 早川 晴雄
右被審人らに対する私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)違反事件について、公正取引委員会から独占禁止法第51条の2及び公正取引委員会の審査及び審判に関する規則(以下「規則」という。)第26条の規定により、担当審判官に指定された本職らは、審判の結果、次のような審決をすることが適当であると考え、規則第66条及び第67条の規定により本審決案を作成する。
主文
一 被審人日之出水道機器株式会社、同北勢工業株式会社、同栄寿産業株式会社、同株式会社トミス、同株式会社神戸鋳鉄所、同永鋼産業株式会社及び同日豊金属興業株式会社は、福岡市公共下水道用鉄蓋に関する次の(一)ないし(三)の各決定を破棄しなければならない。
(一) 昭和55年10月末ころに行った販売数量比率及び受注方法に関する各決定
(二) 昭和55年11月4日に行った販売価格、工事業者渡し価格及び販売の相手方に関する各決定
(三) 昭和63年3月18日に行った販売価格、工事業者渡し価格、販売の相手方、販売数量比率及び受注方法に関する各決定
二 被審人7社は、次の事項を福岡市公共下水道用鉄蓋の販売業者及び需要者に周知徹底させなければならない。この周知徹底の方法については、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
(一) 前項に基づいて採った措置
(二) 被審人7社は、今後、共同して、福岡市公共下水道用鉄蓋の販売価格、工事業者渡し価格、販売の相手方、販売数量比率及び受注方法を決定してはならず、各社がそれぞれ自主的に決めなければならない。
三 被審人7社は、前二項に基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。
理由
第一 事実
(被審人ら等について)
一(一) 被審人日之出水道機器株式会社(以下「被審人日之出水道」という。)、被審人栄寿産業株式会社(以下「被審人栄寿産業」という。)、被審人株式会社トミス(以下「被審人トミス」という。)、被審人株式会社神戸鋳鉄所(以下「被審人神戸鋳鉄所」という。)及び被審人永鋼産業株式会社(以下「被審人永鋼産業」という。)の5社(以下「被審人5社」という。)は、それぞれ肩書地に本店を置き、福岡市の区域(以下「福岡地区」という。)において、公共下水道の人孔(マンホール)用及び汚水桝用鉄蓋(以下「公共下水道用鉄蓋」という。)の製造販売業を営み、被審人北勢工業株式会社(以下「被審人北勢工業」という。)及び被審人日豊金属興業株式会社(以下「被審人日豊金属興業」という。)は、それぞれ肩書地に本店を置き、被審人北勢工業は株式会社ホクキャストから、被審人日豊金属興業は日豊金属工業株式会社から公共下水道用鉄蓋の供給を受けて、福岡地区において販売している者であり、その販売面において製造販売業者と並ぶ地位にある。
(二) 被審人5社並びに被審人北勢工業及び被審人日豊金属興業の7社(以下「被審人7社」という。)は、福岡地区において使用される公共下水道用鉄蓋の全量を供給している。
(三) 福岡市は、公共下水道用鉄蓋として使用する鋳鉄蓋の材質、重量、形状及び構造等について一定の仕様を定めるとともに、当該仕様の鋳鉄蓋(以下「市型鉄蓋」という。)を製造販売できる業者として、被審人5社並びに株式会社ホクキャスト及び日豊金属工業株式会社を指定し、右指定業者のみが市型鉄蓋を供給できるようにしている。
そして、福岡市は、昭和55年に市型鉄蓋の仕様を被審人日之出水道の実用新案を採り入れたものに改定している。
(本件各決定に至る事情)
二(一) 福岡地区では、市型鉄蓋の仕様が改定される以前の旧型時代は、鉄蓋メーカー間の価格競争が激しく、各鉄蓋メーカーが鉄蓋を商社やコンクリート業者に多岐にわたって販売していたため、売り込み競争が行われ、販売先から価格を値切られ、昭和53年1月ころには売上数量がトップであったメーカーの福岡可鍛鋳鉄が倒産するという状況であった。
(二) 被審人7社は、市型鉄蓋を販売業者(以下「商社」という。)を通じて、下水道工事業者(以下「工事業者」という。)又はコンクリート製品製造業者に販売している。
福岡市においては、市型鉄蓋を市が直接購入するのではなく、工事を受注した工事業者が購入する形式を採っているため、工事価格は市型鉄蓋を含む価格で積算されている。福岡市は、工事価格積算のため鉄蓋の指定業者に市型鉄蓋の見積価格を提出させ、見積価格の約90パーセントに当たる金額をもって工事発注の際の設計単価としており、同設計単価から工事業者及び商社のマージンを差し引いたものが被審人らの販売価格となる関係にあり、そして、右事実を被審人らは認識していた。
(三) 被審人7社は、福岡市が市型鉄蓋の仕様を改定するのを機会に、市型鉄蓋の販売価格の低落を防止するための協調体制をとることにし、販売価格、販売先等の検討を行うため、各社の営業担当責任者級の者の会合の場として、福岡鉄蓋会を発足させることとした。昭和55年3月8日、福岡市中央区所在の被審人日之出水道九州営業所の会議室で開催された第1回の福岡鉄蓋会で、被審人7社は、7社間の受注競争による値崩れを回避するため販売ルートを整理、統一することにし、コンクリート2次製品メーカーを組合員とする福岡コンクリート製品協同組合(以下「福岡組合」という。)を販売先として要請することとし(もっとも、後記のとおりマージン等の関係で福岡組合を販売先とすることを断念し、商社を販売先とすることとした。)、あわせて福岡市の市型鉄蓋の設計単価が低価格で設定されることを回避するため、昭和55年度の福岡市に対する見積価格を提出するについて、被審人日之出水道の見積価格を最低見積価格として他社は同価格を上回る価格で福岡市向けの見積もりをすることを申し合わせた。
