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神奈川県LPガス協会による執行停止申立事件

独禁法8条1項3号

東京地方裁判所

平成30年(行ク)第260号

決定

平成30年7月11日

横浜市中区北仲通3丁目33番地
申立人  公益社団法人神奈川県LPガス協会
同代表者代表理事  《氏名》
同代理人弁護士  二川裕之
同        遠藤政尚
東京都千代田区霞が関一丁目1番1号
相手方  公正取引委員会
同代表者委員長  杉本和行
同指定代理人   石谷直久
同        大胡 勝
同        三好一生
同        山本浩平
同        松田世理奈
同        笠置泰平
同        平塚理慧
同        吉兼彰彦
同        岡本康利
同        村上恭央
同        長谷川和己
同        白石幸輔
同        浅見槙子

主文
1 本件申立てを却下する。
2 申立費用は申立人の負担とする。
理由
第1 申立て
相手方が平成30年3月9日付けでした申立人に対する排除措置命令(平成30年(措)第8号)は,本案事件の判決確定までその効力を停止する。
第2 事案の概要
1 事案
⑴ 相手方は,申立人が,遅くとも平成26年11月以降,申立人への入会を希望する者の入会の可否を決定する理事会において,既に他のLPガス販売事業者(液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律2条3項に定める液化石油ガス販売事業(以下「LPガス販売事業」という。)を行う事業者のことである。以下に同じ。)から液化石油ガス(以下「LPガス」という。)の供給を受けている一般消費者等に対する,供給元を自社に切り替えることを目的とした勧誘等の営業活動(以下「切替営業」という。)を行う入会希望者の入会申込みについて否決しており,その行為が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)8条3号に該当し,同条に違反するとして,平成30年3月9日,同条の2第1項に基づき,申立人に対し,当該行為を取りやめることなどを命ずる排除措置命令(平成30年(措)第8号。その主文は別紙排除措置命令主文に記載のとおり。以下「本件排除措置命令」という。)をした。
⑵ 本件は,申立人が,相手方に対し,本件排除措置命令の取消しを求める訴訟(本案事件)を提起した上で,本件排除措置命令により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要がある旨主張して,行政事件訴訟法25条2項本文に基づき,本件排除措置命令の効力の停止を求める事案である。
2 前提事実(後掲の疎明資料若しくは審尋の全趣旨により一応認められる事実又は当裁判所に顕著な事実)
⑴ 申立人
申立人は,LPガスによる災害の防止,取引の適正化による消費者利益の保護などを図ると同時に,神奈川県内のLPガス業界の健全な発展を図ることにより,広く社会公共の福祉の増進に寄与することを目的とする公益社団法人であり,神奈川県内のLPガスの小売販売,卸売販売及びスタンドの事業を行う個人,法人又は団体であって,申立人に入会したものを正会員(社員)としている。申立人への入会は,事業者の販売所ごとに行われており,正会員の数は,平成29年3月末時点で772販売所である。
申立人は,入会希望者から入会の申込みを受けると,総会において定める入会及び退会規程に基づき,理事会において入会の可否を決定している。
(甲5,36,乙1)
⑵ 株式会社《A》による入会申込みとその否決
神奈川県内に販売所を設置するLPガス販売事業者である株式会社《A》は,平成26年10月から平成28年10月までの間に5回,申立人に対し,入会を申し込んだ。
申立人は,平成26年11月から平成28年11月にかけて5回の理事会を開催し,《A》が切替営業を行い,苦情相談が多いことなどを問題視する意見が出されたことなども踏まえて審議した結果,《A》の入会申込みについていずれも否決した。
(甲1の1~5,甲4~6,乙1)
⑶ 本件排除措置命令
