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㈱天川組による審決取消請求事件

独禁法3条後段・独禁法7条の2

東京高等裁判所

平成29年(行ケ)第14号

判決

平成30年4月27日

山梨県甲州市塩山千野559番地
原告 株式会社天川組
同代表者代表取締役 《氏名》
同訴訟代理人弁護士 鳥飼重和
同 本田聡
同 高橋美和
東京都千代田区霞が関1丁目1番1号
被告 公正取引委員会
同代表者委員長 杉本和行
同指定代理人 横手哲二
同 榎本勤也
同 堤優子
同 津田和孝
同 黒江那津子
同 石谷直久

主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
理由
第1 請求
被告が,原告に対する公正取引委員会平成23年(判)第18号及び平成23年(判)第41号私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成25年法律第100号)附則第2条の規定によりなお従前の例によることとされる同法による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)(以下「独占禁止法」という。)違反審判事件について,平成29年6月15日付けでした審決を取り消す。
第2 事案の概要
1 事案の要旨
被告は,山梨県が,山梨県山梨市又は甲州市(以下,両市の区域を併せて「塩山地区」という。)に本店を置いている原告ら建設業者23社(以下「23社」という。)が,遅くとも平成18年4月1日以降平成22年3月23日まで(以下「本件対象期間」という。)の間,23社以外の7社(合わせて「30社」という。)と共同して,別紙1記載の工事(以下「塩山地区特定土木一式工事」という。)について,受注すべき者又は特定建設工事共同企業体(以下「受注予定者」という。また,後者を「JV」という。)を決定し,受注予定者が受注できるように受注を調整する合意(以下「本件合意」という。)をし,よって,公共の利益に反して,塩山地区特定土木一式工事の取引分野における競争を実質的に制限したことが,独占禁止法2条6項に規定する不当な取引制眼に該当し,同法3条に違反するもので,かつ排除措置を命ずる必要があるとして,23社のうち22社(以下「22社」という。)に対し,排除措置を命じ(平成23年(措)第1号。以下「本件排除措置命令」といい,同命令において認定された違反行為を「本件違反行為」という。),さらに,本件違反行為は,同法7条の2第1項1号に規定する役務の対価に係るものであるとして,23社に対し,課徴金の納付を命じた(以下「本件各課徴金納付命令」といい,本件排除措置命令と併せて「本件各命令」という。)ところ(原告に対する課徴金は1886万円(平成23年(納)第32号)),22社は,同法49条6項に基づき本件排除措置命令の全部の取消しの審判請求(原告の審判請求は平成23年(判)第18号),23社は同法50条4項に基づき本件各課徴金納付命令の取消しを求める審判請求をし(原告の審判請求は平成23(判)第41号),被告は,各審判手続を併合した上,平成29年6月15日付けで,原告を含む被審人らの各審判請求をいずれも棄却する審決(以下「本件審決」という。)をした。
そこで,原告は,本件審決が認定した事実を認める実質的証拠はないなどと主張し,本件審決は違法であるとして,本件審決のうち原告の審判請求に係る審決の取消しを求めた。
なお,本件審決は,公正取引委員会事務総局審判官提出の平成29年6月15日付け審決案の理由第1から第7までを,一部を訂正の上,引用している。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実,本件審判事件の記録上明らかな事実及び被告が本件審決で証拠により認定した事実で原告も実質的な証拠の欠缺を主張していない事実)
⑴ 塩山地区特定土木一式工事の概要
ア 発注業務の担当部署
本件対象期間に発注された塩山地区特定土木一式工事については,山梨県県土整備部(平成20年3月31日以前は「土木部」)道路整備課,同部道路管理課,同部峡東建設事務所,同部広瀬・琴川ダム管理事務所(平成20年3月31日以前は広瀬・琴川ダム事務所),同県農政部峡東農務事務所(以下「峡東農務事務所」という。),同県森林環境部峡東林務環境事務所(以下「峡東林務環境事務所」という。)等が発注業務を担当していた(査17ないし査19)。
イ 入札参加資格者の等級区分及び名簿登載
(ア) 山梨県は,本件対象期間において,同県が発注する土木一式工事の指名競争入札又は一般競争入札への参加を希望する事業者に対し,これらの入札に参加するために必要な資格の審査を行った上で,当該入札への参加資格を有すると認定した事業者を工事施工能力の審査結果に基づきA,B,C又はDのいずれかの等級に格付して(以下,A等級に格付されている事業者を「A等級業者」,B等級に格付されている事業者を「B等級業者」という。),入札参加有資格者名簿(以下「有資格者名簿」という。)に審査結果を付して登載していた(査21,査22)。
(イ) また,山梨県は,土木一式工事を予定価格に応じて区分し,個々の工事の発注に際しては,有資格者名簿に登載されている者のうち当該区分に対応した等級に格付されている事業者が入札参加資格を有する者とされていた。