(昭和55年の市型鉄蓋に関する土木協力会に対するマージンの決定)
三 被審人7社は、市型鉄蓋の販売価格がその需要者である工事業者及び商社に対するマージンいかんによって決定されるとの認識の下に、昭和55年8月ころから、工事業者のマージンをどの程度にするかについて検討し、更に福岡市の工事業者の団体である福岡市土木建設協力会(以下「土木協力会」という。)と協議の上、同年8月26日、工事業者に対する販売価格を左記のとおりにすること(マージン率約15パーセント)で土木協力会と合意をした。

品目 工事業者渡し価格
人孔鉄蓋重車道用 4万2000円
人孔鉄蓋軽車道用 2万5300円
汚水桝鉄蓋重車道用 1万3800円
汚水桝鉄蓋軽車道用 1万2300円
(昭和55年の市型鉄蓋に関する販売数量比率等の決定)
四(一) 本件市型鉄蓋について実用新案を採用する条件として他の指定業者6社にその実施を許諾するという福岡市の提案を受け入れた被審人日之出水道は、昭和54年12月末ころ、被審人7社の会合において、市型鉄蓋の販売数量比率につき、自社が市型鉄蓋の実用新案権者であり、他の指定業者に対して、実用新案の実施を許諾することを理由に、あらかじめ総需要量(総販売量)の25パーセントをロイヤルティ分として取得し、その余の75パーセントを被審人7社で均等配分する案を提案したが、被審人栄寿産業がロイヤルティ分の25パーセントは高すぎると反対したため、昭和55年3月以降10月までに開催された福岡鉄蓋会で引き続き検討した結果、遅くとも昭和55年10月末ころまでには被審人日之出水道が総需要量の20パーセントをロイヤルティ分として取得し、その余の80パーセントを被審人7社で均等配分する旨の合意がされた。
(二) 右配分比率を決めるのと並行して、被審人7社は、福岡鉄蓋会で比率どおりに配分するための受注窓口を一本化することについて検討した結果、昭和55年10月末ころ、商社が受けた注文は、すべて被審人日之出水道の担当者に連絡して、同社において毎月の受注状況、各メーカーの在庫をみながら各社の数量配分比率に見合うようにその他の被審人6社に出荷指示する旨の決定をした。
(昭和55年の市型鉄蓋の販売価格等の決定)
五 前記鉄蓋会での検討を踏まえ、本件市型鉄蓋の販売価格の低落防止のための諸方策につき最終的に決定あるいは確認をするため、昭和55年11月4日、被審人7社等の営業担当者等の出席のもとで被審人日之出水道の会議室で福岡鉄蓋会が開催され、被審人日之出水道の九州営業所長である篠原英俊が左記のとおりの金額が記載された価格表を提示し従前の検討してきた経緯を報告した。右価格表に基づき販売価格等が検討された結果、市型鉄蓋の販売価格を左記のとおりとすること及びその実施時期を同年11月1日出荷分からとすること、その実効を確保するため、販売先を西鉄興産株式会社、合名会社吉田善平商店、株式会社渡辺籐吉本店、株式会社牛尾商店、筑紫商事こと大村清正及び有限会社旭栄興産とすること並びに前記三で合意した工事業者渡し価格で工事業者に販売することを前記6商社に要請することを各決定し、前記四で決定したとおり、販売数量比率を市型鉄蓋の総需要量に対し被審人日之出水道が約31.4パーセント、その他の被審人6社がそれぞれ約11.4パーセントである旨及び被審人日之出水道を受注窓口にし同社が右販売数量比率に基づき各社に出荷指示を行う旨を確認した。
右福岡鉄蓋会の終了後、引き続き同所で前記6商社との合同会議が開かれ、被審人日之出水道の担当者は前記決定及び確認された事項(ただし、販売数量比率に関する決定は除く。)を前記6商社に伝え、工事業者に対する価格を左記工事業者渡し価格どおり販売することを要請した。

品目 販売価格 工事業者渡し価格
人孔鉄蓋重車道用 3万9000円 4万2000円
人孔鉄蓋軽車道用 2万3500円 2万5300円
汚水桝鉄蓋重車道用 1万2800円 1万3800円
汚水桝鉄蓋軽車道用 1万1400円 1万2300円
(小口径汚水桝鉄蓋等に関する販売価格等の決定)
六(一) 福岡市が昭和63年度から市型鉄蓋の仕様に小口径汚水桝鉄蓋及びこれに付属して販売するレジンコンクリート製下桝上部及び底板(以下「小口径汚水桝鉄蓋等」という。)を追加することとしたため(なお、右小口径汚水桝鉄蓋等についても被審人日之出水道の実用新案が採り入れられた。)、福岡市から指定を受けてその製造販売を行うことになる被審人7社は、その価格の低落を防止し、販売方法等について共同歩調をとるため、昭和62年5月7日福岡鉄蓋会を開催し、小口径汚水桝鉄蓋等につき各工事業者のマージン率を約15パーセント、商社のマージン率を約10パーセントにしたらどうか、商社に在庫運用をさせてはどうか等について検討をした。