相手方は,平成30年3月9日,申立人が,遅くとも平成26年11月以降,理事会において,切替営業を行う入会希望者の入会申込みについて否決しており,当該入会希望者が,一般社団法人全国LPガス協会が損害保険会社と契約している団体保険に加入することができなくなることにより,神奈川県内のLPガス販売事業に係る事業分野における現在又は将来の事業者の数を制限していると認定し,申立人の上記行為は独禁法8条3号に該当し,同条に違反するとして,同条の2第1項に基づき,申立人に対し,本件排除措置命令をした。
申立人は,平成30年3月12日,本件排除措置命令の通知を受けた。
(甲2,5,乙1,3)
⑷ 《A》による入会申込み
《A》は,平成30年4月16日付けで,申立人に対し,入会を申し込んだ(甲34)。
⑸ 本件事件の訴えの提起及び本件申立て
申立人は,平成30年6月25日,当庁に対し,申立人の行為は独禁法8条3号には該当せず本件排除措置命令は違法である旨主張して,本件排除措置命令の取消しを求める訴訟(本案事件)を提起し,同日,本件排除措置命令の効力の停止を求める本件申立てを行った(当裁判所に顕著な事実)。
3 争点及びこれに関する当事者の主張
本件排除措置命令により重大な損害が生じ,それを避けるため緊急の必要があるか
(申立人の主張)
⑴ 本件排除措置命令がされたことは全国紙やインターネットニュースなどで報道されており,申立人は,これによって横浜市による競争入札の指名停止をされ(ただし,後に取り消されている。),叙勲や表彰が受けられないという風評被害を受けている。その結果,今後はLPガス販売事業の取引が減少し,全国の業界内における申立人の立場も蔑ろにされ,消費者団体等との協議や連携ができなくなるなどの危険性が高く,重大な損害が生じるといえる。
⑵ 《A》は,本件排除措置命令後の平成30年4月16日付けで申立人に入会を申し込んでいる。
そのため,申立人は,同年7月18日に開催予定の理事会で《A》の入会申込みの可否を判断せねばならず,同日までに本件排除措置命令の効力が停止されなければ,当該申込みを可決するにせよ否決するにせよ以下のとおり重大な損害を被る差し迫った状況にある。したがって,緊急性も認められる。
ア 申立人が本件排除措置命令に従い《A》の入会申込みを可決すると,申立人の法人目的に賛同し得ないか同目的に合致しない入会希望者の入会を認めることとなり,それ自体,申立人の結社の自由ないし団体自治を制限する重大な損害である。
なお,申立人の定款に一定の要件の下で正会員を除名する規定はあるが,本件排除措置命令が取り消されたとしても除名の理由にはならず,一旦入会申込みを可決すると《A》を退会させることは困難である。
イ 申立人が《A》の入会申込みを否決すると,本件排除措置命令に違反したとして2年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金(独禁法90条3号)又は50万円以下の過料(独禁法97条)の制裁を受けることとなり,それ自体が風評被害をもたらすことに加え,申立人が「法令又は法令に基づく行政機関の処分に違反したとき」(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「公益法人法」という。)29条2項3号)に該当するとして公益認定を取り消され,申立人の存続自体危ぶまれる状況となる。
なお,本案事件が係属中であるとして《A》の入会の可否についての判断を保留することも考えられるが,そうであっても本件排除措置命令に従っていないとして罰金等の制裁を受ける可能性が高いといえる。
(相手方の主張)
⑴ 申立人は,風評被害などという抽象的な損害を主張するのみで,いかなる事業活動につきどのような損害が生じるのかについて具体性に主張していない。また,取引が減少し,申立人の立場が蔑ろにされる危惧があるなどとする事実についても何ら疎明をしていない。
そして,申立人が主張する風評被害は,申立人が本件排除措置命令を受けた事実が報道されたことによるものであるから,本件排除措置命令の効力を停止しても避けることができない。
⑵ア 申立人が《A》の入会申込みを可決する場合に発生すると主張する損害の内容は具体性を欠き,「重大な損害」であることを主張,疎明したことにならない。
また,本件排除措置命令は,切替営業を行っている入会希望者の入会申込みを否決する行為を禁じるものであり,申立人に対し,あらゆる入会希望者を無条件に入会させるよう義務付けるものではないから,結社の自由等を制限するなどとする申立人の主張は前提において誤りがある。