土木一式工事のうち予定価格がおおむね3億円以上の工事については,JVの施工対象工事とされ,A等級業者で構成されるJV(A等級業者で構成することが難しい場合であって特に必要があると認められるときは,A等級業者及びB等級業者で構成されるJV)が入札参加資格を有する者とされていた(査21,査23,査24)。
30社は,本件対象期間(ただし,8社(原告は該当しない。)については,その一部期間を除く。)において,A等級業者又はB等級業者に格付され,原告はB等級業者に格付けされていた(査1)。
ウ 工事の発注方法
(ア) 山梨県は,本件対象期間における塩山地区特定土木一式工事について,指名競争入札の方法によらない場合は一般競争入札の方法により発注し,その大部分において,塩山地区又は山梨県笛吹市(平成18年7月31日までの間は笛吹市又は東八代郡芦川村)の区域(以下,これらを併せて「峡東地域」という。)に本店を置くA等級業者又はB等級業者であることを入札参加の条件として,公告により入札参加希望者を募り,入札への参加を申請した事業者(JVを含む。)を当該入札の参加者としていた(査18,査23ないし査25)。
(イ) 総合評価落札方式による一般競争入札
a 山梨県は,平成19年頃から,一般競争入札の方法により発注する工事の一部について,総合評価落札方式を導入した(査18)。
b 総合評価落札方式には,「簡易型」(平成19年度導入),「特別簡易型」(平成20年度導入),「特別簡易型(I)」及び「特別簡易型(Ⅱ)」(いずれも平成21年度導入。なお,「特別簡易型(I)」は,平成20年度における「特別簡易型」に相当する。)等の種類がある(査30ないし査33)。
c 総合評価落札方式では,以下のとおり,入札価格が予定価格の範囲内にある入札者について,あらかじめ定められた評価項目ごとの評価点を合計した後,各入札者の評価点の合計点数の比に応じて加算点(加算点の満点は,工事ごとに定める。)を算出し,それに標準点(100点)を加えた数値を入札価格で除し,これに1億を乗じて得た評価値が最も高い者を落札者としていた。
総合評価落札方式における入札参加者は,前記(ア)と同じである(査18,査30ないし査33)。
d 評価項目
評価項目は,「簡易型」では①企業の施工実績,②地域精通度,③地域貢献度,④配置予定技術者の能力及び⑤施工計画,「特別簡易型(Ⅱ)」では上記①ないし④,「特別簡易型」及び「特別簡易型(Ⅰ)」では上記①ないし③であり,いずれも,評価項目ごとに最高評価点が設定されていた(査30ないし査33)。
e 評価点の算出方法
評価点は,入札参加申請の際に申請者から併せて提出される施工計画書等の資料に基づき,発注業務を担当する部署において,以下のとおり,評価項目ごとに算出することとされていた。
前記d①の「企業の施工実績」については,都道府県又は国・公団等の同種工事の施工実績の有無,山梨県発注の土木一式工事での工事成績評定点の平均点等,同②の「地域精通度」については,近隣地域での施工実績の有無等,同③の「地域貢献度」については,災害協定の締結の有無,土木施設等緊急維持修繕業務委託の実績等,同④の「配置予定技術者の能力」については,1級土木施工管理技士等又は技術士であるかどうか,同種工事の施工実績等といった客観的なデータを基に,入札参加者が山梨県所定の様式で作成・記載した根拠資料を提出することにより点数化されることとされていた。なお,配置予定技術者は,一定の資格を有することのほかに,対象工事に専任で配置することが必要とされていた。
前記d⑤の「施工計画」については,入札参加者が客観的なデータを提出するものではなく,「工程管理に係わる技術的所見」,「品質管理に係わる技術的所見」等の5項目の中から選択された1ないし2項目について,入札参加者が提出する施工計画書の内容により,「10点」(内容が適切であり,重要な項目が記載され,工夫が見られる),「5点」(内容が適切であり,工夫が見られる),「0点」(内容が適切である),又は「欠格」(未記入,又は不適切である)と評価されていた(査30ないし査33)。
f 評価項目等の公表
山梨県は,総合評価落札方式における評価項目,評価の方法,最高評価点及び評価値の算出方法について,「山梨県建設工事総合評価実施要領」(以下「総合評価実施要領」という。)に記載し,公表していた(査30ないし査32)。
g 入札の実施方法
山梨県は,当該工事の入札方式,総合評価落札方式の種類など総合評価に関する事項,入札参加資格等を示した入札公告により入札参加希望者を募り,入札への参加を申請した事業者に対し,入札開始日時,入札書提出締切日時,開札予定日時等を記載した「競争参加資格確認通知書」を送付し,入札参加者は,当該入札の入札書提出締切日時までに,電子入札システムにより,所定の様式に自社の入礼金額を入力するとともに当該工事の本工事費内訳書を添付して送信することとされていた(査27,査33,査34)。
(ウ) 最低制限価格及び低入札価格調査の基準価格
山梨県は,塩山地区特定土木一式工事のうち,指名競争入札の方法により発注するもの及び総合評価落札方式以外の一般競争入札の方法により発注するものについて,最低制限価格を設定し,同価格を下回る価格の入札は失格としていた(査18)。