(二) その後数回の福岡鉄蓋会で検討を重ねた後、昭和63年3月18日、被審人7社の営業担当者等の出席のもとで、被審人日之出水道の会議室で福岡鉄蓋会が開催され、被審人日之出水道の篠原英俊が司会をし、従前の検討結果を踏まえ、まず商社に対する販売価格及び工事業者渡し価格について検討が行われ、商社のマージン率を約10パーセント、工事業者渡し価格のマージン率を約15パーセントとする左記のとおりの販売価格及び工事業者渡し価格が決定され、同年4月1日出荷分から実施することにし、右決定の実効を確保するため、被審人7社の小口径汚水桝鉄蓋等の販売先を、西鉄興産株式会社、合名会社吉田善平商店、株式会社渡辺籐吉本店、株式会社牛尾商店及び筑紫商事こと大村清正の5社のみとし、また前記市型鉄蓋と同様に販売数量比率を日之出水道機器が約31.4パーセント、その他の6社がそれぞれ約11.4パーセントとし、被審人日之出水道を受注窓口にし同社が右販売数量比率に基づき各社に出荷指示を行う旨が各決定された。
右福岡鉄蓋会の終了後、引き続き同所で前記5商社との合同会議が開催され、被審人7社は小口径汚水桝鉄蓋等の商社に対する販売価格を説明し、同会で決定された工事業者渡し価格で工事業者に販売するように要請した。

品目 販売価格 工事業者渡し価格
小口径汚水桝鉄蓋 8300円 9300円
レジンコンクリート製下桝上部 3500円 3900円
レジンコンクリート製下桝底板 2600円 2900円
セット計 1万4400円 1万6100円
(実施状況)
七 被審人7社は、おおむね、前記各決定に基づき、市型鉄蓋を販売している。
第二 証拠
第一の一(一)ないし(三)の事実は、被審人らが認めてこれを争わないところである。
第一の二(一)の事実は、査29号証、同48号証、同71号証、同102号証及び同105号証並びに参考人篠原英俊及び同大脇隆治の各陳述からこれを認めることができる。
第一の二(二)の事実中、福岡市が提出された見積価格の約90パーセントにあたる金額をもって発注の際の設計単価としている事実は、参考人篠原英俊の陳述からこれを認める事ができ、その余の事実は、被審人らが認めてこれを争わないところである。
第一の二(三)の事実は、査29号証、同47号証、同48号証、同56号証、同59号証ないし同61号証、同65号証、同77号証、同85号証、同87号証、同90号証、同94号証、同97号証、同100号証、同102号証及び同105号証ないし同107号証からこれを認めることができる。
第一の三の事実は、査60号証、同81号証ないし同84号証、同100号証、同101号証、同106号証及び同120号証並びに参考人篠原英俊の陳述からこれを認めることができる。
第一の四(一)の事実は、査22号証、同28号証、同39号証ないし同47号証、同49号証、同51号証、同54号証ないし同56号証、同60号証、同72号証、同73号証、同89号証、同102号証、同103号証、同107号証、同119号証、同120号証、同139号証、審15号証及び同23号証並びに参考人篠原英俊、同大脇隆治及び同森賢治の各陳述からこれを認めることができる。
第一の四(二)の事実は、査103号証、同119号証及び同120号証からこれを認めることができる。
第一の五の事実は、査22号証、同24号証、同28号証、同29号証、同44号証、同47号証、同54号証ないし同56号証、同59号証ないし同61号証、同65号証、同73号証、同76号証、同85号証、同87号証、同94号証、同97号証、同100号証ないし同103号証、同105号証ないし同109号証、同112号証、同114号証、同116号証ないし同120号証、同139号証及び同176号証並びに参考人篠原英俊、同大脇隆治及び同森賢治の各陳述からこれを認めることができる。
第一の六(一)の事実は、査28号証、同39号証、同56号証、同93号証、同99号証、同131号証及び同136号証からこれを認めることができる。
第一の六(二)の事実は、査26号証、同35号証、同38号証、同56号証、同99号証、同100号証、同121号証、同122号証、同127号証、同129号証、同132号証、同136号証ないし同141号証、同143号証、同144号証、同152号証及び同155号証からこれを認めることができる。
第一の七の事実は、査2号証、同4号証、同6号証、同8重証、同10号証、同12号証、同14号証、同15号証、同20号証ないし同22号証、同26号証、同28号証、同31号証、同44号証、同56号証ないし同61号証、同67号証、同68号証、同79号証、同164号証、同165号証、同171号証及び同175号証からこれを認めることができる。
第三 被審人らの主張等に対する審判官の判断
(福岡鉄蓋会の目的について)
一(一) (被審人らの主張)
福岡鉄蓋会の目的は、福岡市が新たに採用した仕様を充足する市型鉄蓋を供給していくためには、鉄蓋メーカーである被審人各社の鋳造、機械加工等の製造技術及び材質・寸法等の品質管理面における一層の向上が不可欠であったところから、福岡市から被審人日之出水道に要請のあった技術指導の実施を図ることにあり、市型鉄蓋の販売価格の低落防止を目的としたものではない。
(二) (審判官の判断)
福岡鉄蓋会が技術情報の交換等の目的を有し、現実に同会で技術指導がされ、技術についての情報の交換がされていたことが認められるが(査48号証及び同102号証)、技術指導等は性質上その必要に応じてそれぞれの工場等の現場でされることが少なくなく、一方、前記認定のとおり、福岡鉄蓋会のメンバーが被客人らの営業担当責任者級の者で構成されていること、福岡鉄蓋会において現実に販売ルート、販売価格等について検討、決定がされていること及び前掲関係各証拠によれば、その主たる目的は、市型鉄蓋の販売価格の低落防止を目的としたものであることは明らかである。
