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王子コーンスターチ㈱ほか2名に対する件

独禁法66条3項及び独禁法66条2項(独禁法3条後段、独禁法7条の2)

平成25年(判)第30号ないし第35号

審判請求一部認容審決(被審人3名のうち2名の審判請求を棄却し,1名の審判請求を認容する審決)

東京都中央区銀座四丁目7番5号
被審人 王子コーンスターチ株式会社
同代表者 代表取締役 《 氏 名 》
同代理人 弁 護 士 岩 下 圭 一
同          佐 藤 水 暁
東京都中央区明石町8番1号
被審人 株式会社J-オイルミルズ
同代表者 代表取締役 《 氏 名 》
同代理人 弁 護 士 宇都宮 秀 樹
同          横 田 真一朗
同          大 野 志 保
同          高 宮 雄 介
愛知県知多郡美浜町大字河和字上前田18番地
被審人 加藤化学株式会社
同代表者 代表取締役 《 氏 名 》
同代理人 弁 護 士 洞 雞 敏 夫
同          大 軒 敬 子

公正取引委員会は,上記被審人3社に対する私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成25年法律第100号)附則第2条の規定によりなお従前の例によることとされる同法による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)(以下「独占禁止法」という。)に基づく排除措置命令審判事件及び課徴金納付命令審判事件について,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う公正取引委員会関係規則の整備に関する規則(平成27年公正取引委員会規則第2号)による廃止前の公正取引委員会の審判に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第8号)(以下「規則」という。)第73条の規定により審判長審判官齊藤充洋から提出された事件記録,規則第75条の規定により審査官並びに上記被審人3社のうち被審人王子コーンスターチ株式会社及び被審人株式会社J-オイルミルズ(以下「被審人2社」という。)から提出された各異議の申立書並びに独占禁止法第63条及び規則第77条の規定により被審人2社から聴取した陳述に基づいて,同審判官から提出された別紙審決案を調査し,次のとおり審決する。

主文
1 平成25年7月11日付けの排除措置命令(平成25年(措)第10号)のうち,被審人加藤化学株式会社に関する部分を取り消す。
2 平成25年7月11日付けの課徴金納付命令(平成25年(納)第34号)を取り消す。
3 被審人王子コーンスターチ株式会社及び被審人株式会社J-オイルミルズの各審判請求をいずれも棄却する。

理由
1 当委員会の認定した事実,証拠,判断及び法令の適用は,後記第2項のとおり改めるほかは,いずれも別紙審決案の理由第1ないし第8と同一であるから,これらを引用する。
2 別紙審決案を以下のとおり改める(頁数は,同審決案の頁数を指す。)。
(1) 上記審決案の理由第6の1(3)オ(ア)中(66頁30行目から31行目にかけて)の「平成23年12月20日」を「平成22年12月20日」に改める。
(2) 同(4)ウ(72頁18行目から76頁30行目まで)を次のように改める。
「ウ 本件会食について
(ア) 前記イを踏まえて,次に,被審人加藤の《K1》が,被審人加藤の《K2》と共に出席した日本食品の《G1》との本件会食において,かねてからの8社の協調関係等から,本件合意が成立したことを知った上で,「足は引っ張らない」と述べて,他のコーンスターチメーカーと同様に段ボール用でん粉の価格を引き上げていく意向であることを表明したという審査官主張の前記アの①の事実について検討する。
(イ) まず,前記(1)エ(ウ)のとおり,被審人加藤の《K1》及び被審人加藤の《K2》は,日本食品の《G1》の誘いを受け,本件会合の3日後に当たる平成22年11月8日,日本食品の《G1》と本件会食をしているところ,証拠(査15,査96,査99,査100,査102,査107ないし査111,査149)によれば,日本食品の《G1》が,本件会食の際,被審人加藤の《K1》及び被審人加藤の《K2》に対し,少なくとも,段ボール用でん粉の市場の状況(とうもろこしのシカゴ相場が上昇しており,値上げをする必要があること)のほか,コーンスターチメーカー各社とも値上げすると言っていることを話した上で,被審人加藤の値上げについての意向を確認したところ,被審人加藤の《K1》は,被審人加藤の値上げの意向について話をし,これを聞いた日本食品の《G1》は,被審人加藤による値上げの意向が本件会合において一致した6社による1次値上げの方針の妨げにはならないものと認識したものと認めるのが相当である。
(ウ) 一方で,前記イのとおり,日本食品の《G1》は,被審人加藤の《K1》及び被審人加藤の《K2》に対し,本件会合において6社の担当者の間で1次値上げにおける段ボール用でん粉の価格の引上げ額等について意見が一致したことはもとより,平成22年11月5日に6社が本件会合を開催したという事実すら知らせなかったというのである。
そうすると,審査官が主張するように,段ボール用でん粉の取引における段ボールメーカーの交渉姿勢等から,段ボール用でん粉の値上げが複数回となりやすいこと,値上げ後にはその価格を維持する必要があること,その他,前記(2)ア((1)ア)のような8社の以前の協調関係を考慮したとしても,担当者である被審人加藤の《K1》及び被審人加藤の《K2》が,本件会食における日本食品の《G1》の言動その他から,本件会合において6社の担当者の間で,段ボール用でん粉の需要者渡し価格の引上げ額については1キログラム当たり10円以上とし,実施時期については遅くとも平成23年1月1日納入分から実施することで意見が一致していたことを認識したとまで認めるに足りないといわざるを得ず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
また,仮に,審査官が主張するように,本件会食の際,被審人加藤の《K1》及び被審人加藤の《K2》において,6社がとうもろこしのシカゴ相場に応じて段ボール用でん粉の値上げを協調してすることとしたという認識を持つことが可能であったとしても,前記イのとおり,被審人加藤は,平成21年10月頃から,安値での売込みにより,他のコーンスターチメーカーの取引先を奪うなど,過去の協調関係から逸脱する行動をとっていたこと,また,そのために,被審人加藤の担当者は本件会合に誘われなかったこと,さらに,日本食品の《G1》は,本件会食において,被審人加藤の《K1》及び被審人加藤の《K2》に対し,本件会合の開催の事実すらも知らせなかったことなどからすると,被審人加藤は,本件会食の時点において,6社と協調して段ボール用でん粉の値上げを行っていくという関係にはなかったものと認めるのが相当であり,そうすると,審査官の主張するように,被審人加藤の《K1》が,本件会食において,被審人加藤も6社及び被審人Jオイルと協調して段ボール用でん粉の価格を引き上げていく意向を表明したとまで認めるのは困難である。
なお,日本食品の《G1》は,上記のとおり,被審人加藤の《K1》が「足は引っ張らない」という発言をしたと供述した上で,この意味について,「同業他社が値上げしようとしている金額より低い価格で申入れを行ったりして他社の値上げを邪魔するようなことはしないし,同じような額及び実施時期で加藤化学も値上げするということです。」と供述しているものの(査96),この供述は,被審人加藤の《K1》ないし被審人加藤の認識ではなく,被審人加藤の《K1》の発言を聞いた日本食品の《G1》の認識を示したものにすぎないことからすると,日本食品の《G1》の上記供述は,被審人加藤の《K1》が,本件会食において,被審人加藤も6社及び被審人Jオイルと協調して段ボール用でん粉の価格を引き上げていく意向であることを表明したとは認められないという上記の判断を左右するものではない。
(エ) 以上によれば,被審人加藤の《K1》が,本件会食において,本件会合の開催や本件合意の成立を認識した上で,被審人加藤も同様に段ボール用でん粉の価格を引き上げていく意向であることを表明したと認めるに足りる証拠はない。」
3 よって,被審人2社に対し,独占禁止法第66条第2項及び規則第78条第1項の規定により,被審人加藤化学株式会社に対し,独占禁止法第66条第3項及び規則第78条第1項の規定により,主文のとおり審決する。

令和元年9月30日

公正取引委員会
委員長  杉 本 和 行
委 員  山 本 和 史
委 員  三 村 晶 子
委 員  青 木 玲 子
委 員  小 島 吉 晴

別紙

平成25年(判)第30号ないし第35号

審   決   案

東京都中央区銀座四丁目7番5号
被審人 王子コーンスターチ株式会社
同代表者 代表取締役 《 氏 名 》
同代理人 弁 護 士 岩 下 圭 一
同          佐 藤 水 暁
東京都中央区明石町8番1号
被審人 株式会社J-オイルミルズ
同代表者 代表取締役 《 氏 名 》
同代理人 弁 護 士 宇都宮 秀 樹
同          横 田 真一朗
同          大 野 志 保
同          高 宮 雄 介
愛知県知多郡美浜町大字河和字上前田18番地
被審人 加藤化学株式会社
同代表者 代表取締役 《 氏 名 》
同代理人 弁 護 士 洞 雞 敏 夫
同          大 軒 敬 子

上記被審人3社に対する私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成25年法律第100号)附則第2条の規定によりなお従前の例によることとされる同法による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)(以下「独占禁止法」という。)に基づく排除措置命令審判事件及び課徴金納付命令審判事件について,公正取引委員会から独占禁止法第56条第1項及び私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う公正取引委員会関係規則の整備に関する規則(平成27年公正取引委員会規則第2号)による廃止前の公正取引委員会の審判に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第8号)(以下「規則」という。)第12条第1項の規定に基づき担当審判官に指定された本職らは,審判の結果,次のとおり審決することが適当であると考え,規則第73条及び第74条の規定に基づいて本審決案を作成する。

主     文
1 平成25年7月11日付けの排除措置命令(平成25年(措)第10号)のうち,被審人加藤化学株式会社に関する部分を取り消す。
2 平成25年7月11日付けの課徴金納付命令(平成25年(納)第34号)を取り消す。
3 被審人王子コーンスターチ株式会社及び被審人株式会社J-オイルミルズの各審判請求をいずれも棄却する。

理     由
第1 審判請求の趣旨(以下の用語のうち,別紙の「用語」欄に掲げるものの定義は,同「定義」欄に記載のとおりである。)
1 被審人王子コンス
(1) 平成25年(判)第30号審判事件
平成25年(措)第10号排除措置命令の全部の取消しを求める。
(2) 平成25年(判)第33号審判事件
平成25年(納)第32号課徴金納付命令の全部の取消しを求める。
2 被審人Jオイル
(1) 平成25年(判)第31号審判事件
平成25年(措)第10号排除措置命令の全部の取消しを求める。
(2) 平成25年(判)第34号審判事件
平成25年(納)第33号課徴金納付命令の全部の取消しを求める。
3 被審人加藤
(1) 平成25年(判)第32号審判事件
平成25年(措)第10号排除措置命令の全部の取消しを求める。
(2) 平成25年(判)第35号審判事件
平成25年(納)第34号課徴金納付命令の全部の取消しを求める。

第2 事案の概要(当事者間に争いのない事実又は公知の事実)
1 公正取引委員会は,8社が共同して,とうもろこしのシカゴ相場の上昇に応じて,段ボール用でん粉の需要者渡し価格(以下,文脈上明らかな場合には単に「価格」ともいう。)を引き上げる旨を合意することにより,公共の利益に反して,我が国における段ボール用でん粉の販売分野における競争を実質的に制限していたものであって,この行為は独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,同法第3条の規定に違反するものであり,かつ,特に排除措置を命ずる必要があるとして,平成25年7月11日,被審人3社,敷島スターチ,三和澱粉及び日本澱粉に対し,平成25年(措)第10号排除措置命令書により排除措置を命じた(以下「本件排除措置命令」といい,同命令において認定された違反行為を「本件違反行為」という。)。
 上記排除措置命令書の謄本は,被審人3社に対し,同月12日にそれぞれ送達された。
2 公正取引委員会は,本件違反行為は独占禁止法第7条の2第1項第1号に規定する商品の対価に係るものであるとして,平成25年7月11日,被審人王子コンスに対し,平成25年(納)第32号課徴金納付命令書により6895万円の課徴金の納付を,被審人Jオイルに対し,平成25年(納)第33号課徴金納付命令書により5434万円の課徴金の納付を,被審人加藤に対し,平成25年(納)第34号課徴金納付命令書により4116万円の課徴金の納付を,それぞれ命じた(以下,上記被審人3社に対する各課徴金納付命令を併せて「本件各課徴金納付命令」という。)。
 上記各課徴金納付命令書の謄本は,被審人3社に対し,同月12日にそれぞれ送達された。
3 被審人Jオイルは,平成25年9月5日に,被審人王子コンス及び被審人加藤は,同月6日に,本件排除措置命令及び本件各課徴金納付命令の全部の取消しを求める各審判請求をした(平成25年(判)第30号ないし第35号)。

第3 前提となる事実(各項末尾に括弧書きで証拠を掲記した事実は当該証拠から認定される事実であり,その余の事実は当事者間に争いのない事実又は公知の事実である。なお,証拠の表記については,「第」及び「号証」を略し,単に「査○」,「審○」と記載する。)
1 被審人3社及び他の事業者5社
 被審人3社,敷島スターチ,三和澱粉,日本澱粉,日本食品及び日コンの8社は,それぞれ段ボール用でん粉の製造販売業を営む者(以下「コーンスターチメーカー」ともいう。)である。
2 段ボール用でん粉に係る取引
(1) 段ボールメーカー,コーンスターチメーカー及び商社の関係
 8社は,それぞれ,段ボールメーカーである《事業者A》(以下「《事業者A》」という。)や《事業者B》(以下「《事業者B》」という。)等に対し,段ボール用でん粉を,直接又は《事業者C》(以下「《事業者C》」という。)や《事業者D》(以下「《事業者D》」という。)といった商社を通じて販売していた。(査5,査6,査12,査17ないし査23,査27,査31,査35ないし査37)
(2) 段ボール用でん粉の価格交渉の方法
ア 段ボール用でん粉の価格は,8社が需要者である段ボールメーカーと交渉して定められていたが,8社と段ボールメーカーとの交渉は,8社がそれぞれ単独で行う場合のほか,8社から依頼を受けた商社が単独で行う場合,8社に商社が同行して行う場合があった。(査5,査6,査12,査17ないし査24,査26,査27,査31,査41,査85)
イ 段ボール用でん粉の価格を引き上げる場合の交渉は,8社ら各コーンスターチメーカーから段ボールメーカーに申し出る形で行われていた。
 段ボール用でん粉の価格の引上げについては,段ボールメーカー最大手の《事業者A》が価格の引上げを受け入れれば,他の段ボールメーカーもほぼ同様の内容でこれを受け入れるが,《事業者A》がこれを受け入れなければ,他の段ボールメーカーもこれを受け入れないという実情があった。ただし,《事業者B》は,《事業者A》に次いで大きなシェアを有していたことから,《事業者B》と各コーンスターチメーカーとの交渉が《事業者A》等との交渉に影響を与える場合もあった。
 各コーンスターチメーカーが《事業者A》に納入する段ボール用でん粉の価格は,各工場において購入する購入単価である「建値」と,《事業者A》が各コーンスターチメーカーに独自に負担させている金銭であって他の段ボールメーカーには適用されない「協力金」により構成されているところ,価格改定交渉の対象となるのは「建値」である。
 《事業者A》は,所在地が異なる全国の工場において段ボール用でん粉を購入していたが,各工場において購入する購入単価(建値)は共通とされており,購入量や運送費用等の違いは購入単価には反映されなかった。
 《事業者A》は,複数のコーンスターチメーカーから段ボール用でん粉を購入していたが,購入単価(建値)は原則として全コーンスターチメーカーに一律に適用され,購入量や運送費用等の違いは購入単価には反映されず,値上げについても,基本的に,同一の価格の引上げの幅及び実施時期でしか受け入れることはなかった。また,《事業者A》は,従来から,その時々の《事業者A》への納入トップシェアのコーンスターチメーカーとの価格交渉を優先しており,そのため,《事業者A》との価格交渉は,納入トップシェアのコーンスターチメーカーとの交渉が進まなければ,他のコーンスターチメーカーとの交渉も進まないという実情にあった。なお,8社のうち日本食品を除く7社は,いずれも《事業者A》に対して段ボール用でん粉を販売しており,上記7社のうち日コンが,平成23年2月末頃に《事業者A》との取引を打ち切るまでは,最も多くの段ボール用でん粉を《事業者A》に販売していた。
 《事業者A》は,とうもろこしのシカゴ相場の上昇等を背景とする段ボール用でん粉の値上げ交渉において,通常,各コーンスターチメーカーから申し入れられた額の一部しか値上げを認めなかった。また,値上げの交渉妥結までには一定の期間を要するのが通常であり,しかも,《事業者A》は値上げの実施時期を交渉妥結前まで遡らせることを認めなかったため,値上げの実施時期は当初各コーンスターチメーカーが申し入れた時期より遅くなるのが通例であった。そのため,各コーンスターチメーカーは,値上げの申入れから交渉妥結までの間にとうもろこしのシカゴ相場が上昇した場合,《事業者A》に認められなかった分の値上げや,値上げ交渉中のとうもろこしのシカゴ相場上昇分の値上げを求めて,引き続き,次の値上げ交渉を行っていた。
 (査5,査17,査19,査20,査24,査26ないし査32,査35,査36,査45,査46,査50,査65,査72,査85,査89,査103,査124,査166)
ウ 他方,価格を引き下げる場合の交渉は,段ボールメーカーから各コーンスターチメーカーに申し出る形で行われており,価格引下げの場合には,《事業者A》よりも先に《事業者B》との間で交渉が妥結することがあった。この場合には,《事業者A》との交渉も,先に妥結した《事業者B》との妥結内容と同様の内容で妥結した。(査27,査32ないし査34)
3 8社の段ボール用でん粉の製造販売におけるシェア
 8社は,我が国における段ボール用でん粉のほとんど全てを製造販売していた。(査35,査40,査41)
4 公正取引委員会による立入検査
 公正取引委員会は,平成24年1月31日,平成25年(措)第7号により措置を命じた事件において,8社のうち被審人Jオイルを除く7社の営業所等に独占禁止法第47条第1項第4号の規定に基づく立入検査を行った。
8社は,同日以降,以前のような情報交換を行っていない。
(査180,査181)
5 他の事業者の減免申請
 日コンは,本件違反行為について,独占禁止法第7条の2第10項第1号の規定する事実の報告及び資料の提出を行った事業者である。
6 被審人3社の売上額
(1) 被審人王子コンスの売上額
 審査官が被審人王子コンスの違反行為の実行期間であると主張する平成22年12月1日から平成24年1月30日までの間における段ボール用でん粉に係る被審人王子コンスの売上額は,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令(昭和52年政令第317号。以下「独占禁止法施行令」という。)第5条第1項の規定に基づき算定すると,21億5482万3256円である。
(2) 被審人Jオイルの売上額
 審査官が被審人Jオイルの違反行為の実行期間であると主張する平成22年12月1日から平成24年1月30日までの間における段ボール用でん粉に係る被審人Jオイルの売上額は,独占禁止法施行令第5条第1項の規定に基づき算定すると,6億7936万4588円である。
(3) 被審人加藤の売上額
 審査官が被審人加藤の違反行為の実行期間であると主張する平成23年1月1日から平成24年1月30日までの間における段ボール用でん粉に係る被審人加藤の売上額は,独占禁止法施行令第5条第1項の規定に基づき算定すると,12億8638万8803円である。

第4 争点
1 とうもろこしのシカゴ相場の上昇に応じて段ボール用でん粉の需要者渡し価格を引き上げる旨の合意の成否及びその不当な取引制限への該当性
2 本件違反行為の実行としての事業活動がなくなる日(被審人王子コンス)