また,総合評価落札方式による一般競争入札の方法により発注するものについて,低入札価格調査の対象とする基準価格(以下「低入札調査基準価格」という。)を設定し,入札の結果,評価値が最も高かった者の入札価格が低入札調査基準価格を下回った場合には,落札者の決定を保留した上で,当該入札額で契約の内容に適合した履行がされるか否かについて調査を行い,その結果,適合した履行がされると認めた場合は,当該入札者を落札者とし,適合した履行がされないおそれがあると認めた場合は,他の入札者のうち最も評価値の高い者を落札者としていた(査18,査35)。
(エ) 入札情報の公表
a 予定価格,最低制限価格及び低入札調査基準価格
山梨県は,塩山地区特定土木一式工事について,ごく一部の工事を除き,入札公告時又は指名通知時に予定価格を公表していたが,最低制限価格及び低入札調査基準価格は入札書提出締切日前には公表していなかった(査36)。
b 入札参加者
山梨県は,塩山地区特定土木一式工事について,入札書提出締切日前には入札参加者を公表せず,落札者決定後速やかに公表していた(査36)。
c 入札結果
山梨県は,塩山地区特定土木一式工事の入札結果について,落札者決定後速やかに公表していた。
また,総合評価落札方式による入札参加者の評価項目ごとの評価点を,評価調書の様式により公表していた(査30ないし査32,査36,査170)。
エ 本件対象期間における塩山地区特定土木一式工事の発注及び受注状況
本件対象期間に発注された塩山地区特定土木一式工事は,別紙2のとおり316件であり(以下「316物件」といい,個別の工事については,同別紙の「一連番号」欄記載の番号に従って「物件1」又は単に「1」等と表記することがある。),このうち,原告が受注したものは,別紙3記載の10件である。
⑵ 塩山地区における建設業協会等の概要
ア 社団法人山梨県建設業協会塩山支部
社団法人山梨県建設業協会塩山支部(以下「塩山支部」という。)は,社団法人山梨県建設業協会の支部であり,山梨県甲州市塩山熊野137番地に所在する同支部の会館(以下「塩山支部会館」という。)内に事務所を置いていた(査4ないし査6,査103,査104)。
塩山支部は,山梨県の設置する峡東地域振興局塩山建設部管内に本店(社)又は営業所等を有する建設業者を会員とし,建設業に関する資料,情報及び統計の収集並びに頒布,官庁その他関係団体及び機関との連絡,交渉及び提携等の事業を行うものとされていた。30社は塩山支部の会員であった(査4ないし査7,査81)。
塩山支部では,支部長,副支部長,理事等の役員を置くものとされていた(支部長と副支部長を「執行部」という。以下のイ及びウにつき同じ)。平成19年度ないし平成21年度の塩山支部長は被審人廣川工業所の《B》社長であった(査4ないし査6)。
被告は,塩山支部が遅くとも昭和62年4月までに,山梨県が指名競争入札の方法により発注する土木部所管で塩山土木事務所の管轄区域を施工場所とする土木一式工事(共同施工方式により施行される工事を除く。)について,支部員の受注価格の低落を防止するため,支部員に,あらかじめ受注予定者を決定させ,受注予定者が受注できるようにさせていた行為が,当時の独占禁止法第8条第1項第1号の規定に違反するものであるとして,平成6年5月16日,同支部に対し,勧告審決をした(平成6年(勧)第14号)(査37,査38)。
イ 社団法人山梨県土地改良協会峡東支部
社団法人山梨県土地改良協会峡東支部(以下「土地協会峡東支部」という。)は,社団法人山梨県土地改良協会の支部であり(査8,査9,査104),同支部は,峡東農務事務所管内に本店(社)を置く建設業者を会員とし,土地改良事業に関する資料,情報及び統計の収集並びに頒布,関係団体との連絡,交渉及び提携等の事業を行うものとされていた(査7ないし査11,査81)。
ウ 塩山地区治山林道協会
塩山地区治山林道協会(以下「塩山治山協会」といい,塩山支部及び土地協会峡東支部と併せて「塩山支部等」という。)は,社団法人山梨県治山林道協会の地区協会であり,塩山支部会館内に事務所を置いていた(査12ないし査15,査103,査104)。
塩山治山協会は,峡東林務環境事務所管内に本店を置く建設業者を会員とし,治山事業並びに林道事業に関する資料,情報及び統計の収集頒布,官庁その他関係団体並びに機関との連絡交渉及び提携等の事業を行うものとされていた(査12ないし査16)。
3 本件審決の要旨
原告を含む30社は,本件対象期間において,共同して,塩山地区特定土木一式工事について,話合い等によって受注予定者をあらかじめ決定し,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力するという内容の本件合意をして,30社の間に,上記の取決めに基づいた行動をとることを互いに認識し認容して歩調を合わせるという意思の連絡を形成し,本件合意の下,合意の内容に沿った受注調整を行ったこと,又は本件合意の内容に沿った受注調整に関わる行為を行ったことにより,入札参加者の事業活動が事実上拘束される結果を生じさせて,独占禁止法2条6項にいう「その事業活動を拘束し」,また,当該取引に係る市場が有する競争機能を損ない,同項にいう「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」状態をもたらしたものであり,「公共の利益に反して」の要件を充足するものであることも明らかであり,本件合意は,同項にいう不当な取引制限に該当し,同法3条に違反するもので,かつ排除措置を命ずる必要がある上,本件違反行為は,同法7条の2第1項1号に規定する役務の対価に係るもので,原告に対する課徴金の金額は,同法7条の2第1項,第5項及び第23項の規定により算出された前記金額となるから,原告に対する本件各命令は相当である。