(昭和55年の市型鉄蓋に関する土木協力会に対するマージンの決定)
二(一) (被審人らの主張)
福岡地区において、市型鉄蓋を販売するためには、土木協力会と交渉しそのマージンを決めることが必要であり、被審人らが土木協力会と交渉しなければ流通過程の各段階における取引が進行しないのが実状であり、また、当時被審人らが市型鉄蓋の販売先として交渉していた福岡組合からも、土木協力会と交渉しそのマージンを決めることを要請されていたことから、被審人らは、土木協力会と交渉したものであり、自ら意図して交渉したものではなく、市型鉄蓋の販売価格の低落を防止するためではない。また、被審人らと土木協力会との交渉も対等の立場での交渉ではなく、本件マージン率である約15パーセントは、優越的な地位にある土木協力会から被審人らが一方的に押しつけられたものであり、そしてそれは昭和55年8月26日に決められたものである。
また昭和55年11月4日の商社との合同会議において、被審人らは商社に対する販売価格をこの水準に決めた理由を説明するため、8月26日に決まった工事業者渡し価格を開示したに過ぎず、6商社に対して市型鉄蓋の工事業者渡し価格の遵守を要請する旨決定したことも、要請したこともない。
(二) (審判官の判断)
被審人らが主張するように、市型鉄蓋を販売するためには土木協力会とマージンを決めなければ、流通の各段階における取引が進行しないとの事実を認めるに足る証拠はない。仮に、土木協力会と交渉しマージンを決定することが本件鉄蓋の取引を円滑ならしめるとしても、右は工事業者と直接取引をする商社等の販売業者が個別に決定すべき事柄であり、メーカーである被審人らが決定すべきことではなく、まして被審人らが共同して決定すべきものではない。
被審人らは土木協力会とやむを得ず交渉したかのように主張するが、右主張事実を認めるに足る証拠はなく、商社段階で工事業者に安売りをするとメーカーの販売価格が前記認定の販売価格どおりに販売できなくなるおそれがあることから、商社段階での値崩れを防止するために、被審人らが土木協力会と本件工事業者渡し価格を決定したものであること(査101号証及び同120号証)、前記認定の当時の市型鉄蓋の市況、福岡鉄蓋会の目的及び前掲関係各証拠によれば、被審人らが土木協力会と交渉し本件マージンを決めたのは、市型鉄蓋の販売価格の低落を防止するためであると優に認められる。また、本件マージンが被審人らの思惑よりも高く決定されたとしても、右事実は前記認定を左右するものではない。
また、被審人らが主張するように本件工事業者渡し価格は、昭和55年8月26日に合意されたことは前記のとおりであるが、本件市型鉄蓋を工事業者に販売するのは商社であるから、その販売価格の低落を防止するためには、右工事業者渡し価格を商社に遵守するように要請等することが必要であるところ、右8月26日の時点では、未だ工事業者に販売する商社が具体的に確定していなかったのであるから、前記のとおり同年11月4日の福岡鉄蓋会で本件販売価格の実効の確保の手段としての行為が完成したとみるのが相当である(もっとも、本件において日時の相違は本件違反行為の成否、本件審判の結論に影響を及ぼすものではないことはいうまでもない。)。
そして、工事業者渡し価格をメーカーである被審人7社の段階で決めるのは、前記のように商社段階で工事業者に安売りするとメーカーの販売価格が前記認定の決定価格どおりに販売できなくなるおそれがあることから、商社段階での値崩れを防止するために行なわれたことであるから、右工事業者渡し価格で販売することを商社に要請しなければその目的を達成しないことを考えると、前掲関係各証拠は十分に信用することができ、前記のとおり右関係各証拠から昭和55年11月4日に開催された福岡鉄蓋会で、被審人らは、本件取引先に決定した6商社に対し、前記工事業者渡し価格を遵守することを要請することを決定し、同日の6商社との合同会議において6商社に要請した事実を認めることができる。
(昭和55年の市型鉄蓋に関する取引先の決定について)
三(一) (被審人らの主張)
福岡市の発注する下水道工事を施工する工事業者数及び発注件数の多さからして、被審人7社が市型鉄蓋を円滑に供給していくためには、情報能力の優れた販売店を通じて取引することが不可欠であり、当初、福岡組合に取扱いを依頼したが、マージン等の関係でその交渉は決裂し、結局、その販売先は商社しかなく、そして被審人7社それぞれが自己と取引のある商社を紹介し、営業力、信用度その他の事情を総合的に勘案した結果、当時適格を有するものは本件6商社のみであったところから、市型鉄蓋を円滑に供給するため本件6商社を取引先とする旨決めたものであり、本件販売価格に関する決定についての実効を確保するために商社の選定をしたものではない。
(二) (審判官の判断)
