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常盤工業㈱による課徴金納付命令取消請求事件

独禁法7条の2

東京地方裁判所

平成29年(行ウ)第101号

判決

平成30年11月8日

東京都千代田区九段北四丁目2番38号
原告  常盤工業株式会社
同代表者代表取締役  《氏名》
同訴訟代理人弁護士  木村和也
同            秋葉健志
同訴訟復代理人弁護士  日野正実
東京都千代田区霞が関一丁目1番1号
被告  公正取引委員会
同代表者委員長  杉本和行
同指定代理人   大胡 勝
同        大澤一之
同        能地裕之
同        久野慎介
同        笠置泰平
同        長谷川和己
同        吉兼彰彦
同        宮原信二
同        三好一生
同        松田世理奈
同        渡辺大祐
同        布村真里
同        稲熊克紀

主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
被告が原告に対し平成28年9月6日付けでした課徴金納付命令(公正取引委員会平成28年(納)第36号)を取り消す。
第2 事案の概要
被告は,原告を含む別紙2舗装工事業者一覧表記載の20社の舗装工事業者(以下「20社」といい,各社の呼称として同表の「会社名(略称)」欄の括弧内に記載した略称を用いることがある。)が,平成23年7月中旬頃以降(伊藤組,奥村組土木興業,大有建設,竹中道路,地崎道路及び東京鋪装工業にあっては,それぞれ,遅くとも同年8月下旬頃以降),同年9月20日までの間,共同して,東日本高速道路株式会社(以下「NEXCO東日本」という。)東北支社が同年7月15日及び同年8月10日に入札公告をした東日本大震災により被災した高速道路の舗装本復旧工事を内容とする合計12件の舗装工事(以下「本件災害復旧工事」という。)について,受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定し,受注予定者が受注できるようにするなどの内容の合意(以下「本件基本合意」という。)をすることにより,公共の利益に反して,東日本大震災に係る舗装災害復旧工事の取引分野における競争を実質的に制限していたもので,この行為は私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「法」という。)2条6項の「不当な取引制限」に該当して法3条に違反するものであり,かつ特に必要があると認めて,平成28年9月6日,20社に対し,法7条2項に基づき排除措置命令をした(平成28年(措)第9号)。また,被告は,当該行為が不当な取引制限で法7条の2第1項1号に規定する「役務の対価に係るもの」に該当するとして,同日,原告に対し,法7条の2第1項,第5項及び第6項に基づき,課徴金5544万円の納付命令をした(平成28年(納)第36号。以下「本件命令」という。)。
本件は,原告が,本件災害復旧工事のうち原告が受注した東北自動車道福島管内(上り線)舗装災害復旧工事(以下「本件工事」という。)について,他社による協力の下で受注予定者として決せられた者が落札したものではなく,かつ原告が他社の入札や落札に協力した事実もなく,具体的な競争制限効果が発生していないから,本件工事は「当該商品又は役務」(法7条の2第1項)に該当せず,本件命令はその処分要件を欠き違法であるなどと主張して,被告に対し,本件命令の取消しを求める事案である。
1 前提事実(証拠等によって認定した事実は末尾に証拠等を掲げた。その余は当事者間に争いがない。)
⑴ 当事者等
原告は,舗装工事の施工を請け負う事業を営む者であり,その平成23年当時の資本金額は1億円であった。《A1》は,平成19年4月,原告東北支店の支店長に就任し,平成23年当時も東北支店長として,NEXCO東日本東北支社等が発注する舗装工事の入札業務の責任者の立場にあった。
また,20社のうち原告を除く19社は,いずれも道路工事,舗装工事,土木建築工事等の施工を請け負う事業を営む者である(乙39の1~19)。
⑵ 本件災害復旧工事の発注に係る公告等
ア NEXCO東日本東北支社は,平成23年7月8日(以下,平成23年の出来事については年の記載を省略する。),本件災害復旧工事12件を発注する見通しであることを公表し,同月15日及び8月10日,同工事全件を総合評価落札方式(契約制限価格(落札価格の上限をいう。)の範囲内で入札した者のうち,入札価格を評価する価格評価点と,受注希望者の技術力を評価する技術評価点とを合算した評価値が最も高い者を落札者とする方法をいう。)による条件付一般競争入札(公告により所定の参加資格条件を付して入札の参加希望者を募り,競争参加資格確認申請を行わせた上で,参加資格条件を満たしていると認められた者を当該入札の参加者とする発注方法をいう。)により発注することを公告した。
イ NEXCO東日本東北支社は,その頃,本件工事について,契約制限価格を17億1040万円,開札日を8月24日と定めた。