第3 争点及び当事者の主張
1 争点に関する被告の主張
⑴ 原告が本件合意をしたことは,以下の事実から認められる。
ア 原告代表者は,山梨県が峡東地域で発注する土木一式工事について,A等級事業者及びB等級事業者である入札参加者の間で「いわゆる談合を行っていた」と供述している(査61の1,2頁)。そして,山梨県が峡東地域で発注する土木工事一式について,受注を希望する物件についてはその旨を塩山支部等に表明していたことや,原告が受注を希望した物件については,同社が全て受注していることを具体的に供述している(査62の2,3頁)。
イ 原告の従業員は,上司の指示の下,入札参加する工事の入札公告に同社の社名等をゴム印で押して,塩山支部に届け,このことを原告の《S2》専務も承知していたと供述しているところ(査63の2ないし4頁),現に塩山支部から,原告の社名,住所等がゴム印で押捺された入札公告が留置されている(査106の1の15頁等)。
ウ 原告代表者は,本件合意に基づく本件受注調整が行われていることが被告等の外部に漏れることを防ぐため,今後は調整会議等の受注調整のための話合いの出席者を各社の社長又はその兄弟若しくは息子に限定する旨提案された役員会(平成19年5月11日に「《旅館名略》」で開催された。)に出席した。
エ 原告が,本件対象期間に受注した工事のうち,物件172,247,248,253,276,315については,本件合意の内容に沿った受注調整が行われたこと,又は本件合意の内容に沿った受注調整に関わる行為が行われたことを裏付ける客観的証拠が存在する(物件172につき,査107の16及び17,物件247,248,253につき査177,物件276につき査107の40,物件315につき査106の1)。
⑵ 課徴金納付命令の算定根拠に含めることのできる塩山地区特定土木一式工事の範囲
本件合意がされ,その結果,316物件から入札参加者が1社又は1JVのみであった4物件を除いた312物件の平均落札率は96.3パーセントであることなどからすると,塩山地区特定土木一式工事に該当し,かつ,30社のいずれかが入札に参加して受注した工事については,当該工事について本件合意に基づく受注調整が行われたとは認められない特段の事情のない限り,本件合意に基づく受注調整が行われ,具体的競争制限効果が発生したと推認でき,本件対象期間に原告が受注した別紙3記載の10件は,課徴金納付命令の算定根拠に含めることができる。
この中には,総合評価落札方式の工事が含まれているが,同方式における評価項目のうち,「企業の施工実績」,「地域精通度」及び「地域貢献度」は,いずれも客観的なデータに基づいて算定されるものであり,入札参加者が山梨県所定の様式で作成・記載して提出した資料に基づいて点数化されることが,総合評価実施要領で公表されていたから,原告を含む30社は,過去の入札結果等により,各入札参加者の評価点を予想することが可能であった。
評価項目のうち「配置予定技術者の能力」も,実施要領によって客観的なデータが点数化されるものであるため,少なくとも,入札参加者において自社の評価点を予想することは可能であった。
評価項目のうち「施工計画」については,客観的なデータが点数化されるものではなく,評価が発注者の裁量に委ねられるものであるため,正確に評価点を予想することはできなかったとはいえ,配点は3段階(0点,5点又は10点)であって,少なくとも,入札参加者において,自社の作成した施工計画書の内容から自社の評価点の高低をある程度予想することは可能であった。
以上のような状況の下で,原告を含む30社は,互いの評価点を予想し,又は連絡し合い,受注予定者以外の者は,入札を辞退し,又は高い入札価格で入札するほか,評価点の低い配置予定技術者を配置する,簡易な内容の施工計画書を提出する,受注予定者との間で施工計画書をやり取りして内容を確認するなどして,総合評価落札方式の工事の入札においても,あらかじめ受注予定者を決定し,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力し合っていた。
2 争点に関する原告の主張
⑴ 原告は,本件合意をしていない。
ア 被告は,原告代表者の供述を証拠として列挙するが,原告代表者は,いわゆる談合を行っていたという供述はしているものの,「いわゆる談合」とはどういう意味を持つのかについて何ら具体的な事実は供述しておらず,いわんや受注調整をした旨の供述などしていない。
イ 原告は,塩山支部における入札参加情報の集約に関与しておらず,受注調整のために入札参加情報を支部に伝えたことはない。
原告は,生コン販売業を営んでおり,顧客である建設会社との付き合い上,入札参加について聞かれたから答えたにすぎない。
なお,本件審決では,原告代表者が支部に対して入札情報を連絡したのは「1社入札を避けるため」であると主張したことを前提に,その主張が不合理であるとの判断をしているが,原告は,1社入札を避けるために連絡をしたことはないし,原告代表者は,1社入札を避けることができることを期待して連絡をしたことは明確に否定しているから(被審人天川組の代表者審尋),本件審決の上記判断は前提を誤っている。