被審人らは、販売先は本件6商社しかなかった趣旨の主張をするが、被審人らが共同で販売先を福岡組合とすることがマージン等の関係で成立しなかったことは前記のとおりであるが、昭和53年当時、被審人らはコンクリート製品メーカー等を通じて個別に販売していたこと(査28号証)を考えれば、被審人らが個別に交渉した場合に福岡組合あるいは、その組合員を販売先にすることも十分に考えられるところである。仮に本件取引を円滑に進めるうえで本件6商社を販売店に指定することが最も適当な方策であったとしても、取引先をどこにするかは、被審人らが自己の判断に基づき個々に決定し依頼すべきものであり、共同して本件6商社を取引先に決定することは、被審人らが相互に顧客の拡大を制限し、販売先を統一することにより本件販売価格の維持を図るものであり、福岡地区における市型鉄蓋取引の競争を実質的に制限するものであり、独占禁止法第2条第6項に該当し、同法第3条に違反するものといわざるを得ない。
(昭和55年の市型鉄蓋に関する販売数量比率の決定)
四(一) (被審人らの主張)
福岡市が市型鉄蓋の仕様を改定して被審人日之出水道の実用新案を採り入れた際に、他の指定業者に当該実用新案の実施を許諾することを条件にしたので、被審人日之出水道はこれを受け入れたが、実施許諾料を放棄したことはない。本件販売数量比率は、被審人日之出水道が実用新案権の権利行使として他の被審人らに対し実施許諾したものであり(ロイヤルティを総需要量の20パーセントとし、残りの80パーセントを被審人7社に等分になるように許諾した。)、被審人各社が福岡鉄蓋会で相互に協議して定めたものではない。そして、その販売数量比率は、被審人日之出水道が、同社及び被審人永鋼産業を除く被審人5社が福岡市から検査の合格通知を受けた昭和55年9月20日後の間もない時期に各社に許諾したもので、総需要量を基準にして許諾数量を設定したのは、福岡市から市型鉄蓋の安定供給のため被審人各社に計画生産を可能ならしめるためである。
(二) (審判官の判断)
前掲関係各証拠によれば、被審人7社は、福岡鉄蓋会で協議をして販売数量比率を決定したことが認められたのであり、右認定に反する参考人篠原英俊、同森賢治及び同大脇隆治の各陳述は、前掲関係各証拠(特に右参考人らは、いずれも審査段階において、被審人らが福岡鉄蓋会で販売数量比率につき協議をし本件決定をした趣旨の供述をしていたところ、当審判廷でその供述を覆したものであるが、その理由はいずれも合理的ではない。)及び本件決定は本件鉄蓋の年間の総需要量を配分割当しており、その割当分については相互に販売量が保証されることになるが、そのような趣旨の決定は全員で協議し決定することが必要であること、被審人日之出水道は福岡市から本件実用新案を採用する際の条件で他の被審人6社に実施許諾をせざるを得なかったことに照らすと、措信できない。また、実施許諾料を放棄したかどうかと本件販売数量比率がどのような形式で行われたかどうかとは直接関係がない。
そして、本件は、絶対的な数量ではなく本件鉄蓋の年間の総需要量を配分し割当をしており、相互に競争することなく右決定した割当数量までは販売量が確保、保証されることとなり、被審人ら相互の販売数量競争を完全に排除することとなり、福岡地区における市型鉄蓋取引の競争を実質的に制限するものであり、独占禁止法第2条第6項に該当し、同法第3条に違反することは明らかである。福岡市から被審人らに対し、本件市型鉄蓋の安定供給の要請がされていたとしても、そのことは右の結論に影響を与えないことは明らかである。
なお、本件販売数量比率は前記のとおり昭和55年10月ころ決定されたものであり、審査官の主張は右認定と若干日時を異にするが、その同一性には問題がなく、また被審人らの防禦権を侵害するものではなく、右のように認定することは何ら問題はない。
(昭和55年の市型鉄蓋に関する商社に対する販売価格の決定)
五(一) (被審人らの主張)
商社に対する販売価格は昭和55年10月13日の福岡鉄蓋会で決定したものであり、同年11月4日の福岡鉄蓋会で決定したものではない。
(二) (審判官の判断)
右は本件市型鉄蓋の販売価格の低落を防止するため福岡鉄蓋会等で一連の検討がされ、その一連の事実からどの時点で本件販売価格の決定がされたと認定するのが妥当かという問題であり、事実の同一性自体に問題があるわけではなく、前記認定のように数回にわたって福岡鉄蓋会で本件市型鉄蓋の販売価格の低落を防止するため被審人らの間で本件各決定にかかる事項につき検討・決定し、最終的に昭和55年11月4日の福岡鉄蓋会で従前検討してきた事項につき決定・確認した経緯等からみると、仮に本件販売価格の決定時期が被審人ら主張の日時であったとしても、本件審判の結論に影響がでることは考えられず、本件販売価格を決定したこと自体は被審人らもこれを認めている本件においては、右決定が何時されたかを厳密に考察することはさして意味があるものではないが、違反事実が何時されたのかを証拠に即してできるかぎり具体的に認定することは本件審決の基礎でもあるので検討する。