第5 争点に係る双方の主張
1 争点1(とうもろこしのシカゴ相場の上昇に応じて段ボール用でん粉の需要者渡し価格を引き上げる旨の合意の成否及びその不当な取引制限への該当性)について
(1) 審査官の主張
ア 8社の間での合意
(ア) 8社のかねてからの協調関係
 8社は,かねてから,各社の営業部長級の者(以下「担当者」という。)らが会合を開催する,2社の担当者が面談する,電話するなどの方法により,繰り返し,段ボール用でん粉の価格の引上げの幅やその実施時期等を話し合うなどして,段ボール用でん粉の原料であるとうもろこしのシカゴ相場が上昇すると段ボール用でん粉の価格を引き上げるとの認識を共有し,協調関係を維持してきた。
 8社は,平成18年当初は比較的落ち着いていたとうもろこしのシカゴ相場が同年夏頃から上昇したため,同年秋頃からとうもろこしのシカゴ相場が下落を始める平成20年夏頃まで,段ボール用でん粉の価格の引上げの幅,その実施時期等について決定した上,段ボールメーカーとの値上げ交渉の状況について情報交換を行ったり,交渉方針について話し合ったりし,値上げ交渉が妥結すると,次の値上げにおける価格の引上げの幅,その実施時期等について決定するという行為を何度も繰り返した。
 また,8社は,とうもろこしのシカゴ相場が下落し始めると,段ボールメーカーから値下げの要請を受けることが予想されたことから,とうもろこしのシカゴ相場が上昇していた頃と同様,8社の担当者が出席する会合を開催するなどして,引き続き値上げの要請を行うこと,段ボールメーカーからの値下げの要請は受け入れないこと,平成21年3月中は値下げの要請を拒否することなどを決定し,協調関係を維持していた。
(イ) 平成22年夏以降の協調関係
 日コンの《E1》及び日コンの《E2》は,平成22年夏頃からのとうもろこしのシカゴ相場の上昇を受け,段ボール用でん粉の価格の引上げが必要であり,8社で共同して価格の引上げを行いたいと考えて,同年10月1日に被審人王子コンスの《F1》を,同月15日に日本食品の《G1》を,それぞれ訪ねて,段ボール用でん粉の価格の引上げが必要であるとの考えで一致していることを確認した。その上で,日コンの《E1》及び日コンの《E2》は,同月20日,再び被審人王子コンスの《F1》を訪ねて,日本食品の《G1》も加えた4名で,とうもろこしのシカゴ相場の上昇により,段ボール用でん粉の需要者渡し価格を引き上げる必要があることを確認し合い,価格の引上げの幅やその実施時期についてもおおむね意見のすり合わせをして,8社のうち被審人加藤を除いた7社で,同年11月5日に会合(本件会合)を開催することとした。
 なお,被審人Jオイルについては,被審人王子コンスの《F1》が,本件会合に先立ち,被審人Jオイルの《H1》に対し,本件会合を開催すること,本件会合において段ボール用でん粉の値上げについて各社の考え方を確認することなどを連絡したところ,被審人Jオイルの《H1》は,「会合には参加できないが,被審人Jオイルは会合で決まったことに従う」と述べた。
 また,被審人加藤については,平成21年10月頃から,安値攻勢により,従来日コンが段ボール用でん粉を納入してきた《事業者A》の一部の工場分の取引を奪うなどの状況があったことから,本件会合には呼ばれず,日本食品の《G1》が,会合後に,被審人加藤の担当者と会い,会合の内容を伝えて同社の意向を確認してくることとした。
(ウ) 本件会合
 平成22年11月5日,本件会合が開催された。
 本件会合に出席した被審人王子コンスの《F1》及び被審人王子コンスの《F2》,敷島スターチの《I1》,三和澱粉の《J1》及び三和澱粉の《J2》,日本澱粉の《L1》,日本食品の《G1》並びに日コンの《E1》及び日コンの《E2》は,本件会合において,とうもろこしのシカゴ相場が上昇している中,各社が段ボール用でん粉の需要者渡し価格について,引き上げるかどうか,価格の引上げの幅やその根拠,実施時期等を順番に発言した。各社の意見は,1キログラム当たり10円から13円の値上げを行いたいとするものであり,その内訳としては,原料価格上昇分として7円から8円,採算是正分が4円から5円というものであった。各社の担当者の発言の後,被審人王子コンスの《F1》が,各社の意見を総合して,段ボール用でん粉の需要者渡し価格の引上げ額については1キログラム当たり10円以上とする旨提案し,了承された。実施時期については,平成22年12月1日納入分からとしたい社と,平成23年1月1日納入分からとしたい社とがあり,遅くとも平成23年1月1日納入分から実施することで意見が一致した。
 また,被審人王子コンスの《F1》は,本件会合において,出席者らに対し,被審人Jオイルは本件会合に参加できなかったが,段ボール用でん粉の値上げについて我々と同じ行動を採る方針であることを説明した。
 さらに,日本食品の《G1》は,本件会合において,出席者らに対し,被審人加藤の考え方については後日確認する旨述べた。
(エ) 本件会合以降の被審人Jオイル及び被審人加藤の各担当者に対する連絡と被審人加藤の合意への参加
a 被審人王子コンスの《F1》は,本件会合が開かれた平成22年11月5日から同月18日頃までの間に,被審人Jオイルの《H1》に対し,「会合に出席した各社が,会合において,段ボール用でん粉の値上げを行うことで意見が一致し,遅くとも平成23年1月1日納入分から1キログラム当たり10円以上の値上げを行うことを決定した」旨伝えた。
b 日本食品の《G1》は,平成22年11月8日,被審人加藤の《K1》及び被審人加藤の《K2》と名古屋市千種区所在の飲食店において会食(本件会食)をして,とうもろこしのシカゴ相場が上昇しているので,コーンスターチメーカー各社が段ボール用でん粉の価格を1キログラム当たり10円以上引き上げたいと考えていることを伝えて,被審人加藤の意向を確認した。
 これに対し,被審人加藤の《K1》は,「足は引っ張らない」と述べて,同様に段ボール用でん粉の価格を引き上げていく意向であることを表明した。
 日本食品の《G1》は,その後,8社のうちの日本食品及び被審人加藤を除く各コーンスターチメーカーの担当者に対し,直接又は被審人王子コンスの《F1》若しくは日コンの《E2》を通じ,被審人加藤の上記意向を伝えた。
(オ) 8社による価格の引上げ行為
 8社は,平成22年11月5日の本件会合を始めとして,担当者らが会合を開催する,2社や3社の担当者が面談する等の方法により,次のaないしcのとおり,3回にわたって段ボール用でん粉の価格の引上げの幅等を具体的に決定し,その決定に沿って,相互に情報交換を行うなどした上で,それぞれ段ボールメーカーに対し,直接又は商社を通じて段ボール用でん粉の価格を引き上げる旨の申入れを行い,段ボール用でん粉の価格を引き上げていた。
a 平成22年11月5日頃,8社のうち被審人加藤及び被審人Jオイルを除く6社の担当者が話し合うなどして行った,遅くとも平成23年1月1日納入分から,価格を現行価格から1キログラム当たり10円以上引き上げる旨の決定(以下,この8社による平成22年11月5日頃からの段ボール用でん粉の価格の引上げについての段ボールメーカーとの交渉を「1次値上げ」という。)。
b 平成23年2月28日頃,被審人王子コンスの《F1》が,日コンの《E2》と話し合って行った,同年4月1日納入分から,価格を現行価格から1キログラム当たり8円以上引き上げる旨の決定(以下,この8社による同年2月28日頃からの段ボール用でん粉の価格の引上げについての段ボールメーカーとの交渉を「2次値上げ」という。)。
c 平成23年6月上旬頃,被審人王子コンスの《F1》が行った,同年7月1日納入分から,価格を現行価格から1キログラム当たり7円以上引き上げる旨の決定(以下,この8社による同年6月上旬頃からの段ボール用でん粉の価格の引上げについての段ボールメーカーとの交渉を「3次値上げ」といい,1次値上げ及び2次値上げと併せて「本件各値上げ」という。)。
イ 8社のうちの被審人加藤を除く7社による合意の成立
 8社のうちの被審人加藤を除く7社は,遅くとも本件会合が開かれた平成22年11月5日までに,段ボール用でん粉について,今後,とうもろこしのシカゴ相場の上昇に応じて,需要者渡し価格の引上げを共同して行っていく旨の合意(以下「本件合意」という。)をした。本件合意が成立したことは,前記アのとおり,上記7社がかねてから協調関係にあったこと,上記7社が,平成22年11月5日の本件会合を始めとして,担当者らが会合を開催する,2社や3社の担当者が面談する等の方法により,3回にわたって段ボール用でん粉の価格の引上げの幅等を具体的に決定し,その決定に沿って,相互に情報交換を行うなどした上で,それぞれ段ボールメーカーに対し,直接又は商社を通じて段ボール用でん粉の価格を引き上げる旨の申入れを行い,段ボール用でん粉の価格を引き上げていたことなどから明らかである。
 なお,前記ア(イ)のとおり,被審人Jオイルの《H1》は,平成22年11月5日の本件会合には出席しなかったものの,本件会合が開催される前に,被審人王子コンスの《F1》に対し,「会合には参加できないが,被審人Jオイルは会合で決まったことに従う」と伝え,被審人王子コンスの《F1》は,本件会合において,本件会合の他の出席者に対し,被審人Jオイルの上記のような意向を伝えていた。また,前記ア(エ)aのとおり,被審人Jオイルの《H1》は,本件会合から平成22年11月18日までの間に,被審人王子コンスの《F1》から,「会合に出席した各社が,会合において,段ボール用でん粉の値上げを行うことで意見が一致し,遅くとも平成23年1月1日納入分から1キログラム当たり10円以上の値上げを行うことを決定した」と伝えられ,その内容を認識した。その後,被審人Jオイルは,本件各値上げのいずれにおいても,8社とおおむね同様の時期に同様の内容で,段ボール用でん粉の価格の引上げの申入れを行うなどしていたほか,被審人Jオイルの《H1》は,①平成22年12月1日における《事業者A》と日コンとの交渉内容を日コンの《E2》から伝えられたり,②被審人王子コンスの《F1》及び《事業者C》の従業員である《C1》(以下「《事業者C》の《C1》」という。)と,平成23年6月20日及び同年7月12日に,3次値上げの交渉に向けて懇親を深めるなどして,《事業者A》の値上げに対する反応や《事業者B》への申入れ状況等について情報交換を行ったり,③平成24年1月18日に日コンの《E2》から《事業者A》からの値下げ要求の有無を電話で聞かれたりするなどの情報交換を行った。以上に加え,被審人Jオイルが,かねてから被審人Jオイルを除く前記7社と協調関係にあり,被審人Jオイルが協調関係から離脱したと主張する平成20年春頃以降も,協調関係は維持されていたことからすると,被審人Jオイルが遅くとも平成22年11月5日までに6社と共に本件合意をしたことは明らかである。
ウ 被審人加藤が本件合意に参加したこと
 被審人加藤の担当者は平成22年11月5日に開催された本件会合に招かれず,これに出席しなかったことから,日本食品の《G1》が,後日,被審人加藤の担当者に本件会合の内容を伝えて被審人加藤の意向を確認することとされた。
 日本食品の《G1》は,本件会合後の平成22年11月8日,被審人加藤の《K1》及び被審人加藤の《K2》と本件会食をし,同人らに対し,「とうもろこしのシカゴ相場が上昇しているので原料上昇分は値上げしたい」旨を述べた上で,「コーンスターチメーカー各社とも10円以上値上げすると言っています,加藤さんはどうしますか。」と尋ねたところ,被審人加藤の《K1》から,「足は引っ張らない」旨の回答を得たことから,被審人王子コンスの《F1》や日コンの《E2》などに,被審人加藤の上記のような意向を伝えた。
 そして,被審人加藤の《K1》及び被審人加藤の《K2》は,被審人加藤を含む8社がかねてから協調関係にあり,段ボール用でん粉の価格について,8社の担当者との間で情報交換等を行っていたことのほか,段ボール用でん粉の取引における段ボールメーカーの交渉姿勢や過去の段ボール用でん粉の値上げの経緯等から,平成22年11月8日の日本食品の《G1》との本件会食における同人の上記発言により,コーンスターチメーカー各社が今回のとうもろこしのシカゴ相場の上昇に対しても従来同様に共同して値上げをしていくこととしたこと,つまり本件合意が成立したことを知り,その上で,日本食品の《G1》に対し,被審人加藤も本件合意に参加する旨を表明したものと認められる。
 また,被審人加藤は,本件会食以降,本件各値上げのいずれにおいても,8社とおおむね同様の時期に同様の内容で,段ボール用でん粉の価格の引上げの申入れを行うなどしていたほか,その値上げの交渉状況等につき,他のコーンスターチメーカーの担当者と情報交換をしていた。
 以上によれば,被審人加藤が平成22年11月8日までに本件合意に参加したことは明らかである。
エ 本件合意が不当な取引制限に該当すること
(ア) 不当な取引制限の要件
 独占禁止法第2条第6項に規定される不当な取引制限が成立するためには,複数の事業者が「共同して・・・相互にその事業活動を拘束し,又は遂行すること」(以下「行為要件」ともいう。)及び公共の利益に反して「一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」(以下「効果要件」ともいう。)を要する。
(イ) 本件合意が「共同して・・・相互にその事業活動を拘束」するものであること
a 独占禁止法第2条第6項の「共同して」に該当するというためには,複数の事業者が対価を引き上げるに当たって,相互の間に「意思の連絡」があったと認められることが必要である。ここでいう「意思の連絡」とは,複数事業者間で相互に同内容又は同種の対価の引上げを実施することを認識ないし予測し,これと歩調をそろえる意思があることを意味し,一方の対価引上げを他方が単に認識,認容するのみでは足りないが,事業者間相互で拘束し合うことを明示して合意することまでは必要ではなく,相互に他の事業者の対価の引上げ行為を認識して,暗黙のうちに認容することで足りる。
 この点,8社は,従前の協調関係を前提に,平成18年夏頃からのとうもろこしのシカゴ相場の上昇を受け,段ボール用でん粉の価格の引上げの幅やその実施時期等を共同して決定し,それに沿って各社が値上げを申し入れた後は,交渉状況や交渉方針等について話し合うなどし,交渉が妥結すると次の値上げにおける価格の引上げの幅,その実施時期等を決定するという一連の行為を行っており,これを,とうもろこしのシカゴ相場が下落してコーンスターチメーカー各社が共同して段ボールメーカーからの値下げ要請に抵抗してもこれに応じざるを得なくなるまで継続していたのであり,この経験から,この時とおおむね同様の行動をとれば同業他社と歩調をそろえて値上げ活動ができるという共通認識を有していた。
 その上で,8社のうちの被審人加藤を除く7社は,平成22年11月5日までに,今後,とうもろこしのシカゴ相場の上昇に応じて,段ボール用でん粉の価格の引上げを共同して行っていくという本件合意をし,被審人加藤も,本件合意に参加したのであって,8社は,相互に同内容又は同種の対価の引上げを実施することを認識ないし予測し,これと歩調をそろえる意思があったといえるから,本件合意は「意思の連絡」に該当する。
 そして,8社の間に「意思の連絡」があったことは,平成22年夏頃以降,被審人3社を含む8社が,具体的な価格の引上げの幅やその実施時期を決めて,それに従って各社がそれぞれ《事業者A》を始めとする段ボールメーカーに対して直接又は商社を通じて段ボール用でん粉の価格を引き上げる旨の申入れや,価格交渉を行うとともに,これらの申入れや交渉に際して,相互にその状況等について情報交換をしたり,交渉を進めるための方策について話し合ったりしていたなど,被審人3社を含む8社が,歩調をそろえて値上げ活動を行い,また,段ボールメーカーからの値下げの要請に抵抗していたことからも明らかである。
 なお,被審人3社は,本件合意の内容が,段ボール用でん粉の価格の引上げの幅やその実施時期等を含まない抽象的なものであるとして,不当な取引制限の要件を満たさないなどと主張するが,価格の引上げの幅やその実施時期等が本件合意の内容に含まれていないという一事をもって不当な取引制限の行為要件を満たさないとすべきものではない。本件合意は,その内容自体からして,不当な取引制限の行為要件を満たすといえる上,被審人3社を含む8社は,平成18年夏頃から共同して値上げに取り組んだという共通の経験等を有していたこと,実際にも,具体的な段ボール用でん粉の価格の引上げの幅やその実施時期等を決めて,それに沿って各社がそれぞれ《事業者A》を始めとする段ボールメーカーに対して直接又は商社を通じて段ボール用でん粉の価格を引き上げる旨の申入れや,相互にその状況等について情報交換をしたり,交渉を進めるための方策について話し合っていたりしていたことからすると,本件合意は競争の実質的制限をもたらし得る程度に将来の行動に関する相互予測を可能とするものであったといえるから,本件合意が不当な取引制限の要件を満たすことは明らかである。
b また,「相互にその事業活動を拘束し」とは,本来自由であるべき各事業者の事業活動を相互に制約することをいい,拘束の程度としては実効性を担保するための制裁等の定めがある必要はなく,事業活動が事実上相互に拘束されることで足りる。
 そして,8社は,本件合意により,本来自由に決定することができる段ボール用でん粉の価格に係る意思決定等を制約されることになるから,本件合意は,8社の事業活動を相互に拘束するものであり,「相互にその事業活動を拘束」するという要件を満たす。本件合意が8社の事業活動を拘束するものであったことは,本件各値上げの決定及び申入れ等を通じて,現に8社がとうもろこしのシカゴ相場の上昇に応じて歩調をそろえた行動をとっていたことからも明らかである。
(ウ) 本件合意が競争を実質的に制限するものであること  
 独占禁止法第2条第6項にいう「一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」とは,当該取引に係る市場が有する競争機能を損なうことをいい,一定の取引分野における競争を完全に排除し,価格等を完全に支配することまでは必要なく,一定の取引分野における競争自体を減少させ,特定の事業者又は事業者集団がその意思で,ある程度自由に,価格,品質,数量,その他各般の条件を左右することによって,市場を支配することができる状態をもたらすことで足り,このような趣旨における市場支配的状態を形成・維持・強化することをいう。
 本件では,我が国における段ボール用でん粉のほとんど全てを製造販売する8社が,共同して,当該商品について,今後,とうもろこしのシカゴ相場の上昇に応じて価格の引上げを行っていく旨の本件合意を行っていたものであり,このような地位にある8社がかかる合意を行うこと自体,市場における競争機能を損ない,市場支配的状態をもたらすもの,すなわち我が国における段ボール用でん粉の販売分野における競争を実質的に制限するものといえる。
(エ) まとめ
 以上によれば,被審人王子コンスを含む6社及び被審人Jオイルが本件合意をし,これに被審人加藤が参加しており,また,本件合意は,独占禁止法第2条第6項に規定される不当な取引制限の各要件を満たすから,不当な取引制限に該当する。
(2) 被審人3社の主張
ア 被審人王子コンスの主張
(ア) 8社によって本件合意がされていないこと
a 本件合意の存在を示すという審査官主張の事実が認められないこと
(a) 8社のかねてからの協調関係は存在しないこと
 8社は,平成18年以前から,市場における競争事業者であるが,一方で,相互に密接な取引をする相手であり,8社の間では,常時,段ボール用でん粉を始めとする多様な商品を他社に供給するOEM取引又は商品の融通等の商取引に関する条件交渉若しくは履行交渉等が行われていた。そして,段ボール用でん粉の製造原価は,原料となるとうもろこしの価格が占める比率が6割から7割に達する商品であり,原料価格が高騰すれば各社ともに段ボール用でん粉の価格への転嫁を考慮せざるを得なかったことから,8社間の商談では常に原料となるとうもろこしの価格の動向を踏まえた交渉が繰り返されていた。
 また,8社は,平成18年に成立し,平成19年から施行されることになった「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」に基づき,コーンスターチ用とうもろこしの輸入業者等が国内産いもでん粉等との内外価格差を是正するために負担する調整金制度などについて,8社が加盟している日本スターチ・糖化工業会のコンス委員会において説明したり,8社の担当者が勉強会等の会合を開催したりしていた。
このように,かねてから,8社の担当者が会合を開催する,2社間で面談する,電話するなどの事実があったことは認めるが,段ボール用でん粉の値上げや値下げ要請についての情報交換が行われていたわけではなく,審査官が主張するような,段ボール用でん粉の価格の引上げに関する協調関係は存在しなかった。
(b) 平成22年夏頃以降の協調関係も存在せず,本件合意も成立していないこと
 被審人王子コンスの《F1》が平成22年10月以降に他社の担当者を訪問したり,連絡を取ったりしたことは認めるが,これは,OEM取引の商談を目的としたものである。
 また,被審人王子コンスの《F1》及び被審人王子コンスの《F2》を含む6社の担当者が出席した本件会合が平成22年11月5日に開かれたことは認めるが,本件会合では,以前から議論されてきた段ボール用でん粉の価格交渉における段ボールメーカーからの圧力による原料動向とのタイムラグ発生の不合理性等を解消するために,既に製紙用でん粉の取引で採用されているフォーミュラ方式(原料価格等の変動に応じ,一定期間ごとに,あらかじめ定めた計算式に従って自動的に価格改定を行う方式をいう。)による合理的な価格自動改定方式を段ボール用でん粉の取引にも導入すべきであることが話し合われただけであり,同日までに本件合意が成立したということはない。
(c) 平成22年秋以降の値上げは被審人王子コンス独自の判断で行ったものであること
 段ボール用でん粉については,製造原価に占める原料となるとうもろこしの価格の比率が極めて高く,とうもろこしの価格が高騰した場合にはコーンスターチメーカーが価格を値上げしなければならない状況になるため,「とうもろこしのシカゴ相場が上昇している間はそれに応じて値上げを続けていく」ということは業界の常識である。
 そして,平成22年秋以降の段ボール用でん粉の価格の値上げは,8社の共同行為として値上げを行ったものではなく,被審人王子コンスが,とうもろこしのシカゴ相場の上昇に応じて,独自の判断で行ったものである。
 したがって,審査官が主張する本件各値上げにおける8社の値上げの申入れの状況等は,本件合意の存在を示すものとはいえない。
(d) 日コンの《E2》の供述が信用できないこと
 審査官は,平成22年11月5日の本件会合の出席者であり,他のコーンスターチメーカーの担当者と多く接触したとする日コンの《E2》の供述に基づいて,本件合意が成立したと主張している。
 しかし,本件会合や本件各値上げなどに関する日コンの《E2》の供述の内容は,裏付けがなく,他の証拠と矛盾している。また,日コンの《E2》は,課徴金の減免申請をした日コンの従業員であり,審査官による不当な誘導を受けて供述を行っているから,その供述を信用することはできない。
b 本件合意が存在しないことを示す事実が存在すること
(a) 値上げ交渉において必要となる情報が共有されていないこと
 段ボール用でん粉の市場における価格交渉においては,その時々の《事業者A》への納入トップシェアのコーンスターチメーカーと《事業者A》との価格交渉の成否が重要な意味を有していたところ,仮に審査官が主張するような値上げカルテルが8社の間で行われたというのであれば,値上げの成否を担う《事業者A》に対する日コンの説明内容や提供資料が8社にとって極めて重要な意味を持つことになる。
 しかし,本件各値上げに際し,日コンが《事業者A》に対して値上げの根拠をどのように説明するのか,どのような資料によって説得するかについて,8社が共通認識を有していたことを裏付ける証拠は存在しない。それどころか,段ボール用でん粉の価格構成要素や,値上げの幅を決定する基準時期について各社によって認識が異なり,8社間での共通認識は存在しなかったことは明らかであり,これは,正に,本件合意が存在しないことを示すものといえる。
(b) 日コンが1次値上げにおいて他のコーンスターチメーカーに事前に一切相談することなく値上げの申入額を増額していること
日コンは,1次値上げにおいて,《事業者A》に対し,当初は,平成22年12月以降,1キログラム当たり12円の値上げを申し入れていたところ,平成23年2月7日,交渉が難航している中で突然,他のコーンスターチメーカーに事前に一切相談することなく,独自の考えで,同年2月納入分から1キログラム当たり16円の値上げを申し入れた。
値上げ交渉が難航している中で突然値上げの申入額を増額すれば,《事業者A》によって拒否されるのが当然であったにもかかわらず,日コンが,他のコーンスターチメーカーに事前に一切相談することなく,独自の考えで値上げ申入れ額を増額した事実は,審査官が主張する8社による値上げカルテルの共同遂行とは明らかに矛盾する事実であり,本件合意が存在しないことを示すものといえる。
(c) 日コンが他のコーンスターチメーカーに事前に連絡することなく《事業者A》に対して取引停止を申し入れたこと
 日コンは,平成22年11月から平成23年2月までの間,《事業者A》との段ボール用でん粉の取引においてトップシェアを有するコーンスターチメーカーとして,《事業者A》との値上げ交渉の中心的存在であったところ,同月24日,他のコーンスターチメーカーに事前に連絡をすることなく,単独で,《事業者A》に対し,全面的な取引停止を申し入れた。
 当時の値上げ交渉は《事業者A》と日コンとの間の交渉次第で決まるものであったことからすれば,日コンが《事業者A》との取引を全面的に停止するという事態は,《事業者A》との従前の価格交渉を無にし,その停止を意味するもので,価格交渉自体の仕切り直しを必要とする事態を生じさせるものであり,当時,被審人王子コンスの担当者にとってはもちろん,他のコーンスターチメーカーの担当者にとっても,全く予測不可能な想定外の出来事であった。
 そうすると,《事業者A》との交渉を担っていた日コンが他社に事前に連絡をすることなく単独で《事業者A》との取引を全面的に停止したという事実は,本件合意が存在しないことを裏付ける事実といえる。
c まとめ
 以上のとおり,8社の間で審査官が主張するような本件合意はされていない。
(イ) 審査官の主張する本件合意が不当な取引制限に該当しないこと
本件合意が独占禁止法第2条第6項の規定する「不当な取引制限」に該当するためには,その内容自体において,「不当な取引制限」の成立要件を全て満たしている必要がある。また,審査官は,「不当な取引制限」の成立要件として,「行為要件」(共同行為性)と「効果要件」(競争の実質的制限)が必要であると主張し,両要件を別々に論じた上で,本件合意は両要件を具備していると結論付けているが,行為要件と効果要件は密接な関係にあり,本件合意の内容自体が競争の実質的制限をもたらすような性格を有することが必要である。
 そして,不当な取引制限の要件である「意思の連絡」(合意)は,複数事業者間で相互に同内容又は同種の対価の引上げを実施することを認識ないし予測し,これと歩調をそろえる意思があることを意味しており,その合意が市場の競争に影響を与え得る「実効性」を有しているというためには,「相互に同内容の対価の引上げを実施すること」又は少なくともそれと同等の評価が可能な「相互に対価の引上げの実施方法の決定方法」を「認識ないし予測」していることが不可欠である。
 しかし,本件合意は,「今後,とうもろこしのシカゴ相場の上昇に応じて,段ボール用でん粉の価格の引上げを共同して行っていく」という合意にすぎず,いつ(決定時期),いつから(実施時期),いくら(価格の引上げの幅)値上げを実施するのか,それらをどのように決定するのか(会合による協議か誰かによる指示か等)が,一切,その内容に含まれていないため,8社が,いつ,どの程度値上げをするのかを相互に予測してこれに歩調をそろえるなどして本件合意を共同遂行することは不可能であった。
 したがって,審査官が違反行為であると主張する本件合意は独占禁止法第2条第6項の不当な取引制限に該当しない。
イ 被審人Jオイルの主張
(ア) 被審人Jオイルが本件合意をしていないこと
a 被審人Jオイルが過去の協調関係から離脱したこと
 審査官は,被審人3社を含む8社間において,平成18年頃から平成21年頃まで,段ボール用でん粉の価格の引上げの幅,その実施時期等について決定した上,段ボールメーカーとの値上げ交渉の状況について情報交換等を行う協調関係が存在したと主張する。
 この点,被審人Jオイルは,平成18年頃から平成19年頃にかけて,被審人Jオイルの《H1》等の被審人Jオイルの従業員において,審査官が主張する情報交換等に参加していた可能性があることを否定するわけではない。
 しかし,被審人Jオイルは,平成16年7月,味の素製油株式会社,株式会社ホーネンコーポレーション及び吉原製油株式会社の3社を吸収合併し,新体制を発足させたことを契機として,コンプライアンス違反に対する厳しい姿勢をより一層強化することとなった。そして,段ボール用でん粉の販売を担当する部署においても,平成19年9月に,被審人Jオイルの《H2》が段ボール用でん粉の価格決定権限を有するスターチ部長に就任したことを契機に,コンプライアンス体制の強化に向けた改革が徹底的に進められ,独占禁止法に抵触する可能性のある行動を取ってはならないという意識が従業員の間で確立された。そのため,被審人Jオイルの《H1》は,平成20年春頃以降,今後は同業他社との会合に参加しない旨を明確に表明し,同業他社との情報交換等をする関係からは明示的かつ意識的に離脱した。
 このように,被審人Jオイルは,同業他社が協調関係を継続する中で,平成20年春頃以降,明示的に同業他社との協調関係から離脱しており,審査官の主張する平成22年11月5日の本件合意もしていない。
b 審査官の主張するような平成22年11月5日の本件会合前後のやり取りが存在しないこと
(a) 被審人Jオイルの《H1》と被審人王子コンスの《F1》が本件会合前にやり取りをした事実がないこと
 審査官は,被審人Jオイルの《H1》が,平成22年11月5日の本件会合の前に,被審人王子コンスの《F1》に対し,「会合には参加できないが,被審人Jオイルは会合で決まったことに従う」と述べた旨主張する。
 しかし,審査官が証拠として提出する日本食品の《G1》の供述調書及び日コンの《E2》の供述調書は,いずれも信用することができず,他のコーンスターチメーカーの従業員が作成したメモ等も,その記載から,被審人Jオイルの《H1》が被審人王子コンスの《F1》に対して本件会合で決まったことに従うと述べたことが本件会合で伝えられたことを読み取ることができるものではなく,その他,被審人王子コンスの《F1》と被審人Jオイルの《H1》が,本件会合前にやり取りをしたことを示す証拠は一切存在しない。