ウ NEXCO東日本が作成した契約規程実施細則には,同社の契約責任者は,①本件災害復旧工事の入札において契約制限価格以下の価格での入札がなかった場合には再入札を行うことができること,②再入札を行う場合,当初の入札に参加しなかった者及び当初の入札が無効とされた入札者の参加を認めてはならないことを定めた規定(以下,「再入札の定め」という。)が置かれている(乙2)。
⑶ 本件災害復旧工事に係る調整役の存在(乙9,16,20,弁論の全趣旨)
東北地方では,かねてからNEXCO東日本東北支社等が発注する舗装工事につき,舗装工事業者の担当者のうち調整役と呼ばれる者が,他の舗装工事業者の担当者から受注希望を聴取するなどして受注調整を行っていた。
7月中旬頃から9月20日までの間,調整役を担当していたのは,前田道路東北支店第二営業部長の《B》(以下「前田道路・《B》」という。),NIPPO東北支店営業第一グループ課長の《C》(以下「NIPPO・《C》」という。),日本道路東北支店営業部担当課長の《D1》及び世紀東急工業東北支店長の《E》(以下「世紀東急工業・《E》」という。)の4名(以下「調整役4名」という。)であった。なお,日本道路東北支店長の《D2》(以下「日本道路・《D2》」という。)も,平成22年3月頃までは調整役を担当していた。
⑷ 本件災害復旧工事の入札等の状況(乙1)
本件災害復旧工事のうちいずれかの工事に競争参加資格確認申請を行ったのは,20社並びに《F》株式会社及び《G》株式会社(合計22社)であった。
本件災害復旧工事のうち本件工事以外の11件は受注予定者とされた者が落札しており,その落札率は平均して約94.62%であった。
⑸ 本件工事の入札の実施及び原告による落札等(乙1,7の1,32)
ア 原告,鹿島道路及び大林道路は,8月1日,本件工事の競争参加資格確認申請を行った。
イ 原告は,8月23日,本件工事に18億3200万円で入札し,鹿島道路は,同じく17億0500万円で入札し,大林道路は,同日NEXCO東日本東北支社に対し,本件工事の入札を辞退する旨を通知した(以下,この時行われた入札を「1回目の入札」という。)。
ウ NEXCO東日本東北支社は,8月24日午後2時,本件工事の開札を行ったところ,鹿島道路の入札は必要書類(単価集計表)が添付されておらず無効であること,原告の入札は契約制限価格(17億1040万円)を超えていたこと,結果として落札者を決定できないことを把握したため,本件工事の再入札を実施することとし,同日午後3時9分,原告に対し,本件工事について,1回目の入札での最低入札価格が18億3200万円であり契約制限価格を超えていたため再入札を実施すること,及び再入札の受付期間が同日午後3時5分から午後4時10分までであることを連絡した。これを受けて,原告は,同日午後4時,本件工事に16億5000万円で入札した(以下,この入札を「再入札」という。)。
エ NEXCO東日本東北支社は,8月24日午後4時15分,本件工事の開札を行い,同月25日,原告を本件工事の落札者と決定するとともに,原告,鹿島道路及び大林道路に対してその旨を通知した。
オ 原告は,8月25日,NEXCO東日本との間で,請負金額を17億3250万円(落札価格16億5000万円に消費税及び地方消費税相当額を加算した額)として,本件工事の請負契約を締結した。
⑹ 本件命令の発出及びこれに至る手続
被告は,平成28年6月13日,原告に対し,法62条4項が準用する法50条が掲げる事項を記載した書面により意見聴取を行う旨を通知し,原告からの求めに応じて証拠の閲覧又は謄写をさせた上,同年7月15日及び8月8日原告に対する意見聴取期日を開催し,被告の指定した職員が原告の意見陳述等の経過を記載した調書及び意見聴取に係る事件の論点を記載した報告書を作成した。そして,被告は,当該調書及び報告書の内容を十分に参酌した上で,原告に対し課徴金5544万円の納付を命じることを議決した。
被告は,平成28年9月6日原告に対し,本件命令を行い,本件命令は同月7日原告に対して送達された。
2 本件の争点は,「本件工事が「当該商品又は役務」(法7条の2第1項)に当たるか。」であり,この点に関する当事者の主張は次のとおりである。
(被告の主張)
⑴ 判断の枠組み
法7条の2第1項所定の「当該商品又は役務」とは,基本合意と個別調整により構成される入札談合事案では,基本合意の対象とされた工事であって,基本合意に基づく受注調整等の結果,具体的な競争制限効果が発生するに至ったものをいうと解するべきである(最高裁平成22年(行ヒ)第278号同24年2月20日第一小法廷判決・民集66巻2号796頁。以下「平成24年最高裁判決」という。)
そして,この具体的な競争制限効果は,落札者が直接又は間接に関与した受注調整手続の結果発生したものであることを要すると解される。
⑵ 1回目の入札までに行われた受注調整の具体的経緯によれば,本件工事は「当該商品又は役務」に該当するといえること
ア 本件工事は,本件災害復旧工事の1つであり,本件基本合意の対象とされていた。
イ 本件工事については,①調整役が,7月13日頃《A1》から原告の受注希望を伝えられたことを踏まえながらも,同月21日頃までに受注予定者を鹿島道路と決定し,②原告が,調整役の依頼を受けて本件工事の競争参加資格確認申請を行うとともに,鹿島道路・《H》から,鹿島道路の官積(NEXCO東日本東北支社が設定する契約制限価格がいくらであるかを各社が独自に予測した金額をいう。)である17億9660万円以上の価格で入札してほしい旨の依頼を受けて,18億3200万円で入札し,③大林道路が,競争参加資格確認申請を行ったものの,あらかじめ鹿島道路に対して伝えたとおり本件工事の入札を辞退し,④鹿島道路が,17億0500万円で入札することを決定して,そのとおり入札しており,1回目の入札までに基本合意に基づく受注調整が行われた。