査87号証及び同106号証によれば、被審人らが主張するように昭和55年10月13日の福岡鉄蓋会で本件販売価格が決定されたかのようであるが、一方、11月4日の福岡鉄蓋会で、被審人日之出水道の篠原英俊が工事業者及び商社に対する販売価格を記載した価格表(査112号証と同一のもの)を出席者に配付し、商社のマージン率を約7パーセント、工事業者のマージン率を約15パーセントとして販売価格を算定している等の説明をし、各社の意見を求めたところ、商社のマージン率を10パーセントにしてはという意見あるいは7パーセントが適当ではないかという意見等が出されたこと(査97号証及び同102号証)、昭和55年10月13日当時販売先は商社であることに決まっていたが、未だ6社の商社の全部については具体的に決まっていなかったこと、本件販売価格の実施時期は11月4日の福岡鉄蓋会で決定されたものであること、本件市型鉄蓋の販売価格の低落を防ぐため一連の検討がされてきたが、その検討は被審人日之出水道の主導で議論が進められてきたところであり、商社に対する販売価格を幾らにするかは被審人各社にとって最大の関心事であり、前記の本件鉄蓋の販売価格の低落を防止するための一連の経緯からみて、最終段階で決定されたと考えるのが合理的であることを考慮すると、前掲関係各証拠により本件商社に対する販売価格は11月4日の福岡鉄蓋会で最終的に決定されたものとみるのが相当である。
(小口径汚水桝鉄蓋等に関する工事業者渡し価格の決定及びその要請)
六(一) (被審人らの主張)
工事業者渡し価格は福岡市の設計価格及び工事業者に対するマージン率が決まれば自動的に算定されるものであり、昭和63年3月18日の福岡鉄蓋会で工事業者渡し価格を決定したことはない。また右同日の被審人7社と5商社との合同会議で、商社に対する販売価格をこの水準にした理由を説明するために工事業者渡し価格を開示したに過ぎず、被審人らが5商社に対し小口径汚水桝鉄蓋等の工事業者渡し価格を決定し、その価格で販売することを要請したことはない。
(二) (審判官の判断)
被審人らは、本件小口径汚水桝鉄蓋等についても前記市型鉄蓋の場合と同様に販売ルートを商社から土木協力会を窓口にして工事業者に販売することにし、工事業者に対するマージン率を約15パーセントにすることを当然の前提としていたことが認められるが(査35号証及び同56号証)、昭和63年1月中旬以降まで福岡市の設計価格が決定していなかったこと(査121号証)からそれまでは具体的なマージン額を決めることができなかったこと及び昭和63年3月18日以外に右価格を決定したことを窺わせる証拠がない本件においては、前掲関係各証拠により小口径汚水桝鉄蓋等の販売の諸条件を最終的に確認、決定した昭和63年3月18日の福岡鉄蓋会で本件工事業者渡し価格を決定したと認定するのが相当である。
また、工事業者渡し価格をメーカーである被審人7社の段階で決めるのは、商社段階で工事業者に安売りするとメーカーの販売価格が前記認定の決定価格どおりに販売できなくなるおそれがあることから、商社段階での値崩れを防止するために行われたものであることが認められること(査26号証)、昭和56年ころ、一部地域で商社の工事業者に販売する価格が値崩れしているとの情報があり、福岡鉄蓋会でその原因・対策を検討した結果、商社が工事業者に鉄蓋を販売するときに、鉄蓋と他の資材を一緒に販売する場合があり、その場合には合計した価格で販売することになり、鉄蓋の価格が決定価格で販売されているかどうか不明になるため、商社に対し鉄蓋価格については明白に区分して工事業者に販売するように各メーカーで指導することとしたこと(査60号証及び同100号証)を考えると、前掲関係各証拠は信用することができ、右各証拠によれば、被審人らは前記決定した工事業者渡し価格を商社に遵守することを要請することとし、福岡鉄蓋会と5商社との合同会議で、被審人7社は本件5商社に対し、右価格を遵守することを要請し、商社もこれを了承したことが認められる。
(小口径汚水桝鉄蓋等に関する販売先の決定)
七(一) (被審人らの主張)
被審人らは、小口径汚水桝鉄蓋等の販売先である本件5商社は、倒産した有限会社旭栄興産を除くと、既に実施されていた市型鉄蓋の販売先商社であるところ、前記と同様な理由で右5商社が販売先とされたのであり、審査官が主張するように、値崩れ防止、販売価格の維持の目的ではない。また昭和62年5月25日の時点で被審人7社と本件5商社との合同会議を開催しているのであるから、本件5商社を小口径汚水桝鉄蓋等の販売先として、殊更に、昭和63年3月18日の福岡鉄蓋会で決定したものでないことは明らかである。
(二) (審判官の判断)
被審人らが小口径汚水桝鉄蓋等の販売先を5商社に限定したのは、すでに実施されていた前記市型鉄蓋の場合を踏襲したもであり(査26号証、同35号証及び同38号証)、前記説示のとおり、その目的は右鉄蓋等の販売価格の低落を防止するものであることは明らかである。
また、被審人日之出水道の篠原英俊が昭和63年3月18日の福岡鉄蓋会での議事内容を社内に報告するために作成した「営業報告書」(査144号証)には、「販売は鉄蓋と下桝セットにて商社会へ流通する事を原則とし各メーカーは当社より仕入れ、在庫運用を行う」との記載があり、査35号証によれば、右商社会とは本件5商社を指すことが認められること、被審人らは販売先を本件5商社にしたこと自体は争ってはいないこと及び後記昭和63年3月18日以外に販売先を5商社に決めたことを窺わせる的確な証拠がない本件においては(なお、査127号証によれば、昭和62年5月25日に被審人らは本件5商社との合同会議を開催しているが、前記市型鉄蓋の例から右5商社を販売先とすることを当然のことと考え、未だ正式に決定する前から交渉を持っていたとも考えられ、右事実のみから右日時あるいはそれ以前に決定があったと認めるには十分ではない。)、前掲関係各証拠により、被審人らは、本件小口径汚水桝鉄蓋等についても市型鉄蓋の場合と同様に販売先を本件5商社にすることを当然の前提と考え、本件小口径汚水桝鉄蓋等の販売の諸条件を最終的に決定した昭和63年3月18日の福岡鉄蓋会で本件5商社を販売先とする旨決定したと認めるのが相当である。