ウ 原告代表者が平成19年5月11日の「《旅館名略》」における役員会へ出席したとの点については証拠がない。
同日の役員会の場所とされた《ホテル名略》(査113)は,《旅館名略》とは全く別の場所の別の施設である。そして,原告代表者は,《旅館名略》の中に入った記憶はないと供述しているのであり,当然,平成19年5月11日の役員会に出席し,そこで話されたとされる内容は知らない。
エ 被告は,本件審決において,違反行為の根拠とすることが適当でない天川工業社長の手帳(査177)を証拠としているが,同社長の手帳の内容は,あくまで,同社長によって記載されたものであるから,その内容がどのような内容で,何を意図して記載されたかは,同社長の供述により理解されるべきものである。
オ 本件違反行為が存在しないことに争いのない平成22年3月24日以降に原告が落札した塩山地区特定土木一式工事の落札率は97.0パーセントないし99.8パーセントで極めて高いから,本件対象期間中に本件受注調整が行われなかったことを裏付けている(この点に関する本件審決の理由は,一方で,本件違反行為終了後は,自由かつ公正な競争が行われている事実を認めるに足る証拠はないとしながら(58頁),他方で,本件違反行為は既に消滅しているとし(88頁),矛盾している。)。
⑵ 課徴金納付命令の違法
原告が個別の工事につき受注調整を行っていることを認定するに足る十分な証拠がない各工事について課徴金納付命令の算定根拠に含めることは独占禁止法に違反する。
特に,総合評価落札方式は,事前に評価点を知ることはできないため,入札事業者の総合評価は事前に判明せず,仮に落札者を事前に決めようとする場合には予測を付けるしかないし,評価点の種類によっては予測しにくい者もあり,特に,落札者と次点の入札価格の差が著しく小さい工事もあるが,いくらでも逆転が起き得る。本件審決は,これらの点について一切顧慮しておらず,受注調整があったという合理的な説明がない。
ある程度しか予想できないということは,相当に不確実な予想になることは,各代表者の陳述で明らかである。このような場合には,受注調整の合意があったとしても,当該合意は相当に拘束力の弱いものにならざるを得ないのであって,競争制限効果を一律に認めるのは相当ではない。
第4 当裁判所の判断
1 争点1(原告は本件合意をしたか)について
⑴ 原告が本件合意に参加していたという本件審決の認定した事実については,これを立証する以下に掲げる各証拠やその証拠に基づき認定できる間接事実があるものと認められる。
ア 平成6年5月に社団法人山梨県建設協会の塩山支部や石和支部を含む各支部は,山梨県が発注する土木一式工事について受注調整を行っていたとして,公正取引委員会から独占禁止法に基づく勧告(平成6年(勧)第14号)を受けた(査37,38)。
イ しかし,その後も,平成17年頃まで山梨県が発注する際に行われていた指名競争入札において,指名を受けた業者は,峡東建設事務所発注物件については,塩山支部に集まり,支部長ら執行部に対し,受注希望を表明して話し合い,まとまらない場合は同執行部が事実上受注予定者を決めるようになっていたが,徐々に一般競争入札へ移行していった平成18年以降も,相変わらず受注予定者を決めるための話合いが行われていた。同様に,峡東農務事務所発注物件については,土地協会峡東支部において,峡東林務環境事務所発注物件については,塩山治山協会において,各執行部を交えて,それぞれ話合いがされ,受注予定者を決めていた(以上は,査99)。
ウ 平成19年5月11日午後6時30分から《略》 県《略》郡《略》町所在の《旅館名略》で開催された塩山支部の月例役員会では,同年4月に塩山支部長に就任した《B》支部長から「公正取引委員会のこともあり,内部の話が外部に漏れては困るので,受注調整の話合いの出席者は,今後,各社の社長,その兄弟又は息子に限る。」旨の発言があり,《B》支部長の当該発言については出席者の中には手帳等に記録した者がいたほか(査43,92,99,111,112,113),当日,同役員会に出席していた株式会社坂本組の《U1》社長は,《B》支部長が上記の趣旨の発言をしたこと,原告代表者も出席していたことを供述している(査99。なお,同供述では,出席者15名のうち13名を挙げて,出席者のすべてを覚えているわけではないとしているが,3年以上前のことであるから,それによって信用性がないなどということはできない。)。
また,出席者中には,宮原土建株式会社の《AH》社長のように,上記《B》支部長の発言がされた理由について,受注調整が明るみになるのは,情報の漏えいが大きな原因の一つであり,受注調整の連絡や話合いをする担当者を限定しておくことで情報が外に漏れるのを少しでも防ぐ必要があったからであると供述している者がいる(査92)。
エ なお,原告代表者は,被審人代表者審尋時までに《旅館名略》の中に入った記憶もないと供述し(05845丁),《B》支部長が作成したメモには,「役員会 5月11日PM.6.30 《ホテルの名称の記載》」と記載されている(査113)。