また,被審人Jオイルは,平成22年11月5日より前の同年10月6日頃には既に社内で段ボール用でん粉の値上げの方針についての検討を開始し,方向性を固めていたのであり,本件会合で決められる内容も分からない段階で,価格に関する決定権限を有しない被審人Jオイルの《H1》が,被審人王子コンスの《F1》に対して無条件に「会合で決まったことに従う」などと白紙委任するような内容の発言をするはずはなく,審査官の上記主張は不自然,不合理である。
 さらに,審査官の主張するやり取りの当事者である被審人王子コンスの《F1》及び被審人Jオイルの《H1》は,参考人審尋において,審査官の主張するような本件会合前のやり取りを明確に否定しており,その供述の内容は,具体的であり,客観的な証拠とも矛盾なく整合しており,信用できる。
 このように,被審人Jオイルの《H1》と被審人王子コンスの《F1》が,平成22年11月5日の本件会合の前に,審査官の主張するようなやり取りをした事実はない。
(b) 被審人Jオイルの《H1》と被審人王子コンスの《F1》が平成22年11月5日の本件会合後に本件会合又は本件合意についてやり取りをした事実がないこと
 審査官は,本件会合が開かれた平成22年11月5日から同月18日までの間に,被審人王子コンスの《F1》が被審人Jオイルの《H1》に対して「会合に出席した各社が,会合において,段ボール用でん粉の値上げを行うことで意見が一致し,遅くとも平成23年1月1日納入分から1キログラム当たり10円以上の値上げを行うことを決定した」と伝えた旨主張する。
 しかし,審査官の上記主張を裏付ける物的証拠及び供述証拠は何ら存在しない。審査官が提出する被審人Jオイルの《H1》の被審人Jオイルの《H2》に対する平成22年11月18日付け電子メール(査5の資料1)には,他のコーンスターチメーカーの値上げに関する記載があるものの,これは被審人Jオイルの《H1》が商社である《事業者C》の《C1》から得た情報を記載したものにすぎず,被審人Jオイルの《H1》と被審人王子コンスの《F1》の間でやり取りがあったことを示すものではない。
 一方,審査官の主張するやり取りの当事者である被審人王子コンスの《F1》及び被審人Jオイルの《H1》は,参考人審尋において,審査官の主張するような本件会合後のやり取りを明確に否定しており,その供述の内容は,具体的であり,客観的な証拠とも矛盾なく整合しており,信用できる。
 このように,被審人Jオイルの《H1》と被審人王子コンスの《F1》が,本件会合後に,本件会合又は本件合意についてやり取りをした事実はない。
 なお,仮に,被審人王子コンスの《F1》が,被審人Jオイルの《H1》に対し,審査官の主張するような事実を伝えていたとしても,これは,審査官の主張する1次値上げの決定を伝えたにすぎず,本件合意の成立を伝えたとはいえない。
c 被審人Jオイルは本件合意に基づく他のコーンスターチメーカーと協調行動をとっていないこと
(a) 本件各値上げにおける被審人Jオイルの行動が他のコーンスターチメーカーの行動と不自然に一致していると評価できないこと
 段ボール用でん粉の価格は,その大部分を原料価格が占めているため,各コーンスターチメーカーが経済的に合理的な行動をする場合,原料価格が高騰する局面においては,どのコーンスターチメーカーも,ほぼ同じような時期に,同じような幅で,価格の引上げを検討する必要が生じる。
 また,段ボールメーカーのトップメーカーである《事業者A》は,段ボール用でん粉の価格の引上げの幅及びその実施時期について,コーンスターチメーカー各社が同様の内容を示さないと値上げに応じないという明確な方針を掲げており,商社がこの方針に基づいて申入れの足並みが揃うように調整していたことから,各コーンスターチメーカーの引上げの幅及びその実施時期は,ある程度統一化が図られるという実情があった。
 したがって,被審人Jオイルの値上げの申入れ時期等について,結果的に他社の行動と共通する点があるとしても,上記のような価格構造の特性や市場の特性などにより,結果的に共通する現象が必然的に生じたものであって,被審人Jオイルと他社との行動が不自然に一致していると評価することはできない。
 また,実際,被審人Jオイルの担当者は他のコーンスターチメーカーと情報交換をしておらず,被審人Jオイルは,本件各値上げにおける値上げの申入れ及び価格交渉等を,当時の状況に照らして自然かつ合理的な独自の経営判断に基づいて行っていた。このことは,公正取引委員会による立入検査が実施された前後で,段ボール用でん粉の価格の変動の傾向に特段の違いがないことからも明らかである。
(b) 被審人Jオイルの担当者が段ボールメーカーへの値上げの申入れや価格交渉に際して他のコーンスターチメーカーの担当者と情報交換などをしていないこと
① 被審人Jオイルの《H1》と日コンの《E2》との間の情報交換について
 審査官は,日コンの《E2》の供述に基づき,被審人Jオイルの《H1》が,日コンの《E2》から,平成22年12月1日における《事業者A》と日コンとの交渉内容を伝えられたり,平成24年1月18日に《事業者A》による値下げ要求の有無を電話で確認されたりしたなどと主張する。
 しかし,日コンの《E2》の供述は,被審人Jオイルに関する内容に限り,極めて曖昧で具体性を欠く上,不自然かつ不合理なものである。しかも,日コンの《E2》の供述調書は,日コンが本件等の課徴金減免制度の適用を受けるために,公正取引委員会の調査に全面的に協力する必要性に迫られていたという状況で作成されたものであり,日コンの《E2》が,審査官に対して迎合的な態度をとらざるを得ず,審査官の誘導に乗った供述をしたと考えられることからすれば,日コンの《E2》の供述は信用することができない。
 また,被審人Jオイルの《H1》が平成24年1月18日に日コンの《E2》から《事業者A》による値下げ要求の有無を電話で確認されたという点については,電話があったこと自体は確かであるものの,その内容は,前日に亡くなった《事業者D》の前社長の葬儀について,各社からの出席者や香典の額を尋ねるものであった。実際,日コンの《E2》から被審人Jオイルの《H1》への通話時間はわずか1分20秒にとどまり,そのような短い時間で「情報交換等」がされたとは考えられない。
 このように,審査官が主張する被審人Jオイルの《H1》と日コンの《E2》との間の情報交換という事実は認められない。
② 被審人Jオイルの《H1》と被審人王子コンスの《F1》の情報交換について
 審査官は,《事業者C》の《C1》の供述に基づき,被審人王子コンスの《F1》と《事業者C》の《C1》及び被審人Jオイルの《H1》が,平成23年6月20日に,3次値上げの交渉に向けて懇親を深め,また,同年7月12日に,《事業者A》の値上げに対する反応や《事業者B》への値上げの申入れ状況等について情報交換したと主張する。
 しかし,審査官が主張する上記の2回の集まりは,被審人王子コンスの納入に係る段ボール用でん粉について発生したトラブルについて,《事業者C》の《C1》を通じて同社に連絡した被審人Jオイルの《H1》が解決に助力したことを契機として開催された懇親会にすぎず,仮に仕事の話が出たとしても,愚痴や世間話の域を出るものではなかった。
 また,《事業者C》の《C1》の供述は審査官の誘導に基づいた誤解を招く内容になっており,上記の2回の集まりにおいて値上げに向けた情報交換等が行われたという趣旨の《事業者C》の《C1》の供述は,同人がその後に明確に否定している。
 さらに,被審人王子コンスの《F1》及び被審人Jオイルの《H1》は,審査官が主張する本件違反行為の期間中に何度か協議を行っているものの,これは被審人Jオイルの遺伝子組換えでないとうもろこしを原料に用いたコーンスターチと被審人王子コンスの遺伝子組換えのとうもろこしを原料に用いたコーンスターチのスワップ取引に関する正当なビジネス目的の協議であり,こうした協議の中で,段ボール用でん粉の価格に関する情報交換等がされたことはない(審査官も,これらの協議で段ボール用でん粉の価格に関する情報交換等が行われたとは全く主張していない。)。
 このように,被審人王子コンスの《F1》と被審人Jオイルの《H1》が本件合意後に情報交換を行ったという事実も認められない。
d まとめ
 以上のように,被審人Jオイルは,過去の8社の協調関係から離脱しており,本件会合の前後に被審人Jオイルの《H1》において被審人王子コンスの《F1》や日コンの《E2》と本件会合や本件合意についてやり取りをしたり,情報交換をしたりしたという事実もなく,段ボールメーカーとの価格交渉を独自の経営判断で行っていたのであって,6社と共に本件合意をしていないことは明らかである。
(イ) 本件合意の不存在
 前記(ア)のとおり,被審人Jオイルは,6社と本件合意をしていないが,そもそも,本件合意自体が存在しない。
 すなわち,仮に審査官が主張するような8社の過去の協調関係が存在していたのであれば,平成22年11月頃に6社が改めて「今後,とうもろこしのシカゴ相場の上昇に応じて,段ボール用でん粉の価格の引上げを共同して行っていく」などという包括的・抽象的な合意を行うということはあり得ない。
 また,被審人Jオイルが独自の経営判断により段ボールメーカーに対する値上げの申入れ及び価格交渉を行っていたことは前記(ア)c(a)のとおりであり,6社及び被審人加藤の値上げ交渉の動向にも不自然な一致はないことからすると,本件合意に基づいて8社が段ボール用でん粉の価格の引上げの幅等を決め,それに沿って各社が価格の引上げを申し入れて価格交渉を行っていたという事実も認められない。
 しかも,審査官は,平成22年11月5日の本件会合に至る経緯及び本件会合における事実関係を主張し,本件合意が成立したとしているが,審査官の主張においても,「今後,とうもろこしのシカゴ相場の上昇に応じて,段ボール用でん粉の価格の引上げを共同して行っていく」ことを協議したとは全く主張されていない。審査官が提出する物的証拠及び供述調書をみても,特定の時期の特定の金額による値上げに関する言及と思われる箇所はあっても,「今後,とうもろこしのシカゴ相場の上昇に応じて,段ボール用でん粉の価格の引上げを共同して行っていく」という包括的・抽象的な合意の成立を示すものは存在しない。
 以上によれば,被審人Jオイルが加わっていたか否かを措いたとしても,審査官が違反行為であると主張する本件合意のような包括的・抽象的な合意がされたとは認められない。
(ウ) 審査官の主張する本件合意が不当な取引制限に該当しないこと
 独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限が成立するためには,事業者の間で,相互に同内容又は同種の対価の引上げを実施することを認識ないし予測し,これと歩調をそろえることを可能とするだけの具体性を伴う合意がされる必要があり,そうした具体性を伴わない場合にはそれ自体を違反行為とすることはできない。
 しかるに,本件合意の内容からは,具体的にどの程度とうもろこしのシカゴ相場が上昇した場合に,どの時点で,どの程度価格の引上げを行うかという点が全く明らかではなく,このような抽象的な合意により,相互に同内容,同種の値上げを認識・予測することは不可能であるから,本件合意により競争の実質的制限が成立し得る程度の相互予測が成り立つと評価することはできない。
 この点,審査官は,8社が平成18年夏頃から共同して値上げに取り組んだという共通の経験等を有しており,本件合意が競争の実質的制限をもたらし得る程度に将来の行動に関する相互予測を可能とするものであると主張する。しかし,審査官が主張する平成18年夏頃からの共同の値上げにおいては,8社が一同に会する会合が極めて頻繁に開催されており,その中で具体的な協議及び情報交換を行いながら,具体的な価格の引上げ・引下げの幅やその実施時期などの合意や情報交換等が行われていたというのであり,本件合意がされたと審査官が主張する平成22年11月5日以降に行われた本件各値上げでは,8社が一同に会する会合が極めて頻繁に開催されたりはしておらず,態様が明らかに異なっている。そうすると,仮に,8社が平成18年夏頃から共同の値上げに取り組んだということがあったとしても,各社間の協議による具体的な価格の引上げの幅やその実施時期についての合意もないままに,本件合意の内容のみから,競争の実質的制限をもたらし得る程度に将来の行動に関する相互予測をすることは不可能であった。
 また,そもそも段ボール用でん粉はとうもろこしのシカゴ相場に連動して値動きが生じる商品であり,とうもろこしのシカゴ相場の上昇に応じて顧客への価格引上げの申入れを検討すること自体はコーンスターチメーカーとして当然のことである以上,仮に8社間で審査官の主張する本件合意をしたとしても,8社間の価格競争に影響があるとは考えられない。
 したがって,審査官が違反行為であると主張する本件合意は,独占禁止法第2条第6項の不当な取引制限に該当しない。
ウ 被審人加藤の主張
(ア) 被審人加藤が本件合意に参加していないこと
a 被審人加藤の《K1》が平成22年11月8日の本件会食で審査官の主張するような発言をしていないこと
 審査官は,被審人加藤の《K1》が,平成22年11月8日の日本食品の《G1》との本件会食の際,被審人加藤も他のコーンスターチメーカーと同様に段ボール用でん粉の価格を引き上げていく意向である旨の発言をして,本件合意に参加したと主張する。
 しかし,本件会食は,被審人加藤の《K1》が,名古屋に来る用事があることを理由に日本食品の《G1》から食事に誘われたため,これまでにも同人と何度か食事をしたことがあり,特に断る理由もなかったことから,これに応じたというものである。
 そして,当時の市場の状況からすると,本件会食では,段ボール用でん粉の原料であるとうもろこしのシカゴ相場が高騰していることや,原料価格の高騰を製品価格に転嫁したいという程度の一般的な話題が出た可能性はあるものの,日本食品の《G1》が段ボール用でん粉の値上げに関する具体的な金額を話題にしたことはなく,被審人加藤の《K1》が他のコーンスターチメーカーと同様に段ボール用でん粉の価格を引き上げていくという発言をしたこともなかった。そもそも,被審人加藤と日本食品とは,段ボール用でん粉の納入先について競合しておらず,歩調をそろえて値上げをする関係ではなかったから,両社の従業員の会食において,段ボール用でん粉の価格の具体的な話題が出ることはない。
 また,審査官の上記主張は,日本食品の《G1》の供述を根拠とするものであるが,日本食品の《G1》自身,供述調書作成時に供述調書に記載されたような発言内容に記憶はないと陳述しているし,客観的事実にも反することから,日本食品の《G1》の供述は信用できない。
b 平成22年11月8日の本件会食後の日本食品の《G1》から他社への報告がなかったこと
 審査官は,日本食品の《G1》が,平成22年11月8日の本件会食の後,被審人王子コンスの《F1》や日コンの《E2》等の他のコーンスターチメーカーの担当者に対し,被審人加藤も他社と同様に段ボール用でん粉の価格を引き上げていく意向である旨の報告をしたと主張するが,そのような事実はない。
 審査官の上記主張は,日本食品の《G1》及び日コンの《E2》の供述を根拠とするものであるが,いずれも客観的な事実に反し,信用できない。
c 被審人加藤と他のコーンスターチメーカーが協調して段ボール用でん粉の値上げを行うような関係になかったこと
 審査官は,平成22年夏頃よりも前の8社の協調関係を殊更に持ち出し,被審人3社を含む8社が本件違反行為以前から協調関係を維持し,この経験から,この時とおおむね同様の行動をとれば他のコーンスターチメーカーと歩調をそろえて値上げ活動ができるという共通認識を有していたと主張する。
 しかし,被審人加藤は,以前から,自社のシェアを拡大するという営業方針に基づき,破格な安値を段ボールメーカーに提示して従来同業他社が納入していた取引を獲得してシェアの拡大を実現しており,実際,平成21年秋頃,《事業者A》に安値での売込み攻勢をかけ,日コンの《事業者A》向け取引の一部を奪っていた。また,被審人加藤は,《事業者A》向けの段ボール用でん粉の取引において,商社を使っておらず,同業他社が採用していた「《事業者A》先決め一律価格改定方式」(値上げが行われる際には,《事業者A》と日コンとの間で合意がされれば,その内容が日コン以外の各コーンスターチメーカーの《事業者A》向け取引に一律に適用され,かつ,《事業者A》以外の段ボールメーカーとの取引にも適用されるという価格交渉の方式)とは別の独自の直接交渉をしていた。そのため,他のコーンスターチメーカーも,被審人加藤が独自に値決めをしていることを認識し,これを脅威とみなして警戒しており,現に,平成22年11月5日の本件会合に被審人加藤を意図的に呼ばず,その開催の事実すら知らせなかった。
 このように,被審人加藤と他のコーンスターチメーカーは,本件合意に参加したとされている平成22年11月8日頃,協調して段ボール用でん粉の値上げを行うような関係にはなかった。
d 被審人加藤が独自の判断により値上げ交渉を行っていたこと
 審査官は,8社が本件合意の実施行為として,本件各値上げの決定に沿って段ボールメーカーに対して値上げを申し入れるなどしていたと主張する。
 しかし,被審人加藤は本件合意に参加しておらず,他社から本件各値上げの決定を伝えられたことはなかった。審査官は,1次値上げの決定について,平成22年11月8日に日本食品の《G1》が被審人加藤の《K1》及び被審人加藤の《K2》に伝えたと主張するが,審査官の主張及び証拠を前提としても,日本食品の《G1》は値上げの時期については発言しておらず,しかも,同月5日に本件会合が行われたことさえも伏せていたというのであって,被審人加藤の《K1》らが日本食品の《G1》から1次値上げの決定を伝えられたということはなかった。審査官は,2次値上げの決定について,これを誰が被審人加藤に伝えたかすら特定できていない。審査官は,3次値上げの決定について,日本食品の《G1》が被審人加藤の《K1》に伝えたと主張するが,そのような事実はない。
 また,被審人加藤は,2次値上げにおいて申し入れた価格の引上げの幅が他のコーンスターチメーカーと異なっていたほか,3次値上げについても,粘り強い交渉の結果,被審人加藤のみが値上げを認められたなど,被審人加藤と他のコーンスターチメーカーとの本件各値上げにおける交渉及び妥結の状況は異なっており,このようなことからしても,被審人加藤が独自の判断に基づいて値上げの交渉を行ったことは明らかである。
e まとめ
 以上によれば,平成22年11月8日の日本食品の《G1》との本件会食で審査官が主張するような発言がされたり,本件会食後に日本食品の《G1》から他社への報告がされたりしたことはなく,被審人加藤と他のコーンスターチメーカーとの従前からの協調関係や本件合意に基づく協調行動もなかったから,被審人加藤が本件合意に参加していないことは明らかである。
(イ) 本件合意の不存在
 前記(ア)のとおり,被審人加藤は,本件合意に参加していないのであるが,そもそも,本件合意自体が存在しない。
まず,平成22年11月5日の本件会合に出席した被審人王子コンスの《F1》は,本件合意の成立を否定する旨の供述をしているところ,この供述は,その内容が合理的であり,他の証拠による裏付けもされているなど,信用できるものである。
 また,被審人加藤は,平成21年秋口頃から平成23年2月頃までの間,従前の1キログラム当たり60円を45円に引き下げるという極めて異例な値下げを行うことによって,日コンの《事業者A》向け取引のうちの5工場分を獲得するなど急激に取引を拡大していたことや,同月後半頃,それまで《事業者A》向け取引で最大のシェアを有していた日コンが,急遽,《事業者A》向け取引を停止する旨通告し,実際に取引を停止したという前代未聞の極めて異例な出来事が起こったことも,本件合意が存在しなかったことを示すものといえる。
(ウ) 審査官の主張する本件合意が不当な取引制限に該当しないこと
 審査官は,本件合意について,その内容として段ボール用でん粉の価格の引上げの幅やその実施時期が含まれていないにもかかわらず,将来の行動に関する相互予測を可能とする程度に具体的であると主張する。
 しかし,仮に審査官が主張する「とうもろこしのシカゴ相場の上昇に応じて値上げを行う」という行動基準が8社間で共有されていたとしても,かかる抽象的な内容では,日々変動するとうもろこしのシカゴ相場のどの時点を基準に値上げをするか明らかでない。また,仮に基準とするとうもろこしのシカゴ相場の時期が特定できたとしても,とうもろこしのシカゴ相場の上昇分のどの程度を製品価格に転嫁するのかも明らかではない。さらに,とうもろこしのシカゴ相場が上昇傾向にあるものの一時的に下落した場合や,上昇と下落を繰り返す場合,どのように製品価格に転嫁するものなのか,行動基準としての機能を全く果たしていない。しかも,仮に上記のような行動基準が共有されていたとしても,競争事業者の値上げの申入れの時期や価格の引上げの幅は全く不明確なままである。
 このように,本件合意は,内容が空疎で,競争の実質的制限をもたらし得る程度の相互予測を可能とするものではなく,「共同して・・・相互にその事業活動を拘束し」の要件を到底充足し得ない。
 この点,審査官は,被審人3社を含む8社は,平成18年夏頃から共同して値上げに取り組んだという共通の経験等を有していることから,本件合意の内容が段ボール用でん粉の価格の引上げの幅やその実施時期の決定方法を含まなくても,本件合意は競争の実質的制限をもたらし得る程度に将来の行動に関する相互予測を可能とするものであったと主張する。
 しかし,審査官が主張する過去に値上げに取り組んだ際の合意は,「段ボール用でん粉の需要者渡し価格について,平成19年1月1日納入分から1キログラム当たり10円以上引き上げること」などという価格の引上げの幅及びその実施時期が特定された具体的なものであり,審査官が主張する本件合意のような抽象的な内容のものではない。
 また,8社の関係は,とうもろこしのシカゴ相場の状況や各社の諸事情により刻々と変化をしているのであって(実際に,平成21年秋頃から平成23年2月にかけて,日コンが行っていた《事業者A》の5工場分の取引を被審人加藤が獲得することによってシェアを拡大してきたことに加え,同月25日頃に,それまで《事業者A》向け取引で最大のシェアを有していた日コンが《事業者A》に対する取引を急遽全面的に停止し,《事業者A》がその分の納入を他の段ボール用でん粉メーカーに依頼せざるを得なくなったことも,段ボール用でん粉メーカーをめぐる競争状況が変化していたことの現れである。),平成18年夏頃以降の過去の経緯等を踏まえても,価格の引上げの幅やその実施時期,これらの決定方法や伝達方法を内容に含まない本件合意に基づき,8社が採るべき行動を相互に予測することは不可能である。
 このように,審査官が違反行為であると主張する本件合意は,競争の実質的制限をもたらし得る程度に将来の行動に関する相互予測を可能とするものではなく,「共同して・・・相互にその事業活動を拘束し」の要件を満たさないから,不当な取引制限に該当しない。
2 争点2(本件違反行為の実行としての事業活動がなくなる日)について
(1) 審査官の主張
 公正取引委員会は,平成24年1月31日,平成25年(措)第7号により措置を命じた事件において,8社のうち被審人Jオイルを除く7社の営業所等に独占禁止法第47条第1項第4号の規定に基づく立入検査を行ったところ,当該検査を受けた部署が段ボール用でん粉の製造販売に係る事業も所管していたことなどから,8社は,同日以降情報交換を取りやめるなどした。
 したがって,本件違反行為の実行としての事業活動は,平成24年1月31日以降,なくなったものと認められる。
(2) 被審人王子コンスの主張 
 本件合意に基づく実施行為としての《事業者A》との交渉を8社を代表して行っていた日コンは,平成23年2月25日,独断で《事業者A》との取引を全面停止した。これにより,日コンは,本件合意に基づく実施行為の遂行を放棄したと評価され,本件合意の前提となる市場の状況は一変したといえるから,この時点で,本件合意自体が崩壊したといわざるを得ない。
 したがって,仮に審査官の主張する本件違反行為が認められるとしても,本件合意の崩壊により,その実行としての事業活動は平成23年2月25日になくなったといえる。
第6 審判官の判断
1 争点1(とうもろこしのシカゴ相場の上昇に応じて段ボール用でん粉の需要者渡し価格を引き上げる旨の合意の成否及びその不当な取引制限への該当性)について
(1) 判断の前提となる事実経過(当事者間に争いのない事実及び公知の事実並びに各末尾記載の証拠によって認められる事実)
ア 8社の以前からの協調関係
 8社は,遅くとも平成18年頃までには既に,8社の担当者らが会合を開催する,2社の担当者が面談する,電話するなどの方法により,段ボール用でん粉の原料であるとうもろこしのシカゴ相場が上昇すると,価格の引上げの幅,その実施時期等を話し合うなどして,協調関係を維持してきた。
 8社は,平成18年夏頃からとうもろこしのシカゴ相場が上昇したため,同年秋頃以降,8社の担当者らが会合を開催する,2社の担当者が面談する,電話をする等の方法により,段ボール用でん粉の価格の引上げの幅,その実施時期等について決定し,《事業者A》等の段ボールメーカーとの値上げ交渉の状況の情報交換や,交渉方針についての話合いを行った上で,段ボールメーカーとの値上げ交渉を行った。そして,8社は,段ボールメーカーとの間の値上げ交渉が妥結すると,次の値上げにおける価格の引上げの幅,その実施時期等について決定するという行為を繰り返し,段ボールメーカーとの間で6回の値上げを行った。また,6回目の値上げ交渉が妥結した平成20年7月末頃からとうもろこしのシカゴ相場が下落し始めると,段ボールメーカーからの値下げの要請を拒否することを決定した上,2社の担当者が面談する,電話するなどの方法により,段ボールメーカーからの値下げ要求に対する具体的な対応等について申し合わせるなどした上で,段ボールメーカーとの交渉を行った。
 上記のような平成18年夏頃からの8社の担当者らによる会合や,2社の担当者による面談,電話は,被審人王子コンスにおいては被審人王子コンスの《F1》及び被審人王子コンスの《F3》,被審人Jオイルにおいては被審人Jオイルの《H1》,被審人加藤においては被審人加藤の《K1》,被審人加藤の《K2》及び被審人加藤の《K3》,敷島スターチにおいては敷島スターチの《I2》,敷島スターチの《I3》及び敷島スターチの《I1》,三和澱粉においては三和澱粉の《J1》,三和澱粉の《J3》及び三和澱粉の《J2》,日本澱粉においては日本澱粉の《L2》及び日本澱粉の《L1》,日本食品においては日本食品の《G2》及び日本食品の《G3》,日コンにおいては日コンの《E3》,日コンの《E1》及び日コンの《E2》が,それぞれ担当者として行っていた。
(査27ないし査29,査32,査42ないし査84,査91,査92,査94,査95,被審人Jオイルの《H1》参考人審尋速記録,被審人加藤の《K2》参考人審尋速記録)
イ 被審人Jオイルの会合への欠席
 被審人Jオイルは,前記アの途中の平成20年春頃から,社内のコンプライアンスが厳しくなったため,日本スターチ・糖化工業会における会合といった公式な会合以外では,他のコーンスターチメーカーの担当者との会合には出席しなくなった。(査16,査28,査32,査45,査46,査50,査68,査90,査100,審B3,審B5,被審人Jオイルの《H2》参考人審尋速記録,被審人Jオイルの《H1》参考人審尋速記録)
ウ 被審人加藤による《事業者A》への安値での売込み
 被審人加藤は,かつては,《事業者A》に対しては《工場名略》向けの段ボール用でん粉のみを納入していたところ,段ボール用でん粉の取引数量の拡大のため,平成21年10月頃から,《事業者A》に対し,従来1キログラム当たり60円で納入していた段ボール用でん粉を,1キログラム当たり45円という安値で納入することとした。これにより,被審人加藤は,同年12月から《事業者A》の《工場名略》に,平成22年2月から《事業者A》の《工場名略》に,同年7月から《事業者A》の《工場名略》に,同年9月から《事業者A》の《工場名略》に,それぞれ段ボール用でん粉を納入するようになり(その後,平成23年2月には《事業者A》の《工場名略》にも段ボール用でん粉を納入するようになった。),従前の日コンの《事業者A》との間の取引を奪うこととなった。(査27,査92ないし査95,審A7,審C1,審C2,被審人王子コンスの《F1》参考人審尋速記録,被審人加藤の《K2》参考人審尋速記録)
エ 平成22年11月5日の本件会合
(ア) 平成22年11月5日の本件会合に至るまでの経緯
 日コンの《E1》及び日コンの《E2》は,平成22年10月1日に被審人王子コンスの《F1》を,同月15日に日本食品の《G1》を,それぞれ訪ねた後,同月20日,再び被審人王子コンスの《F1》を訪ね,日本食品の《G1》も加えた4名で意見交換を行った上,各コーンスターチメーカーの担当者による会合(本件会合)を開催することとし,他のコーンスターチメーカーにその旨連絡した。ただし,被審人加藤については,平成21年10月頃から,安値での売込みにより,日コンの取引先を奪ったことにより,特に日コンとの関係が悪化していたため,上記会合には呼ばないこととした。(査4,査15,査16,査27,査96,査97,査103,査104)
(イ) 平成22年11月5日の本件会合の開催
 平成22年11月5日,《店名略》において,6社の各担当者である被審人王子コンスの《F1》及び被審人王子コンスの《F2》,敷島スターチの《I1》,三和澱粉の《J1》及び三和澱粉の《J2》,日本澱粉の《L1》,日本食品の《G1》並びに日コンの《E1》及び日コンの《E2》が出席して,本件会合が開催された。
上記会合の出席者は,日本食品の《G1》及び被審人王子コンスの《F2》を除き,いずれも,前記アのとおり,平成18年夏頃から,8社の担当者らによる会合に出席したり,他のコーンスターチメーカーの担当者と個別に面談したり,電話で連絡を取り合ったりして,段ボール用でん粉の価格の引上げの幅等の決定や段ボールメーカーとの値上げ交渉の状況等についての情報交換を行っていた者であった。
(査4,査27,査96ないし査106,査112ないし査117,査186)
(ウ) 平成22年11月8日の本件会食
 日本食品の《G1》は,平成22年11月8日,被審人加藤の《K1》及び被審人加藤の《K2》を誘い,日本食品の名古屋支店長と共に,名古屋市千種区所在の飲食店において会食(本件会食)をした。(査96,査107ないし査111,査187の1ないし3,被審人加藤の《K2》参考人審尋速記録)
オ 本件各値上げ
(ア) 1次値上げ
a 1次値上げの経過
(a) 8社は,次の表のとおり,1次値上げの申入れを行った(査26)。