(実施状況について)
八(一) (被審人らの主張)
被審人らが協議、検討してきた事項は、市型鉄蓋の安定供給、品質の確保、地場産業の育成等、市型鉄蓋の仕様を改定するに当たり、福岡市の意向を実現するため最良の方策を求めたものであり、被審人らの事業活動を何ら拘束するものではない。右のことは、以下の事実からも明らかである。
イ(昭和55年の市型鉄蓋について)
被審人7社のうち、被審人神戸鋳鉄所及び同日豊金属興業は昭和55年度以降、同永鋼産業は昭和59年度以降、同トミスは昭和58年度以降、その販売先は本件6商社ではなく、そして前記4社及び被審人北勢工業は本件販売価格と異なった価格で販売している。また、販売数量比率についても本件決定と異なった比率で配分している。
ロ(小口径汚水桝鉄蓋等について)
被審人永鋼産業、同神戸鋳鉄所、同日豊金属興業は、販売当初から、その販売先が本件5商社ではなく、本件販売価格と異なった価格で販売している。また、販売数量比率も本件決定と異なった比率で販売している。
(二) (審判官の判断)
被審人らは、福岡市の意向を実現するために本件各決定をしたもので、相互に事業活動を拘束するものではない趣旨の主張をするが、福岡市の意向を実現するためであれば、何故事業活動を拘束することにならないのか、右主張は意味が不明であるばかりでなく、前記認定の本件各決定の目的、性格及びその成立の経緯からみると、本件各決定が成立することにより必然的に競争制限の効果が現れるものと認める事ができ、実施状況を検討するまでもなく、相互に事業活動が拘束されていると認めるのが相当であり、被審人らの主張はそれ自体失当であるが、念のためその実施状況につき検討する。
イ(昭和55年の市型鉄蓋について)
昭和55年の仕様の改定の当初から被審人神戸鋳鉄所は同日之出水道に、同日豊金属興業はワコースチール株式会社に本件市型鉄蓋を販売していた事実が認められるが(査22号証及び同26号証)、被審人日之出水道及びワコースチール株式会社は、買い受けた市型鉄蓋を本件6商社に販売していること、被審人日之出水道は、本件販売価格を決定した当事者であるが、この場合は代理店として手数料を得ていること、ワコースチール株式会社は被審人日豊金属興業の代理店であり、同被審人はワコースチール株式会社に対し販売先・価格を指示できる立場にあったことが認められる(査26号証及び同56号証)。そして、販売先を本件6商社に定めた本件決定は、被審人らメーカーから商社、商社から工事業者という販売ルートを定めたものであり、被審人らメーカーが代理店を介在させ代理店を通じて本件6商社に販売しても、右決定に反するものと解することは相当ではなく、また、前記2社が代理店である被審人日之出水道あるいはワコースチール株式会社に対し市型鉄蓋を決定した価格で販売していなかったのは(査10号証及び同14号証)、商社に販売するのではないのであるから当然である(このことは、被審人トミス、同永鋼産業の場合も同様である。)。なお、被審人北勢工業は、当初から決定した価格と異なる価格で販売している旨公正取引委員会に報告しており(査4号証)、本件全証拠によるもその理由は不明であるが、右事実をもって本件販売価格に関する決定が拘束力のないものと言えないことは前記説示から明らかである。
前記のとおり本件販売数量比率の決定の実効を確保するため被審人日之出水道が、唯一の受注窓口となり、商社から注文を受け本件販売数量比率に基づき被審人各社に出荷指示を行う旨の決定がされており、昭和55年11月1日以降、被審人日之出水道は商社から注文を受け、被審人各社の販売数量比率、在庫の状況を考慮して各社に出荷指示をし、決定された本件販売数量比率に対し過不足がある場合には最終的に各年度末に調整していたこと、また、被審人各社が決定した比率どおりの配分による出荷指示がされているかを確認するため、被審人日之出水道が年度毎に実績報告書を福岡鉄蓋会の出席者に配布していたこと、そして、右報告に対して特段の異議は述べられていないこと(査68号証、同79号証、同164号証、同165号証、同171号証及び同175号証)からみると、本件販売数量比率の決定は実施されていたものというべきである。なお、査2号証、同4号証、同6号証、同8号証、同10号証、同12号証及び同14号証によれば、被審人らが主張するように、決定された販売数量比率どおりに販売されていなかった事実が窺われ、その原因は不明ではあるが、前記のように被審人7社は少なくとも表面上は本件販売数量比率の決定を遵守していたものであり、本件決定の拘束力の有無という観点からみると同決定が実施されていたとみるのが相当である。
ロ(小口径汚水桝鉄蓋等)
販売当初から被審人永鋼産業、同神戸鋳鉄所は、小口径汚水桝鉄蓋等を被審人日之出水道に販売し、被審人日豊金属興業は小口径汚水桝鉄蓋等をワコースチール株式会社に販売していること、その価格は本件販売価格どおりでないことが認められるが(査10号証、同12号証及び同14号証)、その理由は、前記説示したとおりであり、何ら異とするに足りない。