ウ 上記イの受注調整の結果,本件工事については,20社が自由かつ自主的な判断で入札に参加するか否か及び入札価格を決めるといった行動が否定されており,人為的に競争が制限された状況(競争制限効果)が生じていたというべきである。
また,本件工事については,1回目の入札では落札者が決まらず再入札が実施されたが,再入札の定めが存在したため,再入札に参加できるのは原告しかおらず,仮に20社が1回目の入札後に受注調整を白紙に戻すなどして参加者全員が自由に入札することとしても,既に生じていた競争制限効果を消滅させて完全な競争状態に戻すことは不可能であった。
エ そして,原告は,前記イ①及び②に加え,7月15日頃から8月1日頃までの間,大有建設等から,本件工事を含む本件災害復旧工事の各社の入札予定や技術評価点の予測値等を聴取し,その内容を前田道路・《B》に伝えており,本件工事の受注調整手続に直接関与した。
オ 以上のとおり,本件工事は本件基本合意の対象とされた工事であって,本件基本合意に基づく受注調整の結果,具体的な競争制限効果が発生しており,この具体的な競争制限効果は原告が直接関与した受注調整手続の結果発生したものであるから,本件工事は「当該商品又は役務」に該当する。
カ なお,《A1》が,8月24日,1回目の入札後に再入札が実施されることを把握し,同日午後4時頃までの間に前田道路・《B》に対して電話を架け,NEXCO東日本東北支社から再入札実施の連絡を受けた旨を伝えた上で,原告が応札することについて許可を取り付けたことや,前田道路・《B》も,同日午後4時頃までの間に,NIPPO・《C》及び日本道路・《D2》に対して電話を架け,《A1》との間の電話の内容を伝え,同人らから原告が再入札に参加して本件工事を落札することについて了承を得たことからすると,本件工事の受注予定者が鹿島道路から原告に変更されたことが認められ,これらの事実によれば,1回目の入札以前に受注調整が存在したことが推認できるというべきである。
このように,被告は,1回目の入札後,再入札までの間の経緯に係る事実について,上記のように間接事実として主張するにとどまり,これが独立した受注調整であると主張したり,当該事実によって新たに具体的な競争制限効果が発生したと主張したりするものではないから,1回目の入札後の経緯に係る被告の主張が処分の理由を違法に差し替えるものである旨の原告の主張は失当である。
⑶ 仮に1回目の入札までに行われた受注調整の具体的経緯が認められないとしても,本件工事は「当該商品又は役務」に該当すること
ア 仮に,上記の⑵イの一部の事実が認められないとしても,①基本合意が存在し,②個別物件が基本合意に基づく受注調整手続に上程され,③基本合意の参加者が当該物件を受注した事実が存在する場合には,基本合意に基づく参加者の行動により,当該物件につき人為的に競争が制限された状況(競争制限効果)が発生したこと及び当該物件を受注した者が直接又は間接に受注調整手続に関与したことが推認されるというべきであるから,一旦行われた受注調整を白紙に戻すなどして入札参加者全員が自由に入札することとしたこと,又は事業者が受注調整手続とは無関係に当該物件を落札したと認められることといった特段の事情がない限り,当該物件は「当該商品又は役務」に該当するというべきである。
イ 本件においては,①本件基本合意が存在し,②本件工事が本件基本合意に基づく受注調整手続に上程され,③本件基本合意の参加者である原告が本件工事を受注したものであり,上記のような特段の事情はないから,本件工事は「当該商品又は役務」に該当するというべきである。
(原告の主張)
⑴ 本件工事につき,具体的な競争制限効果が発生したとはいえないこと
ア 被告は,基本合意の参加者の中に競争参加資格確認申請を行わなかった者がいたり,1回目の入札までに入札を辞退した者がいたりしたという競争のわずかな量的減少を捉えて具体的な競争制限効果が発生していると主張する。
しかし,具体的な競争制限効果の判断に当たっては,対象物件に係る入札市場において,競争の質的変化があったか否か,すなわち競い合う行為の集合体である「市場」が全体として有する競争機能が損なわれているか否かを,入札参加者に占めるアウトサイダーの数の多寡やこれらの事業者が競争的な行動をとったか否かといった観点から問題とすべきであり,競争の量的減少のみをもって具体的な競争制限効果が発生したということはできない。
イ また,本件工事については1回目の入札で落札者が決まらず再入札が行われているところ,再入札においては1回目の入札における最低入札価格よりも低い価格で入札することが当然の前提となり,再入札に参加する事業者にとって,1回目の入札以前の受注調整は行動の基準にならないから,再入札の際に,1回目の入札以前の受注調整による競争制限効果が残存しているということはできない。
⑵ 原告は実質的に受注調整手続に関与しておらず,受注調整により作出された状況を認識しつつ利用したわけでもないこと