(b) 《事業者A》に段ボール用でん粉を納入するコーンスターチメーカーの中で最も納入量の多かった日コンは,前記(a)のとおり,段ボール用でん粉の値上げの申入れをして以降,《事業者A》との間で値上げの交渉を行ったが,容易に値上げに応じてもらうことができなかった。また,このような交渉の状況は,他のコーンスターチメーカーも同様であった。(査13,査17,査19,査20,査26,査100,査141,査149,査157)
(c) 《事業者A》が値上げを認めないまま平成23年2月に入り,日コンは,同月7日頃,価格の引上げの幅を1キログラム当たり12円から16円に引き上げて交渉した。また,日コンの《E2》は,同月9日,《事業者C》を訪問し,日コンが,段ボール用でん粉の出荷停止も検討している旨《事業者A》に伝えて交渉をするように指示をした。一方,被審人王子コンスも,同月,《事業者A》に対し,値上げを受け入れてもらえなければ,段ボール用でん粉の供給を停止すると通告するなどして交渉を行った。(査17,査26,査154,査157)
(d) 日コンは,《事業者A》との交渉が難航したため,平成23年2月25日頃,《事業者A》との取引をやめることとし,《事業者A》に対し,納入停止を通告した。(査26,査27,査157)
(e) 《事業者A》は,前記(d)の日コンの納入停止により,同社以外の各コーンスターチメーカーから段ボール用でん粉の代替納入を受ける必要が生じたことから,平成23年2月25日頃,被審人3社を含む各コーンスターチメーカーに対し,1キログラム当たり8円の値上げを同年3月1日納入分から受け入れ,同年4月1日以降納入分の更なる値上げについても継続交渉とする旨の条件を提示した上,段ボール用でん粉の代替納入を依頼した。(査26)
(f) 前記(e)の依頼を受けた被審人3社を含む各コーンスターチメーカーは,平成23年2月28日頃,《事業者A》からの依頼を了承し,これにより,《事業者A》に対する段ボール用でん粉の価格は,同年3月1日納入分から1キログラム当たり8円引き上げられることとなった。
 そして,上記のように《事業者A》との1次値上げの交渉が妥結したことから,8社と《事業者A》以外の段ボールメーカーとの交渉も,《事業者A》とおおむね同様の条件で順次妥結した。
(査13,査17ないし査20,査26,査89,査142,査149,査157)
b 1次値上げにおける被審人3社以外の各コーンスターチメーカーの担当者による情報交換
 被審人3社以外の各コーンスターチメーカーの担当者(日コンの《E1》,日コンの《E2》,日本食品の《G4》,日本食品の《G1》,三和澱粉の《J2》,三和澱粉の《J1》,敷島スターチの《I1》及び日本澱粉の《L1》)は,1次値上げが行われた平成22年11月頃から平成23年2月末頃までの間,それぞれ,2社又は数社の担当者が面談をする,電話をする等の方法により,1次値上げの申入れや段ボールメーカーとの値上げ交渉の状況について,情報交換を行った。(査20,査27,査28,査50,査53,査100,査115,査119ないし査121,査149ないし査152,査154,査155,査157)
c 1次値上げにおける被審人王子コンスの担当者による他のコーンスターチメーカーの担当者との面談等
 被審人王子コンスの《F1》は,1次値上げが行われた平成22年11月頃から平成23年2月末頃までの間,少なくとも,平成22年11月19日,同年12月1日,同月27日頃,平成23年1月頃,同月21日頃,同月24日,同月31日,同年2月7日,同月28日頃に,他のコーンスターチメーカーの担当者(日本食品の《G1》,日コンの《E2》)と,面談や電話をした。(査4,査87,査97,査100,査149,査151,査154,査156ないし査159,被審人王子コンスの《F1》参考人審尋速記録,被審人王子コンスの《F3》参考人審尋速記録)
(イ) 2次値上げ
a 2次値上げの経過
(a) 8社は,前記(ア)のとおり,1次値上げの交渉が妥結したものの,申し入れた額の満額の値上げが受け入れられたわけではなく,また,引き続きとうもろこしのシカゴ相場も上昇していたことから,次の表のとおり,2次値上げの申入れを行った(査34,査166)。