また、販売数量比率についても、前記市型鉄蓋の場合と同様に右数量比率の決定の実効を確保するため受注窓口が被審人日之出水道に一本化したこと、被審人日之出水道は右決定を実行するため、販売数量比率、在庫等を考慮して各社に出荷指示をしていたこと、被審人日之出水道は年度毎に実績報告書を福岡鉄蓋会の出席者に配布していたこと、右報告に対して他社から特段の異議が述べられていないことが認められる(査26号証及び同67号証)。被審人らは、昭和63年度は被審人日之出水道の納入実績が大きく、また被審人6社間にバラつきがあるので翌年度で調整するとしたにもかかわらず、平成元年度も前年度の実績を考慮して調整が全く行われていない、このことは本件販売数量比率が実施されていないことを示すものである旨主張する。昭和63年度及び平成元年度とも、必ずしも右決定した数量比率どおり配分されていないことが認められるが(査2号証、同4号証、同6号証、同8号証、同10号証、同12号証及び同14号証)、右両年度の現実の販売数量比率及び前記認定事実に照らすと、その原因は販売数量比率を遵守しなかったことにあるのではなく、各社の供給体制が整っていない結果である可能性が高く、右事実をもって本件決定が実施されていないとみることはできない。
(公共の利益について)
九(一) (被審人らの主張)
仮に本件各決定が形式的に独占禁止法に違反するとしても、本件は最判昭和59年2月24日(刑集38巻4号1287ページ)に判示する同法第2条6項の「公共の利益に反して」いない場合に当たるものである。すなわち、市型鉄蓋の製造販売の市場は、一般商品の取引市場において機能する自由な競争によって良質廉価な商品が市場に供給され消費者の利益が確保されるという市場原理がそのまま妥当しない特異な市場である。商品としての市型鉄蓋は、福岡市によって仕様が定められているため品質面でのメーカー間の競争は事実上存在する余地がなく、価格面においても、受注生産による汎用性の無い地域公共用製品で、その最終需要者価格が最終需要者である公共団体の予算(設計単価)によって事実上固定され、流通過程における中間業者である工事業者、コンクリート業者及び商社は、被審人らメーカーより優越的な地位にあるため、右各業者の中間利潤が優先して決定され、その結果、メーカー価格はほとんど自動的に決定されることになり、実質的にはメーカー間の競争はなく、土木協力会が取引価格について形成権を有しており、仮に被審人7社間で競争して中間業者である商社に対する販売価格が低落することがあっても、最終需要者である福岡市に直ちに反映することは期待できない。したがって、本件違反行為を排除しても、独占禁止法の前記目的の達成に資するものとは言い難く、自由競争を維持するという面からみて極めて軽微なものと評価せざるを得ない。また、市型鉄蓋は公共事業に使用されるものであり、多品種少量で汎用性がなく、その市場も極めて限られているという特性があり、右のような製品特性を持つ市型鉄蓋の迅速かつ安定的な供給体制の確立、福岡市の定める仕様を充足する品質の確保及びこれらの実現による公共の危険防止、さらには地場産業育成という福岡市の行政目的を達成するためには、本件のように被審人7社が相互に情報を交換し協力して販売することによってはじめて効果的に達成し得るものである。本件各決定によって達成される利益と本件各決定を排除することによって得られる独占禁止法上の利益を比較衡量すれば、明らかに前者が重きをなすものであり、被審人らの各行為は公共の利益に反せず独占禁止法に違反しないものである。
(二) (審判官の判断)
被審人らは、本件各決定は「公共の利益に反しない」旨縷々主張するが、いずれも主張自体失当であり到底採用できない。以下、その理由を簡単に述べる。
本件市型鉄蓋の仕様は福岡市により定められていることは前記のとおりであるが、仕様が定められていてもその範囲でより良質の市型鉄蓋を製作する等品質面での競争はなお可能であり(このことは被審人日之出水道が他の被審人に対し技術指導を行っている場合も同様である。)、被審人らが直接販売の相手方である商社に対する販売価格等を共同で決定することは、いかなる意味でも独占禁止法に違反するものであり、その決定が具体的に最終需要者にどのように影響するかは問うまでもないところであるが、自由・公正な価格競争をすることにより、本件市型鉄蓋の市場が活性化し最終需要者である福岡市の買い入れ価格(設計単価)が下がることにもなるのである。また被審人らが主張する各目的を効果的に達成するためには、本件販売価格に関する決定等をすることが必要であるかのように主張するが、仮に本件各決定をすることにより前記目的を達成することができたとしても、本件市型鉄蓋の販売価格を決定する等の本件各決定は自由競争経済秩序を侵害すること甚だしく到底容認することのできない行為であり、被審人らの主張は失当である。
第四 法令の適用
以上によれば、被審人7社は、共同して福岡地区の市型鉄蓋の販売価格、販売数量比率及び販売先を決定することにより公共の利益に反して、福岡地区の市型鉄蓋の販売分野における競争を実質的に制限しているものであって、これは独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し、同法第3条の規定に違反するものである。
平成5年7月15日
公正取引委員会事務局
審判官 滿田 忠彦
同 大録 英一
同 鈴木 恭蔵


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