ア 課徴金には事業者の不当な取引制限を防止するための制裁的要素があることを踏まえれば,落札者に課徴金を課すためには,当該落札者が,制裁を受けて然るべきであるといえる程度に,実質的に受注調整手続に関与したことを要するというべきである。
しかるに,次の事情によれば,原告が受注調整手続に実質的に関与したということはできない。
(ア) 原告は,1回目の入札以前の受注調整においては,受注予定者や第2順位の受注予定者ではなく,調整役から指示されるまま数合わせのために入札に参加した事業者にすぎない。
(イ) 《A1》が8月11日鹿島道路・《H》から,本件工事につき鹿島道路の官積以上の額で入札するよう依頼を受けたことは,否認する。原告は,本件工事の落札に向けて独自の判断で入札価格を決定したものである。
イ 原告は,1回目の入札に係る受注調整により作出された状況を明確に認識しておらず,自身が落札するためにそうした状況を利用したこともない。すなわち,原告は,本件工事の入札に何社の事業者が参加しているか,どの事業者が参加しているのか,受注予定者がどのような金額で入札するのかなどにつき一切情報を有しておらず,再入札を行う時点では,鹿島道路の1回目の入札が無効となり同社が再入札に参加できないことについても,推測の域を出なかったものである。
ウ なお,《A1》が,8月24日再入札をする前に,前田道路・《B》に電話を架け,NEXCO東日本東北支社から再入札実施の連絡を受けた旨を伝えた上で,原告が応札することについて許可を取り付けたことは否認する。《A1》が前田道路・《B》に電話を架けたのは再入札の後であり,原告が本件工事につき再入札をしたことを事後的に報告したにすぎない。
⑶ 1回目の入札後の経緯に係る事実を本件命令の適法性を基礎付ける事実として考慮することは,処分の理由の違法な差替えに当たり許されないこと
被告は,本件命令に係る意見聴取手続において,原告に対し,1回目の入札後,再入札までの間の事実関係は,具体的な競争制限効果が発生した根拠に含まれておらず,具体的な競争制限効果の発生を認定するには1回目の入札までの事実で十分であると回答した。したがって,被告が,1回目の入札後の経緯に関する事実を,具体的な競争制限効果の発生を基礎付ける事実として主張したり,本件命令の適法性を基礎付ける事実として位置付けたりすることは,処分の理由の違法な差替えに当たり許されないというべきである。
⑷ 被告が主張する事実から,具体的な競争制限効果の発生や原告の受注調整手続への関与が推認されることはないこと
基本合意の対象になっている工事でありさえすれば受注調整が行われたはずであるという経験則は存在しないから,ある工事が基本合意の対象になっていることのみから,具体的な競争制限効果の発生や落札者の受注調整手続への関与を推認することはできない。被告の主張は,本件命令の要件であるこれら事実につき,その不存在の主張立証責任を合理的な理由なく原告に負わせようとするものであって,失当である。
第3 当裁判所の判断
1 認定事実
⑴ 前記前提事実,証拠(後記認定事実末尾記載の各証拠のほか,乙5,6,7の1,証人《A1》)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア 調整役4名による本件災害復旧工事に係る受注希望の聴取及び《A1》の受注調整への協力(乙8,10~14,16,17,19,20,22,27,28,29の1・2,30,31)
(ア) 調整役4名は,7月13日頃,大成ロテック,大林道路,東亜道路工業,ガイアート,佐藤渡辺及び三井住建道路の担当者に順次面会し又は電話を架け,本件災害復旧工事につき受注調整を行うことを確認した上で,受注希望を聴取した。また,前田道路・《B》は,同月上旬頃,日本道路・《D2》を通じて,鹿島道路北日本支店長の《H》(以下「鹿島道路・《H》」という。)に連絡をとり,本件災害復旧工事につき受注調整を行うことを確認し,受注希望を聴取した。
さらに,調整役4名は,本件災害復旧工事につき後々入札価格を調整するため,いずれの事業者がいずれの工事の入札に参加するかを把握する必要があったところ,前田道路・《B》において,7月25日頃までに,前田道路,NIPPO,日本道路,鹿島道路,大成ロテック,東亜道路工業,世紀東急工業,ガイアート,佐藤渡辺,三井住建道路及び福田道路(これに大林道路を加えた12社は,自前のアスファルト合材プラントを保有する大手事業者である。以下,上記12社を「上位12社」といい,20社のうちの残りの8社を「下位8社」という。)から入札参加物件の報告を受けた。
(イ) さらに,前田道路・《B》は,7月13日頃,《A1》と面会した。
その際,《A1》は,原告の本社から本件災害復旧工事の受注を目指すよう指示されていたため,前田道路・《B》に対し,本件災害復旧工事のうち,磐越自動車道いわき管内,磐越自動車道郡山管内(下り線),磐越自動車道郡山管内(上り線)及び東北自動車道北上管内の各舗装災害復旧工事の入札に参加する予定である旨を伝えた上,原告が本件災害復旧工事の受注予定者となる余地があるかを質問した。これに対し,前田道路・《B》は,《A1》に対し,原告を本件災害復旧工事の受注予定者とする予定はないことを伝えた上,NEXCO東日本が発注見込みを公表していた東北自動車道小坂ジャンクション舗装工事につき,前田道路の親会社から原告に下請発注する旨を提案したところ,《A1》は「分かりました。」と言って,原告が受注予定者の受注に協力する旨を伝えた。