(b) 《事業者A》は,1次値上げの交渉が妥結した際,平成23年4月1日以降納入分の価格については継続交渉としていたものの,実際には,各コーンスターチメーカーからの前記(a)の2次値上げの申入れに直ちには応じなかった。
 その後,《事業者A》が,平成23年5月中旬になってようやく,同月21日納入分から1キログラム当たり5円の値上げを受け入れたことから,《事業者A》と各コーンスターチメーカー(《事業者A》と取引のないコーンスターチメーカー及び被審人加藤を除く。)との交渉は,上記の条件で順次妥結に至り,上記各コーンスターチメーカーと《事業者A》以外の段ボールメーカーとの交渉も,《事業者A》とおおむね同様の条件で順次妥結した。
(査17,査18,査27,査30,査34,査38,査85,査114,査119ないし査121,査142,査144,査145,査164ないし査166)
(c) 一方,被審人加藤は,前記(a)のとおり,《事業者A》に対し,他のコーンスターチメーカーとは異なり,1キログラム当たり10円の値上げを申し入れていたが,やはり,直ちには《事業者A》に値上げの申入れを受け入れてもらえなかった。
 その後,被審人加藤は,平成23年5月中旬頃,《事業者A》から,他のコーンスターチメーカーと同様に同月21日納入分から5円の値上げを認めるとの回答を得たものの,5円の値上げでは納得せず,値上げの幅を増やすよう申し入れ,その後,何度か《事業者A》を訪問して交渉した結果,同月26日,《事業者A》から,同年6月16日納入分から1キログラム当たり7円の値上げが認められることとなったが,この値上げの金額については口外することを禁止された。
 結局,被審人加藤は,《事業者A》から1キログラム当たり5円ではなく7円の値上げを認められたことを《事業者A》以外の段ボールメーカーに伝えることができず,前記第3の2(2)イのとおり,《事業者A》が値上げを受け入れないと《事業者A》以外の段ボールメーカーも値上げを受け入れることはないという実情があったことから,他の段ボールメーカーとの交渉は,1キログラム当たり5円の値上げで妥結し,平成23年6月1日分から値上げ後の価格が適用されることとなった(他のコーンスターチメーカーが段ボール用でん粉を納入していない段ボールメーカーとの間では,7円の値上げで妥結したこともあった。)。
(査129,審C1,被審人加藤の《K2》参考人審尋速記録)
b 2次値上げにおける被審人3社以外の各コーンスターチメーカーの担当者による情報交換
 被審人3社以外の各コーンスターチメーカーの担当者(日コンの《E1》,日コンの《E2》,日本澱粉の《L1》,日本澱粉の《L3》,敷島スターチの《I1》,三和澱粉の《J2》及び三和澱粉の《J1》)は,2次値上げの交渉が行われた平成23年2月末頃から同年5月頃までの間,それぞれ,2社又は数社の担当者が面談をする,電話をするなどの方法により,2次値上げの申入れや段ボールメーカーとの値上げ交渉の状況について,情報交換を行った。(査27,査114,査119,査121,査144)
c 2次値上げにおける被審人王子コンスの担当者による他のコーンスターチメーカーの担当者との面談等
 被審人王子コンスの《F1》(及び一部被審人王子コンスの《F3》)は,2次値上げの交渉が行われた平成23年2月末頃から同年5月頃までの間,少なくとも,同年3月2日,同月11日,同月22日,同月23日,同月28日,同月31日,同年4月1日,同月6日,同月8日,同月15日,同月25日,同年5月2日,同月17日,同月25日,同月26日に,他のコーンスターチメーカーの担当者(日コンの《E1》,日本食品の《G1》,日本澱粉の《L1》,日本澱粉の《L3》,日本澱粉の《L4》,三和澱粉の《J4》及び三和澱粉の《J1》)と,面談をした。(査27,査85,査97,査118ないし査121,査124,査136ないし査138,査144,査147,査149,査157,査164,査165,審A5の20,被審人王子コンスの《F3》参考人審尋速記録)
d 2次値上げにおける被審人加藤の担当者による他のコーンスターチメーカーの担当者との面談等
 被審人加藤の《K1》は,平成23年4月28日,日本食品の《G1》と,名古屋市所在の飲食店で面談をした。(査120,査183)
(ウ) 3次値上げ
a 3次値上げの経過
(a) 各コーンスターチメーカーは,2次値上げ申入れ後もとうもろこしのシカゴ相場が上昇していたことから,引き続き段ボールメーカーに対して段ボール用でん粉の価格の値上げを求めていくこととし,平成23年6月頃から,順次,《事業者A》に対し,値上げの申入れをし,次の表のとおり,同年8月中旬までには,日本澱粉を除き,《事業者A》等に対して値上げの申入れを行った。また,日本澱粉も,値上げが認められるようであれば同様に値上げの申入れを行うとの考えを有していた。(査18,査25,査34,査38,査122,査124ないし査126,査130,査143,査148,査168ないし査170,査177)