しかし,天川工業株式会社の《M1》社長が作成した手帳には「5/11 塩山支部役員会 PM6:00 《旅館の名称の記載》」と記載されているところ(査43),《B》支部長は,「《ホテル名略》」には畳の部屋がないため,会場が変更になった旨供述し(被審人廣川工業所代表者審尋(05812丁)),また,査110(役員会・月例総会資料)には,他の記載が固定文字で印字されているのに対し,平成19年5月11日(金)PM6:00~の役員会の「場所」欄のみは,修正の上,手書で「《旅館の名称の記載》」と記載されており,さらに,会場となった《旅館名略》には,同年4月26日に,同年5月11日の予約として「十二日会」「広川工業が幹事」「人数」が「15」であるとの連絡が入り(査111),同年5月11日に《旅館名略》で15人分の料理が提供されたことが認められる(査112)。これらの証拠は,上記ウの《U1》社長や《AH》社長の供述を裏付けている。
オ 原告の従業員の供述調書
平成8年頃から原告に採用され,諸々の事務補助に従事していた《S3》は,入札申込みに先だって,原告の《S4》常務や《S2》専務らの指示で,入札する物件については,入札公告に原告の社名及び代表者《S1》の氏名,電話番号の入ったゴム印を押捺し,支部に届けていたと供述している(査63)。
そして,塩山支部から,《S3》の供述どおり,「工事名」「林道塚本山線(2工区)開設工事」の「一般競争入札(事後審査型)」公告用紙に上記内容のゴム印の押捺された入札公告書が領置されている(査106の1の15頁)。
上記工事は,平成22年3月23日に開札され,原告(入札価格4400万円),内田組(同4430万円,入札率97.4%),天川工業(同4435万円,入札率97.5%),甲斐建設(同4450万円,入札率97.8%),昭和建設(同4520万円,入札率99.3%)が入札し,原告が落札率96.7%で落札した(別紙2の物件315)。
カ 原告代表者の供述調書
原告代表者は,平成22年3月25日付け及び同年10月19日付け審査官に対する各供述調書において,山梨県が峡東地域で発注する土木一式工事の競争入札については「いわゆる談合」を行い,極めて高い落札率で受注できたことからも「談合が成立していたことは明らかです」(査61)と,峡東建設事務所発注工事では,塩山支部長に対し,「受注を希望する際は,「この物件行くよ」とか「希望するよ」等と言い,受注を希望しない際は,「参加したよ」等と言って連絡しておりました。」,林務環境事務所発注工事では,基本的に,いわゆる継続物件となる同じ路線の林道工事等しか受注を希望していなかったので,「参加するよ」とだけ言っても,治山林道協会の会長は理解していると思っていたし,現に「参加するよ」と述べた物件は全て,原告が落札していた,峡東農務事務所発注工事では,土地協会峡東支部の副支部長に対し,「発注を希望する際は,「もらうよ」等と言い,受注を希望しない場合は,「参加したよ」等と言って連絡していました」と供述している(査62)。
キ 原告代表者審尋における供述
原告代表者は,被審人代表者審尋で,どうしても受注したい場合とそうではない場合とで区別した発言をしていたことを明らかにしている(05877丁)。
他方,前記《旅館名略》の中に入った記憶もないとの供述(05845丁)については,1回行ったというのはこの日(平成19年5月11日)かという質問に対し,「違うと思う,分かりません。よく覚えてません」と答えており(同丁),あいまいで直ちに信用できない。また,自社の事務員である《S3》の行動を知らなかったという供述(05843丁,05857丁)も,それ自体不自然であって,信用することができない。
⑵ 上記⑴の各証拠及び間接事実から原告が本件合意に参加していたという本件審決の認定事実は,実質的な証拠に基づくものということができ,当該認定事実が認められる。
なお,受注調整は,受注価格の低下を防ぐために行われるのであるから,受注調整・談合が行われていれば落札率が高くなるということは否定できないと解され,落札率が高いことは本件合意の存在を推認する一つの事情ということができる。他方,「違反行為が既に消滅した」(本件審決88頁)としても,本件違反行為終了後に塩山地区特定土木一式工事の入札において,原告を含む事業者間で自由かつ公正な競争を妨げる何らかの行為が行われていることもあり得ることから,自由かつ公正な競争がされている事実を認定するに足る証拠がないとの説示(本件審判58頁)をすることは必ずしも矛盾するものとはいえず,上記のとおり,本件対象期間中の落札率の高さから本件合意のされていたことを推認することの妨げとはならない。
⑶ そして,本件合意は,30社が,塩山地区特定土木一式工事の入札において,受注予定者をあらかじめ決定し,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力するという内容であるから,30社は,本来的には自由に入札価格を決めることができるはずのところ,本件合意に制約されて意思決定を行うことになるという意味において,30社の事業活動が事実上拘束される結果となることは明らかであるから,本件合意は,独占禁止法2条6項による「その事業活動を拘束し」の要件を充足し,本件合意の成立により,30社の間に,本件合意に基づいた行動をとることを互いに認識し認容して歩調を合わせるという意思の連絡が形成されたものといえるから,本件合意は,同項にいう「共同して・・・相互に」の要件も充足している。しかも,本件対象期間中に発注された別紙2記載の塩山地区特定土木一式工事において,本件合意に基づく受注調整が行われ,312件すべての工事において30社又は30社のいずれかで構成されるJVが落札し,その落札率も97パーセント台に集中し,平均では96.3パーセントであること(査18)からすると,本件合意は,本件対象期間中,事実上の拘束力をもって有効に機能し,上記の状態をもたらしていたものということができ,同項の「一定の分野における競争を実質的に制限する」という要件も充足するというべきで,さらに,そのような本件合意が「公共の利益に反して」の要件も充足することが明らかであるから,本件合意が同法2条6項,7条の2第1項の「不当な取引制限」に当たるというべきである。