(ウ) 《A1》は,前田道路・《B》から依頼を受け,7月15日頃から8月1日頃までの間,大有建設,東京鋪装工業,竹中道路,地崎道路及び北川ヒューテック(下位8社の一部)の各担当者から,本件災害復旧工事のうち本件工事を含む11件(入札公告日が7月15日であったもの)につき,各社の入札予定,技術評価点の予測値及び官積を聴取するとともに,その際,各担当者に対し,本件災害復旧工事については北川ヒューテックを除く上記各社に受注の割当てがなく,受注予定者の落札に協力する立場で入札に参加することになった旨を説明した。《A1》は,その後前田道路・《B》に対し,これらの聴取結果を報告したが,同聴取結果中には,本件工事への入札を予定している事業者がいるとの情報はなかった。
(エ) 大林道路の担当者である《I》は,7月下旬頃,NIPPO・《C》に対し,大林道路が本件災害復旧工事のうち本件工事を含む7件の工事の入札に参加する予定であることを伝えた。
また,福田道路の担当者は,7月の中旬又は下旬頃,日本道路の《D1》に対し,福田道路は受注予定者が受注できるよう協力する旨を伝えた。
さらに,伊藤組及び奥村組土木興業の担当者は,遅くとも8月下旬頃までに,世紀東急工業・《E》に対し,受注予定者が受注できるよう協力する旨を伝えた。
イ 受注調整の実施状況(乙1,8~15,18,19,21,23)
調整役4名は,7月21日頃までに,別紙2舗装工事業者一覧表のうち「受注予定工事」欄に工事名(同工事名については,例えば,東北自動車道福島管内(上り線)舗装災害復旧工事を「東北道・福島(上り)」と略記する。)の記載がある受注予定工事につき,これに対応する「会社名(略称)」欄に記載のある事業者を受注予定者に指定することとした。本件工事の受注予定者に指定されたのは,鹿島道路であった。
20社は,本件災害復旧工事の各入札前に,調整役4名に対し,直接又は《A1》を介し,競争参加資格確認申請を行う旨又は既に行った旨,自社の技術評価点の予測値,入札を辞退する予定である場合にはその旨を伝えた。そして,本件災害復旧工事について,受注予定者は自社が決定した価格で入札し,20社のうち受注予定者以外の者は,調整役4名若しくは受注予定者から連絡を受けた価格若しくは受注予定者の官積より高い価格で入札し,又は入札を辞退した。
ウ 本件災害復旧工事に係る基本合意の存在(上記ア及びイ掲記の証拠及び弁論の全趣旨)
このように,20社の間には,7月中旬頃以降(伊藤組,奥村組土木興業,大有建設,竹中道路,地崎道路及び東京鋪装工業にあっては,それぞれ,遅くとも8月下旬頃以降),本件災害復旧工事について,受注価格の低落防止等を図るため,①受注予定者を決定する,②受注予定者は受注すべき価格を定め,受注予定者以外の者は,受注予定者が定めた同価格で受注できるよう協力する旨の本件基本合意が存在した。
エ 本件工事に係る1回目の入札に至る経緯
(ア) 本件工事の入札参加者の調整
前田道路・《B》は,7月下旬頃までの間に《A1》に対し,原告が入札に参加する予定である旨を伝えた4件の工事のうち磐越道郡山(上り)への入札参加を取りやめ,本件工事の入札に参加するよう依頼し,《A1》の了承を得た。
(イ) 鹿島道路と大林道路との間の官積に係る情報等の交換
前田道路・《B》及び日本道路・《D2》は,8月上旬頃,本件工事に関する入札価格の調整は,調整役4名が行うのではなく,鹿島道路が直接他の入札参加予定者との間で行うこととするとの認識を共有した(乙8)。
これを受けて,鹿島道路・《H》は,8月上旬頃大林道路に対し,本件工事の官積を教えるよう依頼し,その頃ないし同月中旬頃,大林道路の担当者から,同社の本件工事の官積が18億4000万円であること,もっとも同社は本件工事の入札を辞退する予定であることを伝えられた(乙21)。
(ウ) 鹿島道路と原告との間の官積の交換及び原告の入札価格の決定
a 鹿島道路・《H》は,7月下旬頃から8月上旬頃,《A1》に対して電話を架け,「東北道福島上りに行くことになりました。」,「よろしくお願いします。」などと言い,鹿島道路の官積を持って行くので原告の官積を貰いたい旨を伝えた。これにより,《A1》は,鹿島道路が本件工事の受注予定者であることを認識した。
b 鹿島道路・《H》は,8月11日《A1》と面談し,《A1》に対して鹿島道路のその時点での本件工事の官積が17億9660万円であることが記載された書面を交付するとともに,《A1》から,原告の本件工事の官積が18億9831万3000円又は18億6959万5000円であることが記載された書面を受領し,《A1》に対し,原告が鹿島道路の官積以上の金額で本件工事に入札するよう,明示的又は黙示的に依頼した(乙38,40)。
c 《A1》は,8月12日頃,原告の本件工事の入札価格を,前日受領した鹿島道路の官積よりは高いが原告の官積よりは安い18億3200万円とすることを決定した。
オ 原告による再入札及び落札
1回目の入札に参加しなかった事業者,入札を辞退した大林道路及び1回目の入札が無効となった鹿島道路は,再入札の定めにより再入札に参加できないため,再入札に参加できる事業者は原告のみであったところ,原告は,8月24日午後4時,本件工事に16億5000万円で入札し(再入札),本件工事を落札した(乙1)。
本件工事の落札率は,約96.47%(=16億5000万円/17億1040万円)であった。
⑵ これに対し,原告は,《A1》が8月11日鹿島道路・《H》から,本件工事につき鹿島道路の官積以上の額で入札するよう依頼を受けたことを否認し,本件工事の落札に向け独自の判断で入札価格を決定したなどと主張する。そして,証人《A1》の証言及び陳述書(甲9)中には,これに沿う供述及び陳述記載があるが,他方,《A1》の質問調書(乙5)中には,《A1》自身,受注予定者と思われる鹿島道路が自社の官積を渡してくる以上,その官積以上で入札して鹿島道路の落札に協力してほしいということだろうと思った旨を供述したとの記載があり,鹿島道路・《H》の質問調書(乙7の1)中には,鹿島道路・《H》は《A1》と面談した際,鹿島道路の官積を交付し,官積以上で応札するよう依頼した旨を供述したとの記載があるので,上記《A1》の供述及び陳述記載と,上記《A1》の質問調書中の供述記載及び上記鹿島道路・《H》の質問調書中の供述記載との信用性を比較することとする。
この点,前記前提事実及び認定事実によれば,①原告も鹿島道路も本件基本合意に参加しており,本件工事は本件基本合意の対象となる工事であることが認められる上,②《A1》は,前田道路・《B》から,原告が本件災害復旧工事(原告が入札に参加する4件の工事を含む。)のいずれについても受注予定者とならないことを聞かされていたことが認められるから,調整役や本件工事の受注予定者から,本件工事に係る受注調整のために何らかの接触があると考えるのが自然であること,③《A1》は,8月11日鹿島道路・《H》と面談した際,原告の官積と鹿島道路の官積とを交換したことが認められるが,入札価格を推知させることにつながる官積の交換自体,特段の事情がない限り,自由な競争の下での入札行為とは相容れないこと,④1回目の入札における原告の入札価格は18億3200万円であり,鹿島道路の官積よりは高いものであったことが認められる。これらの事情を総合すれば,上記《A1》の質問調書中の供述記載及び上記鹿島道路・《H》の質問調書中の供述記載は十分信用するに足りると解するのが相当であり,他方で,上記《A1》の供述及び陳述記載は採用することができないから,結局,《A1》は,本件工事の受注予定者であると認識した鹿島道路の担当者《H》から,本件工事につき,鹿島道路の官積以上の金額で本件工事に入札するよう,明示的又は黙示的に依頼を受けたと認定するのが相当である。
したがって,この点についての原告の上記主張は採用することができない。
2 本件基本合意が「不当な取引制限」(法2条6項,7条の2第1項)に該当し,また「役務の対価に係るもの」(同項1号)に該当することについて
⑴ 本件基本合意が「不当な取引制限」(法2条6項,7条の2第1項)に該当すること
ア 本件基本合意をした20社がいずれも道路工事,舗装工事,土木建築工事等の施工を請け負う事業を営む者であることは,前記前提事実記載のとおりであるから,20社は「事業者」(法2条6項)に該当する。
イ 20社の間に存在する本件基本合意は,本件災害復旧工事につき受注予定者を決定し,受注すべき価格は受注予定者が定め,受注予定者以外の者は受注予定者が定めた価格で受注できるよう協力するという内容の取決めであることは,前記認定事実記載のとおりであるところ,20社は,本来的には入札に参加するか否か及びこれに参加する場合の入札価格を自由に決めることができるはずであるにもかかわらず,このような取決めがされたときはこれに制約されて意思決定を行うことになるという意味において,事業活動が事実上拘束される結果となることは明らかであるから,本件基本合意は「その事業活動を拘束」(法2条6項)するものである。
ウ 本件基本合意の成立により,20社の間に,上記の取決めに基づいた行動をとることを互いに認識し認容して歩調を合わせるという意思の連絡が形成されたものといえるから,本件基本合意は「共同して…相互に」(法2条6項)その事業活動を拘束するものである。
エ 法2条6項にいう「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」とは,一定の入札市場における受注調整の基本的な方法や手順等を取り決める行為によって競争制限が行われる場合には,当該取決めによって,その当事者である事業者らがその意思で当該入札市場における落札者及び落札価格をある程度自由に左右することができる状態をもたらすことをいうものと解される(平成24年最高裁判決参照)。
そして,前記前提事実及び認定事実によれば,本件基本合意には,本件災害復旧工事に競争参加資格確認申請を行った事業者(22社)のほとんどである20社が参加していたこと,本件災害復旧工事12件の全てにおいて本件基本合意に基づく受注調整が行われたこと,本件災害復旧工事のうち本件工事を除く11件については受注予定者が落札し,その落札率は11件平均で約94.62%と高いものであったこと,本件工事についても,当初の受注予定者とされた鹿島道路の入札が必要書類の添付漏れのために無効とならなければ,同社が落札していたことが認められ,これらの事情によれば本件基本合意は「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」(法2条6項)ものに該当するというべきである。
オ そして,前記前提事実及び認定事実によれば,入札談合に係る本件基本合意は,本件災害復旧工事の請負金額の上昇を招いていることが推認できるから,「公共の利益に反して」(法2条6項),一定の取引分野における競争を実質的に制限するものであることは明らかである。
カ したがって,本件基本合意は「不当な取引制限」(法2条6項,7条の2第1項)に該当する。
⑵ 前記前提事実により認められる本件基本合意の内容からすれば,本件基本合意が「役務の対価に係るもの」(法7条の2第1項1号)であることは明らかである。
3 本件の争点(本件工事が「当該商品又は役務」(法7条の2第1項)に当たるか。)について
⑴ 法7条の2第1項所定の課徴金の対象となる「当該商品又は役務」とは,本件のように基本合意と個別調整により構成される入札談合の事案においては,①基本合意の対象とされた工事であって,②基本合意に基づく受注調整等の結果,③具体的な競争制限効果が発生するに至ったものをいうと解するのが相当であり(平成24年最高裁判決参照),また,法が定める課徴金の制度が,不当な取引制限等の摘発に伴う不利益を増大させてその経済的誘因を小さくし,不当な取引制限等の予防効果を強化することを目的として,刑事罰の定めや損害賠償制度に加えて設けられたものであることに鑑みると, 上記②の要件にいう受注調整手続等は,課徴金の賦課対象となる事業者が直接又は間接に関与したものであることを要するというべきである。
⑵ア これを本件についてみるに,上記①の要件につき,本件工事が本件基本合意の対象となった本件災害復旧工事の1つであることは,前記認定・説示のとおりである。
イ 上記②の要件について
(ア) 前記前提事実及び認定事実によれば,a.《A1》は,前田道路・《B》から依頼を受け,本件工事を含む本件災害復旧工事につき,下位8社のうち自ら調整役である世紀東急工業・《E》に対して受注予定者の受注に協力する旨伝えた伊藤組及び奥村組土木興業を除く6社の各担当者から,入札予定,技術評価点の予測値及び官積を聴取し,これを調整役である前田道路・《B》に報告するとともに,上記6社のうち北川ヒューテックを除く5社に対しては,本件災害復旧工事につき受注の割当がない旨を説明するなど,取りまとめ役を果たしたこと,b.原告は,調整役の依頼を受け,当初は入札への参加を予定していなかった本件工事につき競争参加資格確認申請を行い,本件工事の受注予定者となった鹿島道路と官積を交換し,鹿島道路・《H》から,鹿島道路の官積以上の金額で本件工事に入札するよう,明示的又は黙示的な依頼を受けたこと,c.原告は,1回目の入札において鹿島道路の官積以上の金額で入札したことが認められるから,これらの事情によれば,原告は,本件工事に係る1回目の入札に向けた受注調整手続に直接関与したというべきである。
(イ) これに対し,原告は,1回目の入札以前の受注調整においては,受注予定者ないし第2順位の受注予定者ではなく,調整役から指示されるまま数合わせのために入札に参加した事業者に過ぎないから,受注調整手続に実質的に関与したということはできないなどと主張する。
しかし,本件のように基本合意と個別調整により構成される入札談合の事案においては,自ら受注すべき価格を定めた上,(自ら又は調整役を通じて)落札・受注に向けた受注調整手続を行う受注予定者と,受注予定者がその定めた価格で受注できるよう協力する受注予定者以外の事業者とがいて,初めて企図したとおりの談合が成立するものである。したがって,自己以外の受注予定者に落札させることを目的として,基本合意の存在を認識しつつ個別の受注調整手続に直接又は間接に関与した事業者は,自らが受注予定者でないとの一事をもって,受注調整手続に関与した者であることを否定することはできないものというべきである。仮に,原告が主張するとおり,受注調整手続に直接又は間接に関与したといえるためには,自らが受注予定者ないし第2順位の受注予定者であることを要するとの解釈によるとすると,例えば,入札の際に受注予定者であった者が書類不備や最低制限価格を下回る等の理由で失格となり,次順位の事業者(基本合意の参加者であり,受注予定者が落札できるよう受注調整に協力していた者とする。)が落札したような場合に,当該落札者に課徴金を課すことができなくなるが,このような帰結は,課徴金制度の趣旨に照らし不当であるというべきである。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
ウ 上記③の要件について
(ア) 前記前提事実及び認定事実によれば,a.1回目の入札までに行われた受注調整の結果,本件工事について,20社は自由かつ自主的な判断で入札に参加するか否か及び参加する場合の入札価格を決めることができない状況にあったこと,b.20社のうち本件工事につき競争参加資格確認申請を行った事業者は,受注予定者とされた鹿島道路,同社が受注できるよう協力するとした原告及び大林道路のみであること,c.実際にも,原告は鹿島道路の官積を認識しつつその額より高い金額で入札することにより,大林道路は本件工事の入札を辞退することにより,いずれも鹿島道路に協力したこと,d.本件基本合意に参加していない《F》株式会社及び《G》株式会社は,本件工事の入札にも参加しなかったことが認められ,これらの事情を併せ考慮すれば,本件工事の入札市場においては,1回目の入札までの受注調整の結果として,具体的な競争制限効果が発生していたと認定するのが相当である。