(b) 被審人王子コンスは,2次値上げの後,《事業者A》から,次の値上げについては《事業者B》等の《事業者A》以外の大手段ボールメーカーが先に値上げを受け入れてからでなければ交渉に応じないとの意向を示されていたことから,3次値上げでは,平成23年6月から同年7月にかけて,《事業者B》を頻繁に訪問し,値上げ交渉を行った。
 また,その他のコーンスターチメーカーの担当者の中にも,取引のある大手段ボールメーカーに対し,《事業者A》よりも先に値上げを受け入れるよう交渉する者もいた。
 しかし,とうもろこしのシカゴ相場は,平成23年4月を最高値として,その後上昇することはなく,同年10月頃になると,下落傾向が明確となった。
 そのため,3次値上げについては,《事業者B》から一定の理解を示されたものの,結局,8社のうちの被審人加藤を除く7社と段ボールメーカーとの間の交渉は妥結しなかった。
(査18,査25,査30,査34,査38,査122,査124,査143,査148,査167ないし査170,査177)
(c) 一方,被審人加藤は,平成23年7月13日及び同月19日に《事業者A》を訪問するなどして,《事業者A》に対する値上げ交渉を行った結果,《事業者A》から,同年10月1日納入分から1キログラム当たり3円の値上げを認められたものの,他のコーンスターチメーカーの値上げ申入れが認められなかった関係で,被審人加藤の値上げが認められたことを口外することを一切禁止された。
結局,被審人加藤は,《事業者A》から値上げを認められたことを《事業者A》以外の段ボールメーカーに伝えることができず,前記第3の2(2)イのとおり,《事業者A》が値上げを受け入れないと《事業者A》以外の段ボールメーカーも値上げを受け入れることはないという実情にあったことから,他の段ボールメーカーとの関係では値上げの申入れが受け入れられることはなかった。
(査34,査130,被審人加藤の《K2》参考人審尋速記録)
(d) 平成23年10月以降のとうもろこしのシカゴ相場の下落傾向により,各コーンスターチメーカーは,段ボールメーカーから逆に段ボール用でん粉の値下げの要請を受けることとなった。
 各コーンスターチメーカーは,段ボールメーカーからの値下げの要請を当初は拒否したものの,平成24年3月下旬から同年4月にかけて,被審人王子コンスと《事業者B》の間で,1キログラム当たり2円の値下げで交渉が妥結し,他の段ボールメーカーとの間でも2円の値下げで交渉が妥結した。
(査25,査27,査30,査33,査34,査90,査122,査148,査170,査177,査179)
b 3次値上げにおける被審人3社以外の各コーンスターチメーカーの担当者による情報交換
 被審人3社以外の各コーンスターチメーカーの担当者(日コンの《E2》,日本食品の《G3》,日本食品の《G1》,三和澱粉の《J2》,敷島スターチの《I2》,敷島スターチの《I1》,日本澱粉の《L3》等)は,3次値上げの交渉が行われた平成23年6月頃から公正取引委員会による立入検査が行われた平成24年1月頃までの間,それぞれ,2社又は数社の担当者が面談をする,電話をするなどの方法により,3次値上げの申入れや段ボールメーカーとの値上げ交渉の状況について,情報交換を行った。(査122ないし査125,査133,査134,査140,査146,査148,査173)
 また,日コンの《E2》は,平成24年1月18日,日本食品の《G1》,敷島スターチの《I1》,三和澱粉の《J2》に電話をした。(査90)
c 3次値上げにおける被審人王子コンスの担当者による他のコーンスターチメーカーの担当者との面談等
 被審人王子コンスの《F1》(及び被審人王子コンスの《F3》)は,3次値上げの交渉が行われた平成23年6月頃から公正取引委員会による立入検査が行われた平成24年1月頃までの間,少なくとも,平成23年6月7日,同年7月1日,同月4日,同月12日,同月22日,同年8月3日,同月19日,同月25日,同年9月1日,同月15日,同月27日,同年10月4日,同月20日,同年11月1日,同月18日,平成24年1月18日,同月23日,同月25日に,他のコーンスターチメーカーの担当者(日本食品の《G1》,日本澱粉の《L3》,三和澱粉の《J4》等)と,面談や電話をした。(査33,査97,査124,査127,査147,査148,査169,査171,査172,査174)
 また,被審人王子コンスの《F1》は,平成24年1月18日,日コンの《E2》からの電話を受けた。(査90)
d 3次値上げにおける被審人Jオイルの担当者による他のコーンスターチメーカーの担当者との面談等
(a) 被審人Jオイルの《H1》は,平成23年6月20日,被審人王子コンスの《F1》及び《事業者C》の《C1》と飲食店において面談をした。(査97,査127,査169,査170ないし査172)
(b) 被審人Jオイルの《H1》は,平成23年7月12日に,再度,被審人王子コンスの《F1》及び《事業者C》の《C1》と飲食店において面談をした。(査97,査127,査169ないし査172)
(c) 被審人Jオイルの《H1》は,平成24年1月18日,日コンの《E2》からの電話を受けた。なお,通話時間は,1分20秒であった。(査90)
e 3次値上げにおける被審人加藤の担当者による他のコーンスターチメーカーの担当者との面談等
(a) 被審人加藤の《K1》は,平成23年6月14日,日本食品の《G1》と面談をした。(査124,査126)
(b) 被審人加藤の《K1》は,平成23年7月7日,日本食品の《G1》と,名古屋市内で面談をした。(査124,査178)
(c) 被審人加藤の《K2》は,平成23年8月4日,日コンの《E2》及び日本食品の《G1》と,《飲食店名略》において面談をした。(査88,査122,査124)
(d) 被審人加藤の《K1》は,平成23年9月20日,日本食品の《G1》と面談をした。(査124)
(e) 被審人加藤の《K2》は,平成24年1月18日,日コンの《E2》からの電話を受けた。(査90)
(2) 6社(被審人王子コンス,日コン,日本食品,敷島スターチ,三和澱粉及び日本澱粉)による本件合意の成否
ア 6社の以前からの協調関係
(ア) 前記(1)アのとおり,6社を含む8社は,遅くとも平成18年頃までには既に,8社の担当者らが会合を開催する,2社の担当者が面談する,電話するなどの方法により,段ボール用でん粉の原料であるとうもろこしのシカゴ相場が上昇すると,価格の引上げの幅,その実施時期等を話し合うなどして,協調関係を維持していたところ,同年夏頃からとうもろこしのシカゴ相場が上昇した際も,同様に,8社の担当者らが会合を開催する,2社の担当者が面談する,電話するなどの方法により,段ボール用でん粉の価格の引上げの幅,その実施時期等について決定し,《事業者A》等の段ボールメーカーとの値上げ交渉の状況の情報交換や,交渉方針についての話合いを行った上で,段ボールメーカーとの交渉を行っており,値上げ交渉が妥結すると,次の値上げにおける価格の引上げの幅,その実施時期等について決定するという行為を何度も繰り返していたものと認められる。
(イ) この点,8社のうちの1社である被審人王子コンスは,被審人王子コンスを含む8社の担当者が会合を開催する,2社間で面談する,電話するなどの事実があったことは認めた上,8社の間には審査官が主張するような段ボール用でん粉の価格の引上げに関する協調関係は存在しなかったと主張し(前記第5の1(2)ア(ア)a(a)),被審人王子コンスの《F1》も,自らが第一営業部長をしていた平成12年11月から平成25年11月16日までの間,他のコーンスターチメーカーと段ボール用でん粉の価格について,いくら値上げするとか,いつ値上げするという話をしたことはなく,部下や上司も同様であったなどと,上記主張に沿う供述をする(被審人王子コンスの《F1》参考人審尋速記録)。
 しかしながら,段ボール用でん粉の市場において競争関係にある8社が,以前から,8社の担当者で会合を開催する,2社間で面談する,電話するなどしていた事実については,被審人王子コンスもこれを認めているところ,日コンの《E1》(査27),日コンの《E2》(査28,査45,査63,査68,査69),日本食品の《G3》(査29,査55,査65,査73,査78),日本食品の《G2》(査46),日本食品の《G4》(査50),日本澱粉の《L1》(査47,査64,査70,査72,査76,査79),三和澱粉の《J1》(査48),被審人加藤の《K1》(査56,査61,査62,査66)が,8社が以前から協調して段ボール用でん粉の値上げを行っていたことを認める供述をするほか,8社の以前からの協調関係を示す記載がされた業務報告書等の証拠(査27,査42ないし査45,査47,査54,査56,査59ないし査62,査64ないし査66,査72)も存在する。
 また,三和澱粉の《J3》(査49),三和澱粉の《J2》(査51),敷島スターチの《I3》(査52),日本澱粉の《L5》(査53),日本澱粉の《L4》(査85),被審人Jオイルの《H1》(被審人Jオイルの《H1》参考人審尋速記録),被審人加藤の《K2》(被審人加藤の《K2》参考人審尋速記録)も,以前から,他のコーンスターチメーカーの担当者との間で,段ボール用でん粉の値上げの申入れや段ボールメーカーとの交渉の状況についての情報交換を行ったこと自体は認める供述をしている。
 さらに,被審人王子コンスが主張し,被審人王子コンスの《F1》が供述するように,8社の担当者による会合等において,段ボール用でん粉のOEM商品の話がされたということがあったとしても,このような事実と,8社の担当者が会合等において段ボール用でん粉の値上げの申入れや段ボールメーカーとの値上げ交渉の状況についての情報交換を行って,8社が段ボール用でん粉の値上げ交渉において協調関係を維持していたという事実とは,相容れないものではないことからすると,6社を含む8社は,以前から協調関係を維持していたところ,平成18年夏頃からとうもろこしのシカゴ相場が上昇した際も,同様に,8社の担当者らが会合を開催する,2社の担当者が面談する,電話するなどの方法により,段ボール用でん粉の価格の引上げの幅,その実施時期等について決定し,《事業者A》等の段ボールメーカーとの値上げ交渉の状況の情報交換や,交渉方針についての話合いを行った上で,段ボールメーカーとの交渉を行っており,値上げ交渉が妥結すると,次の値上げにおける価格の引上げの幅,その実施時期等について決定するという行為を何度も繰り返していたものと認めるのが相当であり,これを否定する旨の被審人王子コンスの《F1》の供述を信用することはできず,被審人王子コンスの主張を採用することはできない。
イ 本件会合
(ア) 前記(1)エ(ア)のとおり,日コンの《E1》及び日コンの《E2》は,平成22年10月以降,被審人王子コンスの《F1》や日本食品の《G1》と数回にわたって面談をした上で本件会合の開催を決定し,また,同(イ)のとおり,同年11月5日に6社の担当者が出席して本件会合が開催されたものと認められる。
 そして,証拠(査15,査16,査27,査96,査103,査185)によれば,平成22年10月に日コンの《E1》及び日コンの《E2》と,被審人王子コンスの《F1》や日本食品の《G1》との間でされた各面談は,その頃からのとうもろこしのシカゴ相場の上昇を受けて行われたものであり,そこでは,段ボール用でん粉の価格の引上げを行っていく必要があることが確認された上,価格の引上げの幅やその実施時期についての情報交換と確認が行われたほか,各コーンスターチメーカーが協調して段ボール用でん粉の価格の引上げを行っていくことを目的として本件会合を開催することが決定されたものと認められる。
 また,証拠(査4,査27,査96ないし査106,査112ないし査116,査186)によれば,本件会合では,6社の各担当者が,原料であるとうもろこしのシカゴ相場が上昇している中,段ボール用でん粉の価格について,引き上げるかどうか,引上げの幅,その実施時期等を順番に発言することになり,6社の担当者は,いずれも段ボール用でん粉の値上げをするという考えの下,価格の引上げの幅,その実施時期等についての発言をしたこと,各社の意見は,1キログラム当たり10円から13円の値上げを行いたいとするもので,その内訳としては,原料価格上昇分として7円から8円,採算是正分が4円から5円と考えている旨の発言がされたこと,各社の意見を総合して,需要者渡し価格の引上げ額については1キログラム当たり10円以上とする旨意見が一致したこと,実施時期については,平成22年12月1日納入分からとしたい社と,平成23年1月1日納入分からとしたい社とがあり,遅くとも平成23年1月1日納入分からとすることで意見が一致したこと,また,被審人王子コンスの《F1》は,本件会合において,各社が《事業者A》に申入れを行った際の《事業者A》の反応等や《事業者A》から値上げに関する回答があった場合には,互いに連絡を取り合うことを提案し,値上げ交渉の状況等について,6社の間で互いに報告し合う旨確認されたことが認められる。
(イ) この点,6社のうちの1社である被審人王子コンスは,まず,平成22年夏頃以降の被審人王子コンスの《F1》と他のコーンスターチメーカーの担当者との各面談について,OEM取引の商談やフォーミュラ方式の導入の相談を目的とするものであって,審査官が主張するような,段ボール用でん粉の価格の引上げに関するものではないと主張し(前記第5の1(2)ア(ア)a(b)),他のコーンスターチメーカーとのOEM取引についての証拠(審A5の1ないし7)を提出しており,被審人王子コンスの《F1》も,これに沿う供述をする(審A7,被審人王子コンスの《F1》参考人審尋速記録)。
 しかしながら,平成22年10月に日コンの《E1》及び日コンの《E2》と,被審人王子コンスの《F1》や日本食品の《G1》との間でされた各面談が,前記(ア)で認定したように,とうもろこしのシカゴ相場の上昇を受けた段ボール用でん粉の値上げについてのものであったことは,上記各面談を行った日本食品の《G1》(査15,査96,査103),日コンの《E2》(査16),日コンの《E1》(査27)が一致して供述しており,それぞれが供述する内容も具体的である。また,日コンの《E1》作成の同月15日の面談に係る業務日報には「値上げについて,他社動向調査」と(査27〔別紙4〕),同月20日の面談に係る営業日報には「値上げ動向情報収集」と(査27〔別紙5〕),上記の各日における面談が段ボールメーカーとの段ボール用でん粉の値上げ交渉に関するものであったことを示す記載がされており,これらは日本食品の《G1》らの上記各供述に沿うものといえることからすると,平成22年10月に日コンの《E1》及び日コンの《E2》が被審人王子コンスの《F1》や日本食品の《G1》との間で行った各面談がとうもろこしのシカゴ相場の上昇を受けた段ボール用でん粉の値上げについてのものであったという,前記(1)エ(ア)の各面談を行った各コーンスターチメーカーの担当者らの上記各供述は信用することができる。被審人王子コンスは,上記各面談を行った各コーンスターチメーカーの担当者らの上記各供述が裏付けを欠くとか,課徴金減免申請をしている事業者の担当者が審査官の不当な誘導を受けて供述したものであるなどとして,信用できないなどと主張するが,上記各面談を行った各コーンスターチメーカーの担当者らの上記各供述に裏付けとなる証拠があることは上記のとおりであるし,また,課徴金減免申請を行った事業者の担当者による供述であるゆえに審査官の誘導を受けているという点は,供述の信用性についての抽象的な疑いを指摘するものにすぎず,日本食品の《G1》らの上記各供述が信用性を欠く旨の被審人王子コンスの主張を採用することはできない。そして,被審人王子コンスが主張し,被審人王子コンスの《F1》が供述するように,上記各面談においてOEM取引の商談やフォーミュラ方式の導入の相談がされたということがあったとしても,段ボール用でん粉の価格の引上げに関する話がされたことと,必ずしも相容れないものではないことからすると,同月に日コンの《E1》及び日コンの《E2》と,被審人王子コンスの《F1》や日本食品の《G1》との間でされた各面談は,前記(ア)で認定したとおり,段ボール用でん粉の価格の引上げに関するものであったと認めるのが相当であり,これを否定する旨の被審人王子コンスの《F1》の供述を信用することはできず,被審人王子コンスの主張を採用することはできない。
(ウ) また,被審人王子コンスは,平成22年11月5日の本件会合で話し合われたのも,段ボール用でん粉の値上げについてではなく,フォーミュラ方式の導入についてであったと主張し(前記第5の1(2)ア(ア)a(b)),被審人王子コンスの《F1》も,これに沿う供述をする(査186,審A7,被審人王子コンスの《F1》参考人審尋速記録)。
 しかしながら,本件会合に出席した日コンの《E1》(査27),日コンの《E2》(査100),日本食品の《G1》(査96,査103),日本澱粉の《L1》(査101,査102)及び日本澱粉の《L1》から本件会合の報告を受けた日本澱粉の《L3》(査114)は,前記(ア)で認定したように,本件会合において,6社の担当者が,いずれも段ボール用でん粉の値上げをするという考えの下,価格の引上げの幅,その実施時期についての発言をし,価格の引上げの幅については1キログラム当たり10円以上,実施時期については遅くとも平成23年1月1日納入分からとすることで意見が一致したことを具体的に供述している。また,本件会合に出席した被審人王子コンスの《F1》(査104,被審人王子コンスの《F1》参考人審尋速記録),三和澱粉の《J2》(査105),敷島スターチの《I1》(査106)も,本件会合において,段ボール用でん粉の価格や値上げについての話が出たこと自体は認めている。さらに,三和澱粉の《J4》が本件会合の翌日である平成22年11月6日に開かれた三和澱粉の営業部の部内会議での三和澱粉の《J2》の報告を記載したメモ(査98,査115,査116),日本澱粉の《L6》が同月9日に開かれた日本澱粉の営業会議の議事録を作成するために日本澱粉の《L1》の発言等を記載したメモ(査99,査102),本件会合に出席した敷島スターチの《I1》が作成したノート(査112,査117),日本澱粉の《L3》が日本澱粉の《L1》から本件会合の内容を同月8日に聞いて記載したノート(査113,査102,査114)にも,本件会合に出席した各コーンスターチメーカーの担当者らの上記各供述に沿う記載があることからすると,本件会合におけるやり取りについての本件会合に出席した各コーンスターチメーカーの担当者らの上記各供述は信用することができる。そして,被審人王子コンスが主張し,被審人王子コンスの《F1》が供述するように,本件会合においてフォーミュラ方式の導入についての話がされたということがあったとしても,段ボール用でん粉の価格の引上げに関する話がされたことと,必ずしも相容れないものではないことからすると,本件会合では,前記(ア)で認定したとおり,段ボール用でん粉の価格の引上げについての具体的な話合いがされたものと認めるのが相当であり,これを否定する旨の被審人王子コンスの《F1》の供述を信用することはできず,被審人王子コンスの主張を採用することはできない。
ウ 本件各値上げにおける6社の値上げの申入れの状況
 前記(1)オのとおり,6社は,段ボールメーカーに対して本件各値上げの申入れをしているところ,その時期や,価格の引上げの幅,その実施時期は,6社においておおむね一致している。
 この点,被審人王子コンスが主張するように(前記第5の1(2)ア(ア)a(c)),証拠(査17,審A7,審B6)によれば,段ボール用でん粉の価格は,原料となるとうもろこしの仕入価格が大きな部分を占めている。そして,このとうもろこしの仕入価格については,①とうもろこし自体の価格の変動(シカゴ相場)のほか,②とうもろこしがドル建てで購入されることによる為替の変動,③とうもろこしを米国から日本へ輸入するためのフレート(船賃)の変動という変動要因があるところ,これらについては,各コーンスターチメーカーで共通する変動要因となるため,そもそも,各コーンスターチメーカーの需要者に対する段ボール用でん粉の値上げの申入れの時期や,価格の引上げの幅,その実施時期は一致しやすい傾向があるものと認められる。また,前記第3の2(2)イのとおり,段ボール用でん粉の需要者渡し価格は,《事業者A》との価格決定が他の段ボールメーカーとの価格交渉に影響するところ,《事業者A》が基本的に各コーンスターチメーカー一律の値上げしか認めず,しかも,証拠(査166,審B14,被審人Jオイルの《H2》参考人審尋速記録,被審人Jオイルの《H1》参考人審尋速記録)によれば,各コーンスターチメーカーと段ボールメーカーとの間の取引に共通する商社が介在することにより,値上げの申入れの時期や内容が統一化される傾向にあることもうかがわれることは確かであるが,これらの事情を考慮したとしても,6社による本件各値上げの申入れの時期や,価格の引上げの幅,その実施時期がおおむね一致していることは,この事実のみをもって,直ちに6社による本件合意の存在を認めることができるものとはいえないとしても,その存在を推認させる一事情になるものと認められる。
エ 本件会合後の6社の情報交換
(ア) 前記イ(ア)で認定したとおり,6社は,本件会合において,1次値上げにおける価格の引上げの幅やその実施時期について意見を一致させたほか,前記(1)オで認定したとおり,6社のうちの被審人王子コンスを除く5社は,それ以降,本件各値上げにおいて,2社又は数社の担当者が面談をする,電話をする等の方法により,価格の引上げの幅やその実施時期のほか,段ボールメーカーとの値上げ交渉の状況についての情報交換を行っており,また,被審人王子コンスの担当者である被審人王子コンスの《F1》らも,各コーンスターチメーカーが1次値上げから3次値上げがされた期間において,他のコーンスターチメーカーの担当者と面談や電話をして連絡を取り合っていたところ,各コーンスターチメーカーの担当者の供述調書等の証拠(査27,査33,査85,査100,査118ないし査121,査124,査136,査137,査144,査147ないし査149,査156ないし査158,査164,査165,査174,審A5の20)によれば,被審人王子コンスの担当者である被審人王子コンスの《F1》らも,上記の面談や電話により,他のコーンスターチメーカーの担当者と,本件各値上げにおける価格の引上げの幅やその実施時期のほか,段ボールメーカーとの値上げ交渉の状況についての情報交換を行っていたものと認めるのが相当である。
 そして,上記認定の本件会合でのやり取りの内容のほか,上記のとおり,6社の担当者が本件各値上げについて上記のような複数回にわたって情報交換を行っていたという事実は,前記ウのとおり,6社による本件各値上げの申入れの時期や,価格の引上げの幅,その実施時期がおおむね一致していることを併せ考えると,6社が本件各値上げにおいてとうもろこしのシカゴ相場の上昇に応じて情報交換をしながら協調して値上げを行っていたことを推認させるものといえる。
(イ) この点,被審人王子コンスは,被審人王子コンスの《F1》と他のコーンスターチメーカーの担当者と会合,面談や電話で連絡を取ったことがあるという事実は認めた上,その目的や実際のやり取りの内容がOEM取引の商談であるとして,本件各値上げの申入れやその後の交渉等は独自の判断で行ったものであって,他のコーンスターチメーカーと協調して行ったものではないと主張し,被審人王子コンスの《F1》も,平成22年11月から平成24年1月までの間にカルテルなどをしていたという認識は一切ないなどと,これに沿う供述をする(査136ないし査138,審A7,被審人王子コンスの《F1》参考人審尋速記録)。
 しかしながら,上記の被審人王子コンスの《F1》と他のコーンスターチメーカーの担当者との面談等において,本件各値上げにおける値上げの申入れや段ボールメーカーとの値上げ交渉の状況についての情報交換等を行っていたことは,6社の担当者である日本食品の《G1》(査33,査120,査124,査149),日コンの《E1》(査27),日コンの《E2》(査100,査119,査157,査158),日本澱粉の《L1》(査121),日本澱粉の《L4》(査85),日本澱粉の《L3》(査148),三和澱粉の《J1》(査144)及び三和澱粉の《J4》(査147)が共通して供述しているところであり,その供述する内容もおおむね具体的である。また,各コーンスターチメーカーの担当者の作成した面談記録や電子メール,メモ等(査33,査118,査119,査121,査124,査136,査137,査144,査147,査148,査151,査154,査156,査164,査165,査174,審A5の20)にも,上記供述の内容に沿う記載が存在することからすると,被審人王子コンスの《F1》らとの面談等において,本件各値上げにおける値上げの申入れや段ボールメーカーとの値上げ交渉の状況についての情報交換等を行っていたという各コーンスターチメーカーの担当者らの上記各供述は信用することができる。そして,被審人王子コンスが主張し,被審人王子コンスの《F1》が供述するように,8社の担当者による会合等において,段ボール用でん粉のOEM商品の話がされたということがあったとしても(査127,査136,査138,査144,査147,査148,査159),これと共に,本件各値上げにおける値上げの申入れや段ボールメーカーとの値上げ交渉の状況についての情報交換等を行っていたことは,必ずしも相容れないものではないことからすると,前記(ア)のとおり,被審人王子コンスの担当者である被審人王子コンスの《F1》らも,上記の会合,面談,電話により,他のコーンスターチメーカーの担当者と,本件各値上げの申入れの時期や内容のほか,段ボールメーカーとの値上げ交渉の状況についての情報交換を行っていたものと認めるのが相当であり,これを否定する旨の被審人王子コンスの《F1》の供述を信用することはできず,被審人王子コンスの主張を採用することはできない。
オ 小括
(ア) 以上のとおり,①6社が,遅くとも平成18年頃までには既に,とうもろこしのシカゴ相場の上昇に伴い,段ボール用でん粉の価格の引上げの幅,その実施時期等について決定し,段ボールメーカーとの間の値上げ交渉の状況について情報交換を行ったり,交渉方針について話し合ったりして,値上げ交渉が妥結すると,次の値上げにおける価格の引上げの幅,その実施時期等について決定するという行為を何度も繰り返していたこと,②日コンの《E1》,日コンの《E2》,日本食品の《G1》及び被審人王子コンスの《F1》が,本件会合の前の平成22年10月頃,段ボール用でん粉の価格の引上げを行っていく必要があることを確認した上,価格の引上げの幅やその実施時期についても意見のすり合わせを行ったほか,各コーンスターチメーカーが協調して段ボール用でん粉の価格の引上げを行っていくことを目的として本件会合を開催することを決定したこと,③平成22年11月5日の本件会合において,6社の担当者の間で,段ボール用でん粉の需要者渡し価格の引上げ額については1キログラム当たり10円以上とし,実施時期については遅くとも平成23年1月1日納入分から実施することで意見が一致したこと,④6社が,本件会合後,とうもろこしのシカゴ相場の上昇に応じて,本件各値上げのいずれにおいても,おおむね同様の時期に,おおむね同様の内容で,段ボール用でん粉の価格の値上げの申入れを行っていたこと,⑤6社が,本件会合後,本件各値上げを行うに当たり,これらの申入れの時期や内容,段ボールメーカーとの値上げ交渉の状況についての情報交換を行っていたこと,これらに加え,日コンの《E1》(査27),日コンの《E2》(査16,査28,査45,査100,査119,査122,査123,査157,査158),日本食品の《G1》(査33,査120,査124,査149),日本食品の《G4》(査50),日本澱粉の《L1》(査14,査121,査154),三和澱粉の《J1》(査48)が被審人王子コンスを含む6社が協調して本件各値上げを行った旨供述していることからすると,6社は,遅くとも本件会合が開催された平成22年11月5日までに,6社の担当者が話し合うなどして,段ボール用でん粉について,今後,とうもろこしのシカゴ相場の上昇に応じて,価格の引上げを共同して行っていく旨の本件合意をしたものと認めるのが相当である。
(イ) これに対し,被審人王子コンスは,本件合意を否定する事情として,段ボール用でん粉の価格構成要素や価格の引上げの幅を決定する基準時期について各社によって認識が異なることを指摘し(査17,査100,査157,被審人王子コンスの《F1》参考人審尋速記録),8社間での共通認識は存在しなかったことは明らかであると主張するところ(前記第5の1(2)ア(ア)b(a)),確かに,段ボール用でん粉の市場においては,日コンと《事業者A》との交渉内容が重要であり,価格を共同して引き上げるためには,被審人王子コンスが主張するような事実について情報が共有されていることが望ましいものの,価格カルテルの成立のために上記のような具体的な交渉方法についてまで共通の認識が必要とは認められず,上記のような情報が共有されていないからといって,本件合意の存在が否定されるものではない。
 次に,被審人王子コンスは,平成23年2月7日頃の日コンの《事業者A》に対する単独での価格の引上げの幅の増額の申入れや同月25日頃の日コンによる《事業者A》との取引の停止が本件合意と矛盾するものであって,本件合意が存在しないことを示すものであるとも主張するが(前記第5の1(2)ア(ア)b(b),同(c)),本件会合において1次値上げにおける価格の引上げの幅やその実施時期について6社の意見が一致したものと認定できることは,前記イ(ア)のとおりである。また,日コンが《事業者A》に対する段ボール用でん粉の価格の引上げの幅を1キログラム当たり16円に増額したことも,本件会合において段ボール用でん粉の価格の引上げ額については1キログラム当たり10円以上とする旨意見が一致したことと矛盾するわけではないし,日コンが,《事業者A》との取引停止後も他のコーンスターチメーカーと本件各値上げについての情報交換を行うなどして協調関係を維持していたことも,前記(1)オ(イ)b及び同(ウ)bのとおりであるから,被審人王子コンスが指摘する日コンによる価格の引上げの幅の増額や取引の停止という事実をもって,本件合意の成立は否定されないというべきである。
(3) 被審人Jオイルによる6社との本件合意の成否
ア 被審人Jオイルの以前からの6社との協調関係
 前記(1)アのとおり,被審人Jオイルは,かつては,段ボール用でん粉の価格の値上げ等について他のコーンスターチメーカーとの協調関係を維持していたところ,前記(1)イのとおり,被審人Jオイルの担当者は,平成20年春以降,社内のコンプライアンスが厳しくなったため,日本スターチ・糖化工業会における会合といった公式な会合を除き,他のコーンスターチメーカーの担当者による会合には出席しなくなっていたことは確かである。また,被審人Jオイルの《H1》及び被審人王子コンスの《F1》も,平成20年春以降の被審人Jオイルの協調関係の維持を否定する供述をしている(審A7,審B5,被審人王子コンスの《F1》参考人審尋速記録,被審人Jオイルの《H1》参考人審尋速記録)。
 しかしながら,被審人王子コンスの《F1》は,前記(2)の6社による本件合意に関し,被審人王子コンスが本件合意をしたことを示す6社による以前からの段ボール用でん粉の価格の引上げに関する協調関係,本件会合の開催が決定されるまでの経緯,本件会合でのやり取り,本件会合後の6社の情報交換の内容について,他のコーンスターチメーカーの担当者の一致する供述等によって認定される事実に反する供述等をしており,これが信用できないことは前記(2)で説示したとおりであり,この点に関する供述同様,被審人王子コンスが本件合意をしたことを示す事実を否定する上記の供述についても,その信用性は低いといわざるを得ない。また,被審人Jオイルが本件合意をしたことを示す事実を否定する旨の被審人Jオイルの《H1》の供述等についても,上記のような被審人王子コンスの《F1》の供述等と一致したとしても,そのことをもって,その信用性が担保されることにはなり得ず,信用性が低いことは同様である。