そして,22社は,塩山支部に対する平成6年の勧告審決があったにもかかわらず,本件違反行為に及んでいることを考慮すると,本件排除措置命令の必要性を認めることは違法ではなく,本件排除措置命令を違法と認めることはできない。
2 争点2(課徴金納付命令の算定根拠)について
⑴ 上記1のとおり,原告は,本件合意に参加していたことが認められ,本件合意は,独占禁止法7条の2第1項所定の「役務の対価に係るもの」に当たるものであるところ,不当な取引制限等の摘発に伴う不利益を増大させてその経済的誘因を小さくし,不当な取引制限等の予防効果を強化するという課徴金制度の趣旨に鑑みると,同項所定の課徴金の対象となる「当該・・・役務」とは,本件においては,本件合意の対象とされた工事であって,本件合意に基づく受注調整の結果,具体的な競争制限効果が発生するに至ったものをいうことになる。
⑵ そして,原告については,平成19年3月31日から平成22年3月30日までの3年間の間に,別紙3のとおり(かっこ内に工事物件の一連番号を記載する。),10件の工事(①スバン沢治山工事(94),②平沢千野線 道路改良工事(120),③林道塚本山線開設工事(172),④平沢千野線 道路改良工事(184),⑤大沢治山工事(247),⑥大沢下流治山工事(248),⑦林道塚本山線開設工事(253),⑧玉宮地区 大藤第2工区ほ場整備・支線農道第5号改良工事(276),⑨都市計画道路塩の山西広門田線道路改良工事(292),⑩林道塚本山線(2工区)開設工事(明許)(315))を落札し,事業活動を行い,その売上額の合計は4億6667万6550円である(査18)。上記10件における原告の落札率(かっこ内に次順位社の入札率を掲げる。)は,別紙2のとおり,①スバン沢治山工事(94)が95.7%(98.8%),②平沢千野線 道路改良工事(120)が97.7%(97.9%),③林道塚本山線開設工事(172)が97.5%(98.7%),④平沢千野線 道路改良工事(184)が97,5%(98.9%),⑤大沢治山工事(247)が97.8%(98.6%),⑥大沢下流治山工事(248)が98.3%(98.8%),⑦林道塚本山線開設工事(253)が98.7%(99.8%),⑧玉宮地区 大藤第2工区ほ場整備・支線農道第5号改良工事(276)が98.6%(99.1%),⑨都市計画道路塩の山西広門田線道路改良工事(292)が97.2%(97.9%),⑩林道塚本山線(2工区)開設工事(明許)(315)が96.7%(97.4%)であったから,本件合意による競争制限効果が発生したものと推認することができる。
⑶ 実際に,証拠(査18,査177,査297)によれば,平成21年5月28日又は29日に,入札公告の行われた鈴庫山西治山工事(244),上記⑤大沢治山工事(247),⑥大沢下流治山工事(248)及び⑦林道塚本山線開設工事(253)について,入札公告が行われたところ,被審人天川工業の社長は,同人の平成21年の手帳の5月28日欄に,「林務指名 鈴庫山西 大沢 大沢下 天川組と打合せ」,「天川組は鈴庫山希望,大沢,大沢下どちらか取得する様にと要請」と,6月9日欄に,「林務調整会議AM10:00塩山支部」と,6月10日欄に,「林務調整会議AM10:00塩山支部」,「林務調整会議,降板し天川組が3件取得」等と記載していること,原告は,6月30日と7月1日に上記⑤から⑦を落札したことが認められ,この事実は,被審人天川工業が,原告らと受注調整に関する話合いをし,原告が3件の受注予定者となった経過を記載したものと認められ,⑤「大沢」の記載によって推認される大沢治山工事(247),⑥「大沢下」の記載によって推認される大沢下流治山工事(248)のほか1件(⑦林道塚本山線開設工事(253)と推測される)の計3件については原告が各工事を落札する旨の受注調整がされたことが推認できる(この認定に反する被審査人天川組代表者審尋の供述及び被審人天川工業代表者審尋における供述は,いずれも上記各証拠に照らし採用することができない。)。
また,上記⑧玉宮地区 大藤第2工区ほ場整備・支線農道第5号改良工事(276)につき査107の40(11頁),⑩林道塚本山線(2工区)開設工事(明許)(315)につき査106の1(15頁)によれば,原告が落札を希望する旨申し出て,受注調整がされた結果,原告において落札したことが推認できる。
したがって,上記10件のうち一部については,実際に本件合意による競争制限効果が発生したことを裏付ける客観的な証拠が存在することから,上記⑵の推認を裏付けているということができる。