なお,申立人の定款には,正会員に除名等をすべき正当な事由があるときに,一定の要件の下で正会員を除名できる旨の根拠規定があり,申立人は,独禁法等の諸法令に抵触しない限りにおいて当該規定に基づき会員を除名することができるから,仮に,《A》の入会を認めることによって損害が生じても,除名することでその損害の回復は可能である。
イ 申立人が《A》の入会申込みを否決する場合に発生すると主張する損害は,申立人が本件排除措置命令に従わないことにより生じ得る損害であって,本件排除措置命令により生じる損害ではない。
そして,独禁法90条3号は,排除措置命令が確定した後においてこれに従わないものを処罰する規定であるところ,本案事件についての訴えの提起により本件排除措置命令はいまだ確定していないから,申立人が同号に基づき罰金刑に処される可能性はない。
また,公益法人法29条2項による公益認定の取消しは裁量処分であり,法令に基づく行政機関の処分の適法性を争う訴訟が提起されている現状において,内閣府や神奈川県が公益認定の取消処分をすることは一般に想定し難い。現に,内閣府や神奈川県が今まで同項3号に基づき公益認定を取り消した事例はないことからすると,本件において,申立人の公益認定取消しを回避するために本件排除措置命令の効力を停止する緊急の必要性があるとはいえない。
第3 当裁判所の判断
1 本件排除措置命令により重大な損害が生じ,それを避けるため緊急の必要があるかについて
⑴ 申立人は,本件排除措置命令の風評被害により,LPガス販売事業の取引が減少し,全国の業界内における申立人の立場が蔑ろにされ,消費者団体等との協議や連携ができなくなる危険性が高いなどと主張するが,そもそも申立人の主張する風評被害の内容が抽象的なものにとどまっていることに加え,一件記録によっても,本件排除措置命令により申立人が主張する損害が発生することを認めるに足りる的確な疎明資料はない。
この点,申立人は横浜市から競争入札の指名停止措置を受けたとも主張するが,疎明資料(甲33の2)によれば,当該措置はその日のうちに取り消されたことが認められるから,同主張を採用することもできない。
⑵ また,申立人は,本件排除措置命令に従い《A》の入会申込みを可決すると,申立人の法人目的に賛同し得ないか同目的に合致しない入会希望者の入会を認めることとなり,それ自体が結社の自由等を制限する重大な損害であるなどと主張する。しかし,申立人が主張するこのような損害はやはり抽象的なものにとどまるといわざるを得ない上,本件排除措置命令は切替営業を行っている入会希望者の入会申込みを否決する行為を禁止するにすぎないものであり,結社の自由等を制限する重大な損害を生じさせるなどとは到底いえない。そして,《A》が申立人の法人目的に賛同し得ない入会希望者であることを認めるに足りる的確な疎明資料もないから,この点でも申立人に重大な損害が生じるとは認められない。
⑶ さらに,申立人は,《A》の入会申込みを否決すると,本件排除措置命令に違反したとして2年以下の懲役又は300万円以下の罰金(独禁法90条3号)等の制裁を受け,新たな風評被害が生じかねず,また,申立人が公益認定を取り消されるなどと主張する。
しかし,独禁法90条3号は排除措置命令が確定した後においてこれに従わないものを処罰する規定であるところ,本件において,申立人は本案事件の訴えを提起しており,本件排除措置命令はいまだ確定していないから,申立人が同号により処罰されるなどの事態を回避する緊急の必要があるとはいえない。また,疎明資料(乙4,5)によれば,所管行政庁である神奈川県や内閣府においては,処分取消訴訟の本案判決の確定前に公益認定の取消処分がされた例はないことが認められ,一件記録によっても,申立人が公益認定を取り消され,申立人の存続自体危ぶまれる状況になることを認めるに足りる的確な証拠はない。
⑷ 以上の他に,一件記録を精査しても,本件排除措置命令によって申立人に重大な損害が生じ,それを避けるために緊急の必要があるとは認められない。
2 結論
以上によれば,本件申立ては理由がないからこれを却下することとし,主文のとおり決定する。

平成30年7月11日

東京地方裁判所民事第8部
裁判長裁判官  岩井直幸
裁判官     坂田大吾
裁判官     太田慎吾

(別紙排除措置命令主文 省略)
注釈 《 》部分は,公正取引委員会事務総局において原文に匿名化等の処理をしたものである。

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