 そして,日コンの《E2》は,被審人Jオイルは,平成20年春頃から他のコーンスターチメーカーとの会合に参加しなくなったものの,被審人王子コンスの《F1》から,被審人Jオイルの《H1》が今後も同業者間での会合等での決定事項に沿うようにするので連絡してくださいと言っていると報告を受けた旨,そのためその後もしばらくの間,自身において被審人Jオイルの《H1》にも事前に会合の連絡をしていた旨,会合の結果は自身又は被審人王子コンスの《F1》が被審人Jオイルの《H1》に対して連絡していた旨,被審人Jオイルの《H1》から,直接,会合で決まったことに従うと言われたことがある旨を供述しているところ(査16,査28,査32,査45,査68,査90,査100),日本食品の《G2》及び日本食品の《G4》も,被審人Jオイルについて,会合には参加しなくなったものの,以前と同様に,他のコーンスターチメーカーと協調して値上げしているという認識を持っていたと供述しているなど(査46,査50),被審人Jオイルが会合に出席しなくなった平成20年春頃以降も,被審人Jオイルとの協調関係が維持されていたことを一致して供述している。このことからすると,被審人Jオイルは他のコーンスターチメーカーとの会合に出席しなくなって以降も一貫して協調関係にあったとする日コンの《E2》の上記供述は信用することができ,被審人Jオイルは,その担当者である被審人Jオイルの《H1》が他のコーンスターチメーカーの担当者との会合に出席しなくなった平成20年春頃以降も,会合について事前,事後に連絡を受けるなどして情報を得,6社との協調関係を維持していたものと認めるのが相当である。
イ 本件会合前の被審人Jオイルの《H1》の被審人王子コンスの《F1》に対する意向の伝達及び本件会合での報告
(ア) 日コンの《E2》は,本件会合を開催して段ボール用でん粉の値上げについて各社の考え方を確認することになった際,被審人王子コンスの《F1》において,被審人Jオイルの《H1》と敷島スターチの《I1》に対して連絡することになった旨,その後,被審人王子コンスの《F1》から,本件会合前に,やはり被審人Jオイルの《H1》は社内のコンプライアンスの関係でこの会合には参加できないものの,被審人Jオイルは会合で決まったことに従うということであったとの報告を受けたほか,本件会合においても,被審人Jオイルは段ボールメーカー向けのコーンスターチ等の値上げについて,我々と同じ行動を採る方針であるという報告がされた旨供述する(査16,査90,査100)。
 そこで,まず,被審人王子コンスの《F1》と被審人Jオイルの《H1》の間の本件会合前のやり取りに関する日コンの《E2》の上記供述部分の信用性について検討するに,本件会合前の平成22年10月20日に日コンの《E1》及び日コンの《E2》,被審人王子コンスの《F1》並びに日本食品の《G1》が被審人王子コンスで会合を行い,その場で本件会合の開催を決めたことは前記(1)エ(ア)で認定したとおりであるところ,日本食品の《G1》も,敷島スターチ,被審人Jオイル,三和澱粉,日本澱粉に対する本件会合の連絡は,日コンの《E2》と被審人王子コンスの《F1》が手分けして各社の担当者にすることになったなどと,日コンの《E2》の供述に沿う内容の供述をしている(査15,査103)。そして,被審人Jオイルは,会合に出席しなくなった平成20年春頃以降も,他のコーンスターチメーカーの会合についての情報を受け,協調関係を維持していたとの前記アの事実からすると,上記平成22年10月20日の会合で被審人Jオイルに対しても本件会合の開催を通知することになったとの上記各供述は自然であって信用することができる。この事実は,被審人王子コンスの《F1》が本件会合前に被審人Jオイルの《H1》の意向を確認したとする日コンの《E2》の上記供述部分に沿うものであって,その信用性を裏付けるものといえる。
 以上によれば,被審人Jオイルに対し本件会合の開催を通知することにし,被審人王子コンスの《F1》がこれを行うことになったとの事実を認めることができる。
 次に,本件会合における被審人Jオイルの意向の報告についての日コンの《E2》の上記供述部分の信用性について検討するに,本件会合では,6社の担当者の間で,1次値上げにおける段ボール用でん粉の価格の引上げの幅やその実施時期について意見が一致したとの前記(2)イ(ア)で認定した事実からすると,本件会合の際,段ボール用でん粉の値上げについての被審人Jオイルの意向が話題になったものと合理的に推認することができるほか,被審人王子コンスの《F1》においても,本件会合において被審人Jオイルの値上げに対する意向自体については発言したと供述している(被審人王子コンスの《F1》参考人審尋速記録)。
 そして,三和澱粉の《J4》が,平成22年11月6日に開催された三和澱粉の部内会議において,本件会合に出席した三和澱粉の《J2》が発言した内容を記載したメモ(査98)には「11/6 部内会ギ」と記載された頁の「1/1 -10円(段,《事業者Aの名称の記載》)」と読める記載に続く行に「≪「J」を丸囲みした記載。≫ ≪「加ト」を丸囲みした記載。≫ 欠席」と読める記載と,「≪「J」を丸囲みした記載。≫→OK」「≪「加ト」を丸囲みした記載。≫→声かけせず」と読める記載があるところ,これらの記載について,上記メモを作成した三和澱粉の《J4》は,「Jオイルは了解したという話が第三営業部長の《J2》からありましたのでこのように記載したものだと思います。」「《J2》がどのように言ったことをこのように『≪「J」を丸囲みした記載。≫→OK』と記載したものか思い出せませんが,(中略)Jオイルは,値上げを行うことについて了解したという話だったと思います。」(査116)と,本件会合に出席した三和澱粉の《J1》は,「Jオイルは,OKしたということを記載したものだと思います。」(査115)と,それぞれ供述している。
 この点,被審人Jオイルは,上記のメモ及びこれに関する上記各供述について,被審人Jオイルの《事業者A》に対する値上げ申入れの状況は,6社の担当者において,別途,段ボールメーカーとの間の取引に介在する商社である《事業者C》等から入手することが可能であり,「≪「J」を丸囲みした記載。≫→OK」という記載は,単に,被審人Jオイルも値上げをするということ,あるいは,被審人Jオイルによる値上げの申入れが,担当者が本件会合に出席した6社による値上げ申入れの障害にならないという意味と解することも可能であると主張し,事前に被審人王子コンスの《F1》が被審人Jオイルの《H1》と連絡をとって確認した事実を裏付けるものではないとし,被審人王子コンスの《F1》は,《事業者C》等から事前に得た情報を述べたにすぎないなどとこれに沿う供述をする(被審人王子コンスの《F1》参考人審尋速記録)。しかし,上記メモの「≪「J」を丸囲みした記載。≫→OK」という記載は,被審人Jオイルが6社と共に値上げを行うことを了解していることを示すものと解するのが素直である。
 さらに,日本澱粉の《L6》が,平成22年11月9日及び同月10日に開催された日本澱粉の営業会議において,本件会合に出席した日本澱粉の《L1》が発言した内容を記載したメモ(査99)には「JAオイル」「けっせき」「→値上は、そう」と読める記載があるところ,この記載について,本件会合に出席した日本澱粉の《L1》は,「J-オイルミルズも値上げに沿う,つまり,他のコーンスターチメーカーと同じような時期に同じくらいの幅で値上げをするということであったということです。」,「出席していなかったJ-オイルミルズについては他のコーンスターチメーカーと同じくらいの時期に同じくらいの幅で値上げをされるということです」(査102)と供述している。上記のメモ及びこれに関する上記供述も,上記の三和澱粉の《J4》のメモ及び同人の供述並びに三和澱粉の《J1》の供述と同様,日コンの《E2》の上記供述に沿うものである。
 以上によれば,被審人Jオイルの《H1》が平成22年11月5日の本件会合が開催される前に被審人王子コンスの《F1》に「会合には参加できないが,被審人Jオイルは会合で決まったことに従う」と伝え,本件合意が成立した本件会合において,被審人王子コンスの《F1》からその旨が他の会合の出席者に伝えられたという日コンの《E2》の供述は信用することができる。
 これに加え,前記アのとおり,平成20年春頃以降も,被審人Jオイルと他のコーンスターチメーカーとの協調関係が維持されていたものと認められることなどを併せ考えると,審査官が第5の1(1)イで主張するように,被審人Jオイルの《H1》は平成22年11月5日の本件会合が開催される前に被審人王子コンスの《F1》に対して「会合には参加できないが,被審人Jオイルは会合で決まったことに従う」と伝え,本件会合において,被審人王子コンスの《F1》からその旨が本件会合の出席者に対して報告されたものと認めることができる。
(イ) これに対し,被審人Jオイルは,日コンの《E2》が供述するようなやり取りが,本件会合前に被審人王子コンスの《F1》と被審人Jオイルの《H1》との間でされたことを否定し,被審人王子コンスの《F1》及び被審人Jオイルの《H1》も,平成22年11月5日の本件会合が開催される前に被審人Jオイルの《H1》と被審人王子コンスの《F1》との間で日コンの《E2》が供述するような内容のやり取りがされたことはもとより,本件会合前に被審人王子コンスの《F1》と被審人Jオイルの《H1》が連絡をとったこと自体を否定する供述をしている(審B5,被審人Jオイルの《H1》参考人審尋速記録,被審人王子コンスの《F1》参考人審尋速記録)。しかしながら,被審人Jオイルに対して本件会合の開催を通知することになったという前記(ア)で認定した事実に反することからすると,被審人王子コンスの《F1》及び被審人Jオイルの《H1》の上記供述等も前記アに説示したのと同様,信用することができない。
 その他,被審人Jオイルは,本件会合の前後である平成22年10月から11月までの間の被審人王子コンスの《F1》と被審人Jオイルの《H1》との間の面談についての記録の不存在(査4,査97)も主張しているが,電話等の面談以外の方法による連絡の可能性もあり,このような方法による連絡も全て記録に残されているとまでは認められないことからすると,被審人Jオイルが主張する上記のような面談の記録の不存在は,被審人王子コンスの《F1》が本件会合前に被審人Jオイルの《H1》の意向を確認して日コンの《E2》に報告したという日コンの《E2》の上記供述の信用性を否定するものとはなり得ない。
ウ 被審人王子コンスの《F1》の被審人Jオイルの《H1》に対する本件会合の結果の伝達
 日コンの《E2》は,被審人王子コンスの《F1》が被審人Jオイルの《H1》に対して本件会合の結果を連絡している旨供述する(査90)。
 この点,被審人Jオイルは,被審人Jオイルの《H1》が被審人王子コンスの《F1》から,本件会合で決まった内容を連絡されたという事実を否定し,被審人王子コンスの《F1》及び被審人Jオイルの《H1》も,これに沿う供述等をしているが(審B5,被審人王子コンスの《F1》参考人審尋速記録,被審人Jオイルの《H1》参考人審尋速記録),日コンの《E1》及び日コンの《E2》,被審人王子コンスの《F1》並びに日本食品の《G1》による本件会合前の平成22年10月20日の会合において,被審人Jオイルに対しても本件会合の開催を通知することになり,連絡をした被審人王子コンスの《F1》に対し,被審人Jオイルの《H1》が「会合には参加できないが,被審人Jオイルは会合で決まったことに従う」と伝えていたとの前記イの事実からすれば,被審人王子コンスの《F1》は,本件会合後,被審人Jオイルの《H1》に対して本件会合の結果を連絡したものと合理的に推認することができる。
 そうすると,上記の日コンの《E2》の供述部分は信用することができるから,被審人王子コンスの《F1》は,本件会合から平成22年11月18日までの間に,被審人Jオイルの《H1》に対し,本件会合の結果を連絡したものと認めるのが相当である。
 なお,被審人Jオイルは,被審人王子コンスの《F1》が被審人Jオイルの《H1》に対して審査官の主張するような内容の本件会合の結果を連絡していたとしても,審査官の主張する1次値上げの決定を伝えたにすぎず,本件合意の成立を伝えたとはいえないと主張するところ,上記認定のとおり,被審人王子コンスの《F1》が被審人Jオイルの《H1》に対して伝えたのが,1次値上げについての決定内容であって,本件合意の内容自体ではなかったとしても,1次値上げについての決定内容,すなわち,6社の担当者の間で一致した1次値上げにおける価格の引上げの幅やその実施時期などが被審人Jオイルの《H1》に伝えられたことは,被審人Jオイルが6社と共に本件合意をしたことの間接事実として評価することができる。
エ 本件各値上げにおける被審人Jオイルの値上げの申入れの状況
 本件合意がされたという平成22年11月5日より後の被審人Jオイルによる本件各値上げにおける申入れについてみると,前記(1)オのとおり,その申入れの時期や価格の引上げの幅,その実施時期は,6社とおおむね一致している。そうすると,前記(2)ウで説示したとおり,この事実のみをもって,直ちに被審人Jオイルが6社と本件合意に基づいて協調して行動していたと認めることができないとしても,被審人Jオイルが6社と協調関係にあること,ひいては,被審人Jオイルが6社と共に本件合意をしたことを推認させる一事情になるものと認められる。
オ 被審人Jオイルの《H1》と日コンの《E2》及び被審人王子コンスの《F1》との段ボール用でん粉の値上げについて情報交換
(ア) 被審人Jオイルの《H1》が平成22年12月1日に日コンの《E2》から《事業者A》との値上げ交渉についての情報提供を受けたという事実
 日コンの《E2》は,平成22年12月1日の《事業者A》訪問後,《事業者A》との値上げ交渉の内容について,被審人王子コンスの《F1》,被審人Jオイルの《H1》,敷島スターチの《I1》,三和澱粉の《J2》に報告をしたと供述するところ(査100),前記(2)イ(ア)のとおり,本件会合では,《事業者A》と交渉をした場合には,その内容について報告し合うことが確認されており,また,証拠(査100,査150,査153)によれば,日コンの《E2》は,現に,敷島スターチの《I1》に対し,《事業者A》との値上げ交渉の状況について報告をしていること,被審人Jオイルの従業員である《H4》による平成23年12月20日の被審人Jオイルの定例会での発言等をメモしたノート(査153)には,被審人Jオイルの《H1》が発言した日コンを含む他のコーンスターチメーカーが段ボールメーカーに申し入れた具体的な値上げの金額(前記(1)オ(ア)a(a)の実際の金額と一致する。)が記載されていることが認められ,これらの事実は,日コンの《E2》の供述に沿うものと認められる。被審人Jオイルは,段ボール用でん粉の取引の実情からすると,被審人Jオイルの《H1》が段ボールメーカーとの間の取引に介在する商社である《事業者C》等から他社の値上げに関する情報を得た可能性も否定できないとするが,あくまで抽象的な推測にすぎず,上記の被審人Jオイルの定例会において他のコーンスターチメーカーの具体的な値上げの金額が報告されていたことからすると,報告された情報は,《事業者C》から得たものではなく,他のコーンスターチメーカーから得たものと解するのが自然である。そうすると,被審人Jオイルは上記の情報提供を否定しており,被審人Jオイルの《H1》も,日コンの《E2》と1次値上げについての情報交換を行ったという事実を否定する陳述をしているほか(審B5),被審人Jオイルの《H1》に対する連絡についての日コンの《E2》の供述が,「Jオイルの《H1》さんにも私から報告したと思います。」(査100),「このように私は,敷島の《I1》さんを含む先ほど申しました同業他社の担当者に対して報告を行いました」(査100)という概括的かつ抽象的な供述にとどまっていることを考慮しても,平成22年12月1日の《事業者A》訪問後に《事業者A》との値上げ交渉の内容を被審人Jオイルの《H1》にも報告をしたという日コンの《E2》の上記供述は,これを信用することができる。
 したがって,日コンの《E2》の上記供述によれば,被審人Jオイルの《H1》は,平成22年12月1日頃,日コンの《E2》から《事業者A》との値上げ交渉についての情報提供を受けたものと認めることができる。
(イ) 被審人Jオイルの《H1》と被審人王子コンスの《F1》による《事業者C》の《C1》を交えた平成23年6月20日及び同年7月12日の飲食店における面談の際の情報交換
 前記(1)オ(ウ)d(a)及び同(b)のとおり,被審人Jオイルの《H1》と被審人王子コンスの《F1》は,《事業者C》の《C1》と共に,平成23年6月20日及び同年7月12日に飲食店において面談をしているところ,上記の各面談に出席した《事業者C》の《C1》は,上記の6月20日の飲食店における面談では,「3次値上げの時期ですので,お会いした際には,3次値上げの話をしたはずです。」(査169),「値上げを認めてもらえるようみんなで頑張って交渉していかないといけないということで,懇親を深めたいという意味合いがあったのだと理解しました。」,「本来の目的は懇親を深めて団結していこうということですから,それほど込み入った話というよりも,今後《事業者A》や《事業者B》に3次値上げの申入れをしていこうということなどを話しました。」(査170)と供述し,上記の7月12日の飲食店における面談については,「《事業者A》に値上げの話をして反応がどうであったとか,《事業者B》に値上げを申し入れたなどという話しをしたはずです。」(査169),「それぞれ,値上げの申入れをしてきたとか,先方の反応がどうだったかといったことを話し」(査170)たと供述している。
 これに対し,被審人Jオイルの《H1》及び被審人王子コンスの《F1》は,上記各面談の際,本件合意に基づく段ボール用でん粉の値上げについて話したことを否定する供述をしているものの(審B5,被審人王子コンスの《F1》参考人審尋速記録,被審人Jオイルの《H1》参考人審尋速記録),上記3者の関係や上記各面談が行われた時期からすると,上記各面談では,少なくとも,3次値上げにおける各コーンスターチメーカーによる段ボール用でん粉の値上げの申入れや段ボールメーカーとの値上げ交渉の状況についての情報交換も行われたものと認めるのが相当である。
(ウ) 日コンの《E2》と被審人Jオイルの《H1》との平成24年1月18日の電話による情報交換
 前記(1)オ(ウ)d(c)のとおり,日コンの《E2》は,平成24年1月18日,被審人Jオイルの《H1》に対し,電話をしているところ,日コンの《E2》は,上記電話の内容について,《事業者A》からの値下げ要求の確認のため,他の担当者と同様に被審人Jオイルの《H1》にも連絡して確認したと具体的に供述している。また,証拠(査90)によれば,実際,日コンの《E2》は,上記電話の翌日に,《事業者C》に赴いて《事業者A》からの値下げ要求について報告しているものと認めることができるところ,この事実は,日コンの《E2》の上記供述に沿うものといえるから,日コンの《E2》の上記供述は信用することができる。
 この点,被審人Jオイルは,上記電話について,その通話時間が僅か1分20秒にとどまっていることなどから,3次値上げに関するものではなく,その前日に亡くなった《事業者D》の前社長の葬儀について,各社からの出席者や香典の額を尋ねるものであったと主張し,被審人Jオイルの《H1》も上記主張に沿う供述をしているが(審B5,被審人Jオイルの《H1》参考人審尋速記録),証拠(査90)によれば,日コンの《E2》が,他のコーンスターチメーカーの担当者にも,ほぼ同じ機会に連続して架電して通話していることが認められるところ,日コンの《E2》が,被審人Jオイルが主張するような商社の前社長の葬儀の出席者や香典について,各社の担当者に電話して確認したという被審人Jオイルの《H1》の供述自体が,不自然であってにわかに信用し難い。また,日コンの《E2》の上記供述が具体的であって,これに沿う事実が認められることからすると,同供述の内容を否定する被審人Jオイルの主張はにわかに採用し難い。
 そうすると,日コンの《E2》の上記供述によれば,日コンの《E2》は,平成24年1月18日,被審人Jオイルの《H1》に対し,電話をして,《事業者A》からの値下げ要求についての情報交換を行ったものと認められる。
(エ) その他の情報交換
 日コンの《E2》は,自身ではなく,被審人王子コンスの《F1》が被審人Jオイルの《H1》と本件各値上げについての情報交換を行った旨の供述もしている(査100,査157)。
 この点,被審人Jオイルの《H1》のみならず,被審人王子コンスの《F1》も,日コンの《E2》の供述するような本件各値上げについての情報交換等を行っていたという事実を否定する供述等をしており(審A7,被審人王子コンスの《F1》参考人審尋速記録),日コンの《E2》の上記供述自体,具体性を欠く抽象的な部分が多いことも確かである。
 しかし,被審人Jオイルの《H1》及び被審人王子コンスの《F1》が,これまでに認定したアないしウの各事実に反する供述をしているとの事実に加え,日コンの《E2》が平成23年2月28日頃に被審人王子コンスの《F1》から聞いた内容を記載したノートには,日コン以外の各コーンスターチメーカーが同月25日頃に受けた《事業者A》からの条件提示及び段ボール用でん粉の納入依頼への対応方針等が記載され,そこには被審人Jオイルの対応方針も記載されていること(査157)からすると,前記(ア)ないし(ウ)で認定した情報交換のほかにも,被審人王子コンスの《F1》と被審人Jオイルの《H1》との間で本件各値上げに関する情報交換が行われていたものと認めるのが相当である。
カ 小括
 以上のとおり,①被審人Jオイルが,平成20年春頃以降も,他のコーンスターチメーカーと従前と同様の協調関係を維持していたこと,②被審人Jオイルの《H1》が,平成22年11月5日の本件会合が開催される前に被審人王子コンスの《F1》に「会合には参加できないが,被審人Jオイルは会合で決まったことに従う」と伝え,そのことが本件会合で報告されたこと,③被審人王子コンスの《F1》が,本件会合から平成22年11月18日までの間に,被審人Jオイルの《H1》に本件会合の結果を連絡したこと,④被審人Jオイルが,本件各値上げのいずれにおいても,6社とおおむね同様の時期に,おおむね同様の内容で,段ボール用でん粉の価格の値上げの申入れを行っていたこと,⑤被審人Jオイルの《H1》が,平成22年11月5日の本件会合以降に日コンの《E2》や被審人王子コンスの《F1》との間で本件各値上げについての情報交換を行っていたことからすると,被審人Jオイルは,平成22年11月5日までに6社と共に本件合意をしたものと認めるのが相当である。
 なお,被審人Jオイルは,段ボール用でん粉の価格について,とうもろこしのシカゴ相場の変動等を考慮して自社独自の判断により決定していたと主張するが,上記のとおり,被審人Jオイルの《H1》が他のコーンスターチメーカーの担当者と段ボール用でん粉の値上げに関する情報交換を行っていたことや,本件各値上げにおける価格の引上げの幅やその実施時期が6社とおおむね一致していること,被審人Jオイルが平成20年春頃以降も他のコーンスターチメーカーとの協調関係を維持していたことなどからすると,段ボール用でん粉の価格構成や取引の実情から,値上げの申入れの時期や内容が各コーンスターチメーカーにおいて一致しやすい傾向があることなどを考慮しても,被審人Jオイルは6社と共に本件合意をしたものと推認されるところ,これに対し,本件各値上げにおける被審人Jオイルの値上げの申入れや値上げの交渉が被審人Jオイルの独自の判断によるものと認めるに足りる証拠はなく,被審人Jオイルが6社と共に本件合意をしたという上記認定は左右されるものではない。また,被審人Jオイルは,本件合意自体が存在しないとも主張するが,本件合意の成立が認められることは前記(2)のとおりである。したがって,被審人Jオイルの主張はいずれも採用できない。
(4) 被審人加藤の本件合意への参加の有無 
ア 審査官の主張
 審査官は,①被審人加藤の《K1》が,被審人加藤の《K2》と共に出席した平成22年11月8日の日本食品の《G1》との本件会食において,かねてからの8社の協調関係等から,本件合意が成立したことを知った上で,「足は引っ張らない」と述べて,他のコーンスターチメーカーと同様に段ボール用でん粉の価格を引き上げていく意向であることを表明したこと,②被審人加藤が,本件各値上げにおいて,8社とおおむね同様の時期に,同様の内容で,段ボール用でん粉の価格の引上げの申入れを行うなどしていたこと,③被審人加藤の担当者が,本件各値上げの交渉状況等につき,他のコーンスターチメーカーの担当者と情報交換をしていたことなどから,被審人加藤が上記の本件会食がされた同日までに本件合意に参加したと主張する。
イ 被審人加藤の以前からの他社との協調関係について
 前記(1)アのとおり,被審人加藤は,かつては,段ボール用でん粉の価格の値上げ等について他のコーンスターチメーカーとの協調関係を維持していたものの,同ウのとおり,被審人加藤は,平成21年10月頃から,安値での売込みにより,他のコーンスターチメーカーの取引先を奪ったため,被審人加藤の担当者は,本件会合に誘われることはなかった。また,証拠(査96,査110,査111,被審人加藤の《K2》参考人審尋速記録)によれば,日本食品の《G1》は,被審人加藤の《K1》及び被審人加藤の《K2》に対し,本件会合において6社の担当者の間で1次値上げにおける段ボール用でん粉の価格の引上げ額等について意見が一致したことはもとより,平成22年11月5日に6社が本件会合を開催したという事実すら知らせなかったものと認められる。さらに,日本食品の《G1》(査15,査96,審C3),日コンの《E2》(査16,査94),日本澱粉の《L1》(査101),被審人王子コンスの《F1》(被審人王子コンスの《F1》参考人審尋速記録)は,被審人加藤が6社と協調する関係になかったことを示す供述をしており,その他,被審人加藤が本件合意に参加したとされている同月8日の時点で,被審人加藤が6社と協調関係にあったという供述をしているコーンスターチメーカーの担当者はいない。このような事実からすると,少なくとも,同月5日の本件会合の時点,あるいは,同月8日の本件会食の時点では,被審人加藤は他のコーンスターチメーカーと協調する関係にあったとは認められない。
ウ 本件会食について
(ア) 前記イを踏まえて,次に,被審人加藤の《K1》が,被審人加藤の《K2》と共に出席した日本食品の《G1》との本件会食において,かねてからの8社の協調関係等から,本件合意が成立したことを知った上で,「足は引っ張らない」と述べて,他のコーンスターチメーカーと同様に段ボール用でん粉の価格を引き上げていく意向であることを表明したという審査官主張の前記アの①の事実について検討する。
(イ) まず,前記(1)エ(ウ)のとおり,被審人加藤の《K1》及び被審人加藤の《K2》は,日本食品の《G1》の誘いを受け,本件会合の3日後に当たる平成22年11月8日,日本食品の《G1》と本件会食をしているところ,証拠(査15,査96,査99,査100,査102,査107ないし査111,査149)によれば,日本食品の《G1》が,本件会食の際,被審人加藤の《K1》及び被審人加藤の《K2》に対し,少なくとも,段ボール用でん粉の市場の状況(とうもろこしのシカゴ相場が上昇しており,値上げをする必要があること)のほか,他のコーンスターチメーカーが値上げ(1次値上げ)を予定しているという話をした上で,被審人加藤の値上げについての意向を確認したところ,被審人加藤の《K1》は,日本食品の《G1》に対し,被審人加藤の値上げの意向について話をし,これを聞いた日本食品の《G1》は,被審人加藤による値上げの意向が本件会合において一致した6社による1次値上げの方針の妨げにはならないものと認識したものと認めるのが相当である。
 これに対し,被審人加藤は,本件会食において,段ボール用でん粉の具体的な値上げの話が出たことを否定し,被審人加藤の《K2》も,これに沿う供述をする(審C1,被審人加藤の《K2》参考人審尋速記録)。
 しかしながら,まず,被審人加藤が指摘するように,被審人加藤と日本食品が取引先について競合する関係になかったとしても(被審人加藤の《K2》参考人審尋速記録),前記(2)イ(ア)で認定したとおり,とうもろこしのシカゴ相場の上昇により,いずれのコーンスターチメーカーにおいても,段ボール用でん粉の値上げが必要な状況となっており,しかも,本件会食の直前には,日本食品の担当者を含む6社の担当者によって本件会合が開かれ,6社の担当者の間で,段ボール用でん粉の価格の引上げについて意見が一致していたことからすると,6社にとって,本件会合に担当者が参加していない被審人加藤の意向は当然に関心を持ってしかるべきであったといえる。そして,証拠(査15,査96,査99,査102)によれば,現に,6社の担当者の出席した本件会合では,日本食品の《G1》が被審人加藤の意向を確認してくるという話が出たものと認められる。そうすると,本件会食において,他のコーンスターチメーカーが値上げを予定していることを説明し,被審人加藤の値上げの意向を確認したという日本食品の《G1》の供述は信用することができる。そして,日本食品の《G1》から値上げの意向についての確認を求められた被審人加藤の《K1》において,自社の値上げの意向について全く回答しなかったとは考えられず,少なくとも,被審人加藤の値上げの意向について発言をしたということも,合理的に推認することができる(上記の認定は,本件会食での被審人加藤の《K1》らとの間のやり取りについて「覚えていない」などと日本食品の《G1》が述べた旨の被審人加藤代理人弁護士作成の面談結果の報告書〔審C3〕によっても,左右されるものではない。)。
(ウ) 一方,審査官は,本件会食の際,被審人加藤の《K1》が日本食品の《G1》に対して「足は引っ張らない」という発言をしたと主張し,日本食品の《G1》も,「加藤化学の《K1》さんは,足は引っ張らないなどと言いました。」として,被審人加藤も同調して値上げをしていくことを確認したとか,その旨を被審人王子コンスの《F1》や日コンの《E2》に報告したなどと供述しており(査96,査149),日コンの《E2》も,日本食品の《G1》から,被審人加藤も「段ボール用でん粉の価格を1キログラム当たり10円以上引き上げ」ていく意向であることを伝えられたとか,日本食品の《G1》から「平成22年11月8日の週」に電話を受け,被審人加藤が同業他社と同調してやっていく旨報告を受けたなどと,日本食品の《G1》の供述に沿う供述をしている(査100)。
 しかしながら,被審人加藤の《K1》は,本件会食において日本食品の《G1》に対して「足は引っ張らない」という発言をしたことを否定する供述等をしている(審C1,被審人加藤の《K2》参考人審尋速記録)。また,前記(1)ウのとおり,被審人加藤は,平成21年10月頃から,安値での売込みによって他のコーンスターチメーカーの取引先を奪うなど,過去の協調関係から逸脱する行動をとっており,前記イのとおり,本件会食の時点では,他のコーンスターチメーカーと協調する関係にあったとは認められないことからすると,被審人加藤の従業員である被審人加藤の《K1》において,日本食品の《G1》に対し,被審人加藤が6社及び被審人Jオイルと協調して値上げをしていくという考えの下,日本食品の《G1》が供述する「足は引っ張らない」という発言をしたとまでは認められない。
 この点,審査官は,被審人加藤がかつては他のコーンスターチメーカーと段ボール用でん粉の価格について情報交換等をするなどして協調関係を維持していたことから,被審人加藤の《K1》及び被審人加藤の《K2》において,平成22年11月8日の本件会食での日本食品の《G1》の発言から,コーンスターチメーカー各社がその頃のとうもろこしのシカゴ相場の上昇に対しても従来同様に共同して値上げをしていくこととしたこと,つまり,本件合意が成立したことを認識することができたとし,その上で,被審人加藤の《K1》において,被審人加藤も本件合意に参加する旨表明したと主張する。
 しかし,前記イのとおり,日本食品の《G1》は,被審人加藤の《K1》及び被審人加藤の《K2》に対し,本件会合において6社の担当者の間で1次値上げにおける段ボール用でん粉の価格の引上げ額等について意見が一致したことはもとより,平成22年11月5日に6社が本件会合を開催したという事実すら知らせなかったというのである。そうすると,審査官が主張するように,段ボール用でん粉の取引における段ボールメーカーの交渉姿勢等から,段ボール用でん粉の値上げが複数回となりやすいこと,値上げ後にはその価格を維持する必要があること,その他,前記(2)ア((1)ア)のような8社の以前の協調関係を考慮したとしても,担当者である被審人加藤の《K1》及び被審人加藤の《K2》が,本件会合において,日本食品の《G1》の言動その他から,6社の担当者の間で,段ボール用でん粉の需要者渡し価格の引上げ額については1キログラム当たり10円以上とし,実施時期については遅くとも平成23年1月1日納入分から実施することで意見が一致したことを認識したとまで認めるに足りる証拠はないといわざるを得ない。
 また,仮に,審査官が主張するように,本件会食の際,被審人加藤の《K1》及び被審人加藤の《K2》において,6社がとうもろこしのシカゴ相場に応じて段ボール用でん粉の値上げを協調してすることとしたという認識を持つことが可能であったとしても,前記イのとおり,被審人加藤は,平成21年10月頃から,安値での売込みにより,他のコーンスターチメーカーの取引先を奪うなど,過去の協調関係から逸脱する行動をとっていたこと,また,そのために,被審人加藤の担当者は本件会合に誘われなかったこと,さらに,日本食品の《G1》は,本件会食において,被審人加藤の《K1》及び被審人加藤の《K2》に対し,本件会合の開催の事実すらも知らせなかったことなどからすると,被審人加藤は,本件会食の時点において,6社と協調して段ボール用でん粉の値上げを行っていくという関係にはなかったものと認めるのが相当であり,そうすると,審査官の主張するように,被審人加藤の《K1》が,本件会食において,被審人加藤も6社及び被審人Jオイルと協調して段ボール用でん粉の価格を引き上げていく意向を表明したとまで認めるのは困難である。
 このように,被審人加藤は,本件会合における6社の担当者の間での段ボール用でん粉の価格の引上げ額等について上記のように意見が一致したことを認識していたものとは認められない以上,本件会食において,これに協調して行動する意向を示すということは考えられないし,また,仮に6社がとうもろこしのシカゴ相場に応じて段ボール用でん粉の値上げを協調してすることとしたという認識を持つことが可能であったとしても,これと協調して行動する意向を表明したとまでは認められない。
 なお,日本食品の《G1》は,上記のとおり,被審人加藤の《K1》が「足は引っ張らない」という発言をしたと供述した上で,この意味について,「同業他社が値上げしようとしている金額より低い価格で申入れを行ったりして他社の値上げを邪魔するようなことはしないし,同じような額及び実施時期で加藤化学も値上げするということです。」と供述しているものの(査96),被審人加藤の《K1》による「足は引っ張らない」という発言を認めるに足りる証拠がないことは上記のとおりである。しかも,上記供述は,被審人加藤の《K1》ないし被審人加藤の認識ではなく,日本食品の《G1》の認識を示したものにすぎないことからすると,日本食品の《G1》の上記供述は,被審人加藤の《K1》が,本件会食において,被審人加藤も同様に段ボール用でん粉の価格を引き上げていく意向であることを表明したとは認められないという上記の判断を左右するものではない。
(エ) 以上によれば,被審人加藤の《K1》が,本件会食において,本件会合の開催や本件合意の成立を認識した上で,日本食品の《G1》に対し,「足は引っ張らない」と発言するなどして,被審人加藤も同様に段ボール用でん粉の価格を引き上げていく意向であることを表明したと認めるに足りる証拠はない。
エ 事後の行動の不自然な一致及び情報交換について
(ア) 次に,被審人加藤が,本件各値上げにおいて,8社とおおむね同様の時期に,同様の内容で,段ボール用でん粉の価格の値上げの申入れを行うなどしていたという審査官主張の事実(前記アの②)及び被審人加藤の担当者が,本件各値上げの交渉状況等につき,他のコーンスターチメーカーの担当者と情報交換をしていたという審査官主張の事実(同③)について検討する。
(イ) この点,まず,平成22年11月8日の本件会食後の本件各値上げについて,被審人加藤による値上げの申入れの時期やその内容が,他のコーンスターチメーカーとおおむね一致していることは,前記(1)オのとおりであり,前記(2)ウで説示したのと同様,この事実のみをもって,直ちに被審人加藤が6社及び被審人Jオイルと本件合意に基づいて協調して行動していたと認めることはできないとしても,被審人加藤が6社と協調関係にあること,ひいては,被審人加藤が本件合意に参加したことを推認させる一事情にはなり得るものと認められる。
(ウ) 一方,審査官は,被審人加藤の担当者と他のコーンスターチメーカーの担当者との間の情報交換として,2次値上げの決定が被審人加藤に伝えられたと主張するところ,前記(1)オ(イ)dのとおり,被審人加藤の《K1》は,2次値上げの申入れをした後の平成23年4月28日,日本食品の《G1》と面談していることは確かである。しかし,日本食品の《G1》は,この面談において,《事業者M》の《工場名略》への段ボール用でん粉の納入について話したとは供述しているものの,2次値上げにおける段ボールメーカーとの交渉について話したとは供述していない(査120)。その他,日本食品の《G1》は,2次値上げにおける被審人加藤の《K1》との情報交換について供述しているものの(査120),この供述も具体的な日時や方法を特定しない抽象的なものにすぎない。むしろ,前記(1)オ(イ)a(a)のとおり,2次値上げでは,他のコーンスターチメーカーが8円の値上げを申し入れているのに対し,被審人加藤だけが10円の値上げを申し入れており,しかも,《事業者A》から,他社と同様の5円の値上げの提示を受けたものの,これを拒否し,結局,7円の値上げが受け入れられた上,《事業者A》から,このことを口外しないように指示されて,この指示を守っている。このような事実は,同業他社よりも低い価格を提示してシェアを奪ういわゆるカルテル破りのようなものではないものの,被審人加藤が,2次値上げについて,他のコーンスターチメーカーと協調関係にはなかったことを示すものといえる。
また,3次値上げにおいて,被審人加藤は,前記(1)オ(ウ)eのとおり,被審人加藤の《K1》らにおいて,日本食品の《G1》や日コンの《E2》と面談等を行っており,証拠(査123,査124,査126,査175,査176)によれば,そこでは,3次値上げにおける各コーンスターチメーカーによる値上げの申入れや段ボールメーカーとの値上げ交渉の状況についての情報交換が行われたものと認められるものの(前記(3)オ(ウ)で説示したのと同旨の理由により,平成24年1月18日の電話を含む。),一方で,被審人加藤は,前記(1)オ(ウ)a(c)のとおり,3次値上げについても,他のコーンスターチメーカーが値上げを認められなかったにもかかわらず,独自の交渉を行って《事業者A》から値上げを認められており,他のコーンスターチメーカーと協調して値上げを行っていたとは認め難い。
(エ) 以上によれば,本件各値上げについて,被審人加藤が本件合意に参加したことをうかがわせるような6社との行動の一致は一応認められるものの,その一方で,6社との協調関係が存在しないことを示すような被審人加藤の行動も認められる。また,被審人加藤の担当者と他のコーンスターチメーカーの担当者の情報交換も,被審人加藤が本件合意に参加していたことを示すものであるとは認められない。
オ 小括
 以上のとおり,審査官の主張する事実については,まず,①被審人加藤は,平成21年10月頃に日コンが納入していた《事業者A》との取引を奪うなどしており,それゆえに,被審人加藤の担当者は本件会合に誘われず,その開催の事実さえも知らされなかったことからすると,被審人加藤の《K1》及び被審人加藤の《K2》が,平成22年11月8日の日本食品の《G1》との本件会食において,本件合意が成立したことを知った上で,日本食品の《G1》に対し,被審人加藤も本件合意に参加する旨を表明したとは認められない。また,②被審人加藤は,本件各値上げにおいて,おおむね同様の時期に同様の内容で値上げの申入れをしており,他のコーンスターチメーカーと段ボール用でん粉の価格の値上げについての一定の情報交換を行ったという事実も認められるものの,前記エ(ウ)のような被審人加藤の本件各値上げにおける段ボールメーカー(《事業者A》)との具体的な交渉の状況等からすると,やはり,被審人加藤が本件合意に参加したとまで認めるに足りる証拠はないというべきである。
(5) 本件合意が不当な取引制限に該当するか
ア 独占禁止法第2条第6項の定め
 独占禁止法第2条第6項は,「事業者が,契約,協定その他何らの名義をもつてするかを問わず,他の事業者と共同して対価を決定し,維持し,若しくは引き上げ,又は数量,技術,製品,設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し,又は遂行することにより,公共の利益に反して,一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう」と定めている。
 そして,「共同して」に該当するというためには,複数事業者が対価を引き上げるに当たって,相互の間に意思の連絡があったと認められることが必要である。ここにいう意思の連絡とは,複数事業者間で相互に同内容又は同種の対価の引上げを実施することを認識ないし予測し,これと歩調をそろえる意思があることを意味し,一方の対価引上げを他方が単に認識,認容するのみでは足りないが,事業者間相互で拘束し合うことを明示して合意することまでは必要ではなく,相互に他の事業者の対価の引上げ行為を認識して,暗黙のうちに認容することで足りる(東京高等裁判所平成7年9月25日判決・公正取引委員会審決集第42巻393頁〔東芝ケミカル株式会社による審決取消請求事件〕,東京高等裁判所平成22年12月10日判決・公正取引委員会審決集第57巻第2分冊222頁〔三菱レイヨン株式会社ほか1名による審決取消請求事件,以下「モディファイヤーカルテル事件判決」という。〕)。
 次に,「相互にその事業活動を拘束し」とは,本来自由であるべき各事業者の事業活動を相互に制約することをいい(公正取引委員会平成18年11月27日審決・公正取引委員会審決集第53巻467頁〔タキイ種苗株式会社ほか18名に対する件〕),「拘束」の程度としては,実効性を担保するための制裁等の定めがある必要はなく,事業活動が事実上相互に拘束されることで足りると解すべきである(最高裁判所第一小法廷平成24年2月20日判決・民集第66巻第2号796頁・公正取引委員会審決集第58巻第2分冊148頁〔株式会社新井組ほか3名による審決取消請求事件。以下「多摩談合事件最高裁判決」という。)。
 さらに,「一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」とは,当該取引に係る市場が有する競争機能を損なうことをいい(多摩談合事件最高裁判決),一定の取引分野における競争を完全に排除し,価格等を完全に支配することまでは必要なく,一定の取引分野における競争自体を減少させ,特定の事業者又は事業者集団がその意思で,ある程度自由に,価格,品質,数量,その他各般の条件を左右することによって,市場を支配することができる状態をもたらすことで足り,このような趣旨における市場支配的状態を形成・維持・強化することをいう(モディファイヤーカルテル事件判決。なお,東京高等裁判所昭和26年9月19日判決・民集第8巻第5号967頁〔最高裁判所第三小法廷昭和29年5月25日判決・民集第8巻第5号950頁〕において是認されている。)。
イ 意思の連絡について
(ア) 前記(2)及び(3)のとおり,6社及び被審人Jオイルは,遅くとも平成22年11月5日までに,今後,とうもろこしのシカゴ相場の上昇に応じて,段ボール用でん粉の価格の引上げを共同して行っていくという本件合意をしている。そして,6社及び被審人Jオイルは,従前の協調関係をふまえ,平成18年夏頃からのとうもろこしのシカゴ相場の状況を受け,段ボール用でん粉の価格の引上げの幅やその実施時期等を共同して決定し,それに沿って各社が値上げを申し入れた後は,値上げ交渉の状況や交渉方針等について話し合うなどし,交渉が妥結すると次の値上げにおける価格の引上げの幅,その実施時期等を決定するという一連の行為を行っており,これを,とうもろこしのシカゴ相場が下落してコーンスターチメーカー各社が共同して段ボールメーカーからの値下げ要請に抵抗してもこれに応じざるを得なくなるまで継続していたという経験から,この時とおおむね同様の行動をとれば同業他社と歩調をそろえて値上げ活動ができるという共通認識を有していた。そうすると,平成22年11月5日までに,今後,とうもろこしのシカゴ相場の上昇に応じて,段ボール用でん粉の価格の引上げを共同して行っていくという本件合意をした6社及び被審人Jオイルは,とうもろこしのシカゴ相場の上昇に応じた値上げ活動を実施するという同内容又は同種の対価の引上げを実施することを6社及び被審人Jオイルが互いに認識ないし予測し,これと歩調をそろえる意思があったといえるから,6社及び被審人Jオイルの間には意思の連絡が存在したといえる。
(イ) これに対し,6社のうちの1社である被審人王子コンスは,本件合意が不当な取引制限に該当するためには,本件合意の内容自体が競争の実質的制限をもたらすような性格を有することが必要であるところ,本件合意の内容には,値上げの決定時期,実施時期,価格の引上げの幅,これらの決定方法が含まれておらず,本件合意自体が実効性を有していないから,6社及び被審人Jオイルが,いつ,どの程度値上げするのかという点について相互に予測してこれに歩調をそろえるなどして本件合意自体を共同遂行することは不可能であるから,本件合意は不当な取引制限に該当しないと主張しており,被審人Jオイルも同様の主張をしている。
 この点,本件合意の内容自体が競争の実質的制限をもたらすような性格を有することが必要であるとしても,前記アのとおり,競争の実質的制限をもたらすといえるためには,一定の取引分野における競争自体を減少させ,特定の事業者又は事業者集団がその意思で,ある程度自由に,価格,品質,数量,その他各般の条件を左右することによって,市場を支配することができる状態をもたらすことで足りることからすると,そもそも,本件合意について,段ボール用でん粉についての具体的な値上げの決定時期,実施時期,価格の引上げの幅がその内容となっていることまでは必要ないものと解される。
 また,本件合意には,その内容として,具体的な段ボール用でん粉の値上げの決定時期,実施時期,価格の引上げの幅の決定方法が含まれていないことは確かであるが,①前記第3の2(2)イのとおり,段ボール用でん粉の価格の引上げは,段ボールメーカー最大手の《事業者A》が,コーンスターチメーカーによる価格の引上げの申出を受け入れれば,他の段ボールメーカーもほぼ同様の内容でこれを受け入れるが,《事業者A》がこれを受け入れなければ,他の段ボールメーカーもこれを受け入れないという実情があったところ,《事業者A》は,とうもろこしのシカゴ相場の上昇等を背景とする段ボール用でん粉の値上げ交渉において,コーンスターチメーカーから申し入れられた額の一部しか値上げを認めず,また,交渉妥結までは期間を要するのが通常であり,しかも,値上げの実施時期が交渉妥結前に遡ることは認められなかったため,値上げの実施時期は当初コーンスターチメーカーが申し入れた時期より遅くなるのが通例であり,そのため,一般に,コーンスターチメーカーは,値上げ申入れ後,妥結までの間にとうもろこしのシカゴ相場が上昇した場合,《事業者A》に認められなかった分の値上げや,値上げ交渉中のとうもろこしのシカゴ相場上昇分の値上げを求めて,引き続き,次の値上げ交渉を行っていたこと,また,②6社及び被審人Jオイルは,遅くとも平成18年頃までには既に,担当者らが会合を開催する,2社の担当者が面談する,電話するなどの方法により,繰り返し,段ボール用でん粉の価格の引上げの幅,その実施時期等を話し合うなどして,段ボール用でん粉の原料であるとうもろこしのシカゴ相場が上昇すると段ボール用でん粉の価格を引き上げるとの認識を共有し,協調関係を維持してきたこと,そして,このような事実に加え,③現に,平成22年夏頃以降,6社及び被審人Jオイルが,それぞれ,《事業者A》を始めとする段ボールメーカーに対して直接又は商社を通じて段ボール用でん粉の価格を引き上げる旨の申入れや,交渉を行い,これらの申入れや交渉の内容について相互に情報交換をしており,6社及び被審人Jオイルが,歩調をそろえて値上げ活動を行い,又は,段ボールメーカーからの値下げの要請に抵抗していたものと認められることや,④前記(2)ウのとおり,段ボール用でん粉の価格は,その変動要因が各コーンスターチメーカーで共通することなどから,値上げの申入れ時期や,価格の引上げの幅,その実施時期が一致しやすいことを併せ考えると,6社及び被審人Jオイルは,遅くとも本件会合が開かれた平成22年11月5日までに,段ボール用でん粉について,今後,とうもろこしのシカゴ相場の上昇に応じて,需要者渡し価格の引上げを共同して行っていく旨の本件合意をすれば,6社及び被審人Jオイルの担当者らが会合を開催する,2社又は数社の担当者が面談する,電話するなどの方法により,繰り返し,段ボール用でん粉の価格の引上げの幅,その実施時期等を話し合うなどして,歩調をそろえて段ボール用でん粉の価格を引き上げることが可能であったと認められる。
 したがって,本件合意について,いつ,どの程度値上げするのかという点について相互に予測してこれに歩調をそろえることは不可能であるという被審人王子コンス及び被審人Jオイルの主張を採用することはできない。
(ウ) また,被審人王子コンスは,値上げの成否を担う《事業者A》に対する日コンの説明内容や提供資料が極めて重要な意味を持つとした上で,審査官主張の本件各値上げに関し,《事業者A》に対して日コンが値上げ根拠についてどのような説明を行うべきか,どのような資料によって説得すべきか等については,6社及び被審人Jオイルの間の共通認識の存在を裏付ける証拠がなく,このことは6社及び被審人Jオイルの間で本件合意がされていないことを示すものであるとも主張するが,このような具体的な共通認識までなくても,競争を実質的に制限することは可能であり,そのような具体的な共通認識がないからといって,不当な取引制限の要件を欠くとはいえない。
(エ) その他,被審人王子コンスは,過去の裁判例や審決例において認定された意思の連絡と比較して,本件合意が抽象的な内容であって意思の連絡が認められないなどとも指摘する。しかし,事案によって意思の連絡の内容は異なってしかるべきであり,過去の裁判例や審決例において,具体的な実施方法の決め方が意思の連絡の内容として認定されていたとしても,具体的な実施方法の具体的な決め方が意思の連絡の内容として認定されていない本件合意について,「意思の連絡」という不当な取引制限の要件を充足しないものであると解することはできない。
(オ) 以上のとおり,被審人王子コンスの前記(イ)ないし(エ)の各主張はいずれも採用することができず,前記(ア)のとおり,本件合意をした6社及び被審人Jオイルの間には意思の連絡が存在したと認められる。
ウ 相互拘束
 本件合意の成立により,本来各社自由に決定されるべき6社及び被審人Jオイルの段ボール用でん粉の価格に係る意思決定等がこれに制約されて行われることになり,実際にも本件各値上げの決定及び申入れ等を通じて,6社及び被審人Jオイルがとうもろこしのシカゴ相場の上昇に応じて歩調をそろえる行動をしていたことからみても,本件合意は各社の事業活動を拘束するものであることが認められる。
エ 競争の実質的制限
 証拠(査35,査40,査41)によれば,6社及び被審人Jオイルは,平成22年度及び平成23年度において,我が国における段ボール用でん粉のおおむね8割を製造販売しており,しかも,本件において,6社及び被審人Jオイルが,本件合意に基づいて段ボール用でん粉の価格を1次値上げ及び2次値上げにおいて引き上げることができていることを併せ考えると,6社及び被審人Jオイルがかかる本件合意を行うこと自体,市場における競争機能を損ない,市場支配的状態をもたらすもの,すなわち我が国における段ボール用でん粉の販売分野における競争を実質的に制限するものと認めるのが相当である。
 なお,被審人Jオイルは,そもそも段ボール用でん粉はとうもろこしのシカゴ相場に連動して値動きが生じる商品であり,とうもろこしのシカゴ相場の上昇に応じて顧客への段ボール用でん粉の価格引上げの申入れを検討すること自体はコーンスターチメーカーとして当然のことである以上,仮に本件合意がされたとしても,価格競争に影響があるとは考えられないなどと主張する。しかし,6社及び被審人Jオイルは,本来,とうもろこしのシカゴ相場が上昇した場合でも,段ボール用でん粉の価格の引上げの申入れを行うか否かはもとより,どのような幅で価格の引上げの申入れを行うかを本来各社において独自に決定することになるのであって,いずれも必ず価格引上げの申入れを行うとは限らないし,これを行うとしても,同じ金額の幅で価格引上げの申入れを行うとは限らない。しかるに,上記7社は,本件合意により,上記のような価格の引上げの申入れについての独自の決定が制約されることになるのであるから,市場での競争機能が害されることは明らかであり,段ボール用でん粉の販売分野における6社及び被審人Jオイルの競争が実質的に制限されたことは明らかである。よって,被審人Jオイルの主張を採用することはできない。
オ 小括
 よって,6社及び被審人Jオイルによる本件合意は,独占禁止法第2条第6項の不当な取引制限に該当する。
2 争点2(本件違反行為の実行としての事業活動がなくなる日)について
 独占禁止法第2条第6項は,事業者間の相互拘束,言い換えれば,相互に拘束し続けることを違反行為とするものであるから,不当な取引制限に該当する違反行為の終了時期は,各事業者が当該拘束から解放されて自由に事業活動を実施することとなった時点と解すべきである。それゆえ,不当な取引制限は,各事業者が違反行為の相互拘束に反する意思の表明等相互拘束が解消されたと認識して事業活動を行うまで継続するものであり,いわゆる価格カルテルについては,事業者間の合意が破棄されるか,破棄されないまでも当該合意による相互拘束が事実上消滅していると認められる特段の事情が生じるまで当該合意による相互拘束は継続するというべきである(モディファイヤーカルテル事件判決)。
 そうすると,前記第3の4のとおり,公正取引委員会は,平成25年(措)第7号により措置を命じた事件において,平成24年1月31日に8社のうち被審人Jオイルを除く7社の営業所等に立入検査を行い,それ以降,8社が以前のような情報交換を行っていないことからすれば,この日から,6社及び被審人Jオイルは,本件合意の拘束から解放されて自由に事業活動を実施することとなったといえ,本件違反行為の実行としての事業活動がなくなったものと認められる。
 この点,被審人王子コンスは,日コンが,平成23年2月25日,独断で《事業者A》との取引を全面停止し,同時に《事業者A》との価格交渉を停止したため,本件合意が前提とする市場の状況は一変し,8社のカルテル遂行を代表して行っていた日コンが,カルテルの実行行為の遂行を放棄したと評価できることから,本件合意における意思の連絡が崩壊し,同日,本件違反行為の実行としての事業活動がなくなったと主張する。
 しかし,前記1(1)オ(ア)a(d)のとおり,日コンが,1次値上げを行っていた平成23年2月25日頃,《事業者A》との取引を停止したことは確かであるが,同(イ)b及び同(ウ)bのとおり,日コンは,《事業者A》との取引を停止した後も,2次値上げ及び3次値上げの際,他のコーンスターチメーカーと情報交換をして,段ボールメーカーに対する値上げの申入れや交渉を行っていたことからすると,日コンが《事業者A》との取引停止に伴って本件合意に基づく実行行為の遂行を放棄したとはいえず,平成23年2月25日に本件合意が消滅したという被審人王子コンスの主張は採用できない。
第7 結論
1 本件排除措置命令について
 被審人王子コンス及び被審人Jオイルは,前記第6の1(2)及び同(3)のとおり,他の事業者と共同して,とうもろこしのシカゴ相場の上昇に応じて段ボール用でん粉の価格を引き上げる旨を合意することにより,公共の利益に反して,我が国における段ボール用でん粉の販売分野における競争を実質的に制限していたものであり,この行為は,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,同法第3条の規定に違反するものと認められる。
 また,被審人王子コンス及び被審人Jオイルの違反行為は既に消滅しているが,違反行為の取りやめが公正取引委員会の立入検査を契機としたものであること等の諸事情を総合的に考慮すれば,被審人王子コンス及び被審人Jオイルに対して特に排除措置を命ずる必要がある。
 したがって,被審人王子コンス及び被審人Jオイルに対する本件排除措置命令は相当であるから,被審人王子コンス及び被審人Jオイルの本件排除措置命令に係る審判請求はいずれも理由がない。
 他方,被審人加藤については,前記第6の1(4)のとおり,本件合意に参加した事実は認められない。
 したがって,本件排除措置命令のうち,被審人加藤に関する部分については取り消すべきこととなる。
2 本件各課徴金納付命令について
(1) 前記1の違反行為が独占禁止法第7条の2第1項第1号に規定する商品の対価に係るものであることは本件合意の内容から明らかである。
(2) 被審人王子コンスに係る課徴金の計算の基礎となる事実
ア 被審人王子コンスは,段ボール用でん粉の製造業を営んでいたものである。
イ 被審人王子コンスが,前記(1)の違反行為の実行としての事業活動を行った日は,本件合意に基づき被審人王子コンスが最初に段ボール用でん粉の価格の引上げを実施することとした平成22年12月1日であると認められる。
 また,被審人王子コンスは,平成24年1月31日以降,当該違反行為を取りやめており,同月30日にその実行としての事業活動はなくなっているものと認められる。
 したがって,被審人王子コンスについては,独占禁止法第7条の2第1項の規定により,実行期間は,平成22年12月1日から平成24年1月30日までとなる。
ウ 前記イ記載の実行期間における段ボール用でん粉に係る被審人王子コンスの売上額を独占禁止法施行令第5条第1項の規定に基づき算定すると,21億5482万3256円と認められる。
エ 被審人王子コンスは,前記イ記載の実行期間を通じ,常時使用する従業員の数が300人以下の会社で,段ボール用でん粉の製造業を主たる事業として営んでいた者であり,独占禁止法第7条の2第5項第1号に該当する事業者である。
オ 被審人王子コンスは,公正取引委員会による調査開始日である平成24年5月15日の1月前の日までに当該違反行為をやめており,当該違反行為に係る実行期間が2年未満であるので,独占禁止法第7条の2第6項に該当する事業者である。
カ 以上によれば,被審人王子コンスが国庫に納付すべき課徴金の額は,独占禁止法第7条の2第1項,第5項及び第6項の規定により,前記ウの売上額に100分の3.2を乗じて得た額から,同条第23項の規定により1万円未満の端数を切り捨てて算出された6895万円の金額である。  
(3) 被審人Jオイルに係る課徴金の計算の基礎となる事実
ア 被審人Jオイルは,段ボール用でん粉の製造業を営んでいたものである。
イ 被審人Jオイルが,前記(1)の違反行為の実行としての事業活動を行った日は,本件合意に基づき被審人Jオイルが最初に段ボール用でん粉の価格の引上げを実施することとした平成22年12月1日であると認められる。
 また,被審人Jオイルは,平成24年1月31日以降,当該違反行為を取りやめており,同月30日にその実行としての事業活動はなくなっているものと認められる。
 したがって,被審人Jオイルについては,独占禁止法第7条の2第1項の規定により,実行期間は,平成22年12月1日から平成24年1月30日までとなる。
ウ 前記イ記載の実行期間における段ボール用でん粉に係る被審人Jオイルの売上額を独占禁止法施行令第5条第1項の規定に基づき算定すると,6億7936万4588円と認められる。
エ 被審人Jオイルは,公正取引委員会による調査開始日である平成24年5月15日の1月前の日までに当該違反行為をやめており,当該違反行為に係る実行期間が2年未満であるので,独占禁止法第7条の2第6項に該当する事業者である。
オ 以上によれば,被審人Jオイルが国庫に納付すべき課徴金の額は,独占禁止法第7条の2第1項及び第6項の規定により,前記ウの売上額に100分の8を乗じて得た額から,同条第23項の規定により1万円未満の端数を切り捨てて算出された5434万円の金額である。
(4) よって,被審人王子コンスに対して前記(2)カと同額の課徴金の納付を命じた平成25年(納)第32号課徴金納付命令書による課徴金納付命令及び被審人Jオイルに対して前記(3)オと同額の課徴金の納付を命じた平成25年(納)第33号課徴金納付命令書による課徴金納付命令はいずれも相当であるから,被審人王子コンス及び被審人Jオイルの上記各課徴金納付命令の全部の取消しを求める旨の審判請求は理由がない。
(5) なお,前記第6の1(4)のとおり,被審人加藤が本件合意に参加した事実は認められないことから,被審人加藤に対して課徴金の納付を命じた平成25年(納)第34号課徴金納付命令書による課徴金納付命令は,取り消すべきこととなる。
第8 法令の適用
 以上によれば,被審人加藤の審判請求は,いずれも理由があるから,独占禁止法第66条第3項の規定により,主文1及び2のとおり審決するのが相当であり,被審人王子コンス及び被審人Jオイルの各審判請求は,いずれも理由がないから,同条第2項の規定により,主文3のとおり審決することが相当であると判断する。

  平成31年3月25日
                  
         公正取引委員会事務総局
  
           審判長審判官  齊 藤 充 洋

  審判官堀内悟及び審判官渡邉明子は転任のため署名押印できない。

           審判長審判官  齊 藤 充 洋

注釈 《 》部分は,公正取引委員会事務総局において原文に匿名化等の処理をしたものである。






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