(イ) そして,前記前提事実及び認定事実によれば,本件工事については,鹿島道路の入札が書類不備のため無効となり,原告の入札価格も契約制限価格を超過していたため,1回目の入札では落札者が決まらず,再入札が行われることになったこと,その時点では,再入札の定めにより,1回目の入札が無効となった鹿島道路,当該入札を辞退した大林道路及びそもそも本件工事の競争参加資格確認申請をしていないその他の事業者は再入札に参加できず,結局,原告のみが本件工事の再入札に参加することができたことが認められる。
(ウ) 以上によれば,再入札の時点で,1回目の入札までの受注調整の影響が消失し完全な競争状態に移行したと認めることは困難であるというべきであるのみならず,原告の再入札による本件工事の落札率は96.47%と極めて高いことは,前記認定事実記載のとおりであるから,これらの事情を総合すると,本件基本合意に基づく1回目の入札までの受注調整の結果,再入札の時点でも,具体的な競争制限効果が発生していたと認定するのが相当である。
(エ) これに対し,原告は,再入札に参加する事業者にとって1回目の入札以前の受注調整は行動の基準にならないから,再入札の際に,1回目の入札以前の受注調整による競争制限効果が残存しているということはできないなどと主張するが,本件基本合意に基づく受注調整の結果,原告のみが本件工事の再入札に参加することができたことは,上記認定・説示のとおりであり,原告にとって1回目の入札以前の受注調整が行動の基準にならないことは,具体的な競争制限効果が発生していたことを認定する妨げとはならないから,原告の上記主張は採用することができない。
(オ) また,原告は,1回目の入札までの受注調整の結果生じた競争制限効果を認識しつつ利用する意思はなかったなどと主張する。
このような認識及び意思が必要であるか否かはさておき,仮にこれらが必要であるとしても,前記認定事実及び証拠(証人《A1》)によれば,《A1》は,①大有建設,東京鋪装工業,竹中道路,地崎道路及び北川ヒューテックの入札予定を聴取して前田道路・《B》に報告した際,これらの事業者の中には,本件工事への入札を予定している事業者はいないことを認識していたこと,②前田道路・《B》から,原告の入札先を東北道・福島(上り)に変更するよう依頼を受けたことから,本件工事への入札に参加する事業者が少ない可能性があることを認識していたこと,③本件工事の受注予定者が鹿島道路であることを認識し,1回目の入札では当然同社が落札すると予想していたにもかかわらず,NEXCO東日本東北支社から原告の入札価格が最低入札価格であった旨の通知を受け,鹿島道路が失格した可能性があることを認識していたことが認められる上,④最終的に,原告の再入札価格は16億5000万円であり,落札率は96.47%と非常に高いものであったことが認められる。これらの事情を総合すれば,《A1》は,再入札の時点で,原告が再入札に参加すれば,さしたる競争もないまま本件工事を落札できる可能性が高いことを認識し,その状況を利用する意思があったと推認するのが相当であるから,上記認識及び意思は備わっていたというべきである。
したがって,この点についての原告の上記主張も採用することができない。
⑶ 小括
よって,本件工事は本件基本合意の対象であり,原告が直接関与した受注調整手続の結果,具体的な競争制限効果が発生したと認められるから,本件工事は「当該商品又は役務」(法7条の2第1項)に該当する。
4 その他の処分要件について
⑴ 課徴金の額の算定について
前記前提事実及び認定事実によれば,原告が本件基本合意に基づき最初に本件工事に入札した入札日である8月23日から,本件災害復旧工事の全ての入札が終了した9月20日までが,原告の本件基本合意の「実行期間」(法7条の2第1項)であるというべきであること,この間の本件工事の「売上額」(法7条の2第1項)は17億3250万円であることが認められる。
そして,前記前提事実によれば,原告は,この間を通じて建設業に属する事業を主たる事業として営む者で,その資本金は3億円以下であり,かつ本件の調査開始日である平成27年1月28日の1月前の日までに本件基本合意を取りやめ,その違反行為に係る実行期間は2年未満であることが認められるから,原告に適用される課徴金の算定率は100分の3.2である(法7条の2第1項,第5項及び第6項)。
したがって,原告に納付を命じるべき課徴金の額は,5544万円(=17億3250万円×3.2/100)となる。
⑵ 手続の実施について
被告が法第8章第2節に規定された手続に従って本件命令を行ったことは,前記前提事実記載のとおりである。
5 結論
以上によれば,本件命令は処分要件を全て満たしており適法であると認められ,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。

平成30年11月8日

東京地方裁判所民事第8部
裁判長裁判官  大竹昭彦
裁判官  松山美樹
裁判官  太田慎吾

(別紙2 省略)
注釈 《 》部分は,公正取引委員会事務総局において原文に匿名化等の処理をしたものである。

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