⑷ ところで,上記10件のうち5件(スバン沢治山工事(94),平沢千野線 道路改良工事(184),大沢治山工事(247),大沢下流治山工事(248),林道塚本山線開設工事(253))は総合評価落札方式(簡易型が4件,特別簡易型が1件)が採用されているところ,総合評価落札方式でも,受注調整が可能かが問題となり得る。しかし,以下のとおり,これは可能であったと認められる。
ア 前記前提事実のとおり,総合評価落札方式の評価項目は,「簡易型」では①企業の施工実績,②地域精通度,③地域貢献度,④配置予定技術者の能力及び⑤施工計画,「特別簡易型(Ⅱ)」では上記①ないし④,「特別簡易型」及び「特別簡易型(Ⅰ)」では上記①ないし③であり,いずれも,評価項目ごとに最高評価点が設定され,山梨県は,総合評価落札方式における評価項目,評価の方法,最高評価点及び評価値の算出方法について,総合評価実施要領に記載し,公表していた。
イ そして,評価項目のうち,①から③は,いずれも客観的なデータに基づいて算定されるものであり,入札参加者が山梨県所定の様式で作成・記載して提出した資料に基づいて点数化されることが,総合評価実施要領で公表されていたから,原告を含む30社は,過去の入札結果等により,各入札参加者の評価点を予想することが可能であった。また,④も,総合評価実施要領によって客観的なデータが点数化されるものであるため,少なくとも,入札参加者において自社の評価点を予想することは可能であった。
ウ これに対し,「施工計画」については,総合評価実施要領に基づき客観的なデータが点数化されるものではなく,評価が発注者の裁量に委ねられるものであるため,正確に評価点を予想することはできないとはいうものの,配点は3段階に過ぎず(0点,5点又は10点),少なくとも,入札参加者において,自社の作成した施工計画書の内容から自社の評価点の高低をある程度予想することは可能であった(査30ないし査32,査52,査53,査60,査68,査69,査73,査76,査80,査86,査87,査90,査97,査99,査169,査171,査184,査193,査194,査196,査212,査217,査218)。
エ したがって,総合評価落札方式の場合であっても,受注調整は可能であったと認められ,実際,大沢治山工事(247),大沢下流治山工事(248),林道塚本山線開設工事(253)は,総合評価落札方式の場合であっても,上記⑶のとおり,受注調整が行われたことを裏付ける客観的証拠があるということができる(なお,原告は,落札者と次点の入札価格の差が著しく小さい工事もあり,逆転が起き得るから不確実な予測となり,本件合意は相当に拘束力の弱いものにならざるを得ない旨主張するが,少なくとも,原告が落札した10件について,本件合意による競争制限効果が発生したものとの前記⑵の推認を妨げる事情を認めるに足る証拠はなく,原告の上記主張は採用することができない。)。
オ 以上の事実は,掲記の証拠に基づき本件審決の認定したものであり,総合評価落札方式においても,30社は,互いの評価点を予想又は連絡し合い,受注予定者以外の者は高い入札価格で入札するほか,評価点の低い配置予定技術者を配置したり,簡易な内容の施工計画書を提出したり,受注予定者との間で施工計画書をやり取りして内容を確認するなどして,総合評価落札方式の工事の入札においても,あらかじめ受注予定者を決定し,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力し合っていたと認めることができる。
⑸ そこで,原告が,本件合意の下に前記3年間で受注した10件の売上額の合計は4億6667万6550円であり,弁論の全趣旨によれば,原告は,資本金の額が4000万円で3億円以下の会社であって,建設業に属する事業を主たる事業として営んでいたことが認められるから,独占禁止法7条の2第1項,同条の2第5項,同条の2第23項,同法施行令第6条1項により,売上額合計4億6667万6550円に100分の4を乗じた1866万7062円のうち,1万円未満の端数を切り捨てると1866万円となるから,本件各課徴金納付命令のうち原告に対するもの(平成23年(納)第32号)を相当であるとした本件審決は相当である。
3 以上のとおりであって,本件審決は実質的証拠に基づく事実の認定の下にされた正当なものというべきであり,本件各命令に原告が主張する違法は認められず,原告の本件請求は理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。

注釈 《 》部分は,公正取引委員会事務総局において原文に匿名化等の処理をしたものである。

平成30年4月27日

裁判長裁判官 都築政則     
裁判官 飯塚圭一     
裁判官 石原寿記     
裁判官 野本淑子
裁判官石垣陽介は転補のため,署名押印することができない。
裁判長裁判官  都築政則

別紙1
山梨県が,一般競争入札又は指名競争入札の方法により土木一式工事として発注する工事のうち,同県山梨市又は甲州市の区域を施工場所とするものであって,次のいずれかに該当するもの
1 A等級業者のみを入札の参加者とするもの
2 B等級業者のみを入札の参加者とするもの
3 A等級業者及びB等級業者のみを入札の参加者とするもの
4 特定建設工事共同企業体のみを入札の参加者とするもの

【別紙2ないし3省